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楽しく賑わう吸血少女

天聖教施設の探索

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 まずは、一階から調べて行く。一階部分は、十人くらい座れそうなくらい大きい椅子が沢山並んでいて、ただ祈るための場所みたいだ。壁などは、この街に来るまでの洞窟の壁と同じだった。やっぱり、これはくり抜いて作られた建物みたいだ。
 正面の奥には、天使の像が立っている。羽の数が六枚もある。何か、羽の数で天使の種類があった気がするけど、そこまで天使に精通しているわけじゃないから分からない。
 天聖教は、天使を信仰する宗教なのかな。あまり深く訊きすぎると、入信させられるかもって思って、宗教の内容については訊かなかった。でも、ちょっと訊かなさすぎたかな。何がどういう意味を持つのか分からない。

「勝手に推測していくかな」

 ステンドグラスみたいなのはない。こういう点は大聖堂とは違うみたい。階段は左右に二つずつ。ここから上がって二階に移動出来るみたい。二階は、一部吹き抜けになっていて、一階からでも二階の天井が見える。一階に、【霊峰霊視】で発見出来るものはなかったので、二階に上がる。
 二階には、一部ステンドグラスが置かれていた。それは、天使のステンドグラスだという事だけ分かる。それが、何を意味しているかは分からない。

「大聖堂で【天使】を手に入れられた。あそこのステンドグラスは、何かの物語みたいだった。そして、ここでは天使のステンドグラス。大聖堂の方のステンドグラスがよく分からないけど、天使を信仰しているのは間違いなさそう。お爺さんの前で羽を生やしたら、何かヤバそうだなぁ」

 下手すると、私が信仰の対象になりかねない。それはそれで、新しいクエストのきっかけになるかもしれないけど、もっと最悪な事態も予測出来る。それは、私が天使を騙る悪人とされる事。こういうところは、下手に触れない方が良い。

「二階も何もなし。三階は……普通に階段で上がれそう」

 三階も二階へと上がる階段の続きで上がれた。二回程折り返して三階に着く。三階は、壁で仕切られた作りをしていて、一階二階とは違う雰囲気がある。

「ここは何だろう? 寝泊まりする場所かな?」

 間隔を空けて複数の扉が設置されている。その扉の一つを開くと、中にベッドとタンスとサイドテーブルが置かれていた。本当に寝泊まりするだけの場所みたいだ。

「全部で……百くらいあるかな。いざって時に人を助けられるようにしているのかな」

 使用した形跡がないので、この全ての部屋が使われているわけじゃない。だから、貸すための部屋という風に考えられる。念のため、全ての部屋を確認していく。部屋のどこかに【霊峰霊視】に引っ掛かる何かがあるかもしれないからだ。まぁ、結局何もなかったのだけど。

「次は、四階か。同じ階段で上がれるのは、ここまでだったから、この上には、別の方法で上るはず」

 部屋の方を調べていて、まだ三階の全体を調べられてはいない。取り敢えず、中央付近には、上り階段はなかった。だから、端っこの方。壁際を調べて行く。すると、一階で天使の像があった奥の方に小さな階段があった。これまでは、四人くらいで横に並べそうな広い階段だったけど、ここは一人でした上れなさそうだった。
 そこから四階に上ると、今度は美術館のような場所に出た。色々な絵画が並んでいる。そのどれもが天使の絵だった。

「いや、天使か?」

 何だか天使っぽくない絵もあった。人ではない異形のようなものだった。でも、羽の感じは天使だった。

「えっ、もしかして、【天使】の最終形態って、これ?」

 さすがに、私自身の姿が変わる事はないと思いたい。
 そのまま天使の美術館を歩いていると、また別の階段を見つけた。五階に上がる事は出来る。だから、美術館全体を調べる。

「ここも靄無しか。何かの情報が欲しいなぁ」

 四階を調べ終えて、五階へと上がる。五階も四階と同じく絵画が飾られていた。でも、こっちは、天使では無い。

「悪魔?」

 天使のような羽では無く、悪魔のような羽が生えた化物が描かれている。人型の絵もあれば、本当に異形の絵もあった。

「う~ん……まぁ、【悪魔】ならこんな感じか」

 天使と悪魔のイメージの違いから、こっちではすんなりと納得出来てしまった。
 【悪魔】の方の進化は何も分かっていない。【天使】の方は、光の因子に関しての本から知る事が出来ている。でも、【大悪魔】から先のスキルは、何も分かっていない。そこから【鬼】に繋がるとは思えない。

