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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

突然の脅威

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 ライとの出会いから、探索を続けようとする。途端、周囲に雷が降り注ぐ。

「……これは、ヤバいなぁ。スノウ!」

 私が声を掛けると、すぐにスノウが降りてきた。雷の中でも、全く気にしていない。さすがはスノウって事かな。

『ガァ!!』

 軽く頭突きしてくる。怒っている訳では無く、ただのスキンシップだ。頭を撫でてあげて落ち着かせる。

「ごめんね、スノウ。今日は、お留守番していてくれる? ちょっと危ないかもだから。主に私が」
『グルゥ? ガァ!』
「ありがとう。【送還・スノウ】【召喚・ライ】」

 スノウをギルドエリアに帰して、ライを喚ぶ。

『……』ジッ……

 喚ばれたライは、じっと私の事を見る。何をすれば良いのかを訊いているみたい。

「落ちてくる雷を逸らしてくれる? 結構落ちてくる数が多いから」

 ライが小さく頷く。会話はしてくれないけど、意思表示はしっかりとしてくれるから、こっちも意図を汲みやすい。

「そういえば、【電磁気】ってスキルがあったけど、どういう事が出来るの?」
『……』

 ライは、地面から砂鉄を引き上げる。そのまんま磁力を操る事が出来るみたいだ。恐らく、他にも何か出来るだろうけど、ここだと、それくらいしか出来ないみたい。

「なるほどね。意外と自由度は高そうだね」

 ただ、レインやソイル、エアリーのように畑などには使えなさそうだ。電気は作れるだろうから、アカリが機械か何かを作った時には、手伝って貰えそうだ。
 そんな事を思っていると、雷が落ちてきた。

「この頂上を調べるから、しばらくお願いね」
『……』コクッ

 ライが頷く。それを見てから、頂上の探索を再開する。落雷は、私に当たる前に、どこかに逸らされる。それだけで、ライが仕事をしてくれている事が分かる。

「レイン、何か分かる?」
『ううん。何も。ソイルの方が分かると思う。交代する?』
「そう……だね。うん。一旦交代しよう。【送還・レイン】【召喚・ソイル】」

 レインと交代でソイルを喚び出す。

『寒い……』
「ごめんね。この地下に何かある?」
『ううん……何も無い……ただの山……』
「そう。やっぱり、何も無しか。わざわざ喚んじゃってごめんね」
『ううん……また……喚んでね』
「うん。約束。【送還・ソイル】【召喚・レイン】」

 ソイルとレインを入れ替える。取り敢えず、ソイル、レインで調べて貰った事でやっぱり山の中には何もない事が分かった。

「取り敢えず、このまま調べて行こうか」
『うん』
『はい』
『……』コクッ

 皆と一緒に雪嶺エリアを探索していく。山頂にあったのは、祈りの霊像だけで、他には特に何もなかった。そのまま下っていくと、複数のモンスターと遭遇する。レインがいるから苦労はなかったし、私も【竜息吹】で倒せるから問題もない。
 それに、ライの実力も見る事が出来た。自分で発電した電気を飛ばして、雪男の心臓を的確に射貫いていた。おかげで、HPが大きな割合で減っていったし、気絶状態や麻痺状態になって戦いやすくなっていた。

『お姉様。あちらに街があります』
「えっ、本当?」

 下っている最中にエアリーから、そんな報告を受ける。ただ、天候が吹雪に変わったので、視界が悪い。エアリーが教えてくれている方向に街は見えない。

「そこそこ遠い?」
『いえ、どちらかと言えば、近い方かと』
「それじゃあ、街に向かおうか。案内よろしく」
『はい』

 エアリーの案内で、街の方向に向かう。しばらく歩いていると、山肌に沿って作られた街が見えた。その街の名前は、雪見の里というらしい。和風の建築が目立つ。ぽつぽつプレイヤーの姿もある。
 まぁ、精霊の姿は、普通のプレイヤーに見えないし、あまり気にしないで良いかな。皆と一緒に街の中に入って、転移出来るようにしておく。このまま雪見の里を調べても良いけど、今は雪嶺エリアを調べたいので、このまま雪嶺エリアの探索に戻る。

