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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女
お盆休みの衝撃
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翌日。お昼前に光が家に来た。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
リビングまで来た光は、周りを見回してから私を見た。
「おばさんは?」
「ん? ああ、お母さんはお父さんと旅行に行った。かー姉と翼さんが来るから大丈夫だろうってさ。後、男性がお父さんしかいなくなるから、お父さんが可哀想だからだって」
翼さんや光が気にするとは思えないけど、お父さんの方が気にするからというお母さんの配慮だ。もしかしたら、それ以上に増える可能性もあるしね。
「そうなんだ。これ、お母さんから」
「ありがとう」
光のお母さんから手土産のお菓子を貰った。光が世話になるからとかかな。特に気にしないで良いのだけど、いつものことだから受け取っておく。
「水波さんと火蓮さんは?」
「まだ。でも、そろそろじゃない。お昼近くだし。ご飯は、お母さんがお寿司頼んでくれたから。それまではゆっくりしてよ」
「うん。分かった」
二人でリビングにあるソファに座り、テレビを見て過ごす。三十分くらいした頃、玄関から音が聞こえてきた。
「ん、帰ってきた」
このままリビングで待っていても良かったけど、久しぶりに会うのでお出迎えはしておく事にした。玄関に顔を出すと、そこにいたのは、かー姉と翼さんだった。みず姉の姿はない。
「おかえり」
「おう、ただいま」
「お邪魔します。光はいるみたいね」
「はい。みず姉は?」
「知らん。まぁ、そろそろ来るだろう。私と翼は、荷物を置いてから少し出て来る」
「ん~」
「何か欲しいものはあるか? 車で行くから買ってくるぞ」
「う~ん……お昼はお寿司だから、和菓子」
「おう」
かー姉と翼さんは、スーツケースを置いて、また出掛けていった。二人を見送った後、リビングに戻る。
「あれ? 一人?」
「うん。かー姉と翼さんは、お墓行った」
「あ~、先にこっちに来たんだ」
「荷物を置きに来たみたい。車で行ったから、何か欲しいものあるかってさ。何かある?」
「ううん。わたし、特にないから大丈夫」
かー姉と翼さんは、翼さんのご両親のお墓参りに行っていた。十年前に亡くなって、それから翼さんは一人きりになっている。お墓があるのがこっちだから、帰省のタイミングでお墓参りをしている。今日は、うちの車を使って行った。こればかりは、私や光が同行する事ではないので、大人しくお留守番だ。
「たっだいま~!!」
玄関からみず姉の声が響いてきた。でも、足音とか話し声が混じっているので、みず姉だけじゃない。すぐに廊下とリビングを繋ぐ扉が開いて、みず姉が出て来た。
「し~ろ~ちゃ~ん!!」
スーツケースを放って、みず姉が駆け寄ってくる。ソファ越しに思いっきり抱きしめられる。現実でのみず姉は、ゲームよりも重い。向こうでの私は、そこそこ攻撃力が高いから、そこが関係しているのかもしれない。
「あっ、光ちゃん、いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「あ~……久しぶりの白ちゃんだぁ~」
興奮しているみず姉を放っておいて、みず姉の後ろから来た他の人達を迎える。
「穂乃花さん達もゆっくりしていってください」
「うん。お邪魔します」
みず姉と一緒に来たのは、みず姉と同じパーティーを組んでいる皆だ。メイティさんが葉山穂乃花さん。サツキさんが金山芽依さん。アメスさんが椎名真紀さん。カトリーヌさんが伊藤心美さん。トモエさんが東雲愛巴さんだ。
「姉さんとつばちゃんは?」
「お墓参り」
「だから、車がなかったんだ。はっ! 今なら、お使いを頼める!」
みず姉は、私を抱きしめながら携帯を操作していく。
「穂乃花達は、何か欲しいものある?」
「さすがに、そこまで図々しくないわよ。そもそもお菓子だって買ってきたでしょ」
