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楽しく賑わう吸血少女

悪食の吸血姫

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 闇霧の始祖の提案に乗って、実験に付き合う事になった。

『まずは、これを全部飲め』

 そう言って、闇霧の始祖が十本の血瓶をテーブルに置いた。このテーブルは、いつの間にか闇霧の始祖が血で作ったものだ。赤いから血瓶が若干見にくい。
 血瓶は、全て闇霧の始祖のものだった。さっきの感覚を十回も味わわないといけないと考えると気が進まないけど、情報は欲しいので、どんどん飲んでいく。この行動は、嫌いな飲み物を我慢して一気飲みする行動に似ている。てか、そのものと言っても良いかもしれない。別に血は好きじゃないし。

「ふぅ……飲んだよ」
『ふむ。量の問題ではなさそうだな。要素が足りない方か。別のやつの血瓶があれば、もっと試行出来るのだがな』
「始祖同士のネットワークとかないの?」
『気ままに生きている奴等が、そんなものを大事にすると思うか?』
「大事にはするんじゃない?」
『刹那を生きる奴等の思考は分からんな』

 長生きをし過ぎて、人間の思考が理解出来ないみたいな事言っている。そうじゃなくても、ある程度は繋がっておくものだと思ったけど、長生きの規模が大きくなったら、そこら辺の意識も変わるのかな。

『次は、そいつの闇を飲んでみろ。精霊なんだから、無限に出せるだろう』
『私の名前はメアなんだけど』

 メアは、頬を膨らませながら闇を出す。それに口を付けて飲んでいく。何だか焼けるような感じがする。闇の侵食的な感じが表現されているのかな。ダークナイトやシャドウナイトのような味ではなく、果てしない苦みが凝縮されたようなそんな味だ。

『美味しい? ねぇ、美味しい!?』
「苦い……」
『えぇ~……美味しいのになぁ』

 そう言いながら、メアがまた肩に乗ってくる。肩車が気に入ったのかな。

『……変化がないな。これからも闇を飲め』
「えっ!? 何で!?」
『身体への馴染み方を見る。上手くいけば、闇を操れるだろう』
「えっ!?」

 まさかの操作系スキルを収得出来る可能性があると言われた。そう言われると、さすがにやりたくないとは言えない。ちょうどメアもいるから、闇は飲み放題だし、頑張ってみるか。

『次は、光のだ。お前……こいつが、件の精霊か?』
「ん? ああ、うん、そう。マシロって名前」
『そうか。何だ。悪かったな』
『うん』

 マシロは私の服を掴みながら、こっちを見る。そんなマシロの頭を撫でてあげる。

『ふむ。やっぱり異常だな』
「何が?」
『精霊の懐き具合がだ。本来の精霊は気難しい性格のはずだ。下位精霊とはいえ、そこまで懐くのは異常だと思うぞ。何体いるんだ?』
「えっと、六人だけど」
『ふむ。そういえば、一体おかしな精霊もいたな。下位精霊でありながら神の力を持ってるやつがいたな』
「ああ、レイン? あの子は、生まれが特殊だから。てか、下位精霊って言った!? どういう事!?」

 これも聞き捨てならなかった。あれだけの強さを持つ精霊が、下位という事が信じられない。

『どういう事も何もそのままの意味だ。上位精霊は、神の力を宿しやすい。それと属性の完全支配に加えて、他にも干渉出来る。闇で言えば、毒とかだな』
「ふ~ん……じゃあ、レインは、上位精霊に片脚を突っ込んでいるって事?」
『あれは、そういう類いではないな。下位精霊が神の力を持っているというだけだ。上位精霊には、近づいてはいても距離がある』

 話を聞いていて、レインが上位精霊になりかけているのかと思ったけど、全然そんな事はなかった。上位精霊について、もっと聞いておく必要がありそうだ。

『因みに、これ以上は知らないからな。どこかの都市にでかい図書館があるみたいな話を聞いた事がある。そこなら情報があるんじゃないか?』
「そう。ところで、光を飲めって言うけど、どうやって飲めば良いの? 闇と違って、飲める要素なくない?」
『光を集められるだろ? それを飲め』
『姉様、これなら飲めるかしら?』

