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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

効率の良い殲滅

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 アカリと一緒に次々にモンスターを屠っていくと、すぐにレインとソイルが加わった。二人でジャイアントサンドマンとサンドワームを全滅してくれたみたい。スノウとエアリーの方は、まだ時間が掛かりそうだ。
 声が出る事を確認して、レインとソイルに指示を出す。

「レインは、上の戦いに加わって! ソイルは、コーラルタートルをさっきと同じように封じて!」
『うん!』
『うん……』

 レインには、スノウとエアリーの援護に回って貰う。レインは、スノウの力をサポート出来る。さらに、レイン単体でも、私よりも戦力になるはずだ。ソイルの援護は、コーラルタートルに集中してもらう。それで、アク姉達がコーラルタートルを倒す速度が上がる。地上にいるコーラルタートルには、地面を自由に操れるソイルは天敵そのものだろう。大地魔法も地面を割れるけど、コーラルタートルを落とせる程ではない。私達みたいな小さい相手にとっては、危ない魔法だけど、コーラルタートル程の巨体になればそうともいかない。だから、ソイルを向かわせた。
 その間に、他のモンスターを全滅させたい。アカリの背中に付いて声を掛ける。

「アカリ、何か良い方法ない?」
「どうだろう? ヴェノムアナコンダなら口の中に爆薬を突っ込んだりして倒せるけど……後は、武器に毒薬を掛けて、猛毒状態にさせるとか色々あるけど、今の状態がそれだから、即時効果見込めないよ。私が麻痺状態にして、ハクちゃんが倒すとかにする?」
「……麻痺か。それは有りかも。でも、麻痺させるのは私の役かな。それが出来るだけの力はあるから。アカリは、急所攻撃と猛毒攻撃に集中して」

 アカリに話しつつモンスターを攻撃しながら、スキルの装備を入れ替える。【水氷武装】から【放電】に入れ替える。そして、【電光石火】で移動してモンスターを斬りつけながら、【疾風迅雷】で雷を溜める。その雷を【雷電武装】で身体全身に纏わせる。限界まで【雷電武装】を纏わせ続けて、モンスター達の中心で【放電】を使う。その【放電】に【雷電武装】で纏わせた雷を乗せる。周囲のモンスター達が次々に感電していく。モンスター達が麻痺状態になる。アカリが一体一体攻撃で麻痺させるよりも、こうして雷を出す方が多くのモンスターを巻き込める。
 こうして麻痺状態になったモンスター達をアカリと二人で倒していく。麻痺になっている時間は、そこまで長くない。ここからは速度が重要になる。アカリは、的確にクリティカルダメージを出していき、どんどんと仕留めていく。私も【竜王息吹】を使いつつ、【暴風武装】【火炎武装】【影武装】を纏わせた双血剣で、どんどんと倒していく。でも、この攻撃で、半数近くを仕留める事が出来た。

「まだ増えてる……」
「だから、同じ事を繰り返すよ」
「それなら、私も力を貸しましょう」

 私達の元にトモエさんがやって来た。アク姉達を襲うモンスターが、私達にヘイト向けて手が空いたからかな。でも、トモエさんというタンクが来たのは、こっちにとって好都合だった。
 タンクであるトモエさんには、モンスターを引きつけるスキルがある。そして、私がさっきやった事には、モンスターが集まっている事が条件に入る。さっきはモンスターの数が多いから、成り立つ方法だった。だから、私が動き回ってモンスター達を一箇所に集めるつもりだったのだけど、トモエさんが加わればより効率的になるのだ。