「姉さんのお金で買い物が出来るんだよ? 頼まなきゃ損!」
「だから、火蓮さんに怒られてばかりなんじゃない?」
みず姉はウキウキで、かー姉にメールを送っていた。今の時代にメールでやり取りするのかと思ったけど、二人はそれがやりやすいとかなのかな。
「ん? メールで送った方が姉さんは見るでしょ?」
私の心を読んできたみず姉がそう答えた。SNSは無視されるかもって思ったらしい。かー姉に限ってそんな事はないと言いそうになったけど、みず姉からのものだとあり得るかもしれない。
「そういえば、穂乃花さん達は泊まるんですか?」
皆、スーツケースを持っているから、もしかしたらと思って一応訊いてみた。
「さすがに、実家に帰るよぉ」
心美さんが手を振りながらそう言った。ゲーム内だとお嬢様口調だから、ちょっと違和感を覚えるけど、こっちが普通の心美さんだ。
「一応惣菜も買ってきましたので、皆で食べましょう」
愛巴さんがビニールを食卓に置く。人数が人数だから、お寿司だけじゃ足りないかもって思って買ってきてくれたみたい。
「それと、こちらは手土産です」
「あっ、光、受け取ってくれる?」
「うん」
みず姉のせいで動けないので、光に受け取って貰う。光を経由して貰ったものの中身を見たら、緑茶の茶葉だった。高そうな缶が入っている。
「これは……翼さんに任せよう」
こういう時に頼れるのは、翼さんかかー姉だ。確実性が高いのは翼さんなので、必然的にそっちを頼る事になる。
「これも手土産ね」
真紀さんが大きめの紙袋を渡してくれた。そこに入っていたのは、お煎餅などのお茶請けだった。愛巴さんのものに合わせた形なのかな。
「みず姉、いい加減退いて」
「むっ……う~ん、仕方ない」
みず姉は納得して、スーツケースを持って二階に上がっていった。二階にみず姉の部屋があるから、そこに置くつもりなのだと思う。
「さすがに、お茶を出さない訳にはいかないか……」
私は、ジッと愛巴さんお茶を見てから、普通に作り置きの麦茶を出す事にした。
「お茶をどうぞ」
「ありがとうね」
穂乃花さんが頭を撫でてくれる。段々、そういう歳では無いのだけどと思わないでもないけど、まぁ、ちょっと嬉しいので受け入れる。
そのままお茶を飲んでいると、みず姉が上から戻ってきた。
「そういえば、姉さんとつばちゃんが付き合ってるのって知ってる?」
「うぇっ!?」
全く耳にした事のない事実に目を剥く。驚いているのが私と光だけなので、他の皆は知っていたらしい。
「穂乃花さん達は知ってたんですか?」
「うん。そこに火蓮さんの事になると口が軽いのがいるから」
そう言われて、穂乃花さんに指を向けられたみず姉が元気よくサムズアップした。またかー姉に怒られる要素が増えたけど、みず姉が楽しそうだから良いか。
「う~ん……何か納得出来るような出来ないような感じがする……」
「まぁ、私達にとって、つばちゃんは姉さんみたいな感じだったし、今更って感じだよね。私としては納得だけどね」
「何で、みず姉だけ知ってるの?」
「今日言うつもりだったんじゃない? 私は、もう付き合っちゃえってからかったから、もう付き合ってるってつばちゃんに言われた」
「てか、それって火蓮さん達から言って貰った方が良かったんじゃない?」
真紀さんの言葉に、みず姉は一瞬固まって、目を逸らした。多分、内心『やっべ!』って思っていそう。
「知らなかったふりで!」
「まぁ、良いけど」
正直、そこまで演技が出来るとは思えないけど、可能な限り頑張ってみる事にする。そのまましばらく談笑しながら待っていると、かー姉と翼さんが帰ってきた。
「待たせたな。早速始めるか」
「そうね。生菓子を買ってきたから、冷蔵庫借りるわよ」
「は~い」
皆で食事の準備をする。出前で取ったお寿司をローテーブルに並べて、みず姉達が買ってきた惣菜も並べる。テーブルいっぱいいっぱいになったけど、全部広げる事は出来た。
「そんじゃあ、食べるか。いただきます」
『いただきます』
お昼は過ぎちゃったけど、皆でご飯を食べ始める。久しぶりのお寿司はやっぱり美味しい。
「そういや、水波は、今、愛巴の家に住んでるんだったか?」
