吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

改めて挑戦

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 稽古を終えた後、いつも通り温泉で生気を吸われる。

「そういえば、私、幽霊に触れられたんですけど、【天使】と【悪魔】が関わっていたりします?」
「あら、もう手に入れたの? 早いわね。だから、こんなにも生気が溢れているのね。幽霊に触れられた理由は、あなたの考えている通りよ。天使と悪魔は、死者を導く役割があるから」
「へぇ~」

 スキル説明にはないけど、そういう役割を持っているから、隠し要素として存在するのかもしれない。まぁ、隠されているから、そっちは主な使い道じゃないのだと思う。

「高い序列にいけると良いわね」
「序列? ああ、そういえばそういう風に書いてあったかも……どうしたら、高い序列になれるんですか?」
「さぁ? 私は、天使でも悪魔でもないから。吸血鬼で天使で悪魔なあなたが、どうなるのか分からないわ」
「あっ、【霊体】っていうのも手に入れたんですけど、これで幽霊の仲間入りって事にはなりますか?」
「……まぁ、似たような存在にはなっているかもしれないわね」

 私の種族に幽霊が追加された。【霊体】のレベルが上がっていったら、精霊にもなるかもしれない。私のキメラ化はどこで終わりを迎えるのか。全く分からない。

「【刀】の方は、まだまだみたいだけど?」

 話の話題が【刀】に移ってしまった。

「えっと……戦闘の大半をテイムした子に任せていたので」
「探索に集中するのも良いけど、自分の鍛錬も忘れない事」
「は~い」

 師匠との会話と生気の吸収を終えて、私はログアウトした。やることを全部終わらせて、再びログインする。

「さてと、もう一度ラストナイトに挑むか」

 バレータウンに転移した私は、空を飛んで山を越える。ボスに挑むためのクールタイムは過ぎている。だから、すぐにラストナイトのいるエリアへと転移出来た。転移直後、私は自分の手を噛んで、【血液武装】を発動し、月影を刀にする。当然【圧縮】で硬く固める事も忘れない。
 さっきは向こうから動かれたけど、今度はこっちから仕掛ける。【電光石火】で、ラストナイトの背後に移動する。師匠との稽古で、逃走に【電光石火】を使いまくったので、大分コツが掴めた。
 ラストナイトの背後から斬り掛かる。ラストナイトの鎧に傷を付ける事が出来たけど、同時に嫌な感覚がした。即座に、背後に向かって【雷足】を使った高速移動をし、刀を見る。

「うわっ……やっぱり……」

 血の刃は、若干ガタガタになっていた。これが、ラストナイトの特徴みたいだ。武器で攻撃すれば、武器の耐久値を減少させる。そして、恐らくあの大剣での攻撃も同じだ。【腐食】でも持っているのかな。
 ラストナイトは、大剣を構えて向かってきた。その間に、【疾風迅雷】で集まった雷を【雷装術】で刀に纏わせる。さらに、【影装術】と【風装術】も発動して影と風を纏わせる。
 【風装術】の効果は、攻撃を飛ばす事。【水氷装術】と同じように思えるが、性質が違う。質量をぶつけるという【水氷装術】と違い、刃が付いているのであれば斬撃が、鎚などの刃のない攻撃には、風の塊がぶつけられる。そして、何よりも武器が纏っている効果を伴って放たれるという点だ。
 つまり、私の刀が纏っている影と雷も一緒に飛んでいく。血液は、武器を構成しているものという判定を受けるみたいで、一緒に飛んでいくという事はない。
 向かってくるラストナイトに斬撃を飛ばす。ラストナイトは、大剣で攻撃を受ける。大剣も鎧も金属製。感電はしやすいはず。これで麻痺状態になると思ったのだけど、ラストナイトは止まらずに近づいてきた。
 麻痺耐性があるわけじゃない。エレクの雷で麻痺状態になっていたからだ。

「電気は効くは……ん? 錆って電気通すっけ? こんな事なら、もっと教科書読んでおくんだった。まぁ、そもそも教科書に書いてあるとは限らないけど」

 恐らく、エレクの雷が効いたのは、的確に錆びていない部分を貫いたからだと思う。今の私の攻撃にそこまでの正確さはない。そもそも【風装術】の攻撃自体が正確さを売りにした攻撃ではないからだ。

「となると、直接狙うしかない」

 もう一度【電光石火】を使って、ラストナイトの背後に移動する。そこで溜めた雷を刀に纏わせて、斬り掛かる。ラストナイトは、振り返りながら大剣を振ってくる。大振りなその一撃を受け流す。受け流すくらいなら、まだ耐久値減少の効果が弱い。さっき来た時に受け流したけど、全く気付かなかったし。
 攻撃終わりの隙に、【武闘気】を発動させて、脚に闘気を溜め、思いっきり脇腹を蹴り飛ばす。【神体】になっても脚力は維持出来ている。そこに【武闘気】も合わさった事で、ラストナイトが大きく吹き飛んでいく。

