吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

文字の大きさ
上 下
121 / 504
真祖となった吸血少女

西の豪雨エリア

しおりを挟む
 ファーストタウンの西に向かい、平原を抜けると、大雨の壁がそこにあった。しっかりと一線引かれている感じだ。昔、ゲリラ豪雨が目の前から迫ってきたのを見た事があるけど
あれと比較にならない豪雨なので、壁としか表現出来なかった。

「こんなの、視界なんて意味を成さないんじゃ……厄介な場所とは聞いていたけど、こうして見ると、よく理解出来る」

 先週の日曜日に、アカリから受け取った傘を取り出す。ついでに、ここでスキルの装備も変える。

────────────────────────

ハク:【短剣Lv55】【武闘術Lv1】【真祖Lv5】【血液武装Lv2】【操影Lv3】【使役(蝙蝠)Lv3】【執行者Lv59】【剛力Lv33】【豪腕Lv50】【豪脚Lv25】【駿足Lv20】【防鱗Lv2】【擬態Lv4】【夜霧Lv16】【感知Lv29】
控え:【剣Lv61】【双剣Lv45】【魔法才能Lv46】【水魔法才能Lv8】【支援魔法才能Lv45】【HP強化Lv57】【MP強化Lv12】【物理攻撃強化Lv58】【物理防御強化Lv26】【魔法防御強化Lv21】【神脚Lv34】【器用さ強化Lv21】【運強化Lv48】【視覚強化Lv24】【聴覚強化Lv28】【腕力強化Lv2】【毒耐性Lv25】【麻痺耐性Lv6】【呪い耐性Lv1】【沈黙耐性Lv1】【暗闇耐性Lv1】【怒り耐性Lv5】【眠り耐性Lv1】【混乱耐性Lv1】【気絶耐性Lv1】【消化促進Lv46】【竜血Lv28】【登山Lv6】【毒霧Lv2】【毒液Lv2】【捕食Lv6】【言語学Lv33】
SP:185

────────────────────────

 片手で傘を差す都合上、【双剣】は外す。代わりに、まだ夜の時間帯なので、【夜霧】を装備しておく。【毒液】とかの選択肢もあったけど、自分が毒になるのでやめておいた。

「さてと、モンスターは、どんな感じかな」

 豪雨エリアに脚を踏み入れると、傘に雨が当たる音が響く。

「うるさっ!? 【聴覚強化】のせいもあるのかなぁ。ホワイトラビットのせいで、【視覚強化】よりも上がってるんだよなぁ」

 ホワイトラビットからは、【聴力強化】も貰えるので、経験値に加算される事になる。なので、同時期に取った【視覚強化】よりも成長していた。

「傘を差しているから、【感知】は働く。これは有り難いかな。混乱の状態異常は、どのくらい雨を浴びたらなるんだろう? そこの検証もしておくべきかな。でも、まずは、このまま探索を進めよう」

 マップも使える状態なので、このまま探索を続ける。念のため、【使役(蝙蝠)】を使って、周辺警戒をしてもらう。そこで一つ気付いた事があった。

「蝙蝠が移動した場所もマッピングされてる。これは、思っていたよりも良スキルかも」

 蝙蝠に探索もお願いしながら歩いていると、【感知】に反応があった。蝙蝠とは、逆方向だから、蝙蝠の知らせはない。あったとしても、この雨じゃ超音波が聞こえるのか分からないけど。
 モンスターがいる方に向かって歩いていく。すると、向こうも私に気付いたみたいで、凄い勢いで近づいてきた。雨が強すぎて、影も何も見えないのが厄介かも。
 ツイストダガーを抜いて、相手の動きを見る。モンスターは、止まること無く突っ込んできた。ようやく姿見え始める。その姿は、包丁を持った女性だった。でも、ただの女性じゃない。髪を長く伸ばしているけど、雨に濡れて、身体にへばりついている。それだけなら、まだ良いのだけど、片手に包丁を握って、瞳孔が開いたような目をがっつり見開いている。その名前は、狂乱桜。正直言って、滅茶苦茶怖い。
 狂乱桜は、叫びながら包丁を振り回してくる。完全に人が出すような声じゃない。