「え!?」
またもや初耳の話に声が出てしまう。
「うん。皆で、愛巴の家にルームシェアしてる」
「あんま迷惑になるような事すんなよ?」
「分かってるよ」
「えっ、何でルームシェアになったの? 一人暮らしだったじゃん」
これは訊いておきたい事だった。さっきのかー姉についての話もそうだけど、全然知らない事が多すぎる。
「愛巴は、大学近くの別荘に住んでたんだけど、一人だと広すぎるからって事で、ルームシェアの誘いを受けたの。まぁ、断る理由がないから、お母さんに許可貰ってルームシェアしてるよ」
「えぇ~、お母さん何も言ってなかったけど……」
「まぁ、特に言う事じゃないと思ったんじゃない? お母さん、そこズレてる事あるし」
「確かに……私知らない事多過ぎ……」
「他に何を知らなかったの?」
翼さんから訊かれる。ここで言葉に詰まってしまった。さっき知らないフリをするって話をしたばかりで、どうやって話せば良いのか分からないからだ。
「これは……こいつが喋ったな」
「!?」
即行でバレた。まぁ、どう考えても怪しかったしね。
「まぁ、こいつから聞いたなら、その通りだ。翼と交際してる。母さんは知ってるから、そこは気にすんな」
「そういう事。水波には伝えたけど、白と光には、今日伝えようと思っていたのよ。遅れてごめんね」
「いえ、それこそ気にしないでください。いきなりびっくりしたくらいですし。ね、光」
「うん」
「それなら助かるわ。そういえば、白は蒼天竜を倒したらしいわね」
話題が変わった。まぁ、このメンバーならゲームの話になるのは、自然な事だ。
「はい。倒しました」
「中々派手だったらしいな。気を付けろよ。最近は好意的なものが多いが、まだ妬みもあるからな」
「好意的なのもあるの?」
「主要な掲示板に書かれていたものだと、妬みはほぼないに等しかった。そういう奴が集まる板だと、妬みばかりだったけど」
芽依さんが答えてくれた。全く掲示板を見てなかったから、そういうのが集まる掲示板も知らない。まぁ、知らない方が良い事もあるよね。
「そうなんですね。そういえば、皆は、お盆休みにログインとかするんですか?」
帰省してきているわけだけど、別にログイン出来ないわけじゃないから、どうするのか気になった。
「私と翼は、ギルドの方で話し合いもあるから、少しログインするな」
「私は、暇だったらするくらいかな」
かー姉、翼さん、みず姉はログインするかもしれないみたい。するとしたら、家からからかな。
「私はするかな」
「私もするわね」
「私も」
「私もぉ」
「私もです」
穂乃花さん、真紀さん、芽依さん、心美さん、愛巴さんもログインするらしい。
「私もするよ」
光もだ。結局、皆ゲーム三昧って感じなのかな。
「まぁ、昼間は買い物でも行くか。白も引き籠もってばかりだろうしな」
「良いの?」
「せっかく帰ってきたんだ。妹と遊ばないでどうする」
「やった」
かー姉が買い物に連れて行ってくれる事になった。ゲームをしたい気持ちがないでもないけど、一緒に出掛けられるのは嬉しい。
今日は、そのままご飯を食べつつ談笑していった。お寿司がなくなったところで、翼さんが、愛巴さんが持ってきてくれたお茶を淹れてくれて、かー姉が買ってきてくれた和菓子と真紀さん達が買ってくれたお茶菓子を食べながら、やっぱり談笑した。
かー姉と翼さんが付き合っているという話だったけど、特に普段と何も変わった様子はなかった。特に距離が近い事もないし。寧ろ、光と私やみず姉と穂乃花さんの方が近かった。一番近かったのは、私とみず姉だけど。
その日は、夜まで皆で楽しんで、解散となった。外が暗いこともあって、皆はかー姉が車で送っていった。
残った私、みず姉、かー姉、翼さんは、それから夜中になるまで話していた。それだけ話す内容が積もっていたからなのかな。
その翌日は、その四人に光を加えて、服屋に買い物し行った。ちょっとだけ服を買って、ファミレスでご飯を食べて、ゲームセンターなどで遊んでから帰った。
更に、その翌日は、お母さん達が帰ってきて、家族+翼さんで食事に行った。何故かお父さんが張り切って高い店に行ったけど、かー姉達を祝福するためとかだったのかな。
