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真冬と真夏の吸血少女
一つの決断
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あの後、スノウの背中に乗りながら、ファーストタウンの近くまで移動した。ちょっと驚いたけど、スノウの背中に乗っていると、ボスエリアとか関係なく移動出来るみたいだ。クリアしていないボスエリアを通る際に関しては、まだ分からないから、どこでも使えるって訳では無いと思う。
スノウには、基本空にいるように伝えて、その日はログアウトした。
翌日。ファーストタウンに降り立った私は、すぐにその場から駆け出し、外に出た。そして、平原の端の方に移動する。
「スノウ」
名前を呼ぶと、スノウが降りてきた。最後に別れた時と同じように、ちゃんと【矮小化】を使ったサイズだ。
「スノウ、良い子にしてた?」
『グル?』
スノウは、言っている意味が分からないというように首を傾げていた。
「スノウは、昨日私と別れてから、どこか行った?」
『グル?』
スノウは首を傾げた後に、横に振った。つまり、私と一緒に消えていたと考えて良さそう。
「これなら、そこまで急ぐ必要はないかな? 取り敢えず、また空にいてくれる? 私は街にいるから。呼んだら降りてきて」
スノウに、ホワイトラビットの肉をあげてから、ファーストタウンに戻り、フレ姉のギルドハウスに向かう。昨日の報告の返事で、昼にギルドハウスに来るようにと言われていたからだ。
ギルドハウスの扉の前に来ると、ちょうどランサスさんが出て来たところだった。
「おっ、ハクちゃん。姐さんなら、奥にいるぞ」
「ありがとうございます」
「嫉妬深いプレイヤーは多いからな。大変だと思うが、頑張れよ。こっちも出来る限りの事はしておくからな」
ランサスさんも、昨日の事を知っているみたい。多分、掲示板で大騒ぎになっていたのかな。そういえば、ここに来るまでに、大分私の事を見ている人が多かった気がする。一度認識されると、【擬態】の効果は薄れるという事は、昨日でよく分かっている。
「ありがとうございます。あの、やり過ぎは止めて下さいね。全部、私のせいではあるので」
「せいって言い方はなしだな。ハクちゃんが悪いわけじゃない。俺だって、羨ましいって思うが、他のプレイヤーを害してまで知りたいとは思わないしな」
「そう言ってくれると嬉しいです」
「何かあれば、いつでも言ってくれ。力になる」
「ありがとうございます」
「おう。それじゃあな」
ランサスさんが開けてくれた扉からギルドハウスに入り、ランサスさんと手を振って別れる。そして、いつものフレ姉の部屋の扉をノックした。すると、すぐに扉が開く。開けてくれたのは、ゲルダさんだった。
「いらっしゃい」
ゲルダさんに招かれて、ソファに座らされる。
「来たな。掲示板で大騒ぎだったぞ。今は、大分収まっているけどな」
「そうなの?」
「ああ。私が動く前に、既に火消しが行われていた。良識あるプレイヤーによるものだろうな。それと、あの場でも事態は、ある程度収束していたらしい。ハクを勧誘していた奴等によるものだな。まぁ、そいつらが、勧誘をしなければ、こんな事態にはなってねぇんだけどな」
「それじゃあ、スノウと一緒にいても問題ない?」
「問題はあるけど、もう止める理由が薄くなるわね。寧ろ、一緒にいた方がトラブルを引き寄せて、早期解決に繋がるかもしれないわ」
ゲルダさんがそう言うと、フレ姉は少し不機嫌そうにしていた。私がトラブルに巻き込まれる事を好まないからだ。
「他にもボスモンスターをテイムした人がいると良いんだけど。そもそも、テイムモンスターを連れている人は少ないんだよね?」
「ええ。昨日の今日で、増えるわけもないから」
「PKをされそうになったら、通報して返り討ちにしてやれ。正当防衛になるだろうからな」
「うん」
「それで、結局家を買うことにしたのか? それもギルドを作るか?」
フレ姉に訊かれて、すぐに答える事が出来なかった。私自身、まだ迷っている事だったからだ。
「家は一通り見て回ったけど、良さそうな家はなかった。スノウからしたら、窮屈そうな家ばかり」
「まぁ、スノウが満足するような広さって意味なら、スノータウンの屋敷しかないだろうな。それか、ギルドエリアか。ギルドエリアは、使えそうなのか?」
「うん。テイムモンスターも対応しているって説明を受けたよ。だから、ギルドエリアも候補に入るよ」
これに関しては、しっかりとギルド会館の職員に確認したから間違いない。
「そういや、ログアウトした後のスノウはどうなるんだ?」
「私と一緒に消えるみたい。基本的に、私を基準として存在しているっぽいよ」
