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吸血少女と進展?

森を抜けた先

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 森を抜けた先にあるのは、ちょっとした荒れ地と坂道だ。いや、坂道という言葉は間違いか。多少緩やかな崖と言うべきかもしれない。あっちこっち凸凹になっていて、登れなくはないけど、簡単に登れるような場所ではないという感じだ。
 そして、私達は、厳かにも感じてしまう程に高く聳え立つ壁のような山脈に圧倒されていた。
 山脈の麓で、森の中にあった安地からでは、感じなかったものを全身で感じている。それは、吹き下ろしてくる風。冷たい颪だ。
 だけど、その寒さを感じているというよりも、風に含まれている何かを身体が感じ取っているという風に思える。
 ちらっと隣を見てみると、アカリは、聳え立つ山脈に圧倒されているだけで、私と同じものを感じているようには見えなかった。

「アカリ、この風……変な感じしない?」
「?」

 訊いてみても、アカリはよく分からないという感じで首を傾げていた。本当に何も感じていないみたい。

「まぁ、いいや。山に登る前に、安地を探そう。何か目印的なものはある?」
「目印かぁ……これまでの感じから考えるに、平原みたいな場所で円形が安置だと思う」
「平原……円形……あっ、あれはどう?」

 アカリの言う条件に当てはまる場所を見つけた。周囲が荒れ地となっているのに、その場所だけは草が生い茂っていて、小さな平原を形成していた。

「安地っぽい。取り敢えず、あそこで三十分くらい休憩しようか。割と連戦だったし」
「そうしようか」

 ここから上級エリアになるかもしれない事を考えると、一旦休憩を挟むのは良い考えだと思う。なので、アカリの意見に賛同して、一緒に安地であるはずの草原に向かった。
 寝るわけじゃないので、テントは張らず、草原に座る。互いに向かい合わせに座るのではなく、互いに互いを背もたれにして座った。背もたれがあるのとないのでは、腰とかの楽さが違う。

「そういえば、死んだ時のリスポーン地点って、どこになるんだっけ?」
「えっと……安地じゃなかったっけ? 確か、ヘルプにもあったような気がする」

 アカリの言葉を受けて、自分でもヘルプを見てみる。その中に、イベント中のリスポーン地点に関しての記載を見つけた。

「本当だ。最後に訪れた安地になるって書いてある」
「結構メリットとデメリットがあるよね」
「ああ、無理矢理進んできて、モンスターに勝てず、死に戻りし続けるとかね。せっかくのイベント期間を無為に過ごす事になるもんね」

 取り敢えず、ここが安地だと考えれば、私達が死んでもここで復活する事になる。中級と上級の間かもしれないこの安地は、結構良い場所だ。上級で敵わないと分かれば、そのまま中級に行けるし、そこでレベルが上がれば、上級に挑めるようになるかもしれない。

「ひとまず、ここを中心に動こうか」
「うん。ここが安地だったら、どっちにも行きやすいしね」

 アカリも同じ考えをしていたみたい。話が早くて助かる。そんな風に休憩していると、メッセージが届いた。

『ハクちゃんとアカリちゃんは、どこまで行った? 私達は、山の麓まで来たよ。今は、テントを張って休憩しているところだよ。ブラックレオパルドが沢山いたから、アカリちゃんにあげるって伝えといて。ちなみに、私達は東側に向かって移動したよ』


 アク姉からのメッセージだった。夜になったから、アク姉達は寝るみたい。私に合わせた結果、夜型になった私達はまだ行動を続けるけど、普通はもう寝て明日に備える時間だ。

「アク姉達も東に向かったみたい。私達と同じで、山の麓にある安地にいるらしいよ」
「へぇ~、じゃあ、どこかで会うかもしれないね」
「ね。アク姉達もブラックレオパルドを沢山倒したから、アカリにあげるって」
「やったね。ブラックレオパルドの素材だけで、色々と作れそう。どんなものがいいかなぁ」

 アカリは楽しそうにしていた。根っからの生産職だから、今から作るのが楽しみで仕方ないのだと思う。ここだと満足に作業も出来ないだろうしね。

「フレ姉は、どこに行ったんだろう?」
「メッセージ送ってみたら?」
「この時間なら、フレ姉も休憩しているだろうし良いかも」

 こっちの近況を添えて、フレ姉の調子がどうかを送る。すると、返事はすぐに返ってきた。

『私達は、南東に進んでいる。東側には森、南には砂漠が広がっている。モンスターも森と砂漠で異なるが、レアモンスターが通常個体以上にいるのは変わっていない。後は、北と西だが、北は雪原、西は豪雨地帯となっているらしい。うちのギルドから届いた情報だから、ほぼ確実だろう。私達は、これから就寝して、東の山を攻略していくつもりだ。もし、二人での攻略が厳しいようだったら、いつでも合流出来る。その時は連絡してくれ』

 思わぬ情報も一緒にメッセージで送られてきた。私とアカリは、東から動く気はないので、他の地域に関して知る術はなかった。でも、フレ姉は、ギルドの利点である人数で情報を知る事が出来た。

「北は雪原、西は豪雨、南は砂漠だって」
「うげ……西じゃなくて良かった……」

 アカリは、通常エリアの西で同じく雨の降る地域に苦戦していた。それを考えれば、アカリがげんなりするのも頷ける。
 私達が東に配置されたのは、意外と運の良い事だったみたい。

「フレ姉は、南東にいて、東の山を攻略するみたい。私達二人で厳しそうだったら、合流して一緒に攻略しようってさ」
「そこは、ハクちゃんに任せるよ」

 私が集団行動を苦手としているので、判断を私に委ねてくれた。

「ありがとう。取り敢えず、上級エリアがどんな感じなのか、ちゃんと見てから決めるよ」
「うん。そういえば、ブラックレオパルドとの戦いで怪我とかはしてない? ハクちゃん、【吸血鬼】があるから、いまいち攻撃を受けているかどうか分からないんだよね」
「あぁ……なるほどね。大丈夫。基本的に硬質化で防いでるから、あまり食らってないよ。アカリの言う通り、【吸血鬼】で回復もしているしね」
「それなら大丈夫そう……ん? 攻撃自体は受けてる?」
「うん。私の腕を齧っていたの見なかった?」
「そうだっけ……?」

 私は、自分で訊いてから、自分とアカリの視界に差がある事を思い出した。私が噛み付かれているところも、上手く見えていなかったみたい。

「……外套を脱いでくれる?」
「うん」

 私は血姫の装具の外套を脱いで、アカリに渡す。

「う~ん……そこまで削れてないから、大丈夫かな。はい」

 これから上級エリアに行くという事もあって、防具の耐久度を確認したかったみたい。途中で防具が駄目になるかもしれない事を考慮していた感じかな。
 アカリから外套を返されたので、着直す。

「それじゃあ、そろそろ山に行こうか。アク姉もフレ姉も朝になるまで動かないだろうから、私達が一番乗りだよ」
「ハクちゃん、わくわくしてるね」
「そりゃ勿論。ここでわくわくしないわけないでしょ。アク姉達よりも先に行けるわけだし」

 私はそう言って、アカリに手を差し伸べる。アカリは、すぐに私の手を取る。

「そうだね。それじゃあ、行こう」

 私達は、上級エリアと思われる山に向かって行く。一体どんな場所なのか、楽しみだ。
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