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真冬と真夏の吸血少女

ギルド設立の課題

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 ジロジロと見てくる視線を感じながら、ギルド会館に入る。すると、すぐに職員NPCが近づいてきた。

「ギルドの申請に来ました」
「かしこまりました。受付までどうぞ」

 アカリと一緒に受付まで向かう。別の職員NPCが出て来て、営業スマイルで迎えてくれる。

「ギルドの申請をお願いしたいんですが」
「かしこまりました。こちらの申請書をよく読んでから、ご記入をお願いします」

 ペンと紙を渡されるので、アカリと二人で紙を読む。書かれているのは、日本語なので、【言語学】抜きで読める。
 書かれている内容は、ギルド設立の上での注意事項などだった。これから受ける課題を突破しないといけない事とギルドエリア開放には、別途お金が掛かる事などだ。その後に書かれているのは、ギルドマスターとサブマスターの名前を書く欄とギルド名を書く欄だった。ギルドマスターに私の名前、サブマスターにアカリの名前を書いて、少し固まる。

「ギルド名……」
「考えて……ないみたいだね。どうする?」

 私がギルドマスターになるからか、アカリは、私に委ねるみたいだ。名付けは苦手なのに。

「う~ん……白光で」
「却下。リアルネームで考える人がいる? それなら、白灯……感じだとハクちゃんがあれだから、ハクトウとかじゃない?」
「なるほど……桃みたいな名前だね」
「じゃあ、やめとこ。桃好きだと思われるかもだし」
「全くもう……アカリは我が儘なんだから。う~ん、じゃあ……真紅の屋敷は?」
「急にどうしたの?」

 アカリは、私の額に手を当てて、熱でもあるのかみたいな顔をしてくる。真面目に考えているのに、失礼だと思う。

「私が血を飲むから」
「それなら、いっそ真紅の吸血館とかでも良いんじゃない?」
「いや、吸血付けるなら、真紅は要らないでしょ」
「じゃあ……吸血鬼の羽衣とか」
「防具の名前みたい」
「確かに……結構良い名前かも!」
「いや、防具じゃなくて、ギルド名ね」

 中々良い名前が思い付かない。もう少し集団的な名前が良いのかな。まぁ、私とアカリだけなのだけど。

「ブラッドソーイングは? 私達の要素を英語で付けてみたけど」
「良いんじゃない? 変に団とかに拘るよりも、そっちの方がシンプルで好きかも」
「ハクちゃんも良いなら、これで決まりね」

 アカリが、ギルド名も書き込む。これで、申請書の記入は終わりだ。

「よろしくお願いします」
「はい。承りました。こちらが、お二人に受けて頂く課題です」

 課題が書かれている紙を受け取る。

「……蒼鶚あおみさごの討伐?」
「鶚って、鳥だったっけ? それを十匹討伐すれば良いんだね。期間は、三日以内。嘴が証明になるみたい」

 三日という期限が長いのか短いのか分からないけど、早く終わらせた方が良いのは確かだ。

「それなら、早速行こう」
「お気を付けて」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」

 職員NPCに見送られて、私達はギルド会館を出て行く。そして、ポートタウンも出て、砂浜の方へと向かった。鶚は、魚を食べる鳥だったはずなので、海沿いにいると思ったからだ。

「さてと、蒼鶚って言うくらいだから、青いんだろうけど、こうも空が青いと保護色になってそう」
「確かに。同じように海を見ても分からないだろうし、そういう意味じゃ厄介かもね。でも、【感知】で探れば、居場所は分かると思うよ」
「ああ、それもそうか。蝙蝠も出しておくけど、食べられたりしないかな?」
「魚が主食じゃなかった? うろ覚えな知識だけど」
「じゃあ、大丈夫か。大丈夫か?」

 若干心配ではあるけど、今のところ蝙蝠がやられたような感じはない。蒼鶚を見つけようとしていると、急に目の前にウィンドウが出て来た。それは、ドロップアイテムの表示で、蒼鶚の嘴、蒼鶚の羽根、蒼鶚の血と書かれていた。

