上 下
269 / 447
楽しく賑わう吸血少女

黒いモノの考察

しおりを挟む
 夜にログインした私は、一旦ギルドエリアに戻った。すると、すぐにレイン、エアリー、ライがやって来た。

『お姉さん! 大丈夫だったの!?』
『こちらは無事です。一体何があったのですか?』
『……』じー

 レインは心配だったという感じだった。エアリーは自分達の無事を伝えつつ何があったのか把握しようとしている。ライもレインと同じように心配そうな目でジッと見てきていた。

「ごめんね。いきなり送還しちゃって。私は、何とか逃げ切れたから大丈夫。あの黒いのが何か分からないけど、触れた瞬間から取り込まれちゃうみたい。私も右脚を持っていかれたし、ゾンビ達も即死してた。だから、皆と一緒に下水道の探索は出来ないかな。それで、一応確認しておきたいんだけど、皆は何か気付いた事ある?」

 精霊という目線から、何か分かった事がないのか確認する。もしかしたら、そういう何かがあるかもしれないからね。

『分からない。嫌なものって感じはしたよ』
『風による感知が上手く出来なかった事から、風はすり抜けていたと考えられます。ライの雷が通用していたので、もう少し魔力を込めていれば干渉出来た可能性はあります』
『……』ふりふり

 レインとライは、あまり分析出来ていなかったみたいだけど、エアリーの方は色々と分析してくれていた。ここら辺は、性格が出て来ている感じがする。

「風は取り込まれたわけじゃなくて、すり抜けた……取り込まれるものは、有機物とか? あれ? そもそも有機物って何だっけ?」
「有機物は、炭素を中心にしている物質だね」
「ん? アク姉?」

 まだ授業でやっていないところなので、どういうものだったか悩んでいたら、いつの間にかやって来たアク姉が教えてくれた。そして、当たり前のように後ろから抱きしめられる。

「何で有機物? 関係するスキルでも手に入れたの?」
「ううん。城下町エリアの下水道の話」
「下水道? ああ、あのモンスターみたいなのか。あれって、ダメージを与えられないんだよね。私達も急いで逃げたけど、えげつない罠だよね」
「えっ、アク姉、落ちたの? 飛べないじゃん」

 私は【重力操作】や翼系スキルがあるから、空を飛んで逃げる事が出来るけど、アク姉達は、そういうスキルを持っていない。だから、あの穴に落ちたらひとたまりもないはず。

「いや、せっかく無限湧きだから、レベル上げしようって話になって、あの下水道でレベル上げしてたんだよね。態々鼻栓して、アカリちゃんから消臭剤も貰ってね。そうしたら、下から上がってきたの。あれには驚いた……」

 あれは、私達があの場所に来た時から上に上がってきていたって感じかな。アク姉もモンスターみたいなのって言っているから、そこから疑っているみたい。ただ一つだけ疑問点がる。それは、【索敵】があの黒いものに反応したかもしれないという事。正直、本当に黒いものに【索敵】が働いていたかは分からない。でも、下に反応があったのは間違いなかった。

「【索敵】に反応した?」
「したした。でも、反応が小さいんだよね」
「そういえば……穴を塞ぐような大きさだから、反応的にはもっと大きくないとおかしいのか」
「あるいは、それがコアとかだったりしてね」

 確かに、コアだけ反応していたという可能性はなくはない。

「そういえば、あれは、どこまで追ってきたの?」
「トンネルに入ってきたけど、マンホールから地上に上がる梯子には近づいてこなかったかな。そこの手前までが移動範囲みたいだね。ゲームとして考えれば、あの黒いのを突破して下に行ったら、何かしらあると思うんだけどねぇ……アカリちゃんが作った薬を適当に投げ入れたり、魔法を撃ち続けたりしたけど、動きを遅くする程度なんだよね」

