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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

雪山の頂上で意外な出会い

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 雪嶺エリアの雪山を進んでいくと、今度は氷の塊みたいなモンスターと遭遇した。本当にただの氷が宙に浮いているだけだった。でも、そこに近づくと、氷の塊が、段々と人型になっていった。名前は、フロスト。
 レインが拘束しようとした矢先、周囲に氷の塊が出て来て、フロストがどんどんと増えていった。

『分身みたい。でも、問題ないよ』

 レインは、次々にフロストを拘束していく。氷の塊だから、簡単に拘束出来るみたいだ。

「本物がどれかは分かる?」
『……ううん。分からない。全部同じ感じがする』
「本物の完全な模倣あるいは、ここに本物がいない可能性か。【索敵】にも同じ反応だし、一体一体食べて確認するか」

 結局は吸血する事になるので、早速フロストに噛み付く。すると、噛み付いた部分から私を凍らせてきた。でも、すぐにその氷が割れた。恐らく、レインが助けてくれたのだと思う。そのまま吸血を続けると、驚く事にフロストが一気に胃の中に入ってきた。【暴飲暴食】の効果だろうけど、ほぼ私と同じくらい寧ろ大きいと言っても良いフロストがお腹に入ったと思うと、ちょっと怖い。でも、楽に吸血出来ると考えれば、良い事かも。
 そのままフロストを次々に丸呑みしていくと、急に周囲にいたフロストが消えた。

『【始祖の吸血鬼】により、フロストから【魔氷結】を獲得』

 スキルが獲得出来ているので、本体を倒して、分身が消えた的な感じだと思う。

「本体の見分けが付かないけど、倒せば全部消えるのか。後は防御力も本体と一緒なのかが知りたいかな」
『氷の感じは、同じだったよ? それに、お姉さんが倒す度に、分身が増えてた』
「全体の数は変わらなかった?」
『うん』

 つまり一体の分身を倒したら、一体増えるという感じみたい。数が減らないとは思っていたけど、まさか増えていたとは。【索敵】を疎かにしていたかも。

「まぁ、それならレベル上げに使えそうかな。レッサーワイバーンだと空を飛ばないといけないし、警戒する角度が上下前後横で全方位なんだもんなぁ」

 雪兎とは別の理由で、レベル上げに持って来いのモンスターに思える。その実証のために、一人でフロストと戦闘を行う。これまでのモンスター同様に、【竜息吹】による攻撃は有効だった。相手は氷そのものに近いから、当たり前と言えば当たり前だ。
 ちなみに、【竜息吹】無しでの戦闘だと若干時間が掛かったけど、普通に倒せた。やっぱり、レベル上げには使えそうだ。

『お姉様。ここは、定期的に吹雪くようです。もしお一人で探索する事がありましたら、お気を付け下さい』
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」

 お礼を言って、エアリーを撫でてあげると、エアリーはきょとんしながら私を見た。そういえば、エアリーの事を撫でてあげた事はなかったかも。

「嫌だった?」

 念のため確認しておく。

『いえ、少し驚いてしまっただけです。お姉様に撫でられるのは、この上なく幸せです』
「なら良かった」

 そのままエアリーの事を撫でてあげていると、レインが傍に寄って頭を突き出す。自分も撫でて欲しいという事だろう。断る理由もないので、レインの頭も撫でてあげる。二人が満足してくれるまで撫でてあげて、探索を再開する。その中で、フロストを何度か吸血していった。急にお腹の中に入ってくる感覚には慣れないけど、一気に食べられるのは有り難い。
 フロストからは、【魔氷結】の他に、【水氷操作】【氷分身】【魔道】【水魔法才能】が手に入る。新しいスキルは、【氷分身】だけで他は経験値になった。

────────────────────

【魔氷結】:MPを消費して、触れている対象を凍結させられる。

【氷分身】:MPを消費して、氷で出来た自身の分身を生成する。分身は、単純な移動しか出来ない。

────────────────────

 何だか使えそうなような使えなさそうな感じのスキルだ。まぁ、育てておいて損はないはず。控えで発動するようなスキルが派生したり、統合や進化してなる可能性もあるからね。
 探索を続けながら、私達は雪山の頂上に辿り着いた。頂上は平らになっていて、中央に祈りの霊像が立っていた。雪が積もっていて、少し汚れている感じがある。

「おぉ……まさかの霊像かぁ……」

 恐らく、ここで仲間に出来る精霊はウンディーネだろう。でも、ウンディーネは、既にレインがいる。なので、ここでテイムする必要はない。そのはずなのだけど、もしかしたら、氷の精霊が生まれるかもしれないという考えが頭を過ぎってしまう。

「他の人の可能性を潰す可能性に繋がるんだよねぇ……」

 私が悩んでいる間に、レインとエアリーが霊像を洗っていた。

「あっ……」
『えっ、駄目だった?』

 レインが申し訳なさそうにそう言った。ここまでソイルとエアリーで霊像を使っていたから、今回も使うのだと判断したのかもしれない。AIの判断だけど、本当に人の考え方に近い行動だ。改めて、高度なAIが搭載されているのだなと感じさせられる。

「いいよ。やっちゃおう」

 既にやってしまったものは仕方ない。このまま洗っていく。それを見守っている空から雷鳴が聞こえてきた。

「変な天気」
『ここにも落ちてくるかもしれません。お気を付け下さい』
「大丈夫。【雷電武装】があるから」

 正直、本物の雷を操作出来るかと言われたら、難しそうだけど、多分大丈夫だと思う。そもそも帯電させる事も出来るわけだし。
 そんな事を思っていると、近くの木に雷が落ちた。速すぎて、絶対に操作出来ないという事が分かった。でも、エアリーを心配させてしまうので、これは黙っておこう。

「雪嶺エリアだけど、雷も特徴に入ってるのかな。まぁ、多分頂上だけだろうけど」

 そんな事を言っているうちに、霊像の洗浄が終わり、霊像に罅が入っていった。そうして割れた霊像から現れたのは、黄色い髪と黄色い目をした少女だった。

『……』

 精霊が私を見上げると、目の前にウィンドウが現れた。

『雷の精霊トニトルをテイムしますか? YES/NO』

 これはYESを押す。そして、すぐに名前を入力する画面に移る。

「それじゃあ……ライで」

 私がそう言うと、精霊が頷く。どうやら名前を受け入れてくれたみたい。それにしても、ソイルよりも無口な子だ。全く喋らない。

「ライは、声を出せないの?」

 そう訊くと、ライは首を横に振る。

「なら、あまり喋りたくない感じ?」

 これには頷く。まぁ、こればかりは強要する事ではないので、受け入れる。いつか、声を聞かせてくれるといいな。

「それじゃあ、ライはギルドエリアに居てくれる? そっちには、他にも人とかがいるけど、喧嘩はしないようにね」

 これに頷いたライは、ギルドエリアへと転移した。既に三人出しているから、ライを召喚し続ける事は出来ないからだ。

────────────────────

ライ:【魔導】【雷霆魔法才能】【支配(雷)】【無限雷】【雷精霊】【精霊体】【電磁気】

────────────────────

 ライのスキルは、こんな感じだ。【電磁気】がどんなものなのか気になるので、これは後で訊く事にする。
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