 マシロがテニスボール大の光球を作り出した。灯りとして使っている光を飲めという事なのかな。仕方ないので、その光を丸呑みする。すると、内側からぽかぽかと温まるような感覚が広がっていった。

「飲めた。舌にあまり触れていないからか味はないなぁ」
『ず~る~い~!』

 メアが身体を揺らして主張してくる。自分の闇が美味しくないと言われたのが不服みたい。こればかりは、私の好みの問題だからどうしようもない。

『なるほどな。【魔聖融合】を持っているな?』
「うん。ダメージになるしね」
『なら、光も食べろ。そして、定期的に来て、経過を見せろ』
「分かった」

 これで、光と闇を操れるようになれるのなら、万々歳なので従う。

「でも、私、結構闇を飲んでると思うよ。ここにいるダークナイトだって、闇の一つでしょ?」
『粗悪な闇は、効率が悪い。精霊の作り出す属性は、純度が高いからな。その方が効率的だ。次は、思いっきり空気を吸え。風のは、そこに風を送れ』
「エアリー、よろしく」
『はい。お姉様』

 なるべく長くなるように空気を吸う。すると、入ってくる空気の量が滅茶苦茶多くなった。口に漏斗を突っ込まれて、無理矢理水を飲まされているかのような感覚だ。

『もう良い』

 一分程で闇霧の始祖がそう言ったので、ある意味で拷問のようだった強制呼吸が終わった。

『他の属性の精霊に交代させられるか?』
「出来るけど、まだ続けるの?」
『不十分だからな』

 まだ検証が不十分らしいので、エアリー、メア、マシロからレイン、ソイル、ライに入れ替える。すると、闇霧の始祖が、レインの事をジッと見始めた。レインは、それを警戒して私の後ろに隠れた。

『そいつの水は飲んでいるのか?』
「まぁ、最近は時々。元々耐性を付けるために、常飲していたけど」
『飲んでみろ』
「レイン、頼める?」
『うん』

 レインの水をどんどんと飲んでいく。最近では、痛みもないので結構美味しい。

『神の力は霧散するか。【魔聖融合】の効果で害にならないみたいだな。次は土だな』
「ソイル、お願い出来る?」
『本当に……食べるの……?』
「まぁ、泥も砂も飲んでるし、今更土くらいね」

 そう言うと、ソイルは態々土を団子にして渡してくれた。子供のおままごとで泥団子をご飯代わりにしているのを見た事あるなと思いながら、土団子を食べる。さすがに、土を食べるのは辛い。美味しいわけでもないし、何をしているのだろうという気分になった。

『次は雷だな』
「ライ、雷を留めて小さく出来る?」
『……』こくり

 ライは、マシロのように小さな雷の塊を作ってくれた。これを本当に飲んで良いのか一瞬悩んだけど、どうせ飲めって言われるので口の中に入れて飲む。現実でパチパチ弾けるような感覚がする。あれの何十倍も強力だけど。

「うぉ……麻痺にはならないか」
『ふむ。火の精霊はいないんだったな?』
「うん。でも、自分で火を吐けるよ」
『ん? ああ、竜だからか。その時、火傷はするか?』
「うん。口の中は焼けるけど」
『口内は、人基準か。この松明に火を吐け』

 言われた通り、【竜王息吹】で松明に火を点ける。そうしたら、松明を投げて渡される。

『その火を食べろ』
「えっ……まぁ、分かった」

 松明の燃えている部分を口に含んで火を飲み込む。一応、私の口の大きさに合わせて小さめの松明だったので、ちゃんと咥えられた。
 思いっきり、口の中と喉を火傷した。後で、闇霧の始祖の口にでも突っ込んでやろうか。
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