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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

通用しない攻撃

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 蒼天竜は、動き回りながらスノウを攻撃しようする。同じ竜という事もあって、一番危険な存在と考えているのかもしれない。

『【黒風飛雨】』

 レインの魔法で、天候が変わる。雪の中に暴風雨が混じるという少し気持ち悪い状態だ。その中で、雨だけは一箇所に集約していた。その場所は、レインの真上だ。大量の水がレインの上で大きな球を形成している。

『【槍林弾雨】』

 集まった雨は槍となり、蒼天竜に放たれる。弾幕のように広がる水の槍を、私とスノウは避ける。そして、蒼天竜も同じだった。空を縦横無尽に動き回り、水の槍を避けていく。

『【雷霆万鈞】』

 避けた先に夥しい数の雷が降り注ぐ。一部は避けきれず蒼天竜に命中するけど、削れるHPはごく僅かだ。

「雷にも耐性があるって感じか。スノウ、どんな感じ?」
『ガァ……』

 スノウは首を横に振って答える。スノウでも敵わないらしい。

「足止めは?」
『ガァ!』

 これは出来るみたい。勝てはしないけど、負ける気は一切ないみたい。頼もしい事だ。

「それじゃあ、一緒に頑張ろうね」
『ガァ!!』

 私とスノウは、雷を避けて移動する蒼天竜の先回りをする。

「ライ! 雷頂戴!!」

 私の言葉に、すぐ反応したライが私に向かって雷を落とす。それを【雷電武装】で受け取り、武器に纏わせる。さらに、【影武装】と【風装術】を発動して、蒼天竜の移動する前に風の刃を二本放つ。
 蒼天竜は、羽を畳んで命中する面積を小さくしつつ避けた。そこに、スノウが上から突撃する。回避行動中だったため、蒼天竜も避ける事が出来ず、そのままスノウと一緒に錐揉みしながら下に落ちていく。

「スノウ!」

 スノウは、蒼天竜にしがみつきながらブレスを吐く。蒼天竜の身体が凍り付く。スノウは、そこでブレスを止めずに吐き続ける。表面だけでなく深層まで凍り付かせる気なのだと思う。そこに、レインも加わる。スノウに当たらないように氷の槍を突き刺して、凍結を進める。
 それに苛ついたのか、蒼天竜は大きく咆哮した。さっきと同じような咆哮だったけど、一つだけ違う点があった。私達の動きが一瞬止まった事だった。その間に、蒼天竜はスノウから離れる。そのついでのように、スノウに尻尾を叩きつける。その際に、氷が飛び散った。スノウの持つスキルの一つである【氷鎧】を使って防御をしたのだと思う。
 そこに【飛翔】で加速して駆けつける。双血剣での攻撃では、恐らく距離的に命中しない。だから、血液で刀身を一気に伸ばす。攻撃範囲が急に伸びたので、蒼天竜も避けきれず、斬る事が出来た。【影武装】の防御無視の削りが、蒼天竜の鱗を少し剥ぎ、三ミリくらいHPを減らした。

「硬いなぁ……」

 無理矢理伸ばした血液の刃は、そのまま折れてしまった。無理矢理伸ばしてしまったせいで、その耐久値になり、その耐久値の低さが、攻撃力の低さに繋がっているのだと思う。【支配(血)】というより血液武装の弱点の一つが今更になって分かった。普段は、異常に長い刃を形成なんてしないから知らなかった。

