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真祖となった吸血少女

優勝賞品と次の目的

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 喧嘩が終了し、フレ姉とゲルダさんが二人掛けソファに、アク姉、私、アカリで三人掛けソファに座った。

「カカオからチョコレートケーキを作るって、どうなの?」
「チョコレート自体が売ってなかったからな。店員に訊いても、取り扱ってねぇってんだから、自分で作るしかねぇだろ」
「姉さんって、変なところで頑張るよね。おっ、意外とビターだ」

 アク姉が美味しそうにケーキを食べている。アカリとゲルダさんも同じくケーキを食べていた。

「そういえば、ハクは、どこでキル数を稼いだの? 結構早い段階から、戦っていたわよね?」

 ソルさんと戦い始めたのは、あの集団戦を終えて少しした後、まだイベントが始まって三十分くらいの時だった。そこから一時間半も戦いっぱなしだった事を考えると、よく生き残ったなと思ってしまう。

「その前に四十人くらいの集団に絡まれたんですが、それを全滅させたので、戦う前からある程度は稼げていたって感じです」

 訊かれた事を説明したら、全員からジト目で見られた。特にゲルダさんの呆れたような目が突き刺さる。

「問題があれば、運営に報告しておけ。まぁ、今回のは、BANまでいかないだろうけどな」
「うん」
「そうだ。アカリ、今回のイベントで不意打ちは多かったか?」

 フレ姉に訊かれて、アカリはイベントでの事を思い出していた。

「弓持ちとか魔法を使った不意打ちはありました。建物の中から撃たれた感じです」
「まぁ、その戦法が普通だよな。ゲルダはどうだ?」
「私は、早々に諦めていたから、遭わなかったわね」
「まぁ、巻き込まれる可能性もあるからな。私達姉妹は、全員天災と同じになっていたからな。不意打ちもなにも無かったんだよな」

 建物を破壊して戦う私達には、不意打ちも何もなかった。そもそも私達が不意を打っている感じもあるし。

「ゲルダは、入賞したのか?」
「ギリギリ十位に入って、賞品を貰ったわね。あなた達三姉妹とハクの対戦相手のソルさんが食い荒らした結果ね」
「荒れますかね?」
「まぁ、バトルロイヤルだから、そんなものよ。荒れはしないと思うわ。やりすぎっていうのは否めないけれどね。文句があるのなら、勝てばいい話よ。そういうイベントなのだからね」

