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吸血少女と進展?
思考から抜けていた事
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さっきの戦闘から五分もせずに、次の戦闘が始まった。今度は、ソードシャドウ二体、スピアシャドウ四体、ボウシャドウ二体、アックスシャドウ二体の編成だ。さっきの戦闘や私達が負けた時とは、数が全く違う。
「トモエ、引きつけて! フレイは奥を頼むわ! 最優先アックスシャドウ! カティは、フレイの援護!」
ゲルダさんの指示が飛んで、私達は動き出す。
「【タウンティング】」
トモエさんは、最初からヘイトを集める。さっきみたいに数が少なかったら、実際にダメージを当てにいく感じかな。数によって、効率的な方法を選んでいるのかもしれない。
シャドウ全員の視線がトモエさんに集中する。トモエさんを袋だたきにしようと、シャドウ達が突っ込んでくる。その中に、フレ姉が入っていった。長い槍を器用に操って、シャドウ達の武器を取り落とさせていく。シャドウの思考の最優先は武器の確保だ。それを利用して、時間を稼ぐという感じかな。
そのまま群がってきていたシャドウ達を通り過ぎたフレ姉は、ボウシャドウに接近する。
「【疾走突き】」
走った勢いのまま突き出された槍が、一体のボウシャドウの弓を弾き飛ばす。それを追っていくボウシャドウの背中に、次々矢が放たれて、ボウシャドウは上手く歩く事が出来ず、HPを削られながら、弓を追っていた。
その間に、フレ姉は、もう一体のボウシャドウに攻撃を始めた。これで、少しの間、ボウシャドウの攻撃はこない。
一方で、こっちでも戦闘が繰り広げられている。
「【烈火烈日】」
「【五連】【雷霆の怒り】」
二体のアックスシャドウの間の地面から激しい炎が噴き出した。そこに、五筋の稲妻が襲い掛かる。一気にHPが削れたところで、サツキさんが大剣を振るって、トドメを刺した。燃え盛る場所でも、そのリーチの長さで無理矢理斬ることが出来るのは、結構便利かもしれない。
その間に、私も血刃の双剣を抜いて、機構を使って自分の血で刃を作る。
「【ヒール】」
私のHPが減ったからか、すぐにメイティさんが回復しようとしてくれた。でも、実際に回復する事はなかった。
「んぐっ……」
緑色の光が身体を包んだと思ったら、身体全体が一気に熱くなった。焚き火の近くにいる時の感覚に似ている気がする。あれよりも強火で、身体を炙られているような気分だけど。それに耐えられなくて、思わず膝を突く。
HPを見ると、少しずつ減っているのが分かった。レイド的なエリアだけど、パーティー間のペナルティがなくなっただけで、普通に別パーティー扱いになっているみたいだ。
「ハクちゃん!?」
メイティさんの驚く声が聞こえる。回復しようとしたら、逆に私がダメージを受けたのだから無理もない。
「アカリ! ここは任せるわ!」
私に替わって、ゲルダさんが前に出る。相性が悪いとはいえ、ここでアタッカーが抜ける方がまずいと判断したみたいだ。
膝を突いている私の傍にメイティさんが駆け寄ってきた。抱えて後ろに運んでくれた。このままだと、ただの的だったから有り難い。
「すみません……」
唐突に役立たずになってしまった事を謝る。
「ううん。それよりも、回復薬……よりも血だね。はい、これ」
「はい」
メイティさんが、アイテム化した血を飲ませてくれる。多分、ブラックレオパルドの血だと思う。回復薬でも問題無いけど、さっきの様子を見たら、普通に警戒するよね。
私だって、実際油断していた。回復薬による回復が可能だったから、回復魔法も問題ないだろうと考えていた。今思えば、回復魔法の上位魔法は神聖魔法。名前から考えて聖属性だ。エルフの血からダメージを受けなくなって、聖属性を含んでいるであろう霊峰の颪にも適応出来た事もあって、警戒心が薄れすぎた。
「何でダメージを……」
メイティさんは、困惑したような声を出す。いや、実際困惑している事だろう。
