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吸血少女の歩む道
一撃の喜び
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翌日。私は、師範を倒すために、色々と模索する事にした。
一つだけ分かっているのは、師範は、私の死角にしか高速移動出来ないという事。あの戦いで、毎回のように、師範は私の死角に現れていた。私の隙を突くという面では、一番だけど、普通に正面から来ても私の対応は追いつかなかったと思う。実際、連撃でやられそうになったわけだし。
そういう面から考えて、敵の死角にしか高速移動出来ないと判断した。これが、布石としてやっているとかだったら、完全にお手上げだけど、そこまで理不尽じゃないと信じたい。
師範にもう一度挑むために、双刀の隠れ里に来た。師範との戦闘を練習するには、師範と戦うしかない。師範以外に、【双剣】のスキルを持っている人はいない。同じ戦い方をしてくれる人がいないと、練習にはならないからね。幸いな事に、一日に一度は必ず戦える。そこから活路を見出していけば良い。そこまで急ぐようなことでもないし。
「スキルと技を的確に使用して、死角を埋める。そのために必要なのは、これ!」
私は、モンスターの血を取り出して、腰のベルトに挟む。この血を私の背後に配置して、攻撃を受ける直前に【硬質化】させれば、盾になる可能性がある。
「すみませ~ん」
声を掛けながら、師範の家の扉をノックしようとすると、その前に扉が開いた。私が来るまで、扉の前で待っていたのではないかと疑いたくなるくらいに早い。
「よく来たな。さっさと始めるぞ」
「あっ、はい」
師範に急かされるので、急いで後を付いていく。私の稽古が師範の暇つぶしみたいになっているのかもしれない。道場に来た私は、腰に差している血の入れ物の蓋を開いてから、血染めの短剣を抜く。師範も双剣を手に取る。
「では、いつでも掛かってくると良い」
そう言われた直後に、いつもの高速移動をする。師範の真横に移動した私は、その背中に短剣を突き立てようとする。切っ先が触れる寸前に、師範の姿が掻き消える。確認するまでもなく、私の死角に移動してきた。振ってくる双剣に対して、板のようにして【硬質化】を使った血をぶつける。
金属と金属が勢いよくぶつかるかのような音がした。滅茶苦茶心配だったけど、ちゃんと防げてはいる。
「【追刃】」
振り向くようにして、師範に向かって振う。また私の死角に師範が移動してきて、双剣を振ったけど、それに対しては、【追刃】で残った斬撃が、防いでくれた。【追刃】で残った斬撃に当たらないように、後ろに向かって蹴る。
師範のお腹に打ち込めそうだったけど、攻撃に合わせて後ろに跳んでいったので避けられた。それを追うように、高速移動して、横を抜けるのと同時に拳を振った。
師範が、双剣で止めようとしてくるので、ギリギリで拳を止める。勢いが止まってしまったけど、ここで攻撃を止めずに、腰から身体を回して、逆手に持った短剣を振う。拳の対処に双剣を使ったから、こっちは使えないはず。これでダメージを与えられると思ったのと同時に、師範が死角に移動してきた。でも、そのまま攻撃をされる事はなかった。
その理由は、【追刃】が私の周りに残っていたからだ。攻撃には、あまり活用出来ていないけど、防御にはある程度利用出来ている。
【追刃】の効力が切れてしまう。MPの残量的に、【追刃】は後一回しか使えない。使い時は、慎重に見極める必要がある。師範と私は、一度距離を取って、仕切り直しになった。
前よりは、相手の戦い方も分かってきて、上手く戦えている気がする。
「今度は、こちらから行かせて貰おう」
師範は、死角に移動してこないで、正面から走ってきた。行動パターンが、さっきと変わっている。
受け身でいるより、こっちも攻勢に出た方が戦えるはずだと考えて、私からも突っ込んだ。両方の間合いに入る直前に、師範が死角に移動してきた。
その行動は読めていたので、まっすぐ前に向かって高速移動する。急減速して、こっちから攻撃しようと思ったけど、こっちが急減速したのと同時に、また私の死角に移動された。急減速中は、私も取れる行動が少ない。このまま攻撃に転じる事もできない。
だから、減速のために踏ん張っていた脚の力を抜く。すると、私は、そのまま元々進んでいた方向に吹っ飛んだ。おかげで、師範の攻撃を避ける事が出来た。
壁まで吹っ飛ぶので、身体の向きを整えて脚から壁に着地して、脚のバネを利用して、師範に向かって突っ込む。【脚力強化】も相まって、勢いよく師範に向かって行き、短剣を振う。
師範は、その一撃を双剣で受け止めた。勢いが乗った一撃だったからか、双剣が弾かれた。大きな隙が生まれたので、師範の傍に着地して、裏拳を打ち込む。師範の腹に命中して、大きく吹き飛ばした。激突した壁が割れて、土煙が立つ。
「やった……やった!!」
散々避けられて、ようやく入れられた一撃なので、思わず喜びが出てしまった。でも、すぐに相手がNPCだったという事を思い出して、殺してしまったかもという発想が追いついてきた。
「やばっ!? だ、大丈夫ですか!?」
土煙が収まってきたところに駆け寄る。すると、師範が平然とした顔をしながら壁の向こうから出て来た。
「ふむ。良い一撃だった。まさか、ここまで早く一撃入れられるとはな。予想外だ」
「あ、ありがとうございます。あの、大丈夫なんですか?」
「身体の鍛え方が違う。このような事で怪我をする訳がないだろう」
「あ、そうなんですね」
師範は、全然怪我をしていなさそうだった。そもそもダメージを受けているような感じもない。異常な強さのNPCって事なのだと思う。
「ふむ。少々物足りないが、合格で良いだろう」
「えっ!? 良いんですか!?」
「うむ。稽古としては、満足したからな。【双剣】の扱いを認めよう」
そう言われた瞬間、目の前にウィンドウが現れた。
『クエスト『【双剣】の会得』を完了しました。報酬として、【双剣】のスキルが収得可能となります』
これで、【双剣】が取れるようになったみたい。まぐれで当てられたみたいな感じだったけど、クリア出来て良かった。
「双剣の極意を知りたくなったら、また来ると良い。そうでなくても、稽古なら、毎日してやるぞ」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
「うむ。ではな」
そう言って、師範が道場を出て行くので、私も合わせて外に出て、ファーストタウンに移動する。
「アカリエで良いか」
色々と情報を整理したかったので、アカリエに向かう事にした。アカリには、色々と話しているから、この事も話しやすいしね。
一つだけ分かっているのは、師範は、私の死角にしか高速移動出来ないという事。あの戦いで、毎回のように、師範は私の死角に現れていた。私の隙を突くという面では、一番だけど、普通に正面から来ても私の対応は追いつかなかったと思う。実際、連撃でやられそうになったわけだし。
そういう面から考えて、敵の死角にしか高速移動出来ないと判断した。これが、布石としてやっているとかだったら、完全にお手上げだけど、そこまで理不尽じゃないと信じたい。
師範にもう一度挑むために、双刀の隠れ里に来た。師範との戦闘を練習するには、師範と戦うしかない。師範以外に、【双剣】のスキルを持っている人はいない。同じ戦い方をしてくれる人がいないと、練習にはならないからね。幸いな事に、一日に一度は必ず戦える。そこから活路を見出していけば良い。そこまで急ぐようなことでもないし。
「スキルと技を的確に使用して、死角を埋める。そのために必要なのは、これ!」
私は、モンスターの血を取り出して、腰のベルトに挟む。この血を私の背後に配置して、攻撃を受ける直前に【硬質化】させれば、盾になる可能性がある。
「すみませ~ん」
声を掛けながら、師範の家の扉をノックしようとすると、その前に扉が開いた。私が来るまで、扉の前で待っていたのではないかと疑いたくなるくらいに早い。
「よく来たな。さっさと始めるぞ」
「あっ、はい」
師範に急かされるので、急いで後を付いていく。私の稽古が師範の暇つぶしみたいになっているのかもしれない。道場に来た私は、腰に差している血の入れ物の蓋を開いてから、血染めの短剣を抜く。師範も双剣を手に取る。
「では、いつでも掛かってくると良い」
そう言われた直後に、いつもの高速移動をする。師範の真横に移動した私は、その背中に短剣を突き立てようとする。切っ先が触れる寸前に、師範の姿が掻き消える。確認するまでもなく、私の死角に移動してきた。振ってくる双剣に対して、板のようにして【硬質化】を使った血をぶつける。
金属と金属が勢いよくぶつかるかのような音がした。滅茶苦茶心配だったけど、ちゃんと防げてはいる。
「【追刃】」
振り向くようにして、師範に向かって振う。また私の死角に師範が移動してきて、双剣を振ったけど、それに対しては、【追刃】で残った斬撃が、防いでくれた。【追刃】で残った斬撃に当たらないように、後ろに向かって蹴る。
師範のお腹に打ち込めそうだったけど、攻撃に合わせて後ろに跳んでいったので避けられた。それを追うように、高速移動して、横を抜けるのと同時に拳を振った。
師範が、双剣で止めようとしてくるので、ギリギリで拳を止める。勢いが止まってしまったけど、ここで攻撃を止めずに、腰から身体を回して、逆手に持った短剣を振う。拳の対処に双剣を使ったから、こっちは使えないはず。これでダメージを与えられると思ったのと同時に、師範が死角に移動してきた。でも、そのまま攻撃をされる事はなかった。
その理由は、【追刃】が私の周りに残っていたからだ。攻撃には、あまり活用出来ていないけど、防御にはある程度利用出来ている。
【追刃】の効力が切れてしまう。MPの残量的に、【追刃】は後一回しか使えない。使い時は、慎重に見極める必要がある。師範と私は、一度距離を取って、仕切り直しになった。
前よりは、相手の戦い方も分かってきて、上手く戦えている気がする。
「今度は、こちらから行かせて貰おう」
師範は、死角に移動してこないで、正面から走ってきた。行動パターンが、さっきと変わっている。
受け身でいるより、こっちも攻勢に出た方が戦えるはずだと考えて、私からも突っ込んだ。両方の間合いに入る直前に、師範が死角に移動してきた。
その行動は読めていたので、まっすぐ前に向かって高速移動する。急減速して、こっちから攻撃しようと思ったけど、こっちが急減速したのと同時に、また私の死角に移動された。急減速中は、私も取れる行動が少ない。このまま攻撃に転じる事もできない。
だから、減速のために踏ん張っていた脚の力を抜く。すると、私は、そのまま元々進んでいた方向に吹っ飛んだ。おかげで、師範の攻撃を避ける事が出来た。
壁まで吹っ飛ぶので、身体の向きを整えて脚から壁に着地して、脚のバネを利用して、師範に向かって突っ込む。【脚力強化】も相まって、勢いよく師範に向かって行き、短剣を振う。
師範は、その一撃を双剣で受け止めた。勢いが乗った一撃だったからか、双剣が弾かれた。大きな隙が生まれたので、師範の傍に着地して、裏拳を打ち込む。師範の腹に命中して、大きく吹き飛ばした。激突した壁が割れて、土煙が立つ。
「やった……やった!!」
散々避けられて、ようやく入れられた一撃なので、思わず喜びが出てしまった。でも、すぐに相手がNPCだったという事を思い出して、殺してしまったかもという発想が追いついてきた。
「やばっ!? だ、大丈夫ですか!?」
土煙が収まってきたところに駆け寄る。すると、師範が平然とした顔をしながら壁の向こうから出て来た。
「ふむ。良い一撃だった。まさか、ここまで早く一撃入れられるとはな。予想外だ」
「あ、ありがとうございます。あの、大丈夫なんですか?」
「身体の鍛え方が違う。このような事で怪我をする訳がないだろう」
「あ、そうなんですね」
師範は、全然怪我をしていなさそうだった。そもそもダメージを受けているような感じもない。異常な強さのNPCって事なのだと思う。
「ふむ。少々物足りないが、合格で良いだろう」
「えっ!? 良いんですか!?」
「うむ。稽古としては、満足したからな。【双剣】の扱いを認めよう」
そう言われた瞬間、目の前にウィンドウが現れた。
『クエスト『【双剣】の会得』を完了しました。報酬として、【双剣】のスキルが収得可能となります』
これで、【双剣】が取れるようになったみたい。まぐれで当てられたみたいな感じだったけど、クリア出来て良かった。
「双剣の極意を知りたくなったら、また来ると良い。そうでなくても、稽古なら、毎日してやるぞ」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
「うむ。ではな」
そう言って、師範が道場を出て行くので、私も合わせて外に出て、ファーストタウンに移動する。
「アカリエで良いか」
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