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真祖となった吸血少女

イベントまでにやる事

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 フレ姉との話が終わったら、アク姉が私に寄り掛かってきた。

「これからは、統合も進化も慎重にした方が良いかな?」
「そこら辺の判断は、自分でした方が良いだろ。統合出来そうなスキルがあるなら、一旦育つまで待つってのは、有りだと思うぞ」
「そうなると、ハクちゃんは、一番悩みそうだね。私達よりも多くのスキルを手に入れる可能性があるし、私達じゃ手に入れられないスキルも手に入れられるし」
「確かに……モンスターから獲れるスキルと普通に収得出来るスキルの統合もあるし」

 【神脚】が、その例だ。【脚力強化】と【速度強化】の統合で生まれた【神脚】は、私にとって必要不可欠なスキルの一つになっている。私の戦法の要だしね。

「そういや、ハクは雨男戦で、何を貰ったんだ?」
「えっとね……レインズナイフ」
「レアの方か。【短剣】を持つハクには、良いドロップかもな」
「ふ~ん」

 フレ姉がそう言うので、レインズナイフの説明を見る。

────────────────────────

レインズナイフ:とある殺し屋が使っていたナイフ。柄にワイヤーを括り付けた跡が付いている。【投擲速度上昇++】

────────────────────────

「強化素材として優秀だからな。よく投げる短剣に使うと良いだろう」
「私が投げるの双剣の方なんだけど、使えるかな?」
「さすがに、知らねぇ。どうなんだ?」
「わ、私も知らないですよ! そういう事は、武器屋に訊いて貰わないと」

 突然のフレ姉の無茶振りに、アカリは大慌てそう言った。さすがに、防具屋のアカリに訊くのは意地悪だと思う。

「取り敢えず、ラングさんに相談してみる」
「そうしろ。そういや、アカリは、次のイベントに参加すんのか?」
「一応、そのつもりです。多分、すぐに敗退すると思いますけど」

 今度のバトルロイヤルイベントには、アカリも参加するらしい。生産スキルも一緒に上げているアカリの方が圧倒的に不利だと思うけど、アカリも戦闘が出来ないわけじゃないから、意外と残る気がする。

「良いんじゃねぇか。経験にはなるだろ」
「私もイベントに備えて、準備しないと。そういえば、フレ姉って、雨男と一対一で戦ったりしたの?」
「ん? そうだな。最初の方は、連敗だったが、最近は連勝だ」

 改めて、フレ姉の異常性を思い知らされた。私からしたら、あの雨男に連勝出来る気はしない。

「姉さんって、化物だよね。姉さんからスキル獲ったら、モンスターと同じスキルが手に入るかもよ」
「頭かち割るぞ」
「それが可愛い妹に言う言葉!?」
「可愛いだけの妹なんざ、これくらいでちょうど良いだろうが。そういや、この情報は、ギルドに回して良いか?」

 フレ姉が、私に確認してくる。私から得た情報だからかな。

「別に良いよ。そのつもりで伝えたわけだし」
「手に入れたスキルの事は伏せとく」
「うん。ありがとう」
「それじゃあ、私は、そろそろ行く。またな」
「うん。じゃあね」

 フレ姉は、先に帰っていった。まぁ、ギルドの方でも忙しいだろうしね。

「私も用があるから、ここで帰るね」

 アク姉はそう言いながら、私を思いっきり抱きしめて、アカリの頭を撫でてから帰って行った。

「二人とも忙しいみたいだね」

 私はそう言いながら、アカリ側に倒れて膝を枕にする。すると、アカリが頭を撫でてくれる。雨男との戦い消耗した気力が回復するような感じがする。

「フレイさんはギルドで、アクアさんはパーティーで探索するからかな。それにしても、雨男との戦いは、辛勝だったみたいだね」
「ソロで、あれに快勝出来るのは、フレ姉とかくらいだと思う」
「でも、二回目で倒せるなんて凄いよ。頑張ったね」

