上 下
216 / 417
高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

山脈エリアと空

しおりを挟む
 山脈エリアに転移した私は、急な突風に驚いた。

「うわっ……風強っ……」
『風はどうにも出来ないかも』
「まぁ、そりゃあね。取り敢えず、レインは休んで」
『うん』
「【送還・レイン】」

 レインをギルドエリアに帰す。今回は、私一人で探索を進める。スノウなら喚び出しても良いと思うけど、最近は皆に頑張って貰っていたから、ちょっと休ませてあげようと思ったからだ。

「さてと……ここでは、どんなモンスターが出て来るのかな」

 目の前にある山を見る。山脈という名前から、ある程度予想出来るけど、恐らく山は連なっているはず。目の前の山ですら結構高いのに、これがいくつもあると考えると、他の場所よりも探索が面倒くさい。

「山に穴があるから、イベントの霊峰と同じように洞窟がある感じかな。基本的には、洞窟探索になるのかな。霊峰……名前にはなっていないけど、一応、称号をイベントで貰ったやつにしておこう」

 霊峰ではないかもしれないけど、念のため、称号を【霊峰の恩恵を賜りし者】に入れ替える。

────────────────────

【霊峰の恩恵を賜りし者】:霊峰内にて、全ステータスが一・二倍になる

────────────────────

 イベントの時は一・五倍だった気がするけど、いつの間にか一・二倍になっていた。あの時は、イベントでの特典として機能していたけど、一般エリア内だったら、こっちの方が丁度良いって事で調整したのかな。

「洞窟内よりも、まずは頂上を目指してみようかな」

 洞窟内がどこまで入り組んでいるか分からないから、まずは目指しやすい頂上に向かう事にした。【雷足】を発動して、山を登っていく。最初は、緩やかな坂だったから、そこまで苦労しなかったのだけど、途中から急に崖になっていた。

「本当に霊峰みたい……まぁ、あの時と違うのは、私が飛べるようになったってところかな。態々崖登りしなくて済むし」

 イベントの時は、崖登りで苦労したから、空を飛べるようになった事で無視する事が出来るのは有り難い。私は【悪魔翼】を使って、空を飛ぶ。空を飛び始めて、少しすると【索敵】にモンスターの反応がした。形的にゲームでよくいるワイバーンかな。
 まだ崖上まで到着していないので、空中戦をする事になる。

「このゲーム初めての空中戦か……あまりやった事ないんだよね……」

 モンスターは、崖の上から飛び込んできた。【索敵】で分かっていた通り、モンスターはワイバーンだった。名前は、レッサーワイバーン。前脚と羽が一体化した竜みたいなモンスターだ。

「本当によりにもよって上からって……」

 【血液収納】で双血剣を取り出す。勢いをつけて飛び、【影装術】を使い双血剣に影を纏わせる。レッサーワイバーンは、私に噛み付こうと口を大きく開ける。噛み付きをギリギリで避け、すれ違いざまに身体を斬りつける。一気に一割削る事が出来た。それに、黒百合の効果で出血状態にする事が出来た。すぐに【血液武装】で双血剣を強化する。
 レッサーワイバーンは、すぐに反転して、私を追ってきた。まぁ、すれ違う事が出来た時点で、私の目的は果たしている。そのまままっすぐ飛んでいって、崖上に着地する。
 同時に、【血液武装】で双血剣を大斧に変える。そして、【索敵】を頼りにレッサーワイバーンの首目掛けて振う。クリティカルダメージになって、残り一割までHPを削った。
 そこで体勢が崩れた隙を突いて、【影装術】と【血液武装】でレッサーワイバーンの身体を縛り、地面に縛り付ける。トドメは吸血で倒す。

『【始祖の吸血鬼】により、レッサーワイバーンから【飛翔】を獲得』

────────────────────

【飛翔】:飛ぶ際に羽を使う場合、消費MPが無くなる。更に、MPを消費して一時的な加速が可能となる。控えでも効果を発揮する。

────────────────────

 空を飛ぶ事の出来る私にとって、かなり重要なスキルを手に入れる事が出来た。恐らく、空を飛ぶモンスターのほとんどが持っているであろうスキルだ。多分、最初の方のエリアのモンスターは持っていないだろうけど。図書館の本には書いてなかったし。
 最近は、図書館で調べものをしていないから、追加されていたら、話が変わるけど。

「無限に空を飛べるのは、本当に嬉しいなぁ。スノウに負担を掛けすぎないで済むし。多分、スノウの方が速いだろうから、頼る事はあるだろうけどね。偶には乗ってあげないと拗ねる可能性もなくはないし」

 私は、蝙蝠を三匹喚び出し、マッピング範囲を広げる。正直レッサーワイバーンがいるから、蝙蝠達も危ないだろうけど、倒されたら倒されたで仕方ないと割り切る。大蝙蝠も喚び出しておく。