「なるほどな。スノウもログイン、ログアウトするって事か。なら、ゆっくりと考えられるな。自分が納得出来るまで考えると良い」
「うん。ありがとう」
そう言った直後、私達にお知らせが届いた。
「これは……アンケートの結果か。反対多数で、PKに要素を追加する事はしねぇみてぇだな。ただPvPにおいては、要素を増やすか。ランキング戦、賭け試合。まぁ、悪くはねぇかもな」
「賭け試合って良い事? 新しい揉め事になると思うけど」
「そこら辺に関しては、バランス調整をしてあるみたいね。互いの了承が前提で、賭けの対象に関しても、等価となるようにしないといけないみたいだわ。裏の設定にレアリティがあるみたいね。私達もドロップ率とかでレア度を算出していたけど、それが正しいかの判別に使えるかもしれないわね」
ゲルダさんは、既にPvP以外の活用法も見出していた。ここでのレア度が、これからの物の価値になるかもしれない。アカリ達生産職の買い取り額も、また変動しそうだ。それを面倒くさそうって思ってしまう時点で、私は生産職には向いていないなって思った。
「ランキング戦には、報酬が出るみてぇだな。まぁ、大した報酬じゃねぇとは思うが」
「あくまで、ゲームの一要素って事ね。これを主体にするつもりはないって事かしら。でも、個人でのランキング戦があるのなら、ギルドでのランキング戦が増えてもおかしくないわね」
「やっぱり、ギルドって面倒くさい?」
ギルド戦があるとか言われると、やっぱり面倒くさいかもって思ってしまう。
「まぁ、規模が大きくなれば、面倒くさい事は増えるな。ギルドメンバーの管理とギルド共通財産の管理とかな。ハクは、そこまで大きなギルドは作らねぇだろ。それなら、そこまで面倒くせぇ事はねぇと思うぞ」
「そうね。何か分からない事があったら、私かフレイに訊けば良いわ。教えられる事なら、教えるから」
「それに、ギルド戦が始まったとしても、強制的ではねぇはずだ。そこは心配しねぇでも大丈夫だろ」
二人の話を聞いて、ちょっと安心出来たかもしれない。
「それじゃあ、私は行くね。色々としたい事もあるから」
「おう。気を付けろよ」
「何かあったら、まずは逃げるのよ。相手にするだけ無駄だから」
「はい」
私は、フレ姉のギルドハウスを出る。
「ポートタウンには、まだ行かない方が良いよね。面倒くさい人達が残っているかもだし。それなら……図書館……は、スノウが暇になっちゃうか。早めに、スノウが安全に過ごせる場所を探さないと……ってなると、悠長に考えている時間はない。家か……ギルドエリアか……スノウの安全と私が使う利便性を考えれば……うん。気乗りはしないけど、これが最善の手段のはず」
私の脚は、自然とある場所に向かっていた。
スノウには、基本空にいるように伝えて、その日はログアウトした。
翌日。ファーストタウンに降り立った私は、すぐにその場から駆け出し、外に出た。そして、平原の端の方に移動する。
「スノウ」
名前を呼ぶと、スノウが降りてきた。最後に別れた時と同じように、ちゃんと【矮小化】を使ったサイズだ。
「スノウ、良い子にしてた?」
『グル?』
スノウは、言っている意味が分からないというように首を傾げていた。
「スノウは、昨日私と別れてから、どこか行った?」
『グル?』
スノウは首を傾げた後に、横に振った。つまり、私と一緒に消えていたと考えて良さそう。
「これなら、そこまで急ぐ必要はないかな? 取り敢えず、また空にいてくれる? 私は街にいるから。呼んだら降りてきて」
スノウに、ホワイトラビットの肉をあげてから、ファーストタウンに戻り、フレ姉のギルドハウスに向かう。昨日の報告の返事で、昼にギルドハウスに来るようにと言われていたからだ。
ギルドハウスの扉の前に来ると、ちょうどランサスさんが出て来たところだった。
「おっ、ハクちゃん。姐さんなら、奥にいるぞ」
「ありがとうございます」
「嫉妬深いプレイヤーは多いからな。大変だと思うが、頑張れよ。こっちも出来る限りの事はしておくからな」
ランサスさんも、昨日の事を知っているみたい。多分、掲示板で大騒ぎになっていたのかな。そういえば、ここに来るまでに、大分私の事を見ている人が多かった気がする。一度認識されると、【擬態】の効果は薄れるという事は、昨日でよく分かっている。
「ありがとうございます。あの、やり過ぎは止めて下さいね。全部、私のせいではあるので」
「せいって言い方はなしだな。ハクちゃんが悪いわけじゃない。俺だって、羨ましいって思うが、他のプレイヤーを害してまで知りたいとは思わないしな」
「そう言ってくれると嬉しいです」
「何かあれば、いつでも言ってくれ。力になる」
「ありがとうございます」
「おう。それじゃあな」
ランサスさんが開けてくれた扉からギルドハウスに入り、ランサスさんと手を振って別れる。そして、いつものフレ姉の部屋の扉をノックした。すると、すぐに扉が開く。開けてくれたのは、ゲルダさんだった。
