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因縁に決着をつける吸血少女

お祝いの赤飯?

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 土曜日。光とのデートの日だ。まず初めに光の家に荷物を置いてから、デートに出掛けるので、家から出る時にはスーツケースを持つ。

「よし」
「準備は出来た? タオルは入れた?」
「うん。でも、タオルも借りれば良くない?」
「タオルには他にも使い道があるのよ」
「?」

 このお泊まりが決まってから、お母さんは意味深な事をよく言ってくる。そういう時には、いつもお父さんが気まずそうな顔をしていたので、お父さんは何か気付いているみたいだった。教えてはくれなかったけど。

「あっ、それと下着の替えは余分に入れた?」
「うん。それも言われた通りに入れたけど、この歳になってお漏らしとかした事ないよ?」
「漏らしたくなくても漏らす事があるのよ……」
「お母さんは、一体何を言ってるの?」
「まぁ、そのうち分かるわ」
「ふ~ん。それじゃあ、行ってきます」
「は~い。あ、そうだ。後、初めては痛いかもだから、あまりがっつきすぎないようにね」
「はいはい。分かって……」

 扉を開けて、外に出た瞬間にお母さんが言っていた事が何の事なのか分かった。

「お母さん!!」
「おほほほ」

 お母さんは変な笑い方をしながら、扉を閉める。ご丁寧に鍵まで閉めて、戻ってこさせないようにしていた。顔が熱くなっているのが自分でも分かった。

「もう……」

 絶対に親が子供言う事ではない。いや、寧ろ言うべき事なのかな。そこは分からないけど、お父さんが気まずそうな顔をしていた理由も明白になったので、心の中でお父さんに謝っておく。
 火照った顔を冷ますために、足早に家を離れて光の家に向かった。しばらく歩いて光の家の前に着き、インターホンを押す。

「いらっしゃい」

 光はすぐに扉を開けて迎えてくれた。光の家に上がって、スーツケースのキャスターを拭いてからリビングまで持っていく。

「いっぱい持ってきたね。白ちゃんの着替えもあるのに」
「光が作った服で寝られると思う? 絶対にしわしわになるよ」
「アイロン掛けは余裕!」
「だろうね」

 光が作ってくれる服は、普段使い用というよりも、おしゃれ用なので寝るのに適してはいない。
 持ってきた荷物もリビングに置いたし、光の支度も出来ているみたいなので、玄関の方に向かう。

「それじゃあ、行こうか」
「うん」

 二人で近所のショッピングモールに来て、色々とものを見ていった。ペアで揃えられそうなもの。互いに似合いそうなもの。お互いにプレゼントするなら、どういうものにするかなど、服から小物まで色々なものを見ていった。
 人の下着を選ぶ時はノリノリだけど、自分の事になったら顔を赤くしていた光は、本当に可愛かった。それからフードコートでお昼を食べて、軽い運動として近所の大きめの公園を一周したりしてから家に戻る。

「ふぅ……結構歩いたね。ゲームばかりしてたから、足がパンパンだよ」
「少しは運動しないとね。そうだ。お風呂から上がったら、マッサージしてあげようか?」
「マッサージ……」

 その言葉で、何故か家を出る時のお母さんの言葉が蘇ってきた。

「白ちゃん、顔赤くない?」
「赤くない」

 光に見られたくないので、光を後ろから抱きしめる。唐突にしたから、光は戸惑っていたけど、ちょっと嬉しそうだった。そこから、光とリビングで他愛のない話をしていると、夕飯にちょうど良い時間になるので、二人で夕飯を作る。とは言っても、さすがにそこまでキッチンが広い訳じゃないから、私は軽いものを作るくらいしか出来なかったけど。
 食後の休憩をしつつ、交互にお風呂に入る。一緒に入っても良かったけど、何となく交互にした。そうしてお風呂から出た直後、メジャーを持っている光が脱衣所で待っていて驚いたけど。服を着ていない方が正確な測定が出来るからという理由なのは、光から話を聞かなくても分かる。