「【吸血鬼】になってから、聖属性と思われるものでダメージや嫌な感覚を受けるようになったんです。回復薬で回復は出来ていたので、回復魔法も例外だろうと判断してしまいました。私の確認不足です」
「そういう事……【ヒール】」
私と会話しつつも、他の皆のHP状況を確認して回復を飛ばしていた。
その頃には、身体の熱さが薄れていき、身体を動かせるようになってきた。
「取り敢えず、私に回復魔法は不要です。最悪、自分の血で回復するので」
「うん。分かった」
メイティさんは、申し訳なさそうな表情をしながら、私の頭を撫でる。それを受けてから、双剣にもう一度【血装術】を使い、血を纏わせてから駆け出す。身体が動かせるようになったのなら、私も戦闘に参加しないといけないから。
「【アタックエンチャント】」
攻撃力を上げて、トモエさん達を抜いてきたソードシャドウの剣を弾き、足止めする。攻撃が止まったところで、アカリが細剣で脚を斬り、腰を斬り、首を斬る。ソードシャドウは、剣ではなく蹴りで私を攻撃してきたけど、それは避けられる。その間に、スピアシャドウが抜けて来たので、ソードシャドウの剣を思いっきり蹴り飛ばして、トモエさんの向こうに送る。
シャドウの最優先行動を利用して、私とアカリが接敵する相手を一体に絞る。トモエさんの向こうに追いやったら、トモエさんが止めてくれるだろうから、すぐに二対二に戻る事もない。
さっきのゲルダさんの行動を見ていて、タンクがいる状況であれば、相手を吹っ飛ばすのも有りだと分かった。二人の時と違って、不意を突かれる事もないからだ。
スピアシャドウの突きを、アカリがいなして、体勢を崩した。その隙に、八回身体を斬る。直後に体勢を立て直したスピアシャドウが蹴りを放ってくる。それを紙一重で避けて、背中を斬りつける。
「アカリちゃん! しゃがんで!」
アク姉の声に瞬時に反応した。アカリが、バッとしゃがむ。そのアカリの頭上を氷の槍が飛んでいって、スピアシャドウを貫く。私の連撃で多少HPを削っていたのもあって、一気に残り一割まで削れた。それを見逃さず、攻撃する。
「【双月】」
双剣を振り下ろして、HPを一ドットまで減らした。そこに、アカリが鋭い突きを放ってトドメを刺した。
この間に、フレ姉がボウシャドウを二体仕留めて、アックスシャドウ二体も倒していた。ゲルダさんとサツキさんも残りのシャドウを倒していた。
ゲルダさんが周辺を警戒している間に、フレ姉が私の方にやってくる。
「予想外の事もあったが、何とかなったな。ハク、大丈夫か?」
「うん。ちょっと私も予想外だった。【吸血鬼】になってから、聖属性が入ったものでダメージとか気分が悪くなったりとかあったけど、回復魔法でダメージを受けるとは思わなかったよ」
「その聖属性ってのは、何から判明したんだ?」
「えっと……」
ここで禊ぎの水について話して良いか、少し迷う。でも、双剣を見られているし、そのうち訊かれる事になると思うので、ここで白状しておくべきかも。
「熱帯エリアにある隠れ里で、師範にそう言われたの。禊ぎの水って言う水に入って、身体が痺れたんだけど、本来なら麻痺とダメージを受けるはずだったんだって。でも、エルフの血を飲んで、多少の耐性を獲得していたから、受けずに済んだらしいんだ。これは、アカリの血でも検証してる。実際、アカリの血を飲んだら、ダメージを受けたの」
「ん? アクアとアカリの血を飲んで検証した時もあったよな。それとイベントの時にも、アクアの血を飲んだはずだ。あの時はどうなんだ?」
フレ姉は、あの時の検証を覚えていたらしい。自分で見た時に、私がダメージを受けていなかったから、私の話を聞いて、違和感を抱いたのだと思う。
「【吸血鬼】になったからだと思う。それで、本格的に闇に属する事になったんじゃないかな。でも、段々と耐性が付くようになるみたいで、アカリの血を飲み続けたら、ダメージも受けなくなったの」
「隠しステータスみたいな感じか。まぁ、このゲームは、最初からステータスが隠れているが」
フレ姉も隠しステータスだと思ったみたい。やっぱりゲーマーからしたら、そういう風に思うよね。
