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真祖となった吸血少女
干天慈雨
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血刃の双剣で自傷し、出血状態になって【血液武装】を使う。自分の血での回復も済ませたところで、雨男が動き出した。私の欠けた視界。つまり、左側へと移動する。
欠損ダメージは、ただ回復するだけでは元に戻らない。専用のアイテムがあるみたいだけど、そんなものは持っていない。だから、時間で回復するまで待つしかない。だけど、恐らくこの戦闘中に回復する事はない。その前に、どちらかが倒れるから。
私は、即座に雨男を追う。最初から全力疾走だ。雨男は、ショットガンを構えてこちらを狙ってくる。そこで、一つ気付いた。いつの間にか、私が折ったはずの腕が元に戻っている。でも、HPは回復していない。つまり、どこかで回復したわけではなく、ただただ状態を元に戻したという事だ。中身がアンデット系であるなら、そういった自然回復もあり得るのかもしれない。
雨男は、治った腕でショットガンを持ち、引き金を引く。その直前に、斜め前に移動する事で、ショットガンの射線から逃れる。相手の指を注視しておけば、ショットガンから避ける事は出来る。
一気に距離を詰めて、その横顔に回し蹴りを叩き込もうとする。しかし、雨男は右腕を立てて蹴りを受け止めた。衝撃で、雨男が左側に二メートル押される。そこで耐えて、こっちにショットガンを向けてきたので、即座に左手の短剣を投げて、ショットガンにぶつける。私に向かって放たれるはずだった弾は、地面に吸い込まれていった。その間に地面に着地した私は、即座に右手の短剣も投げる。首を狙って投げた短剣は、ショットガンを盾にされて弾かれた。
私の狙いは、それだった。一気に距離を詰めて、雨男の胸倉を掴む。
「【剛力投げ】」
雨男を無理矢理投げ飛ばす。【剛力投げ】は、掴んだ相手を強制的に投げる事が出来る。ただ、威力や投げられる距離は、腕の力に依存する事になる。【豪腕】に加えて、【腕力強化】も持っているから、威力は、普通のプレイヤーよりも高い。それでも、一割も減らせないけど。
硬直時間の間に、雨男が飛び起きる。そして、すかさずショットガンのリロードをし始めた。そこは、しっかりとしないといけないみたいだ。これが、ショットガンでの隙かな。硬直が終わるのと同時に、地面に落ちた双剣の一本を拾い突っ込む。ショットガンのリロードで生じた隙を埋めるように、雨男がナイフを投げてくる。
それくらいなら弾ける。ナイフを弾き、向けられるショットガンを蹴って、無理矢理射線を逸らす。
「【共鳴】」
もう片方の短剣を呼び寄せて、掴み取る。
「【重月】」
左の短剣をショットガンに向かって振り下ろす。ショットガンが、上から重りを叩きつけられたように地面に落ちる。そこからの追撃も技の内なので、右手の短剣をショットガンに突き刺す。前の時の跳び膝蹴りと違って、今度は確実にショットガンを破壊した。
硬直した私を、雨男は、思いっきり蹴り飛ばしてきた。地面を転がる私の首に向かって、ナイフが投げられる。首を硬質化して、【防鱗】も使い防ぐ。
硬直が解けたところで、こっちも短剣を投げつける。雨男は、その場からバックステップをしながら首を傾けるだけで避けた。そして、ワイヤーでナイフを回収しながら、雨の中に消えていく。
ショットガンが使えなくなったから、別の武器の領域に移動するというところだと思う。
「弓だと厄介かな。顔に【防鱗】を使いながら、追って……いや……」
私は、メニューを操作して、スキル収得欄を開く。そこにあるとあるスキルは、【吸血】同様に不人気スキルとなっているスキルだ。でも、この状況を打開出来る可能性を、ほんの少しだけ持っている。
「……取る!」
私は、【未来視】のスキルを収得し、【夜霧】と入れ替えて装備する。早く追いたいけど、試運転はしておく。
「うっ……!!」
頭痛を伴い、すぐ先の未来を見るスキル。代償は、強烈な頭痛。
「これは……さすがに、キツい……」
ゲーム内で感じて良い痛みじゃないと思う。でも、デメリットとしては、納得だ。未来を見るという強スキルをデメリット無しで使えたら、未来の読み合いにしかならないだろうし。
見え方としては、私の視界に光景が重なるように見える感じだ。つまり、【未来視】という名前だけど、見る事の出来る未来は、視界内に限られる。
「問題は、これを戦闘中に使わないといけないって事……耐えられるか……いや、耐えるしかない」
【防鱗】や硬質化を使うにも、守れる範囲は限られている。【未来視】で分かれば、避ける事も出来る気がする。
蝙蝠を先行させて走る。そして、恐らく領域が変わったかもしれないと判断したタイミングで【未来視】を発動する。
「んぎっ……」
強烈な痛みに襲われる。その場で頭を押えて転げ回りたいという欲求を、気合いと根性と根気と自制心と何かしらで我慢する。我慢する事だけなら、私は常人よりも上のはず。アク姉の料理だって我慢して食べられるし。
私の視界に映ったのは、私の首を矢が射貫く未来。私の背中が見えたから、その位置に重なる場所に行ったら、射貫かれるという事だろう。
ここは、私の左目を射貫いた弓の領域みたいだ。すぐに、その場で頭を下げて、念のために硬質化で顔を守る。すると、私の頭頂部を掠るようにして、矢が飛んでいった。
「うま……く……いった……」
私は、矢が飛んできた方向に向かって走る。同時に、【未来視】を発動する。これまでの人生で一度もしたことがないくらいに歯を食いしばって、痛みに耐える。
見えた未来は、何もない。私が走っている光景だ。
【未来視】も万能じゃない。便利な面と不便な面がある。今が、まさに不便な面だ。雨男の先の動きを見たいのに、これでは私が走っているという事しか分からない。人によっては、自分が生きているって事じゃないかと言う人もいうだろうけど、これは三秒くらい先の未来。四秒後には死って事だってあり得る。
幸い、すぐ死ぬ事はなく、雨男が弓を引き絞っているのが見えた。互いの姿が見えた瞬間、矢が放たれる。それさえ見えていれば、対処は出来る。飛んでくる矢を打ち払い、高速移動で雨男に近づき、弓の弦を切る。
「【連月】」
三十連撃を、雨男に叩き込む。ダメージエフェクトが派手に散っていく。一気にHPが半分まで減る。それと同時に、ハラッと包帯が解けた。その向こうの顔には、やはり水分がないカサカサの肌か肉か区別が付かない状態になっていた。ゾンビというよりも、ミイラの方が合っていそうだ。
技の硬直に入った私のお腹に雨男がナイフを突き刺す。でも、その攻撃は、私も警戒していた。硬質化したお腹が、ナイフを防ぐ。
「ぐえっ……!?」
その間に、もう片方の手で首を絞められる。このまま窒息ダメージ狙いかと思ったら、そのまま投げられた。投げられている空中で硬直が解けたので、私に背を向けて走る雨男に向かって、短剣を投げつける。
背中に短剣が突き刺さるけど、雨男は気にせず走っていった。
「追って!」
蝙蝠を先行させて、雨男を追わせる。雨男を追っている間は、蝙蝠の超音波が聞こえるので、方向を見失う事はない。地面に着地した私は、高速移動で追う。音が聞こえているから二十メートル圏内にはいる。
【未来視】を発動して、先の動きを見る。私が斬られる未来が見える。この感じは、ククリナイフだ。斬られる方向は×印。それが分かれば防げる。上の両斜めから振り下ろされるククリナイフを双剣で防ぐ。そのまま弾こうと思ったら、前と同じようにククリナイフの凹みに挟まれた。でも、あの時と違って、今回使っているのは、血の刃を纏わせた血刃の双剣だ。【血液武装】を操作して、血の刃を手に回す。同時に、雨男のお腹を蹴り飛ばした。
吹っ飛んでいく雨男の両手に双剣を投げつける。ククリナイフを弾き飛ばす。直後に、高速移動で雨男の元まで移動する。【血液武装】で強化した拳で、思いっきり雨男をぶん殴る。吹っ飛んでいる途中だったので、雨男の身体を地面に叩きつけながら進む事になる。地面を削るようにして、微弱なダメージを与える。そんな私を煩わしいと思ったのか、私のお腹を蹴って、無理矢理引き離される。
互いに地面を転がる。一メートル離れた場所で、互いにうつ伏せになり倒れる。雨男は、起き上がろうとしてくるけど、私は、クラウチングスタートの姿勢から、雨男に突っ込む。左拳を振い、雨男を殴る。雨男は、両手を交差してガードする。高速移動の勢いも乗っているので、衝撃でガードを崩せた。
両腕が上に上がっているので、がら空きの胴に向かって、回し蹴りを打ち込む。吹っ飛んでいく雨男は、腕を動かしてナイフを投げてくる。私は、【血液武装】で血の短剣を作って、ナイフを弾くと同時に、その根元に付いているワイヤーを掴んで、思いっきり引っ張る。
ものすごい抵抗を感じたのも束の間、雨男が釣れたのが感覚で分かった。血染めの短剣を抜いた私は、こちらに向かって飛んでくる雨男に向かって、駆け出す。
「【追刃】【ラピッドファイア】」
追ってくる刃に当たらないように、細心の注意を払いながら、短剣を振い雨男のHPを一割まで削った。本当は、これで倒しきるつもりだったのだけど、雨男は、自分の左腕を犠牲にして、ダメージをギリギリ耐えられるように抑えていた。右腕だけとなった雨男は、私の顔面に向かって拳を振う。
硬直で動けない私は、それを受けるしかない。でも、こんな状態でも口は動く。これが、最後の抵抗。顔面に振われる右拳に噛み付く。一部だけでも噛めれば、こっちの勝ち。
その賭けに、私は勝った。魔力の牙が刺さり、一気に血を吸う。噛み付いている指を放さないように、力を入れる。最後まで抵抗した雨男は、ポリゴンになって消えていった。
『雨男を討伐しました。称号【干天慈雨の主】を獲得しました』
『【真祖】により、雨男から【武芸百般】のスキルを獲得』
勝利した証としてウィンドウが出て来る。同時に、ドロップアイテムも手に入れた。レインズナイフという名前のナイフだった。
欠損ダメージは、ただ回復するだけでは元に戻らない。専用のアイテムがあるみたいだけど、そんなものは持っていない。だから、時間で回復するまで待つしかない。だけど、恐らくこの戦闘中に回復する事はない。その前に、どちらかが倒れるから。
私は、即座に雨男を追う。最初から全力疾走だ。雨男は、ショットガンを構えてこちらを狙ってくる。そこで、一つ気付いた。いつの間にか、私が折ったはずの腕が元に戻っている。でも、HPは回復していない。つまり、どこかで回復したわけではなく、ただただ状態を元に戻したという事だ。中身がアンデット系であるなら、そういった自然回復もあり得るのかもしれない。
雨男は、治った腕でショットガンを持ち、引き金を引く。その直前に、斜め前に移動する事で、ショットガンの射線から逃れる。相手の指を注視しておけば、ショットガンから避ける事は出来る。
一気に距離を詰めて、その横顔に回し蹴りを叩き込もうとする。しかし、雨男は右腕を立てて蹴りを受け止めた。衝撃で、雨男が左側に二メートル押される。そこで耐えて、こっちにショットガンを向けてきたので、即座に左手の短剣を投げて、ショットガンにぶつける。私に向かって放たれるはずだった弾は、地面に吸い込まれていった。その間に地面に着地した私は、即座に右手の短剣も投げる。首を狙って投げた短剣は、ショットガンを盾にされて弾かれた。
私の狙いは、それだった。一気に距離を詰めて、雨男の胸倉を掴む。
「【剛力投げ】」
雨男を無理矢理投げ飛ばす。【剛力投げ】は、掴んだ相手を強制的に投げる事が出来る。ただ、威力や投げられる距離は、腕の力に依存する事になる。【豪腕】に加えて、【腕力強化】も持っているから、威力は、普通のプレイヤーよりも高い。それでも、一割も減らせないけど。
硬直時間の間に、雨男が飛び起きる。そして、すかさずショットガンのリロードをし始めた。そこは、しっかりとしないといけないみたいだ。これが、ショットガンでの隙かな。硬直が終わるのと同時に、地面に落ちた双剣の一本を拾い突っ込む。ショットガンのリロードで生じた隙を埋めるように、雨男がナイフを投げてくる。
それくらいなら弾ける。ナイフを弾き、向けられるショットガンを蹴って、無理矢理射線を逸らす。
「【共鳴】」
もう片方の短剣を呼び寄せて、掴み取る。
「【重月】」
左の短剣をショットガンに向かって振り下ろす。ショットガンが、上から重りを叩きつけられたように地面に落ちる。そこからの追撃も技の内なので、右手の短剣をショットガンに突き刺す。前の時の跳び膝蹴りと違って、今度は確実にショットガンを破壊した。
硬直した私を、雨男は、思いっきり蹴り飛ばしてきた。地面を転がる私の首に向かって、ナイフが投げられる。首を硬質化して、【防鱗】も使い防ぐ。
硬直が解けたところで、こっちも短剣を投げつける。雨男は、その場からバックステップをしながら首を傾けるだけで避けた。そして、ワイヤーでナイフを回収しながら、雨の中に消えていく。
ショットガンが使えなくなったから、別の武器の領域に移動するというところだと思う。
「弓だと厄介かな。顔に【防鱗】を使いながら、追って……いや……」
私は、メニューを操作して、スキル収得欄を開く。そこにあるとあるスキルは、【吸血】同様に不人気スキルとなっているスキルだ。でも、この状況を打開出来る可能性を、ほんの少しだけ持っている。
「……取る!」
私は、【未来視】のスキルを収得し、【夜霧】と入れ替えて装備する。早く追いたいけど、試運転はしておく。
「うっ……!!」
頭痛を伴い、すぐ先の未来を見るスキル。代償は、強烈な頭痛。
「これは……さすがに、キツい……」
ゲーム内で感じて良い痛みじゃないと思う。でも、デメリットとしては、納得だ。未来を見るという強スキルをデメリット無しで使えたら、未来の読み合いにしかならないだろうし。
見え方としては、私の視界に光景が重なるように見える感じだ。つまり、【未来視】という名前だけど、見る事の出来る未来は、視界内に限られる。
「問題は、これを戦闘中に使わないといけないって事……耐えられるか……いや、耐えるしかない」
【防鱗】や硬質化を使うにも、守れる範囲は限られている。【未来視】で分かれば、避ける事も出来る気がする。
蝙蝠を先行させて走る。そして、恐らく領域が変わったかもしれないと判断したタイミングで【未来視】を発動する。
「んぎっ……」
強烈な痛みに襲われる。その場で頭を押えて転げ回りたいという欲求を、気合いと根性と根気と自制心と何かしらで我慢する。我慢する事だけなら、私は常人よりも上のはず。アク姉の料理だって我慢して食べられるし。
私の視界に映ったのは、私の首を矢が射貫く未来。私の背中が見えたから、その位置に重なる場所に行ったら、射貫かれるという事だろう。
ここは、私の左目を射貫いた弓の領域みたいだ。すぐに、その場で頭を下げて、念のために硬質化で顔を守る。すると、私の頭頂部を掠るようにして、矢が飛んでいった。
「うま……く……いった……」
私は、矢が飛んできた方向に向かって走る。同時に、【未来視】を発動する。これまでの人生で一度もしたことがないくらいに歯を食いしばって、痛みに耐える。
見えた未来は、何もない。私が走っている光景だ。
【未来視】も万能じゃない。便利な面と不便な面がある。今が、まさに不便な面だ。雨男の先の動きを見たいのに、これでは私が走っているという事しか分からない。人によっては、自分が生きているって事じゃないかと言う人もいうだろうけど、これは三秒くらい先の未来。四秒後には死って事だってあり得る。
幸い、すぐ死ぬ事はなく、雨男が弓を引き絞っているのが見えた。互いの姿が見えた瞬間、矢が放たれる。それさえ見えていれば、対処は出来る。飛んでくる矢を打ち払い、高速移動で雨男に近づき、弓の弦を切る。
「【連月】」
三十連撃を、雨男に叩き込む。ダメージエフェクトが派手に散っていく。一気にHPが半分まで減る。それと同時に、ハラッと包帯が解けた。その向こうの顔には、やはり水分がないカサカサの肌か肉か区別が付かない状態になっていた。ゾンビというよりも、ミイラの方が合っていそうだ。
技の硬直に入った私のお腹に雨男がナイフを突き刺す。でも、その攻撃は、私も警戒していた。硬質化したお腹が、ナイフを防ぐ。
「ぐえっ……!?」
その間に、もう片方の手で首を絞められる。このまま窒息ダメージ狙いかと思ったら、そのまま投げられた。投げられている空中で硬直が解けたので、私に背を向けて走る雨男に向かって、短剣を投げつける。
背中に短剣が突き刺さるけど、雨男は気にせず走っていった。
「追って!」
蝙蝠を先行させて、雨男を追わせる。雨男を追っている間は、蝙蝠の超音波が聞こえるので、方向を見失う事はない。地面に着地した私は、高速移動で追う。音が聞こえているから二十メートル圏内にはいる。
【未来視】を発動して、先の動きを見る。私が斬られる未来が見える。この感じは、ククリナイフだ。斬られる方向は×印。それが分かれば防げる。上の両斜めから振り下ろされるククリナイフを双剣で防ぐ。そのまま弾こうと思ったら、前と同じようにククリナイフの凹みに挟まれた。でも、あの時と違って、今回使っているのは、血の刃を纏わせた血刃の双剣だ。【血液武装】を操作して、血の刃を手に回す。同時に、雨男のお腹を蹴り飛ばした。
吹っ飛んでいく雨男の両手に双剣を投げつける。ククリナイフを弾き飛ばす。直後に、高速移動で雨男の元まで移動する。【血液武装】で強化した拳で、思いっきり雨男をぶん殴る。吹っ飛んでいる途中だったので、雨男の身体を地面に叩きつけながら進む事になる。地面を削るようにして、微弱なダメージを与える。そんな私を煩わしいと思ったのか、私のお腹を蹴って、無理矢理引き離される。
互いに地面を転がる。一メートル離れた場所で、互いにうつ伏せになり倒れる。雨男は、起き上がろうとしてくるけど、私は、クラウチングスタートの姿勢から、雨男に突っ込む。左拳を振い、雨男を殴る。雨男は、両手を交差してガードする。高速移動の勢いも乗っているので、衝撃でガードを崩せた。
両腕が上に上がっているので、がら空きの胴に向かって、回し蹴りを打ち込む。吹っ飛んでいく雨男は、腕を動かしてナイフを投げてくる。私は、【血液武装】で血の短剣を作って、ナイフを弾くと同時に、その根元に付いているワイヤーを掴んで、思いっきり引っ張る。
ものすごい抵抗を感じたのも束の間、雨男が釣れたのが感覚で分かった。血染めの短剣を抜いた私は、こちらに向かって飛んでくる雨男に向かって、駆け出す。
「【追刃】【ラピッドファイア】」
追ってくる刃に当たらないように、細心の注意を払いながら、短剣を振い雨男のHPを一割まで削った。本当は、これで倒しきるつもりだったのだけど、雨男は、自分の左腕を犠牲にして、ダメージをギリギリ耐えられるように抑えていた。右腕だけとなった雨男は、私の顔面に向かって拳を振う。
硬直で動けない私は、それを受けるしかない。でも、こんな状態でも口は動く。これが、最後の抵抗。顔面に振われる右拳に噛み付く。一部だけでも噛めれば、こっちの勝ち。
その賭けに、私は勝った。魔力の牙が刺さり、一気に血を吸う。噛み付いている指を放さないように、力を入れる。最後まで抵抗した雨男は、ポリゴンになって消えていった。
『雨男を討伐しました。称号【干天慈雨の主】を獲得しました』
『【真祖】により、雨男から【武芸百般】のスキルを獲得』
勝利した証としてウィンドウが出て来る。同時に、ドロップアイテムも手に入れた。レインズナイフという名前のナイフだった。
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