「そういえば、蝙蝠を出してなかった。ここは空からの脅威もないし、出しておいて平気かな」

 山脈エリアでは、何も役に立たなかったので、すっかり忘れていた蝙蝠達を出しておく。レイン達と一緒に探索していると、これまでのモンスターとは違う形をしたモンスターの気配を【索敵】で感知した。この形は、竜そのものだ。しかも、スノウや霊峰の支配竜と同じような形の竜だ。

「レアモンスター?」

 そう思ったけど、竜がレアモンスターとして出て来るのは、かなりキツい気がする。遭遇頻度が低いとはいえ、竜の強さは普通のモンスターとは一線を画している。
 気配の持ち主は、私達の目の前に降りてきた。大きさは、スノウよりも一回り大きいかな。名前は、蒼天竜。
 蒼天竜は、出会い頭に青い炎のブレスを吐き出してきた。

「うげっ!」

 【大地武装】で壁を作りつつ、【火炎武装】で炎の向きを少し逸らす。普通の魔法よりも操作しにくい。その間に、エアリーが風の刃で蒼天竜を攻撃する。
 蒼天竜は、その攻撃を予測していたかのように避けた。

『こちらの動きを読んでいますね』
「【第六感】持ちか……」
『【一点霹靂】』

 小さく可愛い声がしたかと思ったら、空から重なり合った雷が蒼天竜に向かって落ちていった。蒼天竜は、それすらも避ける。その避けた先に、氷の槍が次々飛んでいく。

『お姉様。私をスノウと入れ替える事を勧めます』
「エアリーを?」

 正直、エアリーの風による攻撃は、普通に使える。でも、レインもライも捨てがたい。そして、スノウを喚ぶ理由も理解出来る。空中を自由に飛び回る蒼天竜に対して、一番有効だと思われるのがスノウだからだ。ここに来て、召喚制限が足を引っ張ってくる。

「分かった。【送還・エアリー】【召喚・スノウ】」

 迷いに迷った末、エアリーとスノウを入れ替える。スノウは、召喚された瞬間、空を睨む。

『グルゥ……』

 低く喉を鳴らす。蒼天竜を敵と認識したらしい。

「スノウ、行って!」
『ガァ!!』

 スノウが飛び立つ。蒼天竜は、大気が震えるような咆哮をすると、スノウに向かっていった。同じ竜同士で、何かあるのかな。

「レイン、ライ、援護をお願い。私も飛んでくる」
『うん』
『……』コクッ

 ライも頷いたので、私は【大悪魔翼】【大天使翼】【飛竜翼】を広げて空を飛ぶ。【鳥翼】を使わないのは、四つの羽になると背中がごちゃごちゃとするからだった。三対が扱える最大って感じだ。
 スノウと蒼天竜の戦いは、かなり熾烈なものになっていた。ただ互角な戦いではなく、スノウの方が劣勢だった。大きさのせいもあるかもしれないけど、向こうの方が、地力が上みたいだ。【眷属(大蝙蝠)】と【氷息吹】を入れ替える。【操糸】とかでも良いかと思ったけど、あの巨体相手に通用すると思えないので、息吹系にした。
 蒼天竜に突っ込んで、大斧に変えた双血剣を叩きつける。蒼天竜は、私の攻撃を尻尾でパリィした。器用な事をしてくる。そのまま尻尾が私を突き刺そうとしてくるけど、その前に自分の意思でMPを消費して夜霧に変わる事で避ける。MP消費が激しいから、使うタイミングの見極めが難しいので、あまりやろうとは思わないのだけど、今回はしないとヤバいと思ったから使った。
 夜霧となった私を尻尾が通り過ぎていく。そこに、スノウがブレスを吐く。直撃した場所が凍り付いているけど、蒼天竜が身動ぎしただけで氷が砕けて、無傷の表皮が現れる。実際、ダメージはそこまで食らっていない。

「夜霧の執行者みたい。面倒臭い相手だなぁ」

 身体を元に戻して、双血剣も元に戻す。やっぱり、一番は吸血かな。ただ、あの様子だと吸血まで持っていくのが難しいと思う。

「まずは弱らせるところからか。レイン達が居ても苦戦しそうなのは、初めてかな」

 レイン達が居れば無敵だと思っていたけど、そんな事はなかった。こんなヤバい相手が、まだいる。まだまだ楽しめそうだ。
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