「せめて、絵画の名前が書かれていれば良かったんだけどなぁ。何も書かれてないのは、そもそも美術館として開放しているわけじゃないからかな。でも、問題は、何で天使と悪魔の絵画を、ここに置いているのか。天聖教は、天使と悪魔の二つを信仰している? でも、悪魔の方は何で……いや、反面教師的なやつなのかな。欲望に正直になるなみたいな。それなら、理解出来るけど、悪魔の紹介的な感じもする。う~ん……いや、それでも態々悪魔の絵画を置くのかな? この場所が穢れるみたいな発想になりそうだけど……」

 ここら辺の目的もよく分からない。ただ、一つだけ思ってしまったのは、これって邪聖教に関係するような何かなのではという事だった。でも、天聖教の本部っぽい場所に、そんなものを置くのかっていう考えに至って、すぐに自分の中で否定した。

「次は、六階か」

 次の階段もすぐに見つかる。結局、五階にも靄はなかった。ここまででかい建物だし、天聖教に関係している場所だから、靄で何かしらの情報が手に入ると思っていたけど、考えが甘かったかな。
 そんな事を思いつつ、六階に上がると、今度は全く何もなかった。本当に何も無いただの広間的な場所だ。贅沢な物置とかになりそうだけど、そういう使い方もしていないらしい。

「……雑魚寝用の広間?」

 何となく出すことが出来た答えは、それくらいだった。この広間にも靄はない。そして、階段もない。ただ一番奥に扉はあった。何の変哲もない扉だ。
 鍵も掛かっておらず、普通に中に入る事が出来る。扉の奥は、円柱状の空間だった。外で見た塔の内部だと思う。

「さっきまで、この塔の中にも入られてなかったんだ」

 この円柱状の空間は、上下に繋がっている。螺旋階段で上と下に向かえる。ただ、壁は一方向にしかないから、下手すると真っ逆さまに落ちてしまう。私は、空を飛べるから問題ないけど、普通の人からしたら、かなり危ない場所だと思う。

「さてと、どっちに向かうか……まぁ、さっきまでずっと上に向かっていたし、上に行こうかな」

 取り敢えず、上に向かう。しばらくの間、上り続ける。さっきまでの感覚だと、もう二階分くらい上っている。それでも、一向に出口は見えてこない。

「どこまで上れば良いんだろう?」

 そのままさらに二階分程上ると、ようやく最上階が見えてきた。螺旋階段をそのまま上っていくと、塔の中にある部屋の前まで着いた。そして、そこにはちょっと豪華な扉が付いていた。

「重要な部屋か何か? 開けて良いのかな……まぁ、自由に見て良いって言っていたし大丈夫か」

 扉のノブに触れると、一瞬私の身体が白く光ったような気がした。気のせいだと思うけど、少し用心をしながら扉を開く。すると、真っ白い空間に出た。

「……何だろう? 気持ち悪いくらい白い」

 その真っ白い空間の中央に、青白い靄が浮かんでいる。その靄を固めると、見覚えのある羽根になった。

「守護天使の羽根!? 本来は、ここで手に入れるものだったんだ。でも、なんでここ? 真っ白なだけで、何も無い部屋なのに。せめて、ここが何か分かる……いや、守護天使の羽根が手に入ったって事は、【天使】関係……でも、【天使】を持っていないと開けない扉の先に守護天使の羽根は、意味が分からない。恐らく、【聖王】が関係してる。じゃあ、何をする場所なんだろう? 祈り?」

 取り敢えず、目を閉じて、膝を突いて祈りを捧げてみる。どういう形式のものか分からないから、何となく映画とかアニメとかで見たような祈りの仕方をしてみる。
 すると、身体が温かいものに包まれるような感覚がした。そして、急に身体に風が吹き付ける。窓の無い部屋にいたので、風が来る事はおかしい。そう思って目を開けると、そこは真っ白な空間ではなく、仄かに金色に光る雲の上だった。
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