「いらっしゃい」
ゲルダさんに招かれて、ソファに座らされる。
「来たな。掲示板で大騒ぎだったぞ。今は、大分収まっているけどな」
「そうなの?」
「ああ。私が動く前に、既に火消しが行われていた。良識あるプレイヤーによるものだろうな。それと、あの場でも事態は、ある程度収束していたらしい。ハクを勧誘していた奴等によるものだな。まぁ、そいつらが、勧誘をしなければ、こんな事態にはなってねぇんだけどな」
「それじゃあ、スノウと一緒にいても問題ない?」
「問題はあるけど、もう止める理由が薄くなるわね。寧ろ、一緒にいた方がトラブルを引き寄せて、早期解決に繋がるかもしれないわ」
ゲルダさんがそう言うと、フレ姉は少し不機嫌そうにしていた。私がトラブルに巻き込まれる事を好まないからだ。
「他にもボスモンスターをテイムした人がいると良いんだけど。そもそも、テイムモンスターを連れている人は少ないんだよね?」
「ええ。昨日の今日で、増えるわけもないから」
「PKをされそうになったら、通報して返り討ちにしてやれ。正当防衛になるだろうからな」
「うん」
「それで、結局家を買うことにしたのか? それもギルドを作るか?」
フレ姉に訊かれて、すぐに答える事が出来なかった。私自身、まだ迷っている事だったからだ。
「家は一通り見て回ったけど、良さそうな家はなかった。スノウからしたら、窮屈そうな家ばかり」
「まぁ、スノウが満足するような広さって意味なら、スノータウンの屋敷しかないだろうな。それか、ギルドエリアか。ギルドエリアは、使えそうなのか?」
「うん。テイムモンスターも対応しているって説明を受けたよ。だから、ギルドエリアも候補に入るよ」
これに関しては、しっかりとギルド会館の職員に確認したから間違いない。
「そういや、ログアウトした後のスノウはどうなるんだ?」
「私と一緒に消えるみたい。基本的に、私を基準として存在しているっぽいよ」
「なるほどな。スノウもログイン、ログアウトするって事か。なら、ゆっくりと考えられるな。自分が納得出来るまで考えると良い」
「うん。ありがとう」
そう言った直後、私達にお知らせが届いた。
「これは……アンケートの結果か。反対多数で、PKに要素を追加する事はしねぇみてぇだな。ただPvPにおいては、要素を増やすか。ランキング戦、賭け試合。まぁ、悪くはねぇかもな」
「賭け試合って良い事? 新しい揉め事になると思うけど」
「そこら辺に関しては、バランス調整をしてあるみたいね。互いの了承が前提で、賭けの対象に関しても、等価となるようにしないといけないみたいだわ。裏の設定にレアリティがあるみたいね。私達もドロップ率とかでレア度を算出していたけど、それが正しいかの判別に使えるかもしれないわね」
ゲルダさんは、既にPvP以外の活用法も見出していた。ここでのレア度が、これからの物の価値になるかもしれない。アカリ達生産職の買い取り額も、また変動しそうだ。それを面倒くさそうって思ってしまう時点で、私は生産職には向いていないなって思った。
「ランキング戦には、報酬が出るみてぇだな。まぁ、大した報酬じゃねぇとは思うが」
「あくまで、ゲームの一要素って事ね。これを主体にするつもりはないって事かしら。でも、個人でのランキング戦があるのなら、ギルドでのランキング戦が増えてもおかしくないわね」
「やっぱり、ギルドって面倒くさい?」
ギルド戦があるとか言われると、やっぱり面倒くさいかもって思ってしまう。
「まぁ、規模が大きくなれば、面倒くさい事は増えるな。ギルドメンバーの管理とギルド共通財産の管理とかな。ハクは、そこまで大きなギルドは作らねぇだろ。それなら、そこまで面倒くせぇ事はねぇと思うぞ」
「そうね。何か分からない事があったら、私かフレイに訊けば良いわ。教えられる事なら、教えるから」
「それに、ギルド戦が始まったとしても、強制的ではねぇはずだ。そこは心配しねぇでも大丈夫だろ」
二人の話を聞いて、ちょっと安心出来たかもしれない。
「それじゃあ、私は行くね。色々としたい事もあるから」
「おう。気を付けろよ」
「何かあったら、まずは逃げるのよ。相手にするだけ無駄だから」
「はい」
私は、フレ姉のギルドハウスを出る。
「ポートタウンには、まだ行かない方が良いよね。面倒くさい人達が残っているかもだし。それなら……図書館……は、スノウが暇になっちゃうか。早めに、スノウが安全に過ごせる場所を探さないと……ってなると、悠長に考えている時間はない。家か……ギルドエリアか……スノウの安全と私が使う利便性を考えれば……うん。気乗りはしないけど、これが最善の手段のはず」
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