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吸血少女と進展?

合流待ち

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 私達は、ゲルダさんと一緒に安地に移動した。ここで、フレ姉とアク姉と合流する。

「そういえば、災難だったわね。迷惑プレイヤーに絡まれるなんて」
「ああ! そうだ! 本当に、大丈夫だったのか!? 何もされてないのか!?」

 ゲルダさんが話題に出したのと同時に、ランサスさんも思い出したみたい。この反応を見るに、一番大騒ぎしたのは、ランサスさんだったのだと思う。私を心配してくれての行動だったろうから、特に文句は言わない。

「大丈夫ですよ。何かされる前に逃げましたから」
「そうか……また絡まれるような事があったら、俺達にも言ってくれよ。全力で報復してやるからな」
「報復まではして頂かなくて大丈夫ですよ。それすると、ランサスさん達も危なくなりそうですから。お気持ちだけ頂きます」

 私がそう言うと、ランサスさんは腕を組みながら唸り始めた。

「……ハクちゃんは、相変わらず謙虚だな。まぁ、やり過ぎると、ハクちゃんにも迷惑になるか……」
「ランサスも成長したわね」
「ハクちゃんと知り合って、結構経ってんすよ? ゲルさん程じゃないっすけど、俺だってハクちゃんの気持ちの一端くらいは理解出来ますよ」

 ランサスさんは、私にウィンクしてから、ゲルダさんにサムズアップした。それに対して、ゲルダさんはにこやかに微笑みながら、近づいていき、肩に手を置いた。

「ハクじゃなくても迷惑に思うから」
「あっ、うす」

 私の気持ちを理解したという点に対して、普通に誰でも迷惑に思うという風にツッコみを入れていた。ランサスさんは、何とも言えない表情になって頷いた。それを見たゲルダさんは、私の方に向かってくる。その背後で、ランサスさんの背中をアーサーさんが軽く叩いていた。彼なりの励ましをしているみたいだ。

「そういえば、血を欲しがっているって、フレイから聞いているのだけど」
「あ、はい。そうです」
「余っている素材で、血液系のものを集めているから、暇があったら家に来て。それにしても、難儀なスキルを選んだわね」
「あはは……バレます?」

 私が【吸血】を持っていた事を、ゲルダさんは、すぐに見抜いてきた。いや、もしかしたら、フレ姉から既に聞いていたって可能性もある。ゲルダさんは、情報を広めるような事はしない信用出来る人だから。

「血を欲しがる人なんて、余程の物好きか、追加効果狙いか、【吸血】関係に決まっているからね。雑多な血を要求している時点で、二番目はない。ハクだから、物好きの可能性を否定出来ないけど、そんな子に育てた覚えはない。だから、最後になるわけね」

 単純に推測しただけだった。さすがは、ゲルダさん。小さい時から、全く隠し事が通用しないだけのことはある。

「それより、アカリ、テントはあるかしら?」
「はい。あります」
「それなら、軽く自分達の防具を直しておいて。これから、洞窟に行くのだから、なるべく準備はしておいた方が良いでしょう?」
「あ、そうですね」

 ゲルダさんに言われて、アカリがテントを張る。私の防具も直して貰わないといけないので、テントの中に入ろうとすると、ゲルダさんに呼び止められる。

「ハクは着替えて、私のところに来なさい」
「あっ、はい」

 声色は普通だったけど、私には分かる。これは説教だ。さっき、傘で下りるという超絶無茶をしでかした説教を、フレ姉達が来る前にするつもりだ。これに関して、私には拒否権がない。受け入れるしかないのだ。
 テントの中で、白いワンピースと黒いショートパンツに着替えて、外に出る。アカリは、中で修繕をしている。

「そこに座りなさい」

 ゲルダさんに言われて、用意された簡易椅子に座る。その正面に、ゲルダさんも座った。そして、ゲルダさんによる説教が始まる。落下ダメージの話から傘での減速には無理があるという事など、説教なのかと思う内容だけど、確実に怒っているのは事実なので、説教だと思う事にした。
 どのくらい経ったかは分からないけど、ゲルダさんの説教が一段落するのと、後ろから衝撃が襲ってきたのは、同時だった。

「ハクちゃ~ん!! 元気にしてた!?」

 アク姉が後ろから思いっきり抱きしめてくる。身体を揺らす度に、椅子がミシミシ言っているから、ちょっと落ち着いて欲しい。

「あっ、ゲルちゃん、久しぶり」
「相変わらずの溺愛っぷりね。椅子が保たないからやめなさい」
「は~い」

 アク姉は、ゲルダさんの言う事を素直に聞いて、私を抱きしめるのをやめる。でも、私の傍から移動しようとはしなかった。

「急な話で悪かったわね」
「ううん。こっちでも、攻略に手間取ってたから、有り難い話だったよ。ね?」
「はい。ゲルダさんの申し出は、とても有り難かったです。寧ろ、私達がお邪魔して良いのでしょうか?」

