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楽しく賑わう吸血少女

色々な予定

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 翌日。いつも通りの時間にログインして、日課の家畜の世話をしていると、畑で光っているマシロが目に入った。

「何してるんだろう?」
「あれで、マシロちゃんの光の因子が植物に付加されるんだって。エアリーちゃんが教えてくれた」

 いつの間にか近くに来ていたアカリが教えてくれた。マシロがああして畑の植物に影響を与えてくれているのは、精霊の皆が教えてあげたって感じかな。

「マシロちゃんのおかげで、日輪草と月輪草の二種類が収穫出来たしね。メアちゃんも夜に何かしていたみたいだよ。最近、収穫ボックスが凄い事になってるしね。おかげで、研究が捗るよ」
「裁縫とかの方は出来てるの?」
「勿論。寧ろ、調合して出来た薬を布に使ったりして、新しい素材にしたり、色々と出来るようになったからね。一人で全部持っている人は稀だろうけど、一々協力をお願いしないでいいから、楽ではあるね」

 アカリは自分専用の研究室とかを手に入れられたから、色々なものに手を出しているけど、普通に生産職をしている人達は、どれか一つの種類に特化する事が多いと思う。場所も取るし、考える事も増えるだろうし、材料費の問題もあるだろうから。その点、アカリはギルドエリアで広大な畑と牧場を作り出していて、管理も精霊に一任出来るから、問題がない。寧ろ、新しい素材を作り出す事も出来るようになったから、利点しかなかった。

「あっ、そうだ。そういう事を話に来たんじゃなかった」
「ん? 何か用があったって事?」
「うん。お知らせ見た?」
「お知らせ? う~ん……あっ、花火の話?」

 今日ログインした時にお知らせが届いていて、八月の三十日にゲーム内で花火が打ち上がるというものがあった。時間は二十一時からだったかな。

「ギルドエリアでも見る事が出来るって書いてあったっけ。ギルドエリアの夏も八月が最後だからって感じなのかな?」
「多分ね。その花火なんだけど……」
「良いよ。一緒に観ようか」

 私がそう言うと、アカリは嬉しそうに笑った。多分、そう言うつもりだっただろうし、この前アカリが何かを悩んでいるのを見たばっかりだったから、これで気分転換になったら良いな。

「あのね! 屋敷のバルコニーが良いと思うんだ!」
「確かに、あそこなら、ほぼどの方角から上がっても観られるだろうしね。そういえば、そろそろ学校かぁ……」
「そうだね。夏休みで進んだ?」
「廃城下町エリアの半分を調べ終えたくらいかな。そうだ。古城エリアで吸血鬼の目撃情報ってある?」

 ちょっと気になっていたので訊いてみた。

「さすがに、私も知らないかな。アクアさんかフレイさんに訊いた方が良いかも」
「そっか。アク姉!!」
「そんな都合良く来る訳……」
「呼んだ?」
「!?」

 適当に呼んだだけなのに、アク姉が走ってきた。タイミングが良かったのか、常に見張っているのか分からないけど、恐怖ではある。

「古城に吸血鬼っていた?」
「見た事ないけど? ボスも違うし」
「ボスってキメラ?」
「正解! もしかして、もう倒したの?」
「ううん。違うよ」

 闇霧の始祖と話した時にキメラの話もした。ペットとして飼っているという点から、ボスになってもおかしくないという風に考えた。

「私、闇霧の始祖と話したんだけど、そういう情報ってない?」
「闇霧の始祖? 聞いた事ないなぁ。吸血鬼同士で波長があったとか?」
「……まぁ、合ってるっちゃ合ってる。私の気配がおかしいから気になったって言ってた」
「ふ~ん……そういえば、古城エリアで、入る事が出来ない部屋があったかも。ピッキングも出来なかったんだよね。鍵穴ないし、扉のみたいなのはあるけど、そもそも動くように作られて無さそうだしで諦めた」
「そこだ! 一番上!?」
「うん。よく知ってるね?」
「闇霧の始祖から言われたから。そこから入れば良いんだ……あれ? でも、正面からなら霧にならなくても入れるんじゃ……」

 闇霧の始祖の話だと正面からなら、普通に入れるみたいな感じだった。でも、アク姉の話を聞くと、どう考えても入れない。

「……寝ぼけてた?」
「そんな事ある?」
「だって、私の気配で起きたんだよ? それまで、ずっと寝てたって。他の人達が来た事も知らなかったみたいだし」
「へぇ~、本当に吸血鬼限定イベントみたいだね。私もエルフ限定のイベント欲しいなぁ。ね、アカリちゃん」
「そうですね。私としては、生産職限定でも嬉しいですけど」

 アカリはエルフ兼生産職だから、限定イベントなら生産職系も欲しいって感じなのだと思う。実際、エルフよりは、そっちの方があり得ると思うし。

「そうだ。丁度良かった。二人に話しておきたい事があるんだ」
「何?」
「レイドエリアの攻略してみない? 近くにあるのと、ちょっと難しい場所の二箇所なんだけど」
「行きたいけど、私とアカリを加えても、八人だよね? 大丈夫?」

 レイドエリアという事は、集団で戦う前提のエリアとなっているはず。私とアカリが加わっても焼け石に水みたいになる気がする。

「皆もいるし、ラッキーもいるから大丈夫だと思うよ」
「まぁ、それもそうだね」

 精霊の皆がいれば、どんな環境でも普通に戦えるし、何なら私よりも戦力になる。だから、普通にレイドエリアでも戦える気がする。

「どこのレイド?」
「えっと……『不吉な森』と『死霊術士の墓場』」
「えっ、あそこのダンジョンってレイドエリアだったの?」
「うん。荒れ地エリアのダンジョンは、レイドエリアだね。結構えげつないらしいよ」

 それは予想外だった。ダンジョンって事しか確認してなかったから、レイドエリアになっている事は分からなかった。

「でも、アカリが行けてないと思うけど」
「うん。まだ、行けてないです」
「じゃあ、ハクちゃんと一緒に攻略してくると良いよ。多分、二人の方が合わせやすいだろうから」
「だって、どうする?」

 これは、私とアク姉が決めて良い事じゃない。アク姉は、選択を与えただけ。それを選ぶかはアカリに掛かっている。

「お願いしようかな。せっかくだから、一緒に冒険したいし」
「オッケー。レイドの日にちって決まってる?」
「まだだよ。まずは、二人に確認しないとって思ってたから。そこら辺は、アカリちゃんが荒れ地まで進んだらだね」
「分かった」
「それじゃあ、攻略終わったら教えてね」

 アク姉はそう言ってギルドエリアから転移していった。

「いつにする?」
「う~ん……じゃあ、明日で。明明後日から学校が始まるから、それまで終わらせておきたいかも」
「オッケー」

 こうして、ギルドメンバー全員でレイド攻略する事が決まった。それがいつ頃になるか分からないけど、恐らく夏休みが終わった後になるから、土日のどこかになるかな。
 アカリとの砂漠突破もあるから、今日は廃城下町エリアの探索を終わらせる日にしよう。
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