 アク姉達の魔法などでも足止めくらいは出来たらしい。精霊という条件がなくなったので、私でも同じように足止めが出来そうという事は分かった。

「こっちもライの雷撃とかで怯んでた。でも、ダメージは無かった。でも、レインの水は駄目だった。飲み込まれていったから。後、エアリーの風もすり抜けたよ」
「水と風……こっちの魔法は通じたから、魔力の大小かな。レインちゃん、水には、どのくらい魔力を通してた?」
『周囲から集める方が楽だから、あまり魔力は籠もってないよ』
「なら、魔力での攻撃が一番効くのかもね。【蒼天】は?」
「えっ!? さすがに、あの狭い場所で撃つ程馬鹿じゃないんだけど。下手したら、崩落もあり得るし」

 外で地面に撃つならまだしも、あの狭い下水道で【蒼天】を撃つのは危険な気がする。通路が埋まる程の幅で【蒼天】を撃てば、あの黒いのをどうにか出来る可能性はあるかもしれないけど、それは下水道の崩落を引き起こす可能性も出て来る事になる。
 無意識にそこら辺を考えていたから、【蒼天】を使おうという考え自体を持っていなかった。

「あ~……まぁ、このゲームなら一時的に崩落するとかはあり得るか。でも、やってみたら好転するかもよ」

 アク姉の方は、【蒼天】使用派だった。でも、そこまで意外じゃない。使えるものを有効活用するという考えがアク姉は強いから。

「えぇ~……まぁ、やるだけ得ではあるけど……」
「そもそもあそこのエリアって、収穫が少ない代わりに、モンスターの数が他のエリアよりも遙かに多くて人気ないんだよね」
「やっぱり対応出来なくなってくるから?」

 ゾンビの動く速度は遅くても、その数は、下手なゾンビゲームよりも遙かに多い。群がってくるゾンビに対応していけば、段々と手が回らなくなってくる。雪兎と似たようなものだ。

「ん~、まぁ、それもあるけど、単純に面倒くさいからかな。同じような理由で雪原エリアの雪兎も嫌厭されてるし」
「レベル上げに良いと思うけどなぁ」

 雪兎の時に強く感じたけど、リンクモンスターや大量出現のモンスターは、スキルのレベル上げに打って付けだ。ソロという条件付きだけど、特に近接戦用のスキルのレベル上げに使える。

「対応が出来ればね。背後からの攻撃とか色々と警戒するものが多くなるから、普通は嫌がるものだしね」
「ふ~ん、まぁ、アク姉みたいな魔法職からしたら、嫌な相手になるのか」
「サツキも嫌がってたしね。大振りで倒せるけど、絶え間なく襲い掛かられると、攻撃が間に合わなくなるからってさ」

 サツキさんは大剣を使っているけど、大振りでまとめて倒せるという利点はあるけど、その分攻撃速度と手数が少なくなる。攻撃直後の隙に集まってこられると、攻撃の間合いの内側に入られる事になってしまう。ここを考えれば、サツキさんが嫌がる理由も頷ける。

「あ~、なるほどね。私は双剣か短剣、短刀が基本で攻撃の手数が多いからね。そういうスキル持ちなら良いけど、それ以外だと嫌だってなる感じだね」
「そういう事。私達のパーティーは、カティがサツキの隙を埋められるし、メイティの魔法で防御も出来る。最後に私とアメスで他の隙を埋めれば戦えるから、良いレベル上げになるけどね」
「魔法スキルは、レベルも上がりにくいし、無限湧きは助かるよね」
「まぁね。あっ、もう時間だから行くね。メイティ達に怒られちゃう」
「うん。またね」
「またね」

 アク姉は、私の頭を撫でてからログアウトした。ちょうどログインしてきたと思っていたけど、今までログインしたままだったらしい。

「さてと、いい話も聞けたところで、私も城下町の探索に戻ろっと。エアリー、また手伝ってね」
『はい。お姉様』

 エアリーと一緒に廃城下町エリアの探索に戻る。昼程時間を取れないけど、探索は丁寧に進めていくつもりだ。【心眼開放】で見つけられるものが、クエストのキーになる可能性が高いからだ。
 何か見つかれば良いけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

吸血少女 設定資料集(おまけ付き)

月輪林檎
SF
 『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。  さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。  基本的に不定期更新です。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~

滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。 島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

処理中です...