まぁ、何はともあれ、ゲームに集中する余裕がないくらいには、色々と楽しかった。
その翌日は、皆が家に帰るので、いつも通りの日常が戻ってくる。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
リビングまで来た光は、周りを見回してから私を見た。
「おばさんは?」
「ん? ああ、お母さんはお父さんと旅行に行った。かー姉と翼さんが来るから大丈夫だろうってさ。後、男性がお父さんしかいなくなるから、お父さんが可哀想だからだって」
翼さんや光が気にするとは思えないけど、お父さんの方が気にするからというお母さんの配慮だ。もしかしたら、それ以上に増える可能性もあるしね。
「そうなんだ。これ、お母さんから」
「ありがとう」
光のお母さんから手土産のお菓子を貰った。光が世話になるからとかかな。特に気にしないで良いのだけど、いつものことだから受け取っておく。
「水波さんと火蓮さんは?」
「まだ。でも、そろそろじゃない。お昼近くだし。ご飯は、お母さんがお寿司頼んでくれたから。それまではゆっくりしてよ」
「うん。分かった」
二人でリビングにあるソファに座り、テレビを見て過ごす。三十分くらいした頃、玄関から音が聞こえてきた。
「ん、帰ってきた」
このままリビングで待っていても良かったけど、久しぶりに会うのでお出迎えはしておく事にした。玄関に顔を出すと、そこにいたのは、かー姉と翼さんだった。みず姉の姿はない。
「おかえり」
「おう、ただいま」
「お邪魔します。光はいるみたいね」
「はい。みず姉は?」
「知らん。まぁ、そろそろ来るだろう。私と翼は、荷物を置いてから少し出て来る」
「ん~」
「何か欲しいものはあるか? 車で行くから買ってくるぞ」
「う~ん……お昼はお寿司だから、和菓子」
「おう」
かー姉と翼さんは、スーツケースを置いて、また出掛けていった。二人を見送った後、リビングに戻る。
「あれ? 一人?」
「うん。かー姉と翼さんは、お墓行った」
「あ~、先にこっちに来たんだ」
「荷物を置きに来たみたい。車で行ったから、何か欲しいものあるかってさ。何かある?」
「ううん。わたし、特にないから大丈夫」
かー姉と翼さんは、翼さんのご両親のお墓参りに行っていた。十年前に亡くなって、それから翼さんは一人きりになっている。お墓があるのがこっちだから、帰省のタイミングでお墓参りをしている。今日は、うちの車を使って行った。こればかりは、私や光が同行する事ではないので、大人しくお留守番だ。
「たっだいま~!!」
玄関からみず姉の声が響いてきた。でも、足音とか話し声が混じっているので、みず姉だけじゃない。すぐに廊下とリビングを繋ぐ扉が開いて、みず姉が出て来た。
「し~ろ~ちゃ~ん!!」
スーツケースを放って、みず姉が駆け寄ってくる。ソファ越しに思いっきり抱きしめられる。現実でのみず姉は、ゲームよりも重い。向こうでの私は、そこそこ攻撃力が高いから、そこが関係しているのかもしれない。
「あっ、光ちゃん、いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「あ~……久しぶりの白ちゃんだぁ~」
興奮しているみず姉を放っておいて、みず姉の後ろから来た他の人達を迎える。
「穂乃花さん達もゆっくりしていってください」
「うん。お邪魔します」
みず姉と一緒に来たのは、みず姉と同じパーティーを組んでいる皆だ。メイティさんが葉山穂乃花さん。サツキさんが金山芽依さん。アメスさんが椎名真紀さん。カトリーヌさんが伊藤心美さん。トモエさんが東雲愛巴さんだ。
「姉さんとつばちゃんは?」
「お墓参り」
「だから、車がなかったんだ。はっ! 今なら、お使いを頼める!」
みず姉は、私を抱きしめながら携帯を操作していく。
「穂乃花達は、何か欲しいものある?」
「さすがに、そこまで図々しくないわよ。そもそもお菓子だって買ってきたでしょ」
「姉さんのお金で買い物が出来るんだよ? 頼まなきゃ損!」
「だから、火蓮さんに怒られてばかりなんじゃない?」
みず姉はウキウキで、かー姉にメールを送っていた。今の時代にメールでやり取りするのかと思ったけど、二人はそれがやりやすいとかなのかな。