「血姫の装具は……大丈夫と。さすが、アカリ」

 私の血液よりも頑丈な防具で頼もしい事だ。【雷足】を使った高速移動で吹っ飛んでいったラストナイトを追い、【雷装術】と【影装術】を使った刀を上段から振う。ラストナイトは、まだ体勢を立て直せていないので、斬撃をまともに受ける。
 さっきは、大剣越しという事もあって麻痺状態にならなかったけど、今回は麻痺状態になった。そこを見逃さず、【武闘気】で闘気を腕に集中させる。

「【解放・月光】」

 速度を上げて、ラストナイトを斬り続ける。突き刺して、吸血も良いかと思ったけど、ひとまず正面から普通に倒せるようになりたい。師匠にも鍛錬を忘れるなって言われちゃったし。
 五秒程斬り続けて、二割程HPを減らした。ボスだけあって正面から挑むと、結構硬い。
 麻痺が解けたラストナイトは、起き上がりざまに大剣を振り上げる。【電光石火】で背後に避ける。こういう時は【電光石火】が便利だ。

「MPの減りがいつもより激しいな……はぁ……これをいつもやってるアク姉は、さすがだなぁ」

 MPの管理が面倒くさいけど、頑張るしかない。【雷足】を使った高速移動で接近した私は、そのままの勢いを乗せて刀で突く。ラストナイトの鎧の隙間を狙って突き刺した攻撃は、ラストナイトのHPを一気に一割削る事が出来た。
 やっぱり中身が弱点みたいだ。それでも一割しか削れない。さらに、血液を操って内側から串刺しにする。さらにHPを削る事が出来たけど、それでもまだ倒しきれない。
 懐に潜り込んだ私をラストナイトが殴ろうとしてくる。私は、その攻撃を避けない。拳による攻撃なら、【防影】で防げると踏んだ。
 実際に【防影】が発動して、ラストナイトの拳を防ぐ。でも、【防影】に大きく罅が入り、砕け散った。

「!?」

 防ぐは防いだけど、一回で【防影】を駄目にされた。恐らく【腐食】のような効果で、一気に耐久値を減少させられたというところかな。

「【刀】に拘っている場合じゃないか」

 日影も抜いて、月影を刀にしていた血液で日影も強化する。武器を刀から双刀に変えた。本当に本気で挑むなら双血剣を使うけど、今はラングさんに預けているし仕方ない。
 【雷足】を発動させて、移動速度を上げる。この状態のまま戦闘を行う。相手が大剣という事もあり、こっちの高速戦闘なら一方的に攻撃出来るはず。【刀】の練習にしたかったけど、仕方ない。
 【雷足】高速移動に【空歩】を合わせて、縦横無尽の攻撃でラストナイトを攻撃し続ける。ラストナイトは、大剣で防御をしているけど、その防御の内側を攻撃出来るので意味はない。攻撃を続けていると、不意にラストナイトの眼が赤く光り始めた。
 何をするつもりか知らないけど、このまま押し切る。そのつもりだったけど、状況が急変した。ラストナイトが、大剣を片手で振り回し始めたからだ。しかも軽々と。
 これでは近づけない。ラストナイトのHPは、残り一割だというのに。

「厄介な……【第六感】と勘だけでいけるか……いや、無茶すぎるかな。それじゃあ」

 ラストナイトに歩いて近づきながら、思いっきり息を吸う。そして、ラストナイト目掛けて勢いよく炎を吐いた。ラストナイトの身体が燃えていく。【竜息吹】の効果だけど、これには欠点がある。口の中も焼けるので、私もダメージを受ける事だ。
 ダメージを我慢しながら、炎を吐き続けてラストナイトのHPを削る。すると、残り一ミリぐらいのところで、炎の中から大剣が飛んできた。【第六感】で攻撃が来る事自体は分かっていたので、その軌道上から移動して避ける。そして、月影を投げつけて倒す。

「あっぶなぁ……普通、あんな馬鹿でかい剣投げる? こちとら口の中火傷してるんだっての。まぁ、そんな事関係ないか。最後のあの暴れようは、【狂気】かな? 遠距離持ちならともかく近接重視の人にとっては、厄介でしかないな。あれを避けられるようになったら、師匠の攻撃も避けられるかな。サツキさんに出来ないか訊いてみよ」

 ラストナイトを倒したところで、バレータウンに戻り、ファーストタウンに転移した。
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