273 / 429
楽しく賑わう吸血少女
いざ地下室へ
しおりを挟む
埃っぽいだろうと思っていたのだけど、そんな事は全然無かった。綺麗に片付いているのだけど、それが尚更怪しい感じがする。
「特に何もない?」
『そうですね。家具などもありません。ですが、少し凹んでいる場所が複数あります』
「凹んでる? 床の事?」
『はい』
こればかりは、私の影でも分からない。どこからに入り込むならまだしも、ほんの少しの凹みを感知出来る程繊細な感覚を持つ影じゃないから。
「教えて」
『こちらです』
エアリーに案内して貰って、凹んでいるという場所を調べる。手で触ってどんな形で凹んでいるのか確かめる。
「何だろう? 長方形か……棚かな?」
『ここに日が差していれば、日焼けなどもあったでしょうが』
エアリーの言葉からも分かる通り、ここには窓が無い。なので、日焼けとは無縁の場所になっている。だから、手掛かりは、この僅かな凹みだけだ。
「【心眼開放】でも何も見えない。屋根裏は、重要な場所じゃなかったって感じかな」
『それは分かりませんが、この凹みの大きさは、全てほぼ同じです』
「えっ?」
もう一度凹みを触って確認してみる。すると、エアリーの言う通り、どの凹みも同じような大きさをしていた。恐らくは、全て同じものが置かれていたのだと思う。
「全部で六つ。一体何だったんだろう?」
情報が少なすぎて、まだ予測も出来ない。この大きさなら、大きめの棚という線が大きいとは思うけど。
「う~ん……あっ、棺桶?」
吸血鬼と言えば、棺桶で睡眠をとるというのが定番になっている。吸血鬼に関連しそうな情報が出て来ているところから、そこが思い付いた。まぁ、私は普通にベッドが良いけど。
「あっ、いや、下にベッドがあったか」
私自身がベッドの方が良いと思ったところから、この屋敷にもベッドがある事を思い出した。そうなると、睡眠目的の棺桶という線は薄くなる。
『もし仮に吸血鬼という事を隠していたという可能性は如何でしょう?』
「あぁ……う~ん……それはないかも? 吸血鬼っぽい絵と血液と人の購入から考えて、吸血鬼という情報は出回っていたと思う。住人も同じ絵を持っていたしね」
『では、棺桶という線はないという事でしょうか』
「そこは分からないかな。棺桶の本来の利用方法で使っていたのかもしれないし」
『趣味が悪いですね』
「だね」
もう一度屋根裏全体を確認してから、屋根裏を後にする。次に調べるのは、地下室だ。正直、ここが一番の本命だと思っている。
「てか、結局鍵を見つける事は出来なかったなぁ」
『壊しますか?』
いつでも出来ると言わんばかりに、エアリーがそう言う。まぁ、エアリーなら簡単に出来るとは思う。
「いや、影で開けてみるよ」
『分かりました』
なるべくなら穏便に進めたいので、出来る限りのことはする。地下室への扉の前まで来たので、影を操って、鍵穴に突っ込む。
「……こんな感じかな」
適当にガチャガチャとやると、鍵は開かなかった。なので、内側から鍵のつまみを掴もうとしたら、摘まみが無かった。
「はぁ? どうなってんの?」
せっかく格好よくピッキングしようとしたのに、全部空振りだ。なので、直接塞いでいるボルトを無理矢理押し込んで鍵を開ける。
『さすがです』
「でしょ」
ドヤ顔をするけど、多分、エアリーからしたら破壊した方が早いのにってなっていると思う。もうちょっとスムーズに出来るようにしたいな。ピッキングのスキルがあったら取ってみようかな。
ちゃんと開いているから、今はそこまで気にしないで中に入る。
「……何か嫌な感じ」
『そうですか?』
「うん。ピリピリする感じ。エアリーも警戒は解かないで」
『はい』
エアリーが全部倒してくれたはずだけど、何故だか気持ち悪い。身体中を虫が這い回っているかのような感覚だ。
警戒しながら階段を下っていく。折り返しになっているので、二階分しっかりと降りていった。地下室は、壁が石で出来ていて冷たい印象を受ける。それに、全体に仕切りの壁も無く大きく広い部屋になっていた。さらに地下に降りる階段は、今降りてきた階段の対角線上にある。
「ん? 血液?」
地下室の床に立った瞬間、嗅ぎ慣れた臭いが鼻を襲ってきた。血を飲み過ぎて、血液の臭いに敏感になっているのかもしれない。臭いの元を追っていくと、大きな台のところまで来た。その台は、地下一階の中央にあった。
「これ木製かな。血が染みこんでる。それに、この傷……」
『刃物によるものですね。それも、のこぎりのような刃かと思います』
「血が染みこんでいて、刃物での傷。しかものこぎり。人の解体?」
『動物の可能性もあり得ます。お姉様は、血の種類は嗅ぎ取れないのですか?』
「えっ……別に、血液ソムリエじゃないからなぁ。さすがに、人か動物かの違いとかは分からないかも」