「……スノウが蒼鶚を狩ってる」
「うぇ!? 今って、スノウちゃんはどこにいるの?」
「さぁ? 呼べば来てくれると思うけど。てか、スノウってメスなの?」

 アカリが、ちゃん付けで呼んでいたから、どこかに見分ける手段があったのかと気になった。

「分からないけど、仕草が可愛いから」
「ああ、なるほど」

 確かに、スノウの仕草は、ボスモンスターなのかと疑いたくなる程可愛い。それを考えると、ちゃん付けにも納得する事は出来る。

「取り敢えず、スノウを呼ぶね。スノウ」

 私が呼ぶと、スノウが目の前に着地した。

「蒼鶚を倒したの?」
『ガァ!』

 スノウは、笑いながら頷いた。ちょっと自慢気だったので、軽く撫でてあげる。

「スノウにお願いがあるんだけど、蒼鶚を見つけたら、すぐに狩って。でも、誰かが戦っているところに割り込むのは無しね。分かった?」
『ガァ!!』

 スノウは、元気な返事をしてから飛び立っていった。これである程度は、蒼鶚を狩ることが出来るはずだ。

「スノウちゃんは、本当に優秀だね。テイムモンスターって、皆、あんな感じなのかな?」
「さぁ? でも、スノウが特別って言われても、驚きはしないかもね」
「私も生産に関わるようなテイムモンスターが欲しいなぁ」
「生産に関わるって、どんな感じで?」
「う~ん、炉の温度を高めてくれたり、糸や布を作ってくれたりとかかな?」
「そうなると、虫とかになるのかな」
「え~、妖精とかが良いなぁ」

 そんな話をしていたら、蝙蝠が超音波を出す。

「来るよ」

 私がそう言うと、すぐにアカリが細剣を抜く。こういうとき、混乱しないで行動に移ってくれるのは、本当に助かる。すぐに、【感知】も反応する。来る方向を斜め上。空からだった。青い羽根に覆われた鳥だった。勢いよくこっちに突っ込んでくる蒼鶚に向かって、月影を投げつける。羽の付け根に突き刺さり、蒼鶚の動きが乱れる。墜落していく蒼鶚に急接近したアカリが、細剣を突き刺す。そこに、高速移動で詰めて、日影で斬り裂く。
 この連携で蒼鶚は倒れた。

「ちょっと硬かったね。攻撃力不足かな?」
「私達二人とも攻撃力で叩く戦い方じゃなくて、速度で戦う感じだから、仕方ないでしょ」
「そうだけど、一撃で倒すのとかには憧れちゃうな」
「へぇ~、確かに、一撃で倒せるっていうのは良いね。まぁ、私は血を吸いたいから、一撃で倒しちゃうと困るけど」
「あっ! もしかして、蒼鶚も飲みたかった?」
「ん? まぁ、飲みたいけど、最初は安全確保からかな。だから、さっきのは気にしなくて良いよ」

 どのみち倒したのは、私だからアカリの気にするところではない。
 蒼鶚に関しては、勢いを殺させれば、【操影】で捕まえられるとは思う。そこで首さえ掴めれば、後は血を吸うだけだ。もしかしたら、鳥とか蝙蝠系は、私みたいな吸血鬼と相性が悪いかもしれない。

「さてと、この調子で倒していこうか」
「うん」

 それから三十分で、十個の嘴を集める事が出来た。十個の内七個は、スノウが倒した蒼鶚から手に入れた。スノウ様々だ。

「それじゃあ、スノウは、また空にいてね。蒼鶚なら、狩っていても良いからね。でも、無理はしないこと」
『ガァ!』

 スノウは、元気に頷くと、また空に飛んでいった。スノウを見送って、私とアカリはギルド会館に戻る。相変わらず、街にいるプレイヤーは、私を見てくる。見た目の情報が完全に漏れている。さっさと落ち着いてくれる事を祈るばかりだ。
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