 メイティさんが、丁寧にゲルダさんに確認を取っていた。アク姉からしたら、姉の友人だけど、メイティさんからしたら、友達の姉の友達だから、ちょっとだけ緊張して、言葉遣いが丁寧になっている。

「逆に、私とフレイがお邪魔させてもらう側よ。ハクとアカリのパーティーに私達がいれてもらうのだもの」
「それって、ゲルちゃん達でも突破出来ないって事?」
「そうだ。私達でも、一パーティーでの攻略は厳しい」

 アク姉の疑問に答えたのは、ゲルダさんじゃなかった。そのさらに後ろから合流してきたフレ姉だ。

「あら、おかえり。思ったよりも遅かったわね」
「途中で、集団とぶつかってな。避けて行く事も出来ねぇから、戦闘になった。ハク、ゲルダに説教されてたろ?」
「うぇっ!? 何で、バレたの!?」
「こいつが正面に座って、お前が行儀良く座ってる時は、説教を受けてる時だって相場が決まってる」

 相場が決まっていたらしい。そこまで説教されているわけじゃないのだけど、フレ姉からすると、決まった形になっているみたい。

「何をやらかしたかは、後で聞かせて貰うぞ。おい! ランサス! アーサー! こっち来い! 今後について伝える!」

 フレ姉はそう言って、私達から離れていった。今後のギルドの予定についてだから、私達には関係ない事と考えて、離れてくれたって感じだ。関係ない話を聞いている時が、一番退屈だからね。

「ハクちゃん、何か無茶したの?」

 そう訊いてくるのは、メイティさんだった。これは、まずい。メイティさんは、ゲルダさんに次いで説教をしてくる人だ。基準は緩いし、根が甘いから、優しく諭す感じだけど、連続説教は精神的にキツい。

「傘を使って、高いところから飛び降りたのよ。アカリも一緒に連れてね。下手したら、死に戻りね」

 即行でゲルダさんが告げ口した。裏切り者と言いたいところだけど、そもそも何も裏切っていない。

「ハクちゃん……高いところは危険だって、昔言ったよね?」
「え~っと……多分?」
「これで、五回目だよ?」
「…………」

 うん。正直覚えている。小さい時、少し高いところから飛び降りて遊んでいた時に、遭遇して怒られた事とゲーム内で怒られた事が、しっかりと四回ある。ゲーム内に関しては、落下ダメージで死んでいたので、見極めをしっかりとしなさいと言われた記憶がある。ゲルダさんと言っている事は、ほとんど同じだ。

「そういうのを検証する時は、安全な段差から始める事。良い?」
「は~い」

 私がそう返事をすると、メイティさんが優しく撫でてくれる。やっぱり、根が甘すぎる気がする。まぁ、このくらいの説教なら、精神的にも来ないから受け入れよう。
 てか、正直、当たり前の事過ぎて、頷くほかない。

「でも、傘で空を飛ぶって、面白そうね。新しい移動手段になるかもしれないし」

 アメスさんが、私達がやった無謀に興味を持った。確かに、魔法が使える仲間を用意して、傘に風魔法を撃って貰ったら、空を飛んで高速移動出来るかもしれない。傘が壊れなければの話だけど。

「アメス?」

 私のやった事を肯定するようなアメスさんの言葉に、ゲルダさんがニコッと笑う。それを受けて、アメスさんは、すぐに目を逸らした。
 この中で、ゲルダさんに勝てる人はいなさそうだ。

「ところで、ゲルちゃん。探索は、どのくらいから始める感じ? 姉さん達の準備が整ったら?」
「そうね。アカリもいるから、あなた達の防具も直して貰いなさい。万全の態勢で挑みたいでしょ」
「分かった。そうする」

 アク姉達は、アカリがいるテントに順番に入っていって、服を着替えて戻ってくる。アカリは、テントの中でヒーヒー言っている事だろう。
 アカリが装備の点検を終えるまで待機する事になった。その間、私はアク姉達に抱きしめられて過ごす事になった。サツキさん、メイティさん、アメスさん、カティさん、トモエさん、アク姉と順々に抱きしめられる。人をリラックス道具にしないで欲しいけど、まぁ、されるがままでいればいいのは楽なので、受け入れていた。
 因みに、何がとは言わないけど、アク姉が一番柔らかくて、アメスさんが一番硬かった。アメスさんの名誉のためにも、この事は胸の中に秘めておく。
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