念のため、台に鼻を近づけて、臭いを嗅いでみる。普段のような血液の臭いがするだけで、どの種類かは分からない。
「ソムリエを目指すか……」
『こういう場でしか役に立たないと思いますが……』
「……やめるか」
馬鹿みたいな話はそこまでにして、台に付いている引き出しを開ける。すると、そこに血瓶が入っていた。
「おっ、血だ。古の血瓶か」
せっかくの血瓶なので、早速飲んでみる。
『あ……』
「うぷっ……」
血瓶だからって、何も考えずに飲んだけど、思いっきり腐っていた。ゾンビから飲んだものと同じ臭いと味だ。思いっきり吐きそうになる。それを堪えて、血を飲み干す。
多分、エアリーが声を出していたのは、腐っているという事に気付いたからだと思う。名前から考えたら、普通に想定出来る事ではあるし。私が何も考えていなかったのが悪い。
「最悪……痛っ!!」
『お姉様!』
急に頭痛が襲ってきた。エアリーが声を掛けてくれている事は分かるけど、最初の私を呼ぶ声以外は聞こえない。さすがに、年代物の血液を飲むのはやり過ぎたかも。血瓶=飲み物という認識でいたから仕方ないけど。
頭痛に耐えていると、目の前がぐにゃりと歪んでいくのが分かった。もしかしたら、これで過去の映像が見えるようになるのかな。何にしても、頭痛と視界の歪みが治るまでは分からない。
「特に何もない?」
『そうですね。家具などもありません。ですが、少し凹んでいる場所が複数あります』
「凹んでる? 床の事?」
『はい』
こればかりは、私の影でも分からない。どこからに入り込むならまだしも、ほんの少しの凹みを感知出来る程繊細な感覚を持つ影じゃないから。
「教えて」
『こちらです』
エアリーに案内して貰って、凹んでいるという場所を調べる。手で触ってどんな形で凹んでいるのか確かめる。
「何だろう? 長方形か……棚かな?」
『ここに日が差していれば、日焼けなどもあったでしょうが』
エアリーの言葉からも分かる通り、ここには窓が無い。なので、日焼けとは無縁の場所になっている。だから、手掛かりは、この僅かな凹みだけだ。
「【心眼開放】でも何も見えない。屋根裏は、重要な場所じゃなかったって感じかな」
『それは分かりませんが、この凹みの大きさは、全てほぼ同じです』
「えっ?」
もう一度凹みを触って確認してみる。すると、エアリーの言う通り、どの凹みも同じような大きさをしていた。恐らくは、全て同じものが置かれていたのだと思う。
「全部で六つ。一体何だったんだろう?」
情報が少なすぎて、まだ予測も出来ない。この大きさなら、大きめの棚という線が大きいとは思うけど。
「う~ん……あっ、棺桶?」
吸血鬼と言えば、棺桶で睡眠をとるというのが定番になっている。吸血鬼に関連しそうな情報が出て来ているところから、そこが思い付いた。まぁ、私は普通にベッドが良いけど。
「あっ、いや、下にベッドがあったか」
私自身がベッドの方が良いと思ったところから、この屋敷にもベッドがある事を思い出した。そうなると、睡眠目的の棺桶という線は薄くなる。
『もし仮に吸血鬼という事を隠していたという可能性は如何でしょう?』
「あぁ……う~ん……それはないかも? 吸血鬼っぽい絵と血液と人の購入から考えて、吸血鬼という情報は出回っていたと思う。住人も同じ絵を持っていたしね」
『では、棺桶という線はないという事でしょうか』
「そこは分からないかな。棺桶の本来の利用方法で使っていたのかもしれないし」
『趣味が悪いですね』
「だね」
もう一度屋根裏全体を確認してから、屋根裏を後にする。次に調べるのは、地下室だ。正直、ここが一番の本命だと思っている。
「てか、結局鍵を見つける事は出来なかったなぁ」
『壊しますか?』
いつでも出来ると言わんばかりに、エアリーがそう言う。まぁ、エアリーなら簡単に出来るとは思う。
「いや、影で開けてみるよ」
『分かりました』
なるべくなら穏便に進めたいので、出来る限りのことはする。地下室への扉の前まで来たので、影を操って、鍵穴に突っ込む。
「……こんな感じかな」
適当にガチャガチャとやると、鍵は開かなかった。なので、内側から鍵のつまみを掴もうとしたら、摘まみが無かった。
「はぁ? どうなってんの?」
せっかく格好よくピッキングしようとしたのに、全部空振りだ。なので、直接塞いでいるボルトを無理矢理押し込んで鍵を開ける。
『さすがです』
「でしょ」
ドヤ顔をするけど、多分、エアリーからしたら破壊した方が早いのにってなっていると思う。もうちょっとスムーズに出来るようにしたいな。ピッキングのスキルがあったら取ってみようかな。
ちゃんと開いているから、今はそこまで気にしないで中に入る。
「……何か嫌な感じ」
『そうですか?』
