28 / 485
吸血少女の始まり
番外編
しおりを挟む
注)ユートピア・ワールドの最終話までの内容を含みます。なろう、カクヨム、ノベルアップに掲載しています。アルファポリスでも今後公開するつもりです。
本編には何も影響してこない話なので、読まなくても問題はありません。
────────────────────────
イベント終了から少しして、アカリエに一人の客が入って来た。
「いらっしゃいませって、ソルさん。こんにちは」
「アカリちゃん、こんにちは。ちょっと防具を直して欲しいんだけど、大丈夫かな?」
「はい。代わりの服はお持ちですか?」
「うん。更衣室借りて良い?」
「はい」
ソルは、更衣室に入って服を着替える。そして、着ていた防具をアカリに渡した。
「結構消耗してますね」
「イベントで優勝したのは良いんだけど、ものすごく強い人と最後に戦ってね。互いにかすり傷を何度も負わせて負わされてを繰り返してたから、結構消耗しちゃったみたい」
「ああ、フレイさんですね。あの人も結構やり込んでいる人ですから」
強い人と聞いて、アカリはすぐにフレイの事だと気付いた。
「そうなんだ。私とは違うゲームをやり込んでるのかな。まぁ、私もこのゲームをやり込んでるとは言えないけど」
「そうなんですか?」
「うん。休日の二日くらいしかまともに出来ないからね。恋人との時間もあるし」
「ほぇ~、恋人さんがいらっしゃるんですね。こちらにログインしているんですか?」
「ううん。買えなかったから。それとね。面白い子も見つけたんだ」
そう言われて、アカリはすぐにある人物が頭を過ぎった。
「白い髪の赤い眼をした子ですか?」
「正解。知り合い?」
「幼馴染みです。可愛いですよね」
アカリがそう言うと、ソルは、少し目を見開いてから寂しげに笑う。
「そうなんだ……大切にしてあげてね」
「えっ? あ、はい」
「それじゃあ、また来週取りに来るね。防具の修理よろしくね」
「はい! 任せてください!」
「うん」
ソルは、アカリに手を振って、アカリエを出て行く。それを見送ったアカリは、ソルの防具を手に取る。
「何だろう? ハクちゃんに、何か感じたのかな? 今度、ハクちゃんにも訊こっと」
アカリは裏に戻って、ソルの防具の修理をしに向かった。
────────────────────────
ログアウトしたソル……日輪日向は、ゆっくりと身体を起こす。
「あっ、もう終わりましたか?」
日向が起きた事に気付いた恋人の和水舞歌が、ベッドの脇から声を掛けた。先程まで、ゲームに入っている日向の横で本を読んでいたようで、サイドテーブルに本を置いた。
「うん。優勝したよ。ブイ」
「おめでとうございます。日向さんでも苦戦はしましたか?」
「途中までは余裕だったかな。でも、途中で超強い人にあったよ。時間切れまで戦ったけど、決着が付かなかったんだ。本当に強かったなぁ。ジークさんみたいだった」
「そうなんですね。楽しそうで何よりです」
「それとね。さくちゃんみたいな子がいたんだ」
舞歌の表情が驚いたように固まった。
「あっ、でも、見た目だけね。中身は、まだ分からないかな。でも、負けず嫌いな部分は、さくちゃんらしかったかも。腕を斬り飛ばされても、突っ込んできたしね」
「懐かしいですね」
「しかもね! 幼馴染みの子が金髪のエルフだったんだ。ちょっとあの頃を思い出して、寂しく感じちゃった」
「それはそうですよ。あれから十年経っても、傷は残ったままですから」
舞歌は、日向の頭を優しく撫でる。日向は、嬉しそうに目を細めた。
「いつか、また会えると良いな……」
「そうですね……」
日向と舞歌は、互いに微笑み合った。その心に今はいない友人の姿を思い描いて。
本編には何も影響してこない話なので、読まなくても問題はありません。
────────────────────────
イベント終了から少しして、アカリエに一人の客が入って来た。
「いらっしゃいませって、ソルさん。こんにちは」
「アカリちゃん、こんにちは。ちょっと防具を直して欲しいんだけど、大丈夫かな?」
「はい。代わりの服はお持ちですか?」
「うん。更衣室借りて良い?」
「はい」
ソルは、更衣室に入って服を着替える。そして、着ていた防具をアカリに渡した。
「結構消耗してますね」
「イベントで優勝したのは良いんだけど、ものすごく強い人と最後に戦ってね。互いにかすり傷を何度も負わせて負わされてを繰り返してたから、結構消耗しちゃったみたい」
「ああ、フレイさんですね。あの人も結構やり込んでいる人ですから」
強い人と聞いて、アカリはすぐにフレイの事だと気付いた。
「そうなんだ。私とは違うゲームをやり込んでるのかな。まぁ、私もこのゲームをやり込んでるとは言えないけど」
「そうなんですか?」
「うん。休日の二日くらいしかまともに出来ないからね。恋人との時間もあるし」
「ほぇ~、恋人さんがいらっしゃるんですね。こちらにログインしているんですか?」
「ううん。買えなかったから。それとね。面白い子も見つけたんだ」
そう言われて、アカリはすぐにある人物が頭を過ぎった。
「白い髪の赤い眼をした子ですか?」
「正解。知り合い?」
「幼馴染みです。可愛いですよね」
アカリがそう言うと、ソルは、少し目を見開いてから寂しげに笑う。
「そうなんだ……大切にしてあげてね」
「えっ? あ、はい」
「それじゃあ、また来週取りに来るね。防具の修理よろしくね」
「はい! 任せてください!」
「うん」
ソルは、アカリに手を振って、アカリエを出て行く。それを見送ったアカリは、ソルの防具を手に取る。
「何だろう? ハクちゃんに、何か感じたのかな? 今度、ハクちゃんにも訊こっと」
アカリは裏に戻って、ソルの防具の修理をしに向かった。
────────────────────────
ログアウトしたソル……日輪日向は、ゆっくりと身体