上 下
31 / 456
吸血少女の歩む道

小さな鳥

しおりを挟む
 マッドパペットも倒したので、また歩き出そうとすると、耳に沢山の羽ばたきの音が聞こえてきた。音が聞こえる方を見てみると、十数匹の小さな鳥が、私の方に飛んできていた。名前は、アサルトバード。その嘴は、鋭く光っている。
 アサルトバードは、空中で急旋回すると、私に向かって突っ込んできた。短剣で反撃しようと思って構えたけど、アサルトバードがどんどんと加速しているのを見て、即座に横に跳んで避けた。アサルトバード達は、地面すれすれで身体を起こしていたので、地面に突っ込む事もなく、また空に上がっていった。

「フレ姉が言っていたのは、こいつらの事かな。確かに、私のスキルだと対応が難しいかも」

 小さい相手、集団、空となると、間合いが広い武器や魔法があった方が有利になるはず。私の短剣だと結構厳しいかも。

「いつも通りカウンター狙いでいくしかないけど、上手く当てられるかな。ちょっと心配かも。【スピードエンチャント】【ディフェンスエンチャント】」

 MPの二割を消費して、速度と物理防御力を上げる。いつでも動けるように構えるのと同時に、再びアサルトバードが突っ込んできた。どんどんと加速してくるアサルトバードを、ギリギリまで引きつけて、その場で横に倒れながら、短剣を振う。アサルトバードの一匹に命中して、HPを半分まで削ったけど、こっちも一匹のアサルトバードの羽が掠って、HPが少し削れる。

「羽にも攻撃判定がある!?」

 てっきり嘴だけだと思っていた私は、羽にも攻撃判定が合った事に驚いた。あのアサルトバードは、嘴だけでなく全身が武器となっていると考えた方が良さそうだ。

「厄介だなぁ……ん?」

 私を攻撃してから、また空に上がっていったアサルトバードを見ると、私が攻撃を命中させた一匹だけでなく、もう一匹も二割程HPが削れている事に気が付いた。

「あれは……私に攻撃した個体? あの速度で突撃してくるから、攻撃の反動を受けるって事?」

 私に羽を当てた事でダメージを受けているのだとしたら、あの速度自体がアサルトバードの弱点となる。つまり、あの速度で何かしらの物に突っ込ませれば、もしかしたら倒せるかもしれない。

「魔法で壁とかを作り出せたら、楽なんだろうけど……」

 周囲を見て、壁代わりになりそうなものを探す。あるのは、木ぐらいのものだ。上手く誘導して、木に当てる事が出来れば、検証も出来るはず。私は、急いで木の方に移動していく。その間に、アサルトバードが二回程攻撃をしてきた。一、二匹にダメージを与える事が出来たけど、まだ倒した個体はいない。でも、ギリギリで避ける事自体は出来ている。
 そして、ようやく木の近くまで移動して、木を背後にアサルトバードの突撃を待つ。アサルトバードは、これまでと同じように上空から私に突撃してくる。
 本当にギリギリまで引きつけて、横に跳ぶ。すると、次々にアサルトバードがぶつかっていった。結果、ぶつかっていった木がアサルトバードの突撃に耐えきれず、幹の途中でへし折れた。

「うわぁ……木の耐久度じゃ、ここまでか」

 アサルトバード達は、三割くらいHPを失っている。つまり、木にぶつかった程度では、私にぶつかったのとほぼ同じくらいのダメージしか与えられないという事だ。

「木にぶつけながら、地道に倒していくしかない。加えて、あの攻撃をまともに受けるのも危険と。フレ姉なら、槍で何匹かまとめて叩き落とすんだろうなぁ……」

 この湿地帯で、木は所々にあるかまとめて林があるかしかない。そして、林に関しては現在地からかなり遠い。なので、少しずつ倒していくしかなかった。

「【アタックエンチャント】」

 なるべく早く戦闘を終わらせるために、物理攻撃への付加を改めて掛ける。そうして、アサルトバードと私の持久戦が始まった。
 アサルトバードの突撃に合わせて、その身体を斬りつける。最初は一匹に当てるのがやっとだったけど、段々と慣れてきて、二匹三匹と当てられるようになった。でも、私も何度かダメージを受ける事になった。最後の一匹になったところで、ふとやってみたい事が出来た。
 一匹になっても突撃を止めないアサルトバードの動きを読んで、短剣では無く手を伸ばす。完璧に動きを捉える事が出来ていたので、その身体を掴み取る事が出来た。一割ぐらいHPが持っていかれたけど。