「颪の方は、この洞窟で見つけた宝箱に入っていた血を飲んだら、気持ち悪く感じなくなった。多分、あの血に何か含まれていたんだと思う。後は、フレ姉も知ってる通り。メイティさんから回復魔法を受けたら、ダメージを受けたの」
「なるほどな。つまり、回復魔法には、他よりも強い聖の力が入っている。神聖魔法に進化するのもその設定だからかもな。ハクに回復魔法は使えないか……ゲルダ、どっちが良い?」
フレ姉が、ゲルダさんに確認する。
「ハクが前で良いわ。危険になったら、私がスイッチするわ」
「って事だ。ハクは、変わらず前に出ろ。ゲルダがサポートする。アカリは、後衛の守りを続行。さっきと同じ戦い方で良いぞ。自分達の有利を押し付けろ。パーティーのタンク張っているやつが、そう簡単に倒れるわけがないからな」
「さりげなくプレッシャーを掛けられている気がします……」
「まぁ、頑張りなさい」
トモエさんに謎のプレッシャーが掛けられたところで、皆の視線が、再び私に向く。
「ところで、さっき師範がどうとか言っていたが、どういう事だ?」
「あ~……うん。【双剣】っていうスキルを持ってるんだけど、その師範から教わるスキルなんだ。隠れ里に偶々着いて、教わったの」
「なるほどな。知れ渡ると困る理由があるのか?」
「行き方がちょっとあれな方法だし、人が押し寄せるだろうから」
「秘密の場所にしたかったって事か。まぁ、気持ちは分かるな。そもそも私達が【双剣】の入手条件を満たしているかも分からねぇしな。詳しい場所は言わなくて良いぞ。見つけるのも醍醐味だからな。だが、熱帯なんて、もう探索し尽くしたと思っていたが……」
フレ姉は、少し考え込む。頭の中で、熱帯を探索した時の記憶を思い返しているのかもしれない。
「余程、特殊な方法で行ったのね。取り敢えず、これについては終わりで良いでしょう。行くわよ」
ゲルダさんが、フレ姉の背中を叩いた事で、フレ姉の思考が途切れる。
「そうだな。まずは、目の前の謎に挑む方が先か。よし! 行くぞ!」
私達は、また洞窟の中を歩き始める。ちょっと思いもしなかったハプニングもあったけど、早めに分かって良かったかもしれない。これから、パーティーを組んで戦う事になった時に困る事になっていたかもしれないから。
まぁ、そもそもパーティーを組む事なんて、そうそうないと思うけど。
「トモエ、引きつけて! フレイは奥を頼むわ! 最優先アックスシャドウ! カティは、フレイの援護!」
ゲルダさんの指示が飛んで、私達は動き出す。
「【タウンティング】」
トモエさんは、最初からヘイトを集める。さっきみたいに数が少なかったら、実際にダメージを当てにいく感じかな。数によって、効率的な方法を選んでいるのかもしれない。
シャドウ全員の視線がトモエさんに集中する。トモエさんを袋だたきにしようと、シャドウ達が突っ込んでくる。その中に、フレ姉が入っていった。長い槍を器用に操って、シャドウ達の武器を取り落とさせていく。シャドウの思考の最優先は武器の確保だ。それを利用して、時間を稼ぐという感じかな。
そのまま群がってきていたシャドウ達を通り過ぎたフレ姉は、ボウシャドウに接近する。
「【疾走突き】」
走った勢いのまま突き出された槍が、一体のボウシャドウの弓を弾き飛ばす。それを追っていくボウシャドウの背中に、次々矢が放たれて、ボウシャドウは上手く歩く事が出来ず、HPを削られながら、弓を追っていた。
その間に、フレ姉は、もう一体のボウシャドウに攻撃を始めた。これで、少しの間、ボウシャドウの攻撃はこない。
一方で、こっちでも戦闘が繰り広げられている。
「【烈火烈日】」
「【五連】【雷霆の怒り】」
二体のアックスシャドウの間の地面から激しい炎が噴き出した。そこに、五筋の稲妻が襲い掛かる。一気にHPが削れたところで、サツキさんが大剣を振るって、トドメを刺した。燃え盛る場所でも、そのリーチの長さで無理矢理斬ることが出来るのは、結構便利かもしれない。
その間に、私も血刃の双剣を抜いて、機構を使って自分の血で刃を作る。
「【ヒール】」
私のHPが減ったからか、すぐにメイティさんが回復しようとしてくれた。でも、実際に回復する事はなかった。
