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吸血少女の歩む道
嫌な事
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日傘を受け取ったアカリは、それを自分のアイテム欄に入れる。そうして、私の事を見てくる。
「というわけで、ちょっと元気補充したい」
アカリはそう言って、私の方に両手を向けてくる。アカリは、本当に時々アク姉みたいになる。頻度で言えば、極度に疲れた時とか嫌な事があった時くらいだから、一ヶ月に一回あったら多いって感じだ。注文とかが多かったのか、毎日忙しかったからなのか、私には分からないけど。
取り敢えず、アカリに色々と頼んでいるのは私なので、大人しく言う事を聞いておく事にした。正面からアカリを抱きしめるとアカリからも手を背に回される。
そのまま引っ張られるので、アカリの膝の上に乗る形になる。結果、アカリが私の胸に顔を突っ込む事になるけど、特に気にする事でもないので、そのままアカリが満足するまでそうさせる。
「何か変な客が来てさ。他のプレイヤーを優遇してるだろとか、何かよく分からない事を喚いてたの。面倒くさくて、裏にずっといたんだけどさ。全然いなくならなくて。最終的に、フレイさんが、叩きだしてくれたの」
「ああ、フレ姉が来てくれたんだ。良かった」
アカリが消耗している理由が、迷惑客だったと聞いてちょっと心配になったけど、フレ姉が来てくれたのであれば、その場では解決したと考えて良いと思う。これからは心配だけど。
「でも、何でそんなクレーマーが来たの?」
「何かハクちゃんが気にくわない人がいるみたい」
「あぁ~……悪目立ちしてるからなぁ……ごめんね」
「ううん。ハクちゃんが悪くないのは、分かってるから良いよ。あそこまで怒鳴られてたのは初めてで、びっくりしちゃって……」
知らない人が店内で騒いでいたら怖くなるのは、普通の事だと私も思う。そして、私を標的に色々言ってくる人には、不本意だけど心当たりがある。正直、私が原因って言われると意味が分からないって感じてしまうけど。
取り敢えず、アカリの頭を優しく撫でる。私のせいでアカリが不快な思いをしてしまったので、私が慰めるのは当然のことだ。
「迷惑行為が多いし、早くBANしてくれると良いんだけどね」
「BANとかあるかな?」
「普通はあるでしょ。あそこまで迷惑な人の行為を放置するなんて、運営としてあり得ないと思うし」
「はぁ……久しぶりにプレイヤーのせいで不快な思いをしたなぁ。ここ最近は、人に恵まれてたって事かな」
「絶対違うと思う。ああいった馬鹿の方が珍しいし。最近じゃ、あそこまでの馬鹿はそうそういないよ」
VRMMO内での迷惑行為は、随分前に問題視され、BANなどの対策が為される事になっている。通報すればすぐに対処してくれる訳では無く、その後にプレイヤーの動向を監視して、実際に迷惑行為が認められれば、BANなどの対策が取られる。
プレイ人口が減るという懸念もあってか、BAN措置自体は、最終手段として使われる事がほとんどだ。最初は、注意から始まる。それでも止めないプレイヤーが対象となる。
一つアカウントに一つのアバターで登録しているので、同一アカウントで新しいキャラを作る事は出来ない。これが、基本的なVRMMOのBAN措置だ。
新しいアカウントを作ってくる可能性は否定出来ないけど、今まで育てていたアバターが消されるのは、かなり辛い。そこから続ける人は、そこまで多くない。
恐らく、今回アカリエに迷惑行為をしに来た人は、私がパーティー勧誘を断って、イベントで倒した人達の誰かもしくは全員だと思われる。
徹底的に打ちのめしてやりたいけど、私が出張れば、余計に拗れる可能性がある。それは、フレ姉達も同じだけど。
だから、運営に連絡した後は、対処を待つしかない。フレ姉達にも、しっかりと言い聞かせておかないと。
念のため、フレンド通信のメッセージ機能を使い、二人に連絡しておく。これくらいなら、片手でも簡単に操作出来る。メッセージを送ったら、すぐにフレ姉から返信が来た。
『了解。敵は三人組だった。あの時の奴も混じっていたから、ハクが目的だろう。PvPで叩きのめしておいたから、しばらくは、アカリエに近づかないとは思う。運営には連絡済みだ。一週間は様子見した方が良い。アカリには、なるべく一人にならないか店の裏に引き籠もっているように言っておいてくれ。一週間経っても改善していないようだったら、また運営に連絡する。それと、このゲームでもPK自体は出来る。ハクも気を付けろ』
フレ姉は、アカリエに来た人達を本当にボコボコにしたみたい。PvPは申請制みたいだから、互いに了承しないと始まらない。フレ姉がボコボコに出来たという事は、あの人達も受け入れたという事だから、迷惑行為には引っ掛からない。
それにしっかりと運営に通報もしてくれていた。フレ姉の判断や行動は、結構早い。これで解決してくれると良いけど。
フレ姉の少し後に、アク姉からも返信が来た。
『分かったよ。どういう人か分からないから、私からは何も出来ないと思う。ごめんね。一応、皆にも伝えて、アカリエ周辺に気を配ってもらうようにしとくよ。アカリちゃんに、外への用事があったら、私とか姉さんも頼るように伝えておいてくれる? 代理で出来る事は私達でもやるからって。それとハクちゃんも十分に気を付けてね。PKの被害にあったプレイヤーもいるみたいだから。因みに、PKにメリットは、ほぼないよ。所持金の一部を貰えるくらい。それも千単位くらいだったかな。それでもやりたい人はやるから。度が過ぎれば、迷惑行為に認定されるかもだけど、普通に被害にあっただけだと迷惑行為に当てはまらないから』
アク姉のパーティーメンバーもアカリエに気を配ってくれるみたい。がっちり守るわけじゃないけど、見てくれる人が増えるだけでも有り難いと思う。
それに、アク姉からはPKについて少し詳しく伝えられていた。PKのメリットは、ほんの数千G。普通にモンスターを狩って、素材を売った方が遙かに儲けられるので、本当にメリットは薄い。やる意味があるのかどうかも分からないくらいだ。
運営としては、PKは楽しみ方として認めるけど、あまり推奨はしないみたいな感じなのかもしれない。
「フレ姉がもう通報してくれたってさ。それに、アク姉のパーティーも気に掛けてくれるって。もしかしたら、フレ姉のギルメンも気に掛けてくれるかもよ、それと何か欲しいものとかがあったら、言って欲しいってさ。アカリの安全が確保出来るまでは、持ってきてくれるみたい」
「うん……ありがとう……」
アカリの声には元気がない。二人にも迷惑を掛けてしまっていると思っているのだと思う。
「もう。アカリのせいじゃないんだから、元気だしなよ。いつものアカリの方が、私は好きだよ」
私がそう言うと、アカリが私の事をぎゅっと締めてくる。喜んでくれている証拠だ。ちょっとすると、アカリが私を放す。
「ありがとう、ハクちゃん」
「良いって。可愛いアカリも見られたし」
「もう……」
アカリは少し恥ずかしそうにしながら、そっぽを向く。そんなアカリのほっぺをつんつんと突っついていたら、指先を噛まれた。噛み付きでも攻撃判定があるのは、私がよく分かっている。
まぁ、街の中だから、ダメージ判定はない。でも、何か口の中的な感覚はする。
「私が噛んだ時も、舌とかの感触した?」
「あまりしなかったけど。そもそも舐めてはないでしょ?」
「確かに。じゃあ、ちょっと噛んでみて良い?」
「えぇ~……まぁ、良いけど」
アカリから許可を貰ったので、アカリの首元に噛み付く。街の中だからか、魔力の牙は出なかった。なので、ただただ噛み付いただけになる。
「ほお?」
「ただ噛まれてる感じ。舌の感触もあるよ」
「やっぱり? 現実っぽい?」
「ちょっと違和感はあるけどね」
感触を完璧に再現している訳では無さそう。変な検証をしちゃったけど、ちょっと面白かった。
「もうそろそろログアウトしようかな。アカリは?」
「私も。そろそろご飯だし」
「それじゃあ、またね」
「うん。またね」
アカリと別れて、ログアウトする。
「というわけで、ちょっと元気補充したい」
アカリはそう言って、私の方に両手を向けてくる。アカリは、本当に時々アク姉みたいになる。頻度で言えば、極度に疲れた時とか嫌な事があった時くらいだから、一ヶ月に一回あったら多いって感じだ。注文とかが多かったのか、毎日忙しかったからなのか、私には分からないけど。
取り敢えず、アカリに色々と頼んでいるのは私なので、大人しく言う事を聞いておく事にした。正面からアカリを抱きしめるとアカリからも手を背に回される。
そのまま引っ張られるので、アカリの膝の上に乗る形になる。結果、アカリが私の胸に顔を突っ込む事になるけど、特に気にする事でもないので、そのままアカリが満足するまでそうさせる。
「何か変な客が来てさ。他のプレイヤーを優遇してるだろとか、何かよく分からない事を喚いてたの。面倒くさくて、裏にずっといたんだけどさ。全然いなくならなくて。最終的に、フレイさんが、叩きだしてくれたの」
「ああ、フレ姉が来てくれたんだ。良かった」
アカリが消耗している理由が、迷惑客だったと聞いてちょっと心配になったけど、フレ姉が来てくれたのであれば、その場では解決したと考えて良いと思う。これからは心配だけど。
「でも、何でそんなクレーマーが来たの?」
「何かハクちゃんが気にくわない人がいるみたい」
「あぁ~……悪目立ちしてるからなぁ……ごめんね」
「ううん。ハクちゃんが悪くないのは、分かってるから良いよ。あそこまで怒鳴られてたのは初めてで、びっくりしちゃって……」
知らない人が店内で騒いでいたら怖くなるのは、普通の事だと私も思う。そして、私を標的に色々言ってくる人には、不本意だけど心当たりがある。正直、私が原因って言われると意味が分からないって感じてしまうけど。
取り敢えず、アカリの頭を優しく撫でる。私のせいでアカリが不快な思いをしてしまったので、私が慰めるのは当然のことだ。
「迷惑行為が多いし、早くBANしてくれると良いんだけどね」
「BANとかあるかな?」
「普通はあるでしょ。あそこまで迷惑な人の行為を放置するなんて、運営としてあり得ないと思うし」
「はぁ……久しぶりにプレイヤーのせいで不快な思いをしたなぁ。ここ最近は、人に恵まれてたって事かな」
「絶対違うと思う。ああいった馬鹿の方が珍しいし。最近じゃ、あそこまでの馬鹿はそうそういないよ」
VRMMO内での迷惑行為は、随分前に問題視され、BANなどの対策が為される事になっている。通報すればすぐに対処してくれる訳では無く、その後にプレイヤーの動向を監視して、実際に迷惑行為が認められれば、BANなどの対策が取られる。
プレイ人口が減るという懸念もあってか、BAN措置自体は、最終手段として使われる事がほとんどだ。最初は、注意から始まる。それでも止めないプレイヤーが対象となる。
一つアカウントに一つのアバターで登録しているので、同一アカウントで新しいキャラを作る事は出来ない。これが、基本的なVRMMOのBAN措置だ。
新しいアカウントを作ってくる可能性は否定出来ないけど、今まで育てていたアバターが消されるのは、かなり辛い。そこから続ける人は、そこまで多くない。
恐らく、今回アカリエに迷惑行為をしに来た人は、私がパーティー勧誘を断って、イベントで倒した人達の誰かもしくは全員だと思われる。
徹底的に打ちのめしてやりたいけど、私が出張れば、余計に拗れる可能性がある。それは、フレ姉達も同じだけど。
だから、運営に連絡した後は、対処を待つしかない。フレ姉達にも、しっかりと言い聞かせておかないと。
念のため、フレンド通信のメッセージ機能を使い、二人に連絡しておく。これくらいなら、片手でも簡単に操作出来る。メッセージを送ったら、すぐにフレ姉から返信が来た。
『了解。敵は三人組だった。あの時の奴も混じっていたから、ハクが目的だろう。PvPで叩きのめしておいたから、しばらくは、アカリエに近づかないとは思う。運営には連絡済みだ。一週間は様子見した方が良い。アカリには、なるべく一人にならないか店の裏に引き籠もっているように言っておいてくれ。一週間経っても改善していないようだったら、また運営に連絡する。それと、このゲームでもPK自体は出来る。ハクも気を付けろ』
フレ姉は、アカリエに来た人達を本当にボコボコにしたみたい。PvPは申請制みたいだから、互いに了承しないと始まらない。フレ姉がボコボコに出来たという事は、あの人達も受け入れたという事だから、迷惑行為には引っ掛からない。
それにしっかりと運営に通報もしてくれていた。フレ姉の判断や行動は、結構早い。これで解決してくれると良いけど。
フレ姉の少し後に、アク姉からも返信が来た。
『分かったよ。どういう人か分からないから、私からは何も出来ないと思う。ごめんね。一応、皆にも伝えて、アカリエ周辺に気を配ってもらうようにしとくよ。アカリちゃんに、外への用事があったら、私とか姉さんも頼るように伝えておいてくれる? 代理で出来る事は私達でもやるからって。それとハクちゃんも十分に気を付けてね。PKの被害にあったプレイヤーもいるみたいだから。因みに、PKにメリットは、ほぼないよ。所持金の一部を貰えるくらい。それも千単位くらいだったかな。それでもやりたい人はやるから。度が過ぎれば、迷惑行為に認定されるかもだけど、普通に被害にあっただけだと迷惑行為に当てはまらないから』
アク姉のパーティーメンバーもアカリエに気を配ってくれるみたい。がっちり守るわけじゃないけど、見てくれる人が増えるだけでも有り難いと思う。
それに、アク姉からはPKについて少し詳しく伝えられていた。PKのメリットは、ほんの数千G。普通にモンスターを狩って、素材を売った方が遙かに儲けられるので、本当にメリットは薄い。やる意味があるのかどうかも分からないくらいだ。
運営としては、PKは楽しみ方として認めるけど、あまり推奨はしないみたいな感じなのかもしれない。
「フレ姉がもう通報してくれたってさ。それに、アク姉のパーティーも気に掛けてくれるって。もしかしたら、フレ姉のギルメンも気に掛けてくれるかもよ、それと何か欲しいものとかがあったら、言って欲しいってさ。アカリの安全が確保出来るまでは、持ってきてくれるみたい」
「うん……ありがとう……」
アカリの声には元気がない。二人にも迷惑を掛けてしまっていると思っているのだと思う。
「もう。アカリのせいじゃないんだから、元気だしなよ。いつものアカリの方が、私は好きだよ」
私がそう言うと、アカリが私の事をぎゅっと締めてくる。喜んでくれている証拠だ。ちょっとすると、アカリが私を放す。
「ありがとう、ハクちゃん」
「良いって。可愛いアカリも見られたし」
「もう……」
アカリは少し恥ずかしそうにしながら、そっぽを向く。そんなアカリのほっぺをつんつんと突っついていたら、指先を噛まれた。噛み付きでも攻撃判定があるのは、私がよく分かっている。
まぁ、街の中だから、ダメージ判定はない。でも、何か口の中的な感覚はする。
「私が噛んだ時も、舌とかの感触した?」
「あまりしなかったけど。そもそも舐めてはないでしょ?」
「確かに。じゃあ、ちょっと噛んでみて良い?」
「えぇ~……まぁ、良いけど」
アカリから許可を貰ったので、アカリの首元に噛み付く。街の中だからか、魔力の牙は出なかった。なので、ただただ噛み付いただけになる。
「ほお?」
「ただ噛まれてる感じ。舌の感触もあるよ」
「やっぱり? 現実っぽい?」
「ちょっと違和感はあるけどね」
感触を完璧に再現している訳では無さそう。変な検証をしちゃったけど、ちょっと面白かった。
「もうそろそろログアウトしようかな。アカリは?」
「私も。そろそろご飯だし」
「それじゃあ、またね」
「うん。またね」
アカリと別れて、ログアウトする。
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