 ゲルダさんは、ソルさんと同じ意見だった。まぁ、私は掲示板を見ないし、荒れているかどうかも分からないから、ゲーム内で絡んでこなければ良いかな。

「まぁ、気を付けとけ」
「うん」
「そんじゃあ、せっかくだから、賞品を開けてみるか」
「フレ姉も手に入れたの?」
「ああ、アクアもな」

 ここにいる全員入賞出来たみたい。割と凄い事だと思ったけど、この内三人が、周囲を巻き込む戦闘をしていた事を考えると、こういう事もあり得るとも思ってしまう。

「私が三位で、姉さんが四位だよ」
「アクアの方が、かなり巻き込んでいたからな」

 二人も私と同じようにキルを重ねていたみたい。

「フレ姉達が開けるなら、私も開けちゃおっと」

 今回の賞品を開ける。すると、目の前にウィンドウが現れた。

『古代樹の枝』『太古の仙骨』『餓狼王の血液』

 この三つが表示された。

「そこそこの素材だな。数を揃えるのは難しいってくらいだが。ハクはどうだ?」
「見た事も聞いた事もない素材が三つ出て来て、選べって。餓狼王って知ってる?」

 この中で、一番先に進んでいるのは、フレ姉とゲルダさんだ。だから、二人に訊けば、ある程度のレア度は分かる。

「聞いた事ねぇな。ゲルダは?」
「私もないわね。アカリの方はどう?」
「私もないです」

 皆知らないって事で、本当にレアな素材なのだと分かる。血液だから、ちょっと気になる。少し迷ってから、餓狼王の血液を選択した。

「何にしたの?」

 アカリが訊いてくる。

「餓狼王の血液っていうやつ」
「血液? じゃあ、素材で使わないの?」
「う~ん……イベントで出て来た血液と同種かもしれないし、飲もうかなって考えてる」

 素材として扱わない事で後悔するかもしれないけど、イベントで手に入れた血液にも同じ事が言えるし、何となく使いたいって思ってしまう。

「よし! 飲む!」

 入れ物の蓋を開けて、血を一気に呷る。血特有の嫌な味が広がり、同時に謎の空腹感に襲われる。すぐに、フレ姉のチョコレートケーキを食べるけど、空腹感が収まらない。

「フレ姉、お腹空いた」
「適当な作り置きがあったな。ちょっと待ってろ」

 フレ姉がキッチンの方に向かっていって、色々な料理を出してきた。肉料理から魚料理まで、本当に様々な料理だ。

「何で、こんなに料理作ってんの?」
「息抜きだな」
「姉さんらしいっちゃ姉さんらしいけど」

 フレ姉の料理を次々に食べて、空腹を満たしていく。

「前も変な血を飲んで変な事になってたよな。何か特定の条件を持った血液って事か」
「分かんないけど、そうだと思う」

 段々と空腹感が消えていき、満足感へと変わっていった。完全にお腹が満たされると、目の前にウィンドウが表示された。

『特殊条件を満たしました。以下のスキルを解放します。【血行促進】【血液増加】【血液感知】』

 唐突にスキルが解放された。アップデートで、スキルが増えた時に分かりやすくなったのは有り難いのだけど、条件を表示してくれないのは何故なのか。

「スキルが増えた」
「ん? アイテムからでもスキルを獲得出来るのか?」
「ううん。そうじゃなくて、条件を満たしたみたい。血液関係のスキルが解放された。よく分からないけど、餓狼王の血液で条件が満たされたみたいだよ」
「この前のイベントで飲んでいた血も同じように条件だったのかもな」

 ここら辺のスキルは、また後でじっくりと調べる事にする。賞品の開封を終えたところで、私は一つ気になる事があった。

「そういえば、フレ姉とアク姉は、どのくらい戦ってたの?」

 私は、ソルさんと一時間半戦っていた結果、周囲も巻き込むような戦い方になったけど、アク姉達はいつから戦っていたのか、ちょっと気になった。

「最初からだな」
「え?」
「始まってすぐに姉さんと出くわしちゃってさ。そこから、ずっと戦いっぱなし。色々と工夫して倒そうとしたんだけど、【退魔】付きを使われて、苦戦する事になっちゃってさぁ」
「こっちもリビングアーマーを召喚されるとは思わなかったけどな」
「あっ、召喚魔法取れたの?」
「ふっふっふ。アメスに、図書館で缶詰にされたからね」

 自分の意思で行った訳じゃなかった。アメスさんも、アク姉が三日坊主で終わると思ったらしく、図書館に監禁したみたい。アク姉の戦力強化は、パーティーとしても重要な事だから、もしかしたらソフィアさん達も協力していたかもしれない。

「あっ、そうだった。これ返すね」

 アク姉から、貸していた本を返して貰った。

「それが、アクアのスキルの秘密か?」
「うん。これを読むことが条件。地下道にあるよ」
「あの報告にあったものね。【霊視】と【言語学】が必須ってなると、気付く人は少ないでしょうね」
「でも、元々図書館の中にある鍵から始まるものですから、【言語学】に関しては持っている前提でもおかしくないと思いますよ」
「そういえば、そうだったわね。さっさと【霊視】が欲しいところだけど、現状だと、まだ見つかってないのよね」
「そういえば、フレ姉達は、どこを攻略してるの?」

 アップデートで増えたのは、北の雪嶺エリアと西の山脈エリアと南の砂漠エリアの三つ。同時に追加されたので、攻略の順番は分からない。

「今は雪嶺エリアだ。そこには、【霊視】の素材はないな」
「あっ、そういえば、【霊視】の素材が売られてきましたよ。確か、山脈エリアから出て来たものだそうです」

 この中で唯一生産職をしているアカリが教えてくれた。とうとう他の素材からも【霊視】に繋がるものが出て来たみたい。

「どのくらい売られてきてるんだ?」
「まだ一つだけですね。結構レアな素材みたいです。普通に買い取りを希望したので、【霊視】の能力を理解していないんだと思います」
「レア素材か……」
「山脈エリアに集中する?」
「……いや、しばらくは今のままでいいだろう。いずれ手に入るだろ」

 今のフレ姉とゲルダさんの話から、ギルドメンバーが自由に色々なエリアを攻略している事が分かる。

「そういや、アカリとハクはどうなんだ? 豪雨エリアは終わったんだろ?」
「そろそろ雪のエリアに行こうかなって思って、アカリに防寒着を頼んでるところ。この装備じゃ駄目でしょ?」
「だね。アプデで何かしら改善しているかなって思って行った事があるけど、全然駄目だった」
「防具も、明日の朝には渡せるようにしておくよ。そろそろ完成だから」
「ありがとう」

 寒冷用防具が出来上がれば、北エリアの攻略を開始出来る。ただ、他にも進行途中のクエストとか魔導大図書館とか色々と調べたりしないといけない事が多い。イベントが終わっても楽しみが一杯だ。
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