「さてと、ちょうど良いから楽しようかな」

 【悪魔翼】と【飛翔】を使って、私は空を飛ぶ。【索敵】で感知出来るのは、レッサーワイバーンばかり。そして、そのレッサーワイバーン達は、一気に私に向かってきた。向こうの探知範囲もかなり広いみたいだ。因みに、蝙蝠と大蝙蝠は全員倒された。さすがに、レッサーワイバーンに勝てる程の強さはなかった。
 数もどんどん増えている。まるで、雪兎のような感じだ。空の方が良いかと思ったけど、これはこれで辛い。

「空を飛ぶのも楽じゃないなぁ……【召喚・スノウ】!」

 襲い掛かってくるレッサーワイバーンを避けて、スノウを召喚する。

『ガァ!』
「スノウ! 数を減らして!」
『ガァ!!』

 元気よく返事をしたスノウは、群がってくるレッサーワイバーン達を蹴散らしていく。それでも、スノウの撃ち漏らしはいるので、レッサーワイバーンに襲われる。でも、確実に数は減っている。
 こっちに突っ込んでくるレッサーワイバーンを避けて、影を操り、レッサーワイバーンを縛る。エレクにやったみたいな感じで、手綱のようにしながら、その首に噛み付く。レッサーワイバーンの血を飲み尽くして倒しながら、ひたすら上へと向かっていった。
 この中で、【竜息吹】【竜爪】【飛竜翼】のスキルを手に入れた。

────────────────────

【竜息吹】:口から高温の炎を吐き出せる。

【竜爪】:魔力で竜のような鉤爪を作り出す事が出来る。

【飛竜翼】:魔力によって出来た飛竜の羽を生やす事が出来る。羽の展開時のみMPを消費して飛ぶ事が出来る。控えでも効果を発揮する。

────────────────────

 使い勝手に困るスキルと使う機会がないスキル、それと必要ないのではと思うスキルだった。でも、この考えの内、必要ないと思ったものだけは撤回する事になった。
 【飛竜翼】を使ってみると、【悪魔翼】と並行して使う事が出来た。これにより、飛ぶ速度が上がった。ただ、二種類の羽が生えている異様な状態だったけど。

「最早、吸血鬼じゃなくてキメラなんだよなぁ」

 スキルは前からキメラ的だったけど、もう見た目もキメラになってしまった。まぁ、気にしても仕方ないので、置いておく。
 群がってくるレッサーワイバーンを倒しきって、ようやく落ち着く事が出来るようになった。

『ガァ!』
「お疲れ様、スノウ。悪いんだけど、私を乗せて飛んでくれる?」
『ガァ!!』

 応じてくれたので、スノウの上に乗る。スノウに乗った理由は、ただ一つ。私が登ろうとしていた山の奥に、更に大きな山が聳え立っていたからだ。頂上は雲の中に入っていて見えない。ある程度高さを予測出来るけど、本当に高い。
 それを見てしまったので、もうスノウに乗って、一気に飛んで貰おうと思った。

「元々あった場所に近いところ……あの山頂は空に近い。何かあると良いんだけど……」

 ちょっとした期待を胸に、スノウと一緒に一番高い山の頂上へと飛ぶ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしまった。 この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。 憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。 そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。 名前は、早乙女 久。 プレイヤー名は オクツ。 運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。 何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。 初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。 ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

VRMMOでスナイパーやってます

nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー 私の名は キリュー Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている スナイパーという事で勿論ぼっちだ だが私は別にそれを気にしてはいない! 何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ! その趣味というのがこれ 狙撃である スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる 狙うは頭か核のどちらか 私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった 狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう そう思っていたが... これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である 尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ
SF
 昔は政府の諜報機関を司っていた名家に生まれ、お嬢様として育った風間奏音(かざまかのん)はしかし、充実感の無い日常に苛立ちを覚えていた。  そんなある日、高校で再会した幼馴染に気分転換にとVRMMOゲームを勧められる。この誘いが、後に世界一有名で、世界一恐れられる"最恐"プレイヤーを世に生み出す事となった。  奏音はゲームを通して抑圧されていた自分の本音に気がつき、その心と向き合い始める。    彼女の行動はやがて周囲へ知れ渡り「1人だけ無双ゲームやってる人」「妖怪頭潰し」「PKの権化」「勝利への執念が反則」と言われて有名になっていく。  恐怖の料理で周囲を戦慄させたり、裏でPKクランを運営して悪逆の限りを尽くしたり、レイドイベントで全体指揮をとったり、楽しく爽快にゲームをプレイ! 《Inequality And Fair》公平で不平等と銘打たれた電脳の世界で、風間奏音改め、アニー・キャノンの活躍が始まる!

処理中です...