「うん。ピリピリする感じ。エアリーも警戒は解かないで」
『はい』
エアリーが全部倒してくれたはずだけど、何故だか気持ち悪い。身体中を虫が這い回っているかのような感覚だ。
警戒しながら階段を下っていく。折り返しになっているので、二階分しっかりと降りていった。地下室は、壁が石で出来ていて冷たい印象を受ける。それに、全体に仕切りの壁も無く大きく広い部屋になっていた。さらに地下に降りる階段は、今降りてきた階段の対角線上にある。
「ん? 血液?」
地下室の床に立った瞬間、嗅ぎ慣れた臭いが鼻を襲ってきた。血を飲み過ぎて、血液の臭いに敏感になっているのかもしれない。臭いの元を追っていくと、大きな台のところまで来た。その台は、地下一階の中央にあった。
「これ木製かな。血が染みこんでる。それに、この傷……」
『刃物によるものですね。それも、のこぎりのような刃かと思います』
「血が染みこんでいて、刃物での傷。しかものこぎり。人の解体?」
『動物の可能性もあり得ます。お姉様は、血の種類は嗅ぎ取れないのですか?』
「えっ……別に、血液ソムリエじゃないからなぁ。さすがに、人か動物かの違いとかは分からないかも」
念のため、台に鼻を近づけて、臭いを嗅いでみる。普段のような血液の臭いがするだけで、どの種類かは分からない。
「ソムリエを目指すか……」
『こういう場でしか役に立たないと思いますが……』
「……やめるか」
馬鹿みたいな話はそこまでにして、台に付いている引き出しを開ける。すると、そこに血瓶が入っていた。
「おっ、血だ。古の血瓶か」
せっかくの血瓶なので、早速飲んでみる。
『あ……』
「うぷっ……」
血瓶だからって、何も考えずに飲んだけど、思いっきり腐っていた。ゾンビから飲んだものと同じ臭いと味だ。思いっきり吐きそうになる。それを堪えて、血を飲み干す。
多分、エアリーが声を出していたのは、腐っているという事に気付いたからだと思う。名前から考えたら、普通に想定出来る事ではあるし。私が何も考えていなかったのが悪い。
「最悪……痛っ!!」
『お姉様!』
急に頭痛が襲ってきた。エアリーが声を掛けてくれている事は分かるけど、最初の私を呼ぶ声以外は聞こえない。さすがに、年代物の血液を飲むのはやり過ぎたかも。血瓶=飲み物という認識でいたから仕方ないけど。
頭痛に耐えていると、目の前がぐにゃりと歪んでいくのが分かった。もしかしたら、これで過去の映像が見えるようになるのかな。何にしても、頭痛と視界の歪みが治るまでは分からない。
21
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい
工藤 流優空
SF
社畜?社会人4年目に突入する紗蘭は、合計10連勤達成中のある日、VRMMOの世界にダイブする。
ゲームの世界でくらいは、ほのぼのライフをエンジョイしたいと願った彼女。
女神様の前でステータス決定している最中に
「言霊の力が活かせるジョブがいい」
とお願いした。すると彼女には「言霊エンチャンター」という謎のジョブが!?
彼女の行く末は、夢見たほのぼのライフか、それとも……。
これは、現代とVRMMOの世界を行き来するとある社畜?の物語。
(当分、毎日21時10分更新予定。基本ほのぼの日常しかありません。ダラダラ日常が過ぎていく、そんな感じの小説がお好きな方にぜひ。戦闘その他血沸き肉躍るファンタジーお求めの方にはおそらく合わないかも)
Recreation World ~とある男が〇〇になるまでの軌跡〜
虚妄公
SF
新月流当主の息子である龍谷真一は新月流の当主になるため日々の修練に励んでいた。
新月流の当主になれるのは当代最強の者のみ。
新月流は超実戦派の武術集団である。
その中で、齢16歳の真一は同年代の門下生の中では他の追随を許さぬほどの強さを誇っていたが現在在籍している師範8人のうち1人を除いて誰にも勝つことができず新月流内の順位は8位であった。
新月流では18歳で成人の儀があり、そこで初めて実戦経験を経て一人前になるのである。
そこで真一は師範に勝てないのは実戦経験が乏しいからだと考え、命を削るような戦いを求めていた。
そんなときに同じ門下生の凛にVRMMORPG『Recreation World』通称リクルドを勧められその世界に入っていくのである。
だがそのゲームはただのゲームではなく3人の天才によるある思惑が絡んでいた。
そして真一は気付かぬままに戻ることができぬ歯車に巻き込まれていくのである・・・
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも先行投稿しております。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる