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真祖となった吸血少女
雨男戦の反省
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ファーストタウンに死に戻ってきた私は、念のため武器の確認をした。血染めの短剣もツイストダガーも血刃の双剣もしっかりと鞘に収まっている。
「防具もボロボロかもだし、アカリに見てもらおう」
日傘を差しながら、アカリエに向かう間に、雨男との戦闘を振り返る。
まず初めに、私が不利になった場面は、左腕を失ったところだ。相手の武装がどんなものかも分からずに突っ込んだ無鉄砲さが悪いけど、最初の戦闘は、このくらいがちょうどいい。相手の情報を引き出す事が出来るからだ。実際、結構引き出す事が出来ていたし。
左腕を失ってからの動きは、そこまで悪くなかったと思う。【真祖】での攻撃に繋げるためのコンボも決まったし、【血液武装】に含まれる操血も上手く利用出来ていた。
でも、HPを半分切ってからが問題だった。唐突なパワーアップ。そして、雨に消えていき、居場所を特定出来なくなった事。最後に、ショットガンが使い物にならないと思い込んでいた事。この三つが敗因となったと考えられる。
「ショットガンは、私の蹴りでも壊れない。雨に溶けるように消えたのは、見える範囲から離れていたから。その距離感を雨男は、完全に把握している。後は、あの素顔か」
私が死ぬ直前に見た雨男の素顔を思い出す。やっぱり、あれはミイラやゾンビの類いの顔だった。明らかに干からびている肌か肉か区別が付かない顔面。あの雨の中で、雨男の中身だけが乾いていた。
「アンデット系……私と同じ闇に属する者? だとしたら、禊ぎの水で動きを止められる? 【真祖】になってから触ってないけど、いきなり即死とかないよね。あ、いや、でもなぁ……戦闘中に禊ぎの水を投げつける事なんて出来るかな。それよりも普通に戦えるようになる方が良い気がする」
戦闘中にアイテムを取り出して投げつけるのは、隙が大きすぎる。あまり良い作戦ではないかも。
「もっと【血液武装】の自由さを利用するのが良いかな。今回は、短剣を作って投げる事しかしてないし。自由な戦闘が、私の強みだろうし」
攻撃手段の多彩さは、私の持ち味だと思っている。特に、【血液武装】は、元々の【血武器】同様に作れるもの自由度が高い。攻撃に補正が付かないけど、色々と出来る事は多い。メイティさんから発想を得た鞭とかね。それが、雨男に通用するかどうかが問題になるけど。
「まぁ、手札が多いってのも考えものではあるけど」
実際に、しっかりと攻撃を選べているわけじゃない。大体は、【神脚】か【双剣】になる。特に【神脚】の力が強すぎるから、大抵の事はどうにか出来てしまうのがいけない。
「はぁ、いつも同じ反省をしているんだから、いい加減学ばないと」
雨男との戦闘の反省を終えたぐらいで、アカリエに着いた。
「アカリ~いる~?」
「ハクちゃん? どうしたの?」
「防具の修理お願い」
血姫の装具を脱いで、アカリに渡す。
「おぉ……結構損傷しているね。特に外套。雨男?」
「正解。負けた」
「ハクちゃんでも、初見クリアは出来なかったかぁ。雨男は、これまでのボスとはひと味もふた味も違うしね」
この様子だと、アカリも苦戦したみたいだ。雨男は、豪雨エリアを攻略する上で、一番の難所って言っても良いのかもしれない。
「これまでのボスと違って、人が入っているかのような動きだもんね。頑張って」
「頑張る。てか、このゲームって銃あるの?」
「ん? ああ、ショットガンを持ってたからか。一応、プレイヤーのスキルとしては見つかってないはず。少なくとも、私は知らないよ。仮にあったとしても、弓系統の進化形じゃないかなって思ってる」
「なるほどね。同じ遠距離物理系統だからか。その可能性はありそうだけど、私としては、【双剣】と同じ類いって思うかな」
アカリの言うとおり進化の果てという風に考える事も出来るけど、私としては、【双剣】と同じく、隠された里とかにあると思う。銃は、そのくらいには強力だと思うから。
「ああ、そういえば、【双剣】って、特殊な条件だったね。その可能性もあるんだったら、そっちの方が高いかもね。取り敢えず、明日の夜中までに直しておいてあげる。ちょうどそこまで仕事は溜まってないし」
「ありがとう。アカリは、何回くらいで、雨男を倒せた?」
「何回だったかな……」
アカリは、少し黙って思い出そうとしてくれる。というか、思い出さないといけない程多いって事なのかな。
「十一回目で倒せたかな」
思ったよりも多い答えに、ちょっと驚く。
「結構掛かったね」
「まぁ、戦闘中心のプレイじゃないからね。でも、あれは相手も悪かったよ。ボスエリアとはいえ、色々と用意し過ぎだよね」
「用意? 色々な武器の事?」
確かに、投げナイフ、ショットガン、ククリナイフと色々と武器を用意している。そして、その全てを完璧に操っている。攻撃手段の多さで言えば、他のボスよりも多い。
「うん。こっちも利用出来るものがあれば良いんだけど、使い方がよく分からなかったりするし」
「?」
「?」
何だか、絶妙に食い違いを起こしている気がする。相手の武器の利用って言ったって、基本的に雨男は、武器を携帯している。奪おうにも、ククリナイフをどこに隠していたかすらも分からない。
「もしかして、私とハクちゃんが戦っていた状況って、結構違う?」
「多分ね。武器って、雨男が持っているやつでしょ?」
「ううん。地面にあるやつ……」
「地面?」
全く知らない事だ。やっぱり、アカリと私とでは、戦っていた状況が違う。
「私とアカリの違いって言ったら、やっぱり【真祖】かな」
「【吸血鬼】の進化先だっけ。それで一気に削った感じ?」
「うん」
「戦闘場所があまり変わらなかった感じかな。私の時は、互いに移動していったから」
私の時は、ほぼほぼ移動はしていない。私が一方的に間合いを詰めるか、雨男が私の視界から消える距離に移動するくらいだ。アカリの話からして、互いに攻撃と移動を繰り返していたとみて間違いない。
恐らく、雨男との戦闘は、そうして移動を繰り返して様々な武器で攻撃してくるというものなのだと思う。もしかしたら、ククリナイフも持っていた武器ではなく、地面に置いておいた武器なのかも。
「ん? 武器を変えるって事は、それぞれの武器で戦う領域を決めているのかな?」
「どうだろうね」
微笑みながらそう言うアカリを見て、アカリは答えを知っているという事が分かった。私から、攻略の楽しみを取り上げないようにって考えてくれているのかもしれない。まぁ、その方が、私も嬉しいけど。
私のこの仮説は、意外と的を射ている気がする。まだ使えるショットガンを投げて来た理由は、私の蹴りでのノックバックで、ショットガンを使う領域から離れたから。直後に視界を潰されたから、そこら辺をしっかりと観察出来なかったのは痛い。
それに加えて、領域の範囲を調べるのも厳しい。混乱の状態異常でマップが分からないし、東西南北の感覚もない。それに、そもそも豪雨で視界が潰されているのも特定出来ない理由になる。アカリから聞いた話と私の経験から考えると、あの環境は雨男にとって最高の環境と言える。
そんな事を考えていると、ニコニコと笑いながら、こっちを見ているアカリが目に付いた。
「何?」
「ううん。色々と考えを巡らせているなぁって思っただけ」
「そりゃあね。取り敢えず、スキル上げと次は夜に挑むって感じかな」
「夜に? ああ、【夜霧】だね」
「そういう事」
こういう時に【夜霧】があるのとないのでは、状況が大きく異なる。相手のショットガンを無効化出来るわけだし。
「それなら、防具も強化して良い? ちょっと時間を貰う事になるから、明日までにとはいかなくなるけど」
「どちらかというと、こっちから頼みたいくらいだけど、金額はどのくらい?」
「百万近くかな。色々と出来るようになったし」
「まぁ、そのくらいなら。そうだ。それなら外套に付いている【認識阻害】を外して良いよ。似たようなスキルを手に入れたし、あまり効果がある気がしないし」
これまで結構、モンスターから見つかっている気がするし、【認識阻害】の恩恵がなくなってきていると思ったからだ。多分、匂いとかでバレてるのかな。でも、【擬態】も手に入れたし、こっちのスキル頼みにして、防具には他の追加効果を付けて貰おうと思う。
「了解。良い物にしてあげるね」
「よろしく」
アカリに防具を頼んで、私は草原に向かった。少しでも【真祖】などのスキルレベルを上げて、雨男に挑むために。
「防具もボロボロかもだし、アカリに見てもらおう」
日傘を差しながら、アカリエに向かう間に、雨男との戦闘を振り返る。
まず初めに、私が不利になった場面は、左腕を失ったところだ。相手の武装がどんなものかも分からずに突っ込んだ無鉄砲さが悪いけど、最初の戦闘は、このくらいがちょうどいい。相手の情報を引き出す事が出来るからだ。実際、結構引き出す事が出来ていたし。
左腕を失ってからの動きは、そこまで悪くなかったと思う。【真祖】での攻撃に繋げるためのコンボも決まったし、【血液武装】に含まれる操血も上手く利用出来ていた。
でも、HPを半分切ってからが問題だった。唐突なパワーアップ。そして、雨に消えていき、居場所を特定出来なくなった事。最後に、ショットガンが使い物にならないと思い込んでいた事。この三つが敗因となったと考えられる。
「ショットガンは、私の蹴りでも壊れない。雨に溶けるように消えたのは、見える範囲から離れていたから。その距離感を雨男は、完全に把握している。後は、あの素顔か」
私が死ぬ直前に見た雨男の素顔を思い出す。やっぱり、あれはミイラやゾンビの類いの顔だった。明らかに干からびている肌か肉か区別が付かない顔面。あの雨の中で、雨男の中身だけが乾いていた。
「アンデット系……私と同じ闇に属する者? だとしたら、禊ぎの水で動きを止められる? 【真祖】になってから触ってないけど、いきなり即死とかないよね。あ、いや、でもなぁ……戦闘中に禊ぎの水を投げつける事なんて出来るかな。それよりも普通に戦えるようになる方が良い気がする」
戦闘中にアイテムを取り出して投げつけるのは、隙が大きすぎる。あまり良い作戦ではないかも。
「もっと【血液武装】の自由さを利用するのが良いかな。今回は、短剣を作って投げる事しかしてないし。自由な戦闘が、私の強みだろうし」
攻撃手段の多彩さは、私の持ち味だと思っている。特に、【血液武装】は、元々の【血武器】同様に作れるもの自由度が高い。攻撃に補正が付かないけど、色々と出来る事は多い。メイティさんから発想を得た鞭とかね。それが、雨男に通用するかどうかが問題になるけど。
「まぁ、手札が多いってのも考えものではあるけど」
実際に、しっかりと攻撃を選べているわけじゃない。大体は、【神脚】か【双剣】になる。特に【神脚】の力が強すぎるから、大抵の事はどうにか出来てしまうのがいけない。
「はぁ、いつも同じ反省をしているんだから、いい加減学ばないと」
雨男との戦闘の反省を終えたぐらいで、アカリエに着いた。
「アカリ~いる~?」
「ハクちゃん? どうしたの?」
「防具の修理お願い」
血姫の装具を脱いで、アカリに渡す。
「おぉ……結構損傷しているね。特に外套。雨男?」
「正解。負けた」
「ハクちゃんでも、初見クリアは出来なかったかぁ。雨男は、これまでのボスとはひと味もふた味も違うしね」
この様子だと、アカリも苦戦したみたいだ。雨男は、豪雨エリアを攻略する上で、一番の難所って言っても良いのかもしれない。
「これまでのボスと違って、人が入っているかのような動きだもんね。頑張って」
「頑張る。てか、このゲームって銃あるの?」
「ん? ああ、ショットガンを持ってたからか。一応、プレイヤーのスキルとしては見つかってないはず。少なくとも、私は知らないよ。仮にあったとしても、弓系統の進化形じゃないかなって思ってる」
「なるほどね。同じ遠距離物理系統だからか。その可能性はありそうだけど、私としては、【双剣】と同じ類いって思うかな」
アカリの言うとおり進化の果てという風に考える事も出来るけど、私としては、【双剣】と同じく、隠された里とかにあると思う。銃は、そのくらいには強力だと思うから。
「ああ、そういえば、【双剣】って、特殊な条件だったね。その可能性もあるんだったら、そっちの方が高いかもね。取り敢えず、明日の夜中までに直しておいてあげる。ちょうどそこまで仕事は溜まってないし」
「ありがとう。アカリは、何回くらいで、雨男を倒せた?」
「何回だったかな……」
アカリは、少し黙って思い出そうとしてくれる。というか、思い出さないといけない程多いって事なのかな。
「十一回目で倒せたかな」
思ったよりも多い答えに、ちょっと驚く。
「結構掛かったね」
「まぁ、戦闘中心のプレイじゃないからね。でも、あれは相手も悪かったよ。ボスエリアとはいえ、色々と用意し過ぎだよね」
「用意? 色々な武器の事?」
確かに、投げナイフ、ショットガン、ククリナイフと色々と武器を用意している。そして、その全てを完璧に操っている。攻撃手段の多さで言えば、他のボスよりも多い。
「うん。こっちも利用出来るものがあれば良いんだけど、使い方がよく分からなかったりするし」
「?」
「?」
何だか、絶妙に食い違いを起こしている気がする。相手の武器の利用って言ったって、基本的に雨男は、武器を携帯している。奪おうにも、ククリナイフをどこに隠していたかすらも分からない。
「もしかして、私とハクちゃんが戦っていた状況って、結構違う?」
「多分ね。武器って、雨男が持っているやつでしょ?」
「ううん。地面にあるやつ……」
「地面?」
全く知らない事だ。やっぱり、アカリと私とでは、戦っていた状況が違う。
「私とアカリの違いって言ったら、やっぱり【真祖】かな」
「【吸血鬼】の進化先だっけ。それで一気に削った感じ?」
「うん」
「戦闘場所があまり変わらなかった感じかな。私の時は、互いに移動していったから」
私の時は、ほぼほぼ移動はしていない。私が一方的に間合いを詰めるか、雨男が私の視界から消える距離に移動するくらいだ。アカリの話からして、互いに攻撃と移動を繰り返していたとみて間違いない。
恐らく、雨男との戦闘は、そうして移動を繰り返して様々な武器で攻撃してくるというものなのだと思う。もしかしたら、ククリナイフも持っていた武器ではなく、地面に置いておいた武器なのかも。
「ん? 武器を変えるって事は、それぞれの武器で戦う領域を決めているのかな?」
「どうだろうね」
微笑みながらそう言うアカリを見て、アカリは答えを知っているという事が分かった。私から、攻略の楽しみを取り上げないようにって考えてくれているのかもしれない。まぁ、その方が、私も嬉しいけど。
私のこの仮説は、意外と的を射ている気がする。まだ使えるショットガンを投げて来た理由は、私の蹴りでのノックバックで、ショットガンを使う領域から離れたから。直後に視界を潰されたから、そこら辺をしっかりと観察出来なかったのは痛い。
それに加えて、領域の範囲を調べるのも厳しい。混乱の状態異常でマップが分からないし、東西南北の感覚もない。それに、そもそも豪雨で視界が潰されているのも特定出来ない理由になる。アカリから聞いた話と私の経験から考えると、あの環境は雨男にとって最高の環境と言える。
そんな事を考えていると、ニコニコと笑いながら、こっちを見ているアカリが目に付いた。
「何?」
「ううん。色々と考えを巡らせているなぁって思っただけ」
「そりゃあね。取り敢えず、スキル上げと次は夜に挑むって感じかな」
「夜に? ああ、【夜霧】だね」
「そういう事」
こういう時に【夜霧】があるのとないのでは、状況が大きく異なる。相手のショットガンを無効化出来るわけだし。
「それなら、防具も強化して良い? ちょっと時間を貰う事になるから、明日までにとはいかなくなるけど」
「どちらかというと、こっちから頼みたいくらいだけど、金額はどのくらい?」
「百万近くかな。色々と出来るようになったし」
「まぁ、そのくらいなら。そうだ。それなら外套に付いている【認識阻害】を外して良いよ。似たようなスキルを手に入れたし、あまり効果がある気がしないし」
これまで結構、モンスターから見つかっている気がするし、【認識阻害】の恩恵がなくなってきていると思ったからだ。多分、匂いとかでバレてるのかな。でも、【擬態】も手に入れたし、こっちのスキル頼みにして、防具には他の追加効果を付けて貰おうと思う。
「了解。良い物にしてあげるね」
「よろしく」
アカリに防具を頼んで、私は草原に向かった。少しでも【真祖】などのスキルレベルを上げて、雨男に挑むために。
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