「う~ん……ちょっと大きくなったね」
「そう?」
「うん。ちょっとだから、大きく手直ししなくて大丈夫そう。下着だけ着て待ってて」

 そう言って、光は自分の部屋へと走っていった。足音の大きさとテンポから、それが分かる。そこからの流れは、誰でも予想出来るだろう。
 光が作った服を、どんどんと着ていく。露出の激しいものから清楚系なものまで、沢山の服に着替えていった。

「う~ん……こっちら辺は駄目だね。水波さんの方が似合いそう」
「それはそうでしょ。露出が激しくなるなら、起伏があった方が綺麗だろうし」
「白ちゃんも水波さんくらい大きくなるのかな?」
「どうだろう? みず姉は、家族の中で一番だし。なるとしても、かー姉くらいじゃないかな」
「火蓮さんは、身体のバランスが良いから綺麗だよね。しっかりと締まった身体をしているから、火蓮さんでも似合うかも」

 確かに、かー姉でも露出のある服は似合うと思う。そこまで激しいものじゃなくて、ポイントで露出があるものなら。でも、かー姉が一番似合うのは、クール系ファッションだと思う。よくしているのを見るし。

「結局は肉体美があるかどうかって感じなのかな。そういう意味では、ゲームで着るのに適している服って感じがするよね」
「布がない分、防御力が低そうだけどね」

 意外とワンオンでも露出のある服を着ているプレイヤーはいる。見る度に防御力は大丈夫なのかと心配になるけど、ゲームをする上で性能面を気にしない人はあまりいないと思うので、ちゃんとしていると思いたい。

「実際どうなの?」
「う~ん……素材によるかな。割と、追加効果でどうにか出来る部分があるし」
「まぁ、ゲームに現実を求めすぎるのは、ナンセンスか。私の防具も現実的に見たら、戦闘に適しているとは言い切れないだろうし」
「実際はどうなの?」
「そこまで気にした事はないかな。それが答え」

 服が邪魔と思った事は、あまりない。もっとひらひらが凄かったりしたら、邪魔になっただろうけど、そういう防具でもないしね。

「それなら良かった。今、白ちゃんの防具を改良しているけど、もっと装飾を減らそうか迷ってたから」
「ふ~ん。結局、私の防具って一つだけになるの?」

 ちょっと気になったので訊いてみた。

「そのつもり。【適応】があるから、その部分を削れるし、防具が二着ある意味もないでしょ? レベルが上がって、追加効果を十個付けられるようになったし、ハクちゃんに合わせた仕様に出来るよう頑張ってるよ」
「そうなんだ。追加効果十個って結構凄いよね?」
「うん。しかも、アップデートで右脚と左脚にも防具枠が出来たからね」
「えっ!? そうなの!?」

 確か防具は、下着、インナー、上着、外套、右腕、左腕、腰、靴、頭の九箇所だったはず。その内、腰の部分で着脱可能な部分があるみたいなのがあった気がする。

「うん。タイツとかの着脱が選択出来るのは変わらないで、ただ単に装備箇所が増えたってだけ。籠手とかみたいに脛当て的なものになるかな。一昨日のアプデ見てないの?」
「一昨日……図書館に籠もるだけだったなぁ」
「白ちゃんって、割と確認してない事多いよね」
「お知らせに気付いたら見るんだけどね。図書館の事ばかり考えてたから、あまり見てなかったかも」

 後で暇な時間にアプデ内容を確認しておこう。そんな時間があるかどうか分からないけど。

「という事は、全部で十一箇所に十個ずつって事?」
「ううん。下着の最大は三つだけ。だから、十個ずつは十箇所だけ」
「それでも、計百三個の追加効果かぁ……エグい組み合わせもありそう」
「うん。攻撃に極振りするようなプレイヤーもいるっぽいよ」

 つまり、追加効果を攻撃力が上がるものだけで揃えるという事だろう。アタッカーなら有りだけど、防具なのに防御を捨てるのは、ちょっと怖い気がする。私みたいに緊急回避手段を持っているなら別だけど。