 アカリは、優しい声で労ってくれる。何だか、アク姉みたいだ。

「それにしても、統合と進化に慎重にならないといけないのは、ちょっと面倒くさいね」
「ああ、アカリらしいわ。まぁ、単純に考える事が増えたからね。アカリは、生産系スキルのどれが統合するかって考えないといけないから、そこだね」
「ある程度は、予測出来るんだけどね。【裁縫職人】と同じ感じだろうから」
「そうか。生産系スキルに関しては、大体一緒って予測付きやすいから、そこら辺の心配は少なくて良いのか。私が複雑なだけだね」

 改めて、私のスキルの異質さが分かる。私みたいに、【吸血】を育てている人がいれば、同じ気持ちを共有出来るだろうけど、私の知り合いの中にはいない。

「でも、次のアップデートでスキルの調整も入るらしいし、そこら辺も分かりやすくなるかもよ?」
「それはない気がする……」

 ここまで情報を出さなかったら、今後も、ここら辺の情報は出さない気がする。いや、もしかしたら、どこかで情報を出していたという可能性もある。

「あっ、地下書庫……」

 思わず声に出ていた。まぁ、聞かれて困る事じゃないけど。

「ハクちゃんが見つけた書庫? それがどうかしたの?」
「スキル関係が分かりやすくなるかもって言ったでしょ? さすがに、ここまで情報を出してこなかったから、これからも自力で見つけろ系だと思ったんだけど、実は既にあるかもしれないって考えたら、地下書庫かなって」
「ああ、なるほどね。それは、あり得るかも。ハクちゃんって、【言語学】のレベル上げてる?」
「砂漠と豪雨の攻略を優先してたから、あれからは全然。せっかく豪雨エリアをクリアした事だし、地下道の探索も合わせて、もう一回【言語学】のレベル上げをしようかな。豪雨エリアの地図も気になるし」

 アカリの膝から頭を上げて、ソファから立ち上がる。アカリも同じようにソファから立ち上がった。

「ナイフの件、忘れないようにね」
「あっ、忘れてた。図書館に行く前に、ラングさんの店に寄らないと。それじゃあ」
「うん。いってらっしゃい」

 アカリと手を振って別れて、ラングさんの店に向かう。中に入ると、店頭には店員NPCしかいなかった。

「ラングさんっていますか?」
「はい。少々お待ちください」

 店員さんが裏に行き、ラングさんを連れて戻ってくる。ラングさんは、私を見るとニカッと笑った。営業スマイルだろうか。強面だから、若干怖いけど、傷付くだろうから言わないでおく。

「おう、嬢ちゃんか。どうした?」
「実は、雨男を倒したんですが、これがドロップしたんです」

 ラングさんにレインズナイフを渡す。レインズナイフを見たラングさんの目が、一瞬光ったように感じた。

「ほう。レアドロップだな。短剣に使えるが、どの短剣にする?」

 見ただけで分かるくらいには、出回っているものみたい。まぁ、レアドロップだとしても、豪雨エリアが攻略され始めて、かなり時間が経っているから、何度も見ているはずだしね。

「双剣には使えないですか?」
「双剣か……試した事はないな。やってみるか」

 双剣を使う人が私しかいないからか、そこまで調べる程双剣を作っていないみたい。そろそろ双刀の隠れ里も見つかってもおかしくないだろうから、そのうち増えていくと思う。多分だけど。

「後、ついでに武器の強化と修理を頼んで良いですか?」
「良いぞ。ちょいと仕事が溜まっているから、今日中には出来ねぇが、それでも良いか?」
「大丈夫です。お願いします」
「おう。最近、良い追加効果を持つ素材が入ってきたからな。嬢ちゃんのスタイルに合わせたようにしてやる」
「はい。でも、【霊気】は抜かない方向でお願いします」
「おう」

 【霊気】は、称号に頼らず霊体にダメージを与えられるので、物理特化である私にとって、あった方が良い追加効果になっている。今のところ役には立ってないけど。

「それじゃあ、よろしくお願いします」
「任せとけ」

 三つの武器をラングさんに預けて、店を出る。私の武器は、短剣や双剣だけでなく手脚もあるし、【血液武装】で、大体の武器は作れるから、武器全てを預けても、そこまで問題はない。
 武器の強化がどうなるのか、ちょっと楽しみだ。
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