上 下
31 / 417
吸血少女の歩む道

小さな鳥

しおりを挟む
 マッドパペットも倒したので、また歩き出そうとすると、耳に沢山の羽ばたきの音が聞こえてきた。音が聞こえる方を見てみると、十数匹の小さな鳥が、私の方に飛んできていた。名前は、アサルトバード。その嘴は、鋭く光っている。
 アサルトバードは、空中で急旋回すると、私に向かって突っ込んできた。短剣で反撃しようと思って構えたけど、アサルトバードがどんどんと加速しているのを見て、即座に横に跳んで避けた。アサルトバード達は、地面すれすれで身体を起こしていたので、地面に突っ込む事もなく、また空に上がっていった。

「フレ姉が言っていたのは、こいつらの事かな。確かに、私のスキルだと対応が難しいかも」

 小さい相手、集団、空となると、間合いが広い武器や魔法があった方が有利になるはず。私の短剣だと結構厳しいかも。

「いつも通りカウンター狙いでいくしかないけど、上手く当てられるかな。ちょっと心配かも。【スピードエンチャント】【ディフェンスエンチャント】」

 MPの二割を消費して、速度と物理防御力を上げる。いつでも動けるように構えるのと同時に、再びアサルトバードが突っ込んできた。どんどんと加速してくるアサルトバードを、ギリギリまで引きつけて、その場で横に倒れながら、短剣を振う。アサルトバードの一匹に命中して、HPを半分まで削ったけど、こっちも一匹のアサルトバードの羽が掠って、HPが少し削れる。

「羽にも攻撃判定がある!?」

 てっきり嘴だけだと思っていた私は、羽にも攻撃判定が合った事に驚いた。あのアサルトバードは、嘴だけでなく全身が武器となっていると考えた方が良さそうだ。

「厄介だなぁ……ん?」

 私を攻撃してから、また空に上がっていったアサルトバードを見ると、私が攻撃を命中させた一匹だけでなく、もう一匹も二割程HPが削れている事に気が付いた。

「あれは……私に攻撃した個体? あの速度で突撃してくるから、攻撃の反動を受けるって事?」

 私に羽を当てた事でダメージを受けているのだとしたら、あの速度自体がアサルトバードの弱点となる。つまり、あの速度で何かしらの物に突っ込ませれば、もしかしたら倒せるかもしれない。

「魔法で壁とかを作り出せたら、楽なんだろうけど……」

 周囲を見て、壁代わりになりそうなものを探す。あるのは、木ぐらいのものだ。上手く誘導して、木に当てる事が出来れば、検証も出来るはず。私は、急いで木の方に移動していく。その間に、アサルトバードが二回程攻撃をしてきた。一、二匹にダメージを与える事が出来たけど、まだ倒した個体はいない。でも、ギリギリで避ける事自体は出来ている。
 そして、ようやく木の近くまで移動して、木を背後にアサルトバードの突撃を待つ。アサルトバードは、これまでと同じように上空から私に突撃してくる。
 本当にギリギリまで引きつけて、横に跳ぶ。すると、次々にアサルトバードがぶつかっていった。結果、ぶつかっていった木がアサルトバードの突撃に耐えきれず、幹の途中でへし折れた。

「うわぁ……木の耐久度じゃ、ここまでか」

 アサルトバード達は、三割くらいHPを失っている。つまり、木にぶつかった程度では、私にぶつかったのとほぼ同じくらいのダメージしか与えられないという事だ。

「木にぶつけながら、地道に倒していくしかない。加えて、あの攻撃をまともに受けるのも危険と。フレ姉なら、槍で何匹かまとめて叩き落とすんだろうなぁ……」

 この湿地帯で、木は所々にあるかまとめて林があるかしかない。そして、林に関しては現在地からかなり遠い。なので、少しずつ倒していくしかなかった。

「【アタックエンチャント】」

 なるべく早く戦闘を終わらせるために、物理攻撃への付加を改めて掛ける。そうして、アサルトバードと私の持久戦が始まった。
 アサルトバードの突撃に合わせて、その身体を斬りつける。最初は一匹に当てるのがやっとだったけど、段々と慣れてきて、二匹三匹と当てられるようになった。でも、私も何度かダメージを受ける事になった。最後の一匹になったところで、ふとやってみたい事が出来た。
 一匹になっても突撃を止めないアサルトバードの動きを読んで、短剣では無く手を伸ばす。完璧に動きを捉える事が出来ていたので、その身体を掴み取る事が出来た。一割ぐらいHPが持っていかれたけど。

「いっただきま~す」

 アサルトバードの小さい身体に魔力の牙を突き立てる。学校にあった鶏の飼育室の匂いを何倍にもしたような匂いが広がってくる。何というか生ゴミとかとは別の感じで吐きそうな匂いだ。それと、鶏肉の生食ってヤバくなかったっけ。まぁ、猪とか兎に噛み付いている時点で今更か。
 そんな事を考えながら三十秒程吸血していると、アサルトバードのHPが完全になくなった。三割消耗していた事から考えて、フルでも大体一分近くと考えられる。

「攻撃の間隔は、大体三十秒に一回って感じ。一匹回収して吸血しつつ攻撃されたところでもう一匹捕まえる。そうすれば、順番に倒していけるかも。最初は、かなり危ないかと思ったけど、これなら私でもちゃんと倒せそう。今度フレ姉に自慢しよっと」

 アサルトバードへの対処方法も決まったところで、湿地帯の探索を進めていく。
 マッドフロッグは、奇襲として飛ばす舌を迎撃するのではなく、掴み取って引っ張る事で、沼から出して思いっきり蹴っ飛ばした後に、【トリプルピアース】を使って倒す。
 マッドパペットは、杭による攻撃を避けながら蹴り飛ばしたりして、身体を削りながら近づき、思いっきり身体を蹴り飛ばした後、断面から見えてくる核を破壊する事で倒す。
 アサルトバードは、一匹一匹捕まえて【吸血】を使って倒していった。捕まえる際にダメージを負うけど、【吸血】で回復するので何も問題はない。スライムを飲む時同じだ。

「かれこれ百匹飲んでるけど、スキル獲得はなし。アク姉の時で貯まってた運を使い果たした感じかな。もう少し確立が上がると良いけど……【運強化】って、ここの確率にも影響するかな……」

 そもそも運がどこまで介入してくるのかが分からないので、不用意に取る事は出来なかった。でも、最近は、スキルポイントに余裕が生まれてきているので、思いつきで一つくらい取って見るのも有りとは思っている。

「よし! 取ってみよう!!」

 思い立ったが吉日という事で、【運強化】も取ってみる事にする。

────────────────────────

ハク:【剣Lv26】【短剣Lv21】【格闘Lv10】【魔法才能Lv6】【支援魔法才能Lv5】【吸血Lv29】【夜霧Lv6】【執行者Lv21】
控え:【HP強化Lv20】【物理攻撃強化Lv18】【速度強化Lv19】【運強化Lv1】【脚力強化Lv29】【言語学Lv5】
SP:31

────────────────────────

 控えにあっても強化系は育つので、このまま【吸血】と【運強化】の組み合わせを確かめる。アサルトバードという丁度いいモンスターがいるので、検証には困らない。まぁ、上手くいかなかったら、そろそろ夜明けだから、ステータスダウンで倒せなくなったらスライム、ホワイトラビットの交互食べで検証すればいい。

「さてと、どうなるかな」

 これで【吸血】のスキル獲得率の悪さを解決出来ると良いな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしまった。 この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。 憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。 そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。 名前は、早乙女 久。 プレイヤー名は オクツ。 運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。 何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。 初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。 ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ
SF
 昔は政府の諜報機関を司っていた名家に生まれ、お嬢様として育った風間奏音(かざまかのん)はしかし、充実感の無い日常に苛立ちを覚えていた。  そんなある日、高校で再会した幼馴染に気分転換にとVRMMOゲームを勧められる。この誘いが、後に世界一有名で、世界一恐れられる"最恐"プレイヤーを世に生み出す事となった。  奏音はゲームを通して抑圧されていた自分の本音に気がつき、その心と向き合い始める。    彼女の行動はやがて周囲へ知れ渡り「1人だけ無双ゲームやってる人」「妖怪頭潰し」「PKの権化」「勝利への執念が反則」と言われて有名になっていく。  恐怖の料理で周囲を戦慄させたり、裏でPKクランを運営して悪逆の限りを尽くしたり、レイドイベントで全体指揮をとったり、楽しく爽快にゲームをプレイ! 《Inequality And Fair》公平で不平等と銘打たれた電脳の世界で、風間奏音改め、アニー・キャノンの活躍が始まる!

VRMMOでスナイパーやってます

nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー 私の名は キリュー Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている スナイパーという事で勿論ぼっちだ だが私は別にそれを気にしてはいない! 何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ! その趣味というのがこれ 狙撃である スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる 狙うは頭か核のどちらか 私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった 狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう そう思っていたが... これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である 尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

処理中です...