「ん? メールで送った方が姉さんは見るでしょ?」
私の心を読んできたみず姉がそう答えた。SNSは無視されるかもって思ったらしい。かー姉に限ってそんな事はないと言いそうになったけど、みず姉からのものだとあり得るかもしれない。
「そういえば、穂乃花さん達は泊まるんですか?」
皆、スーツケースを持っているから、もしかしたらと思って一応訊いてみた。
「さすがに、実家に帰るよぉ」
心美さんが手を振りながらそう言った。ゲーム内だとお嬢様口調だから、ちょっと違和感を覚えるけど、こっちが普通の心美さんだ。
「一応惣菜も買ってきましたので、皆で食べましょう」
愛巴さんがビニールを食卓に置く。人数が人数だから、お寿司だけじゃ足りないかもって思って買ってきてくれたみたい。
「それと、こちらは手土産です」
「あっ、光、受け取ってくれる?」
「うん」
みず姉のせいで動けないので、光に受け取って貰う。光を経由して貰ったものの中身を見たら、緑茶の茶葉だった。高そうな缶が入っている。
「これは……翼さんに任せよう」
こういう時に頼れるのは、翼さんかかー姉だ。確実性が高いのは翼さんなので、必然的にそっちを頼る事になる。
「これも手土産ね」
真紀さんが大きめの紙袋を渡してくれた。そこに入っていたのは、お煎餅などのお茶請けだった。愛巴さんのものに合わせた形なのかな。
「みず姉、いい加減退いて」
「むっ……う~ん、仕方ない」
みず姉は納得して、スーツケースを持って二階に上がっていった。二階にみず姉の部屋があるから、そこに置くつもりなのだと思う。
「さすがに、お茶を出さない訳にはいかないか……」
私は、ジッと愛巴さんお茶を見てから、普通に作り置きの麦茶を出す事にした。
「お茶をどうぞ」
「ありがとうね」
穂乃花さんが頭を撫でてくれる。段々、そういう歳では無いのだけどと思わないでもないけど、まぁ、ちょっと嬉しいので受け入れる。
そのままお茶を飲んでいると、みず姉が上から戻ってきた。
「そういえば、姉さんとつばちゃんが付き合ってるのって知ってる?」
「うぇっ!?」
全く耳にした事のない事実に目を剥く。驚いているのが私と光だけなので、他の皆は知っていたらしい。
「穂乃花さん達は知ってたんですか?」
「うん。そこに火蓮さんの事になると口が軽いのがいるから」
そう言われて、穂乃花さんに指を向けられたみず姉が元気よくサムズアップした。またかー姉に怒られる要素が増えたけど、みず姉が楽しそうだから良いか。
「う~ん……何か納得出来るような出来ないような感じがする……」
「まぁ、私達にとって、つばちゃんは姉さんみたいな感じだったし、今更って感じだよね。私としては納得だけどね」
「何で、みず姉だけ知ってるの?」
「今日言うつもりだったんじゃない? 私は、もう付き合っちゃえってからかったから、もう付き合ってるってつばちゃんに言われた」
「てか、それって火蓮さん達から言って貰った方が良かったんじゃない?」
真紀さんの言葉に、みず姉は一瞬固まって、目を逸らした。多分、内心『やっべ!』って思っていそう。
「知らなかったふりで!」
「まぁ、良いけど」
正直、そこまで演技が出来るとは思えないけど、可能な限り頑張ってみる事にする。そのまましばらく談笑しながら待っていると、かー姉と翼さんが帰ってきた。
「待たせたな。早速始めるか」
「そうね。生菓子を買ってきたから、冷蔵庫借りるわよ」
「は~い」
皆で食事の準備をする。出前で取ったお寿司をローテーブルに並べて、みず姉達が買ってきた惣菜も並べる。テーブルいっぱいいっぱいになったけど、全部広げる事は出来た。
「そんじゃあ、食べるか。いただきます」
『いただきます』
お昼は過ぎちゃったけど、皆でご飯を食べ始める。久しぶりのお寿司はやっぱり美味しい。
「そういや、水波は、今、愛巴の家に住んでるんだったか?」
「え!?」
またもや初耳の話に声が出てしまう。
「うん。皆で、愛巴の家にルームシェアしてる」
「あんま迷惑になるような事すんなよ?」
「分かってるよ」
「えっ、何でルームシェアになったの? 一人暮らしだったじゃん」
