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因縁に決着をつける吸血少女

光合成

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 どんどんと飲んでいき、三段目のHPを削り切る事が出来た。直後、植物のフィールドが大きく揺れて、私とアルラウネがドームの上に打ち上げられた。皆は、まだドーム内だ。打ち上げられた下から、また蔓が伸びてきて別のフィールドが出来た。
 また状況が変わったため、アルラウネから離される。地面を転がって、フィールドの端に着く。

「……えっ、一人!? レイドなのに!?」

 この状況から逃げて皆と合流する事は出来ない。何故なら、太陽の光を浴びているアルラウネが、どんどんと回復していたからだ。恐らく光合成をしているのだと思う。最悪の状況だ。

「さすがに、それはないでしょ!!」

 アルラウネに突っ込むと、アルラウネが大量の蔓で妨害してくる。【心眼開放】と【超反応】で蔓を斬り裂き、アルラウネに近づく。でも、ここではそれだけじゃなかった。周囲から木々の枝が飛んで来た。よく見てみると、フィールドのあっちこっちで、木と花が生えていた。それどころか、どんどんと別の植物が生えてきていた。

「早く倒さないとヤバい……」

 形振り構っている暇はない。誰もいない状況なら、ブレスも使い放題だ。【竜王息吹】で周囲の蔓を燃やす。そして、その炎を【火炎武装】を使って刀に纏わせる。さらに、雷、風、闇を纏わせる。二振りで、アルラウネに属性を乗せた風の刃を放つ。それは、花粉の爆発で防がれた。

「花粉が濃くなってる……?」

 風の刃を打ち消せる程の爆風が生み出せる程の爆発を生めるのは、それが理由のはず。恐らく、周囲の花が原因だ。本当にエアリーに花粉を巻き上げて貰っていて良かった。
 生半可な遠距離攻撃は防がれてしまうと思う。だから、生半可じゃない遠距離攻撃を使う。【蒼天】のチャージを始める。皆がいないなら、地面に向かって撃たない限り、大丈夫なはずだ。
 【竜王息吹】で周囲を燃やしながら、アルラウネに突っ込む。蔓は燃え尽きるから、アルラウネに攻撃を届かせられるようになる。でも、アルラウネの行動も変わっている。自分から花粉を出して、適宜爆発させてくるので、それが邪魔すぎる。
 何度か大爆発を受けて、【夜霧の執行者】の自動回避も使い切った。木の枝による遠距離攻撃も厳しい。そっちに集中すれば、蔓の攻撃や花粉爆発が襲い掛かってくるからだ。何となく師匠との稽古を思い出す。意識を一箇所だけに向けてはいけない。全体を見ないと、攻撃の対処は出来ない。
 炎で飛んでくる木の枝や蔓を燃やして、アルラウネに近づく。既に三段目の半分まで回復されている。何度か斬る事が出来ているので、ある程度削れてはいるのだけど、それでも回復されてしまっている。
 早くアカリ達と合流したいけど、【索敵】から判断するに、アク姉達だけじゃなくて、アカリ達も他のモンスターと戦っているみたい。段々と戦う人数が減るレイドなのかな。もしかしたら、下での戦いが負けに終わると、どんどん上の戦いが困難になるみたいな感じなのかもしれない。
 そこまで戦って、【蒼天】が最大までチャージ出来た。これを避けられると困るので、攻撃を避けながら、一気にアルラウネに接近する。そして、至近距離で【蒼天】を放つ。アルラウネのHPが一気に削れて四段目の半分まで消し飛んだ。同時にこっちのHPも大きく削れるけど、それは【貯蔵】分なので問題ない。【蒼天】により起こった煙が視界を塞ぐ。それは同時に、アルラウネの光合成を防ぐ結果となっていた。
 【索敵】でアルラウネの位置などは分かるので、そのまま突っ込もうとする。しかし、直前で考えを改め、背後に飛んだ。そんな私を追うように、煙の中から爆発が起こる。私の一歩前まで爆発は及んでいた。【蒼天】の余波で出て来た花粉が吹き飛ばされていた事もあり、巻き込まれるまでの規模にならなかったと考えられる。
 爆発が止んだ瞬間に、【電光石火】で突っ込む。同時に、周囲から木が飛んで来た。さっきまでの木の枝ではなく、木そのものだ。さすがに、そこまで大きなものになると、【竜王息吹】で燃やしても形が残って命中してしまう。咄嗟にその場の光と闇を融合させて虚無を生じさせる。大きく形を削られた木であれば、刀でも斬る事が出来る。本当は、こういう時斧に形を変えられる双血剣があれば良いのだけど、ないものを強請っても仕方ない。
 飛んで来た木をどうにか出来たと思ったら、今度は先端が尖った殺意の高い木が飛んでくる。それも一本どころではなく、二本、三本とどんどん飛んで来た。
 【雷脚】で基礎的な速度を上げて、虚無を用いつつ攻撃を避けていく。そこに木の枝や蔓、花粉爆発も追加されるので、かなりヤバい。四段目の半分という事もあり、攻撃が苛烈になっていく。
 煙も晴れて、再び光合成が始まってしまう。また回復されるのはキツい。ここで私も攻めないと勝てない。アルラウネの攻撃の合間にある一瞬の隙を突き、【電光石火】でアルラウネの背後に回る。すぐに蔓が来るけど、関係ない。思いっきり【竜王息吹】を使って、周囲の蔓ごとアルラウネを燃やす。
 炎から抜け出そうとするアルラウネに向かって【電光石火】の勢いと【猪突猛進】の勢いを乗せて突っ込む。炎の中から私が来たという事もあるのか、アルラウネの反応が遅れていた。アルラウネの身体を掴み、地面に押し倒す。【重力操作】で下への重力を強くして、影と血液で何重にも縛り付ける。そして、最後の吸血をする。周囲から来る攻撃は、全ての属性操作使って、ダメージを最小限に抑える。そもそも【始祖の吸血鬼】による回復に加えて、スキルでの自動回復等々もあり、私のHPは急速に回復しているので、そう簡単には死なない。
 そのままアルラウネのHPを全て吸いきる事が出来た。直後、急に揺れを感じたかと思えば、フィールドになっていた植物が崩れていった。アルラウネの身体は、まだポリゴンに変わっていない。
 まだ戦いは終わっていないのかもと思い、念のためアルラウネの身体を抱えたまま空を飛ぶ。アルラウネに何か動きがあれば、いつでも血を吸えるようにという事と地面に下ろせばまた植物を操られる可能性が高いからだ。
 植物の中にいたアカリ達が心配だけど、下にはエアリーがいる。地面に叩きつけられる事はないはずだ。植物が崩れていくのを見て、アルラウネにも動きがない事を確認してから、地面に降りていく。
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