「怖っ!!」

 思わず、突っ込んでくる狂乱桜のお腹を蹴り飛ばす。狂乱桜は、くの字に折れ曲がって、吹っ飛んでいった。HPも五割削る事が出来た。そして、脚に雨が当たるけど、混乱状態にはならない。まだ条件は満たしていないみたいだ。
 そんな確認もしながら、狂乱桜の攻撃に備える。狂乱桜は、また突っ込んでくる。でも、今度は包丁を振り回してくるのではなく、思いっきり叫んできた。その叫びを聞いた途端、一瞬、身体が硬直した。本当に短い時間だったけど、戦闘中の硬直は命取りだ。狂乱桜の包丁が命中する。でも、直前に硬質化して、【防鱗】で命中箇所を覆ったからか、ノーダメージで済んだ。ただ、その一撃で【防鱗】は、砕け散った。一撃で砕けてしまうけど、ダメージを抑えられるのは大きい。
 そして、隣を通り過ぎたタイミングで、硬直が解けたので、背中にツイストダガーを刺して、出血状態にした。同時に、【血液武装】で血を抜き取る。抜き取った血を血染めの短剣に纏わせる。再び突っ込んでくる狂乱桜を、すれ違いざまに斬る。さっきまでの攻撃で、ほとんど削っていたので、この一撃で倒す事が出来た。
 ドロップアイテムは、憎悪の心、憎悪の包丁、狂乱桜の血だった。

「うわぁ……これからあんなの戦わないといけないんだ。まぁ、モンスターとしては、別に良いんだけど。問題があるとするなら、予想以上に視界が悪くて、【感知】があっても戦いにくいって事かな。あんなに好戦的なモンスターだと、攻撃タイミングを見極めるのが重要になるのになぁ。まだ、反応出来るだけマシだけど。後は、あの叫びも嫌だな。身体が硬直しちゃうし。スキルは使用可なのが、唯一の救いかな」

 私には、防御に使えるスキルが二つもある。特に【防鱗】が、しっかりと防御に利用出来たのは嬉しい。防御面に不安があったけど、これで、その悩みは解消する事が出来たかな。

「後は、混乱の状態異常に関してだけど、今のところは大丈夫そう。これは、アカリに感謝しないとだね」

 戦闘で完全に濡れないように戦うというのは難しい。だから、この一戦で、混乱の状態異常になる可能性もあると考えていたけど、そうはならなかった。手脚が少し濡れるだけでは、その判定にはならないみたいだ。
 ここから考えられる仮説は、二つ。頭から雨に打たれるか、一定以上の雨に濡れるかのどちらかで、混乱の状態異常になるという事。後者の場合、堆積型だったら、このままちょっとずつ濡れていっても、混乱になるという事になる。そうじゃない事を祈るばかりだ。
 そんな風に考えていると、蝙蝠の超音波が聞こえてきた。その方向に意識を向けると、【感知】に反応があった。そのモンスターは、まっすぐに私に向かってきている。

「これ、また狂乱桜じゃないよね……」

 私のそんな台詞がフラグになってしまったのか、現れたのは狂乱桜だった。走ってきた勢いのまま包丁を振り回してくる。【血液武装】をしたまま握っていた血染めの短剣で、包丁を弾き、【操影】で脚から縛っていく。身体を影で縛る事に成功した私は、念のため背後に回って、その首に噛み付く。狂乱桜は、藻掻いて影から脱出しようとする。でも、それが成功するよりも、【真祖】の吸血速度の方が早かった。

「うわっ……【操影】便利……」

 こうした拘束を利用するために取った【支援魔法才能】が、無駄だったのではと思うくらいには、【操影】の拘束能力は高かった。でも、こちらは物理的な拘束で、支援魔法は状態異常的な拘束なので、その役割と効力は、少し違う。そこら辺で考えれば、無駄とまではいかないかもしれない。

「取り敢えず、狂乱桜は敵じゃないね。問題は、他にもいるであろうモンスターか。雨の中にいるモンスターって、あまり予想が付かないなぁ。蛙とかは、湿地帯とかだし……大きなナメクジとかだったら、無理かも……噛み付く勇気がない」

 下水でも何でも来いやって思っていたけど、見た目的な問題は大きい。仮にナメクジのモンスターが出て来ても、【真祖】を使う気になるかは、かなり微妙だった。
 でも、【真祖】の有能さをこの一週間とたった今知ってしまったので、もしかしたらはある。頑張れ、私。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

吸血少女 設定資料集(おまけ付き)

月輪林檎
SF
 『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。  さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。  基本的に不定期更新です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

年下の地球人に脅されています

KUMANOMORI(くまのもり)
SF
 鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。  盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。  ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。  セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。  さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・    シュール系宇宙人ノベル。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...