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高く光へ昇り深く闇へ沈む吸血少女

砂漠に埋もれた像

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 エレクに乗って砂漠を駆けていく。空を飛ぶ事も出来るけど、二分しか飛べないから、エレクに乗った方が楽だし速い。今回は、レインには留守番をして貰っている。スノウには、大蝙蝠と一緒にモンスターを狩って貰っている。

「おっ、見つけた。エレク、止まって」

 目的の場所に着いたので、エレクに止まって貰う。そこにあったのは、小さな岩肌だった。地下を除けば、この場所が唯一の砂から剥き出しになっている場所だった。蝙蝠達に探索させた場所で、私達は直接通っていなかったので、一昨日とかは気付かなかった。
 エレクから降りて、岩肌に近づく。

「ただの岩肌……結構滑らかな感じだ。岩の塊なのかな?」

 【大地操作】で、周囲の砂を退かしていく。そうして現れたのは、一つの像だった。祈りを捧げている少女のように思える。その像は、かなり汚れていた。ずっと砂の中にいたので仕方ないのかな。

「【召喚・レイン】」
『どうしたの?』
「この像を洗ってくれる?」
『うん。ん?』

 少しレインの様子がおかしい。

「どうかした?」

 一応確認しておいた方が良いと思って訊いた。

『ううん。何でもないよ』

 レインはそう言いながら、像に水を掛けていく。私は、適当な布を探して、汚れを擦り落とす。十分くらい洗浄したら、綺麗な像になっていた。レインの水が聖属性だっていう事もあるのかな。

「よし! 綺麗になった! ありがとう、レイン」
『うん』
「それにしても、このままだと、また埋もれちゃうよね。どうしようか……」

 フィールドの状況を変える事が出来るか分からないけど、このまま砂の中に埋めてしまうのは可哀想だ。どうしようかと悩んで、一つ方法を思い付いた。

「スノウ!」

 どこかで狩りをしているスノウを呼ぶ。すると、十秒もしない内にスノウが降りてきた。

『ガァ!』
「来てくれてありがとう。スノウにお願いがあるんだけど、この像を持ち上げてくれる?」
『ガァ!!』

 任せろと言わんばかりに威勢の良い声で返事をして、像を掴み持ち上げる。重すぎないかなって思ったけど、スノウの力なら大丈夫みたいだ。像が完全に砂漠から持ち上がったのを見て、【悪魔翼】を使って穴から出る。レインも空を浮いて出て来た。
 全員が出たのを確認してから、穴を元に戻して、像を砂の上に置いて貰う。

「さて、アイテムとして手に入れば良いけど、回収出来ないんだよね。どうするべきか……ん?」

 像を引っ張り上げたは良いけど、このまま放置していいものかと思っていたら、像の台座の更に下から、青い靄が上がってくるのが見えた。【霊峰霊視】で見えているその靄は、像の全体を包み込む。
 【霊峰霊視】で靄を固めようとしているけど、中々固まらない。今までになかった事だ。青い靄は、そのまま像の中に吸い込まれていった。直後、像に罅が入る。

「えっ!?」

 突然の事に動揺を隠せない。さっきまで、像が壊れるような要素はなかったはず。それなのに、青い靄が像に吸い込まれた途端、こんな事になるとは……

「【大地操作】で無理矢理……うわ、全然操作出来ない!?」

 何とか像を元に戻そうとしたけど、全く上手くいかない。そして、何も出来ないまま像が割れて、少女が出て来た。

「!?」

 まさか少女が出て来るとは思わなかった。首元くらいまで伸ばした茶髪に、茶色い眼をした少女だ。ただ、身体が少し透けている。
 まるで、レインのようだった。

「えっと……まさかだけど、精霊?」
『ん……うん……私は……地の精霊ノーム……名前……欲しい……』

 目の前にレインの時のようなテイム確認ウィンドウが出て来た。

『地の精霊ノームをテイムしますか? YES/NO』

 まぁ、ここでYESを押さない訳ないよね。すぐに命名画面に飛ぶ。レインの時は、レイン自身の境遇などから、名前が思い付いたけど、この子の事は、まだよく分かっていないので、パッと思いつかない。

「う~ん、安直すぎるかもだけど、ソイルでどう?」
『ソイル……うん……それが良い……』

 気に入ってくれたみたいで良かった。まさか、こんな事で地の精霊をテイム出来るとは思わなかったけど、良い方向に転んで良かった。

「レインは、最初から気付いていたの?」
『う~ん……ちょっと違うよ。ソイルは、今の今まで、あの像にはいなかったから』
「ん? どういう事?」
『えっとね。確かに、あの像に違和感はあったけど、私の力を通しやすいってだけだったの。だから、あの像にソイルが眠っていたわけじゃないの。でもね、この地下にも私と似たような力が流れてて、綺麗にした像に流れ込んだんだ。それが、ソイル』

 つまり、この地下に霊脈みたいなのがあって、あの像を綺麗にした事で、その力が流れ込んでいき、ソイルを生んだって事なのかな。そこから考えると、まだソイルは生まれたばかりって事になる。

「さっきの像が、精霊を生み出す為の触媒みたいな扱いなのかな……」

 念のため、石像の破片を回収してみる。祈りの霊像の破片という名前が付いている。

────────────────────

祈りの霊像の破片:霊力を集め精霊と生み出す為の像の破片。精霊を生み出した後のため、既に霊力は失われている。

────────────────────

 やっぱり精霊を生み出すための像だったらしい。もしかしたら、綺麗にしなくても、あのまま待ち続ければソイルが生まれていたのかもしれない。でも、綺麗にしたいって思ったのだから、あの行動は間違ってはない。

「取り敢えず、色々とびっくりだけど、これからよろしくね。ソイル」
『うん……よろしく……マスター』
「マ、マスター? レインと同じようにお姉さんとか呼びやすい呼び方で良いよ?」
『うん……お姉ちゃん』

 ソイルからの呼び名は、お姉ちゃんで決まった。末っ子だから、お姉さんやお姉ちゃん呼びが、少し嬉しい気がする。
 丁度良いので、ソイルに皆の事を紹介しつつ、ソイルのスキルを確認する。

────────────────────

ソイル:【魔導】【大地魔法才能】【支配(地)】【無限大地】【地精霊】【精霊体】【採鉱冶金】

────────────────────

 レインの土バージョンと思っていたけど、レインにあってソイルにないものがあった。それは、神の名前を持つスキルだ。レインは生まれが特殊だからか、他の精霊にはない力を持っているという事らしい。
 その事に驚いている間に、皆がソイルと打ち解けていた。うちの子達は、全員仲良しで良かった。

「ギルドチャットで共有しとこ」

 エレクの時と同じように、ギルドチャットで報告しておく。

「それじゃあ、皆でボスエリアに行こうか」

 せっかく仲間になったので、ソイルの力の確認も合わせてボスに挑む事にした。過剰戦力な気もするけど、ここのボスを知らないので、用心に越した事はないだろう。
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