これは訊いておきたい事だった。さっきのかー姉についての話もそうだけど、全然知らない事が多すぎる。
「愛巴は、大学近くの別荘に住んでたんだけど、一人だと広すぎるからって事で、ルームシェアの誘いを受けたの。まぁ、断る理由がないから、お母さんに許可貰ってルームシェアしてるよ」
「えぇ~、お母さん何も言ってなかったけど……」
「まぁ、特に言う事じゃないと思ったんじゃない? お母さん、そこズレてる事あるし」
「確かに……私知らない事多過ぎ……」
「他に何を知らなかったの?」
翼さんから訊かれる。ここで言葉に詰まってしまった。さっき知らないフリをするって話をしたばかりで、どうやって話せば良いのか分からないからだ。
「これは……こいつが喋ったな」
「!?」
即行でバレた。まぁ、どう考えても怪しかったしね。
「まぁ、こいつから聞いたなら、その通りだ。翼と交際してる。母さんは知ってるから、そこは気にすんな」
「そういう事。水波には伝えたけど、白と光には、今日伝えようと思っていたのよ。遅れてごめんね」
「いえ、それこそ気にしないでください。いきなりびっくりしたくらいですし。ね、光」
「うん」
「それなら助かるわ。そういえば、白は蒼天竜を倒したらしいわね」
話題が変わった。まぁ、このメンバーならゲームの話になるのは、自然な事だ。
「はい。倒しました」
「中々派手だったらしいな。気を付けろよ。最近は好意的なものが多いが、まだ妬みもあるからな」
「好意的なのもあるの?」
「主要な掲示板に書かれていたものだと、妬みはほぼないに等しかった。そういう奴が集まる板だと、妬みばかりだったけど」
芽依さんが答えてくれた。全く掲示板を見てなかったから、そういうのが集まる掲示板も知らない。まぁ、知らない方が良い事もあるよね。
「そうなんですね。そういえば、皆は、お盆休みにログインとかするんですか?」
帰省してきているわけだけど、別にログイン出来ないわけじゃないから、どうするのか気になった。
「私と翼は、ギルドの方で話し合いもあるから、少しログインするな」
「私は、暇だったらするくらいかな」
かー姉、翼さん、みず姉はログインするかもしれないみたい。するとしたら、家からからかな。
「私はするかな」
「私もするわね」
「私も」
「私もぉ」
「私もです」
穂乃花さん、真紀さん、芽依さん、心美さん、愛巴さんもログインするらしい。
「私もするよ」
光もだ。結局、皆ゲーム三昧って感じなのかな。
「まぁ、昼間は買い物でも行くか。白も引き籠もってばかりだろうしな」
「良いの?」
「せっかく帰ってきたんだ。妹と遊ばないでどうする」
「やった」
かー姉が買い物に連れて行ってくれる事になった。ゲームをしたい気持ちがないでもないけど、一緒に出掛けられるのは嬉しい。
今日は、そのままご飯を食べつつ談笑していった。お寿司がなくなったところで、翼さんが、愛巴さんが持ってきてくれたお茶を淹れてくれて、かー姉が買ってきてくれた和菓子と真紀さん達が買ってくれたお茶菓子を食べながら、やっぱり談笑した。
かー姉と翼さんが付き合っているという話だったけど、特に普段と何も変わった様子はなかった。特に距離が近い事もないし。寧ろ、光と私やみず姉と穂乃花さんの方が近かった。一番近かったのは、私とみず姉だけど。
その日は、夜まで皆で楽しんで、解散となった。外が暗いこともあって、皆はかー姉が車で送っていった。
残った私、みず姉、かー姉、翼さんは、それから夜中になるまで話していた。それだけ話す内容が積もっていたからなのかな。
その翌日は、その四人に光を加えて、服屋に買い物し行った。ちょっとだけ服を買って、ファミレスでご飯を食べて、ゲームセンターなどで遊んでから帰った。
更に、その翌日は、お母さん達が帰ってきて、家族+翼さんで食事に行った。何故かお父さんが張り切って高い店に行ったけど、かー姉達を祝福するためとかだったのかな。
まぁ、何はともあれ、ゲームに集中する余裕がないくらいには、色々と楽しかった。
その翌日は、皆が家に帰るので、いつも通りの日常が戻ってくる。
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