「いっただきま~す」

 アサルトバードの小さい身体に魔力の牙を突き立てる。学校にあった鶏の飼育室の匂いを何倍にもしたような匂いが広がってくる。何というか生ゴミとかとは別の感じで吐きそうな匂いだ。それと、鶏肉の生食ってヤバくなかったっけ。まぁ、猪とか兎に噛み付いている時点で今更か。
 そんな事を考えながら三十秒程吸血していると、アサルトバードのHPが完全になくなった。三割消耗していた事から考えて、フルでも大体一分近くと考えられる。

「攻撃の間隔は、大体三十秒に一回って感じ。一匹回収して吸血しつつ攻撃されたところでもう一匹捕まえる。そうすれば、順番に倒していけるかも。最初は、かなり危ないかと思ったけど、これなら私でもちゃんと倒せそう。今度フレ姉に自慢しよっと」

 アサルトバードへの対処方法も決まったところで、湿地帯の探索を進めていく。
 マッドフロッグは、奇襲として飛ばす舌を迎撃するのではなく、掴み取って引っ張る事で、沼から出して思いっきり蹴っ飛ばした後に、【トリプルピアース】を使って倒す。
 マッドパペットは、杭による攻撃を避けながら蹴り飛ばしたりして、身体を削りながら近づき、思いっきり身体を蹴り飛ばした後、断面から見えてくる核を破壊する事で倒す。
 アサルトバードは、一匹一匹捕まえて【吸血】を使って倒していった。捕まえる際にダメージを負うけど、【吸血】で回復するので何も問題はない。スライムを飲む時同じだ。

「かれこれ百匹飲んでるけど、スキル獲得はなし。アク姉の時で貯まってた運を使い果たした感じかな。もう少し確立が上がると良いけど……【運強化】って、ここの確率にも影響するかな……」

 そもそも運がどこまで介入してくるのかが分からないので、不用意に取る事は出来なかった。でも、最近は、スキルポイントに余裕が生まれてきているので、思いつきで一つくらい取って見るのも有りとは思っている。

「よし! 取ってみよう!!」

 思い立ったが吉日という事で、【運強化】も取ってみる事にする。

────────────────────────

ハク:【剣Lv26】【短剣Lv21】【格闘Lv10】【魔法才能Lv6】【支援魔法才能Lv5】【吸血Lv29】【夜霧Lv6】【執行者Lv21】
控え:【HP強化Lv20】【物理攻撃強化Lv18】【速度強化Lv19】【運強化Lv1】【脚力強化Lv29】【言語学Lv5】
SP:31

────────────────────────

 控えにあっても強化系は育つので、このまま【吸血】と【運強化】の組み合わせを確かめる。アサルトバードという丁度いいモンスターがいるので、検証には困らない。まぁ、上手くいかなかったら、そろそろ夜明けだから、ステータスダウンで倒せなくなったらスライム、ホワイトラビットの交互食べで検証すればいい。

「さてと、どうなるかな」

 これで【吸血】のスキル獲得率の悪さを解決出来ると良いな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

吸血少女 設定資料集(おまけ付き)

月輪林檎
SF
 『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。  さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。  基本的に不定期更新です。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

最強のギルド職員は平和に暮らしたい

月輪林檎
ファンタジー
【第一章 完】 【第二章 完】  魔物が蔓延り、ダンジョンが乱立する世界。そこでは、冒険者という職業が出来ていた。そして、その冒険者をサポートし、魔物の情報やダンジョンの情報を統括する組織が出来上がった。  その名前は、冒険者ギルド。全ての冒険者はギルドに登録しないといけない。ギルドに所属することで、様々なサポートを受けられ、冒険を円滑なものにする事が出来る。  私、アイリス・ミリアーゼは、十六歳を迎え、長年通った学校を卒業した。そして、目標であったギルド職員に最年少で採用される事になった。騎士団からのスカウトもあったけど、全力で断った。  何故かと言うと…………ギルド職員の給料が、騎士団よりも良いから!  それに、騎士団は自由に出来る時間が少なすぎる。それに比べて、ギルド職員は、ちゃんと休みがあるから、自分の時間を作る事が出来る。これが、選んだ決め手だ。  学校の先生からは、 「戦闘系スキルを、それだけ持っているのにも関わらず、冒険者にならず、騎士団にも入らないのか? 勿体ない」  と言われた。確かに、私は、戦闘系のスキルを多く持っている。でも、だからって、戦うのが好きなわけじゃない。私はもっと平和に暮らしたい!!

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...