「【侵食】で削るのもありだと思うけど、多分、こっちの方が良い」

 黒百合の【侵食】で相手の鱗を剥ぐ事も出来そうだけど、正直地道過ぎるし、効果的とは思えない。それなら、攻撃力で鱗の防御力を突破する方が良いと判断した。
 双血剣を血の中に仕舞って、日影を握り、血液で刀に変える。【圧縮】でどんどんと刃を形成する血液を圧縮していき、硬さを上げていく。使える血の量が増えたから、かなり圧縮出来るし、刃の交換も簡単に出来る。
 そして、【飛翔】の加速で蒼天竜に追いつき、刀を振う。蒼天竜は、再び尻尾でパリィをしようとしてきた。私は、【風装術】で風の球を作り出し、その尻尾に当てる。その一瞬でパリィのタイミングをずらし、逆に尻尾を斬った。斬り落とす事は出来なかったけど、ダメージにはなる。
 それに苛ついた蒼天竜が、私に向かって青い炎のブレスを吐いてきた。【火炎武装】で操作するけど、さっきと同じくあまり効果はない。ほんの少し逸らせるくらいだ。HPが削れていくけど、思ったよりも減りが少ない。炎への耐性は、結構高いみたいだ。

「【一点霹靂】」

 蒼天竜に、一点にまとまった雷が落ちる。それを簡単に避けた蒼天竜に圧縮されてから解放されたウォーターカッターが襲う。それも避けたところに、今度はスノウのブレスが襲い掛かる。それに対して、蒼天竜はブレスを吐くことで対抗してきた。
 蒼天竜のブレスの方が、熱量が高いので、スノウのブレスは押し負けている。なので、別方向から私も氷のブレスを吐く。口の中が凍り付いて凍傷をしているかのうような状態になるけど、それは放っておく。蒼天竜は、首をそのままにして身体だけを動かしてブレスを避けた。かなり器用な動きが出来るみたいだ。

「それなら……」

 私は、【空歩】で足場を作って、思いっきり踏み切る。そして、その踏み切りで【電光石火】を発動し、蒼天竜に突っ込む。

「【夏葉】」

 高速の突きが蒼天竜に突き刺さる。極限まで圧縮した血液の刃は、折れることなく、蒼天竜に埋まった。HPが残り九割まで削れる。そのまま技の硬直で止まった。
 攻撃を受けた蒼天竜は私に向かって爪を振り下ろす。夜霧になって避けたいところだけど、硬直時間に任意夜霧化は出来ないらしい。爪が当たる前に、影が私を守る。その影は、いとも簡単に砕けた。
 防影のおかげで、一瞬の時間が生まれる。その一瞬のうちに、大量の水が蒼天竜に飛んできた。蒼天竜は、それから避けるために私から離れる。
 水の正体は、レインが集めた水だ。大量に集まった水は、大きな質量となる。そんなものに襲われるのは、蒼天竜としても嫌だったのだろう。
 レインは、スノウの背中に乗って移動してきていた。勿論ライも同じだ。空中に浮ける二人だけど、そこまで速く移動する事は出来ない。その機動力をスノウで補う形のようだ。多分、スノウ自身の発案かな。

「ありがとう、レイン」
『ううん。でも、どうするの?』
「本当にね」

 レインは、大量の水を操って蒼天竜を追い回していた。その水に電気が流れているのが見えた。どうやら、ライとの合わせ技みたいだ。これで、ほんの少しだけ時間が生まれた。今の内に、戦い方を考える。

「私の刀は、蒼天竜に刺さったから、このまま近接で削る。スノウ、二人の護衛をお願い。レイン、ライは、ひたすら援護。やれると思ったら、大技を使っても良いよ。私は、ひたすら肉迫する」
『ガァ!』
『うん。分かった』
『……』コクッ

 作戦を伝えた私は、また【空歩】を使って【電光石火】を発動して蒼天竜に突っ込む。技を使うと攻撃を受ける可能性が高くなるので、ひたすら自力だけで戦う。
 蒼天竜は、【第六感】があるから私の攻撃を避けてくるけど、ひたすら【空歩】と【電光石火】で追いながら斬る。レインとライによる援護で、蒼天竜の移動に制限が掛かるから、こっちも追いやすい。
 空中での戦闘という事もあって、私達の戦場は雪嶺エリアの至る所に広がった。
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