「んぐっ……」
緑色の光が身体を包んだと思ったら、身体全体が一気に熱くなった。焚き火の近くにいる時の感覚に似ている気がする。あれよりも強火で、身体を炙られているような気分だけど。それに耐えられなくて、思わず膝を突く。
HPを見ると、少しずつ減っているのが分かった。レイド的なエリアだけど、パーティー間のペナルティがなくなっただけで、普通に別パーティー扱いになっているみたいだ。
「ハクちゃん!?」
メイティさんの驚く声が聞こえる。回復しようとしたら、逆に私がダメージを受けたのだから無理もない。
「アカリ! ここは任せるわ!」
私に替わって、ゲルダさんが前に出る。相性が悪いとはいえ、ここでアタッカーが抜ける方がまずいと判断したみたいだ。
膝を突いている私の傍にメイティさんが駆け寄ってきた。抱えて後ろに運んでくれた。このままだと、ただの的だったから有り難い。
「すみません……」
唐突に役立たずになってしまった事を謝る。
「ううん。それよりも、回復薬……よりも血だね。はい、これ」
「はい」
メイティさんが、アイテム化した血を飲ませてくれる。多分、ブラックレオパルドの血だと思う。回復薬でも問題無いけど、さっきの様子を見たら、普通に警戒するよね。
私だって、実際油断していた。回復薬による回復が可能だったから、回復魔法も問題ないだろうと考えていた。今思えば、回復魔法の上位魔法は神聖魔法。名前から考えて聖属性だ。エルフの血からダメージを受けなくなって、聖属性を含んでいるであろう霊峰の颪にも適応出来た事もあって、警戒心が薄れすぎた。
「何でダメージを……」
メイティさんは、困惑したような声を出す。いや、実際困惑している事だろう。
「【吸血鬼】になってから、聖属性と思われるものでダメージや嫌な感覚を受けるようになったんです。回復薬で回復は出来ていたので、回復魔法も例外だろうと判断してしまいました。私の確認不足です」
「そういう事……【ヒール】」
私と会話しつつも、他の皆のHP状況を確認して回復を飛ばしていた。
その頃には、身体の熱さが薄れていき、身体を動かせるようになってきた。
「取り敢えず、私に回復魔法は不要です。最悪、自分の血で回復するので」
「うん。分かった」
メイティさんは、申し訳なさそうな表情をしながら、私の頭を撫でる。それを受けてから、双剣にもう一度【血装術】を使い、血を纏わせてから駆け出す。身体が動かせるようになったのなら、私も戦闘に参加しないといけないから。
「【アタックエンチャント】」
攻撃力を上げて、トモエさん達を抜いてきたソードシャドウの剣を弾き、足止めする。攻撃が止まったところで、アカリが細剣で脚を斬り、腰を斬り、首を斬る。ソードシャドウは、剣ではなく蹴りで私を攻撃してきたけど、それは避けられる。その間に、スピアシャドウが抜けて来たので、ソードシャドウの剣を思いっきり蹴り飛ばして、トモエさんの向こうに送る。
シャドウの最優先行動を利用して、私とアカリが接敵する相手を一体に絞る。トモエさんの向こうに追いやったら、トモエさんが止めてくれるだろうから、すぐに二対二に戻る事もない。
さっきのゲルダさんの行動を見ていて、タンクがいる状況であれば、相手を吹っ飛ばすのも有りだと分かった。二人の時と違って、不意を突かれる事もないからだ。
スピアシャドウの突きを、アカリがいなして、体勢を崩した。その隙に、八回身体を斬る。直後に体勢を立て直したスピアシャドウが蹴りを放ってくる。それを紙一重で避けて、背中を斬りつける。
「アカリちゃん! しゃがんで!」
アク姉の声に瞬時に反応した。アカリが、バッとしゃがむ。そのアカリの頭上を氷の槍が飛んでいって、スピアシャドウを貫く。私の連撃で多少HPを削っていたのもあって、一気に残り一割まで削れた。それを見逃さず、攻撃する。
「【双月】」
双剣を振り下ろして、HPを一ドットまで減らした。そこに、アカリが鋭い突きを放ってトドメを刺した。
この間に、フレ姉がボウシャドウを二体仕留めて、アックスシャドウ二体も倒していた。ゲルダさんとサツキさんも残りのシャドウを倒していた。