「お願いします」
「任されました」

 トモエさんが加わり、モンスター達がトモエさんに向かっていく中、私は【電光石火】で【疾風迅雷】を溜める。そして、トモエさんの元で【放電】を使う。このイベント中は、トモエさんもパーティーメンバーの一人として数えられる。だから、トモエさんに【放電】のダメージはない。でも、念のため、【雷電武装】でトモエさんを避けて放つ。
 そうして麻痺状態になったモンスター達を同じように倒していく。トモエさんも加わった事で、モンスターの殲滅速度はほんの少しだけ上がった。さらに、色々と模索して、蒼天竜にも使った【暴風武装】による風の刃や【影武装】での影の攻撃も合わせて、私自身も殲滅速度を少しだけ上げていった。アカリもどんどんと攻撃のコツを掴んでいるのか、倒す速度が上がっていた。
 これをさらに二回程繰り返して、新たに現れるモンスターはいなくなった。レイン、スノウ、エアリーも空のモンスターを全滅させた。おかげで、残りはコーラルタートルのみ。それも残り一体だ。新しいコーラルタートルは現れていない。恐らく、これが最後のコーラルタートルだ。それも私が視線を向けてから、少しして倒された。
 これで十波は終わりだ。もし、このイベントが十波で終わりなら、イベントはクリアだ。でも、もしこれが最後じゃないとしたら、今以上の敵が現れるという事になる。

「クリアであって欲しいけど……」

 私の願いは、無残にも打ち砕かれた。
 奥から黒い影のような人が現れたからだ。形が定まっていないから、人型という事しか分からない。その人型のモンスターは、ドッペルゲンガーという名前だった。名前から普通に考えれば、この場にいる誰かの写しが現れたと考えられる。ただ、形が定まっていないという点から、まだ誰かが確定していない事が分かる。

「アク姉」
「順当に考えれば、私かハクちゃんのドッペルゲンガーかな。テイムモンスターが、対象になるとは考えにくいし。何はともあれ、先手を取るのが一番だね。カティ」
「分かりましたわ。【トルネードアロー】」

 風の後押しを受けた魔力の矢が、ドッペルゲンガーに向かって飛ぶ。ドッペルゲンガーは、武器を振って魔力の矢を弾いた。そして、その武器は刀だった。

「ハクちゃんか……」
「違う」

 血の気が引くような感覚がした。刀を使う人は、私を抜いて二人。ソルさんと師匠だ。そして、あの相手の動きは師匠そのものだった。

「あのモンスター、私達を模倣するんじゃない。私達の中で思い描いている最強の相手を模倣してるみたい。あれは……師匠だ」
「ハクちゃんの刀の先生だっけ? どのくらい強い?」
「……本気だったら、ソルさん以上。フレ姉よりも強い。でも、集団で挑んだ場合は分からない。魔法も使った事ないから。魔法にどのくらい反応するか分からない。でも、私の【蒼天】を斬れば良いって言っていたくらいだから、魔法も斬られると思う」
「……何も知らない私が言うのもあれだけど、化物?」
「似たようなものです。私が前線で戦います。多分、私が一番戦えます。師匠の稽古を何度も受けていますから……」

 言葉が尻すぼみになっていく。その理由は、ドッペルゲンガーの背後から大量のモンスターが出て来たからだ。このイベントの名前にもなっている殲滅という部分から、大量のモンスターが出るという事は予測出来る。でも、まさかドッペルゲンガーと一緒にも出るとは思わなかった。
 そもそも運営は、ここに師匠が出る事を想定していたのだろうか。もし仮に、ドッペルゲンガーが師匠と同じ強さを持つのだとしたら、ほぼ勝つことは不可能だ。でも、ドッペルゲンガーに強さの上限があるのだとしたら。師匠と同等の強さを持たない可能性があるのだとしたら。勝つ可能性は十分にある。

「敵に蒼天竜はいない。さっきも言った通り、私がドッペルゲンガーと戦うで良いよね?」
「うん。寧ろ、相手の動きをある程度知っているハクちゃんが担当してくれる方が助かるよ」
「私が援護するわ。アクアの攻撃は大雑把だし、精霊の子達には殲滅の方を手伝って貰った方が良いだろうから」
「お願いします」

 【電光石火】でドッペルゲンガーに突っ込む。同時に、メイティさんの演奏が聞こえてくる。ドッペルゲンガーと私達の戦闘が始まる。
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