「防具を使った極振りかぁ……確かに、ステータスポイントとかがないなら、そっちの面でしか極振りは出来ないもんね。私は、吸血極振りとかかな」
「もうどれだけ一遍に入ってきても、しっかりと飲めるようになってるんだもんね」
「かなり気持ち悪いけどね。最近、そういう系のモンスターばかり吸ってたから、もっと清涼系の血を吸いたいよ」
「清涼系の血……現実で聞くと違和感満載な言葉だね。メントールでも入ってるのかな?」
「それはスースーしそう……」

 そんな馬鹿みたいな話をしていると、結構遅い時間になってきた。光が作ってくれた服を脱いで、自分で持ってきた寝間着に着替える。寝間着と言っても、Tシャツとショートパンツだけど。光の方は、ネグリジェを着ていた。

「何それ、可愛い」
「うん。この前買ってみたんだ」
「良いじゃん。でも、どうして急に? 前まで私みたいにシャツだったのに」
「えっと……白ちゃんとお泊まりだから、おしゃれしてみようかって思って」

 ベッドの上でちょっと恥ずかしそうにしている光に、心臓が大きく脈打ったのが分かった。言葉を濁さずに言うと、ものすごく興奮した。
 私もベッドに乗って、光の傍に近づく。

「ねぇ、光」

 光の頬に手を当てながら、声を掛ける。すると、光はちょっと潤んだ目と仄かに赤く染まった頬としながら、こっちを見詰め返してきた。

「な、何?」

 声がちょっとだけ上擦っているのは、私がしたい事を理解しているからだろうか。それなら、私としても都合が良い。

「キスしたい。嫌だったら、ちゃんと言って」

 最初はもっとムードのある場所でしたいと思っているとしたら、ここでするのは違うと思うから確認はしっかりとする。そのくらいの自制は出来るつもりだ。

「わ、私もしたい」

 そう言って、光は目を瞑った。キスを待っている光の顔は、これまで見た光のどんな表情よりも近くで見たいと思わせる表情だった。だから、私は目を瞑らない。
 光の頬に添えた手で、光の顔が動かないように軽く支えて、頬よりも薄く綺麗なピンク色の唇に、自分の唇を合わせる。柔らかい感触がした。
 本当に光とキスをしている。昔の自分であれば信じられなかった光景だ。でも、これは現実。キスをしたら、何かが変わるのかと思っていた。そして、それは事実だった。光への愛が、より溢れ出してくる。
 唇の感触を楽しみたいと思い、中々離すことが出来なかった。光の瞼が僅かに揺れる。私がずっと唇を塞いでいるから、呼吸出来なくて苦しいとかかな。鼻で呼吸すれば良いのに、そこに気付いていないみたい。
 このまま抱きしめてキスを続けたいという欲求を抑えて、唇を離す。

「ふぅ……な、長くない?」
「それだけ光が可愛かったって事。唇も瞼もぷるぷるしてた」
「えっ!? 見てたの!? 白ちゃんのえっち」

 光は顔を赤くしながら怒っていた。キスの時は、互いに目を瞑るという認識だったみたい。とはいえ、えっちは言い過ぎな気がする。だから、本当にしようと決めた。

「きゃっ!?」

 光を押し倒したら、可愛い悲鳴をあげた。そして、そのまま光の事をジッと見る。光は恥ずかしそうにしながらも、私を見詰め返していた。それだけで了承の返事と受け取る。
 結局、お母さんがしつこく確認していた事は、この三日間でかなり役に立っていた。ある意味では感謝なのだけど、親にそういう事をすると思われているというのは、ちょっと恥ずかしい。最期に全部洗濯したし、家に帰ってもバレないだろうと思っていたら、即行でバレた。色々と誤魔化していたはずだけど、何故と思ったら、首とかに思いっきりキスマークが付いていたからだった。完全に失念していた私の負けだ。
 そして準備の良い事にその日の夜は赤飯だった。買い物に行った様子もなかったので、完全に先回りで予測されていた。まぁ、出掛ける直前にあんな事を言っていたくらいだから、当たり前か。お父さんは、相変わらず気まずそうにしていたけど、何故か頭を撫でてくれた。一応、祝福してくれたって事なのかな。
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