ゲルダさんが周辺を警戒している間に、フレ姉が私の方にやってくる。
「予想外の事もあったが、何とかなったな。ハク、大丈夫か?」
「うん。ちょっと私も予想外だった。【吸血鬼】になってから、聖属性が入ったものでダメージとか気分が悪くなったりとかあったけど、回復魔法でダメージを受けるとは思わなかったよ」
「その聖属性ってのは、何から判明したんだ?」
「えっと……」
ここで禊ぎの水について話して良いか、少し迷う。でも、双剣を見られているし、そのうち訊かれる事になると思うので、ここで白状しておくべきかも。
「熱帯エリアにある隠れ里で、師範にそう言われたの。禊ぎの水って言う水に入って、身体が痺れたんだけど、本来なら麻痺とダメージを受けるはずだったんだって。でも、エルフの血を飲んで、多少の耐性を獲得していたから、受けずに済んだらしいんだ。これは、アカリの血でも検証してる。実際、アカリの血を飲んだら、ダメージを受けたの」
「ん? アクアとアカリの血を飲んで検証した時もあったよな。それとイベントの時にも、アクアの血を飲んだはずだ。あの時はどうなんだ?」
フレ姉は、あの時の検証を覚えていたらしい。自分で見た時に、私がダメージを受けていなかったから、私の話を聞いて、違和感を抱いたのだと思う。
「【吸血鬼】になったからだと思う。それで、本格的に闇に属する事になったんじゃないかな。でも、段々と耐性が付くようになるみたいで、アカリの血を飲み続けたら、ダメージも受けなくなったの」
「隠しステータスみたいな感じか。まぁ、このゲームは、最初からステータスが隠れているが」
フレ姉も隠しステータスだと思ったみたい。やっぱりゲーマーからしたら、そういう風に思うよね。
「颪の方は、この洞窟で見つけた宝箱に入っていた血を飲んだら、気持ち悪く感じなくなった。多分、あの血に何か含まれていたんだと思う。後は、フレ姉も知ってる通り。メイティさんから回復魔法を受けたら、ダメージを受けたの」
「なるほどな。つまり、回復魔法には、他よりも強い聖の力が入っている。神聖魔法に進化するのもその設定だからかもな。ハクに回復魔法は使えないか……ゲルダ、どっちが良い?」
フレ姉が、ゲルダさんに確認する。
「ハクが前で良いわ。危険になったら、私がスイッチするわ」
「って事だ。ハクは、変わらず前に出ろ。ゲルダがサポートする。アカリは、後衛の守りを続行。さっきと同じ戦い方で良いぞ。自分達の有利を押し付けろ。パーティーのタンク張っているやつが、そう簡単に倒れるわけがないからな」
「さりげなくプレッシャーを掛けられている気がします……」
「まぁ、頑張りなさい」
トモエさんに謎のプレッシャーが掛けられたところで、皆の視線が、再び私に向く。
「ところで、さっき師範がどうとか言っていたが、どういう事だ?」
「あ~……うん。【双剣】っていうスキルを持ってるんだけど、その師範から教わるスキルなんだ。隠れ里に偶々着いて、教わったの」
「なるほどな。知れ渡ると困る理由があるのか?」
「行き方がちょっとあれな方法だし、人が押し寄せるだろうから」
「秘密の場所にしたかったって事か。まぁ、気持ちは分かるな。そもそも私達が【双剣】の入手条件を満たしているかも分からねぇしな。詳しい場所は言わなくて良いぞ。見つけるのも醍醐味だからな。だが、熱帯なんて、もう探索し尽くしたと思っていたが……」
フレ姉は、少し考え込む。頭の中で、熱帯を探索した時の記憶を思い返しているのかもしれない。
「余程、特殊な方法で行ったのね。取り敢えず、これについては終わりで良いでしょう。行くわよ」
ゲルダさんが、フレ姉の背中を叩いた事で、フレ姉の思考が途切れる。
「そうだな。まずは、目の前の謎に挑む方が先か。よし! 行くぞ!」
私達は、また洞窟の中を歩き始める。ちょっと思いもしなかったハプニングもあったけど、早めに分かって良かったかもしれない。これから、パーティーを組んで戦う事になった時に困る事になっていたかもしれないから。
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