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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

砂中を進むボスモンスター

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 エレクに乗りながらボスエリアへと転移出来る場所へ向かう。前にレインとソイルを乗せている。そこで気付いた事だけど、レインの水でダメージを受けなくなっていた。もしかしたら、受けているのかもしれないけど、【HP継続回復】や【聖血】の回復が上回っている。なので、これからはレインとも問題なく触れ合える。
 ソイルが増えても、エレクの速度は一切変わらなかった。レインとソイルは、小さいし軽いから、そこまで大きな影響はないって感じかな。

「ここだね」

 エレクを止めて、地面に降りる。私達が止まったので、スノウも降りてくる。ここに来るまで、周囲のモンスターは、スノウが狩ってくれたので戦闘は一度も起こらなかった。

「ここまでありがとうね」

 スノウに蟹肉をあげながら、お礼を言う。

「それじゃあ、ボスと戦うけど、基本的に私が吸血で倒す形で行こうと思う。だから、皆は、基本行動の阻害を重視して。エレク、レインとソイルを乗せて、ボスの攻撃から守ってあげて」

 エレクにレインとソイルを任せる。実際には、そこまで心配する必要はない。レインの強さはよく知っているし、同じ精霊であるソイルもほぼ同等の力を持っているはずだからだ。でも、もしもの事があるので、すぐに逃げる事が出来るはずのエレクと一緒にいて貰った方が安心出来る。
 皆と作戦を共有したところで、ボスエリアに転移する。
 砂漠のど真ん中に転移した。そして、すぐに【索敵】が反応した。真下に……

「でかい……てか、この形……」

 地鳴りのような音と共に少し離れた場所からボスモンスターが飛び出してきた。ミミズのような身体をしたそのモンスターは、顔と思われる場所に大きな口があり、その中はミキサーのように歯が並んでいた。ただ、一番の特徴は、そこではなく、その大きさだ。太さだけでも三メートルくらいあり、全長は【索敵】で認識出来る範囲で何十メートルもある気がする。この見た目の通り、名前はサンドワームだった。

「あれを吸血するのか……」
『やめておく?』

 レインの確認に、少し迷ってから首を横に振る。

「ううん。もう既に、泥も砂も飲んでるし、今更、あんなので尻込みしていられないよ。これから、ああいうのが増える可能性もあるし」

 他にも下水道に流れるスライムすら口に含んでいる。見た目からの嫌悪感はあるけど、これから同じような虫型モンスターから吸血する機会も出て来るはずなので、ここで前例を作り、これから先の嫌悪感を薄れさせる。そう自分に言い聞かせる。

「それじゃあ、予定通りに行動して! スノウ!」
『ガァ!』

 スノウの背中に乗って飛んで貰う。私も自分の羽で飛ぶ事が出来るけど、時間制限のないスノウに飛んで貰った方が安全だからだ。

「さて……レイン達にヘイトを向けない為には、こっちから攻撃しないとね。スノウ!」

 ただの呼び掛けで、スノウは私の考えを汲んでくれ、ブレスを吐き出し、サンドワームを攻撃した。サンドワームの身体の一部が凍り付き、苦しそうに身体をうねらせていた。

「攻撃は普通に通るね。私もこのスキルを試してみようかな」

 自分の手を噛んで、出血状態にし、血の球を作り出す。そして【射出】を使い、上から撃つ。平地で使うよりも、上から撃つ方が、速度が出ると思ってやったけど、目論見通りになった。速度を上げた血の球は、サンドワームに命中したけど、一ミリもダメージにならなかった。

「速度とかは良い感じだったけど、球でやったのが悪かったかな。なら……って、スノウ!」
『ガァ!』

 サンドワームが、急に私達に向かって身体を伸ばしてきた。スノウは、さらに上空へと移動する事によって、サンドワームの攻撃を避ける。私達を狙ってきたから、ちゃんとヘイトは稼げている。

「あまりダメージにはならないから、適度に攻撃していって、レイン達が拘束してくれるのを待とう」
『ガァァ!!』

 スノウが飛び回り、サンドワームが翻弄される。その間に、レインかソイルが拘束してくれる。そう信じる。
 この結果が出るのは、すぐだった。砂の中で自由に動けるはずのサンドワームが砂によって拘束される。いや、それは最初だけ。すぐに砂が固まっていった。砂の一粒すら動かせないように支配しているからこそ出来る事だ。
 さらに、レインが天候を雨へと変えて、集めた水を使い全身を氷で拘束していく。砂と氷による拘束は、サンドワームを完全に捕らえた。

「よし! スノウ、後はお願いね」
『ガァ!』

 スノウの上から飛び降りて、サンドワームの上に落ちる。【悪魔翼】で落ちる場所を選び、【血液収納】から双血剣を取り出し、サンドワームの身体に突き立てる。【影装術】と【血液武装】で身体をサンドワームに縛り付けて、吸血を始める。多分、これが私の必勝コンボだ。
 土臭い血液が口の中に入ってくる。カブトムシとかを飼っていた虫かごの中身のような臭いだ。あの中身を口に突っ込まれているような感覚と言えば、分かりやすいかな。猛烈な吐き気を抑えながら、血を飲み続ける。
 このまま上手くいくかと思ったけど、いつもそう都合良くいくとは限らない。レインによる氷の拘束が砕かれる。すぐに新しい氷が拘束しようとするけど、その前に砂の拘束すらすり抜けて、地面に潜ろうとする。
 もうすぐで砂漠に突っ込むというところで、一条の稲妻が横向きに落ちた。頭部と言って良いのか分からないけど、そこを貫いた稲妻によって、サンドワームが麻痺状態になる。さらに、サンドワームの下に潜り込んだスノウが、サンドワームの身体を掴み、思いっきり飛んだ。サンドワームの身体が、どんどん露出していく。
 そこに、砂や水が絡みつき、身体を再び拘束していく。さっきよりも念入りに拘束されていったサンドワームは、まるで塔のようになって固まった。しっかりと、双血剣を突き刺しておいてよかった。おかげで、影と血だけよりも安定している気がする。
 若干体勢が辛いけど、吸血は続けられる。どんどんとHPを減らしていって、サンドワームを倒した。サンドワームがポリゴンになった事で、身体が空中に投げ出されるけど、【悪魔翼】を使って空を飛ぶ事が出来る今となっては、何も怖くない。
 空中にいる私の元に、スノウがやって来る。スノウに乗るが一番安全なので、そのまま皆の近くに降りて貰う。その間に、【始祖の吸血鬼】の結果とドロップアイテムが表示される。手に入れたスキルは、【潜伏】というスキルで、ドロップアイテムはサンドワームの千枚牙、サンドワームの核だった。

────────────────────

【潜伏】:一定時間動かなければ、感知されにくくなる。控えでも効果を発揮する。

────────────────────

 これは、普通に今の私でも取れるスキルだ。特に隠れる必要がないから、スキルは取らなかったけど。

「まぁ、持っていないから良いか。皆、お疲れ様。ソイルも、初めての戦闘なのによく頑張ってくれたね。ありがとう」
『うん……』

 ソイルを撫でたら、横にいたレインもこっちに頭を向けたので、レインの頭も撫でてあげる。さらに、スノウやエレクも撫でて欲しそうにしていたので、二人も撫でてあげる。
 皆、良い働きをしてくれたしね。その後は、砂漠エリアの先である荒れ地エリアに一度足を踏み入れて、ボス戦を飛ばせるようにしてから、砂漠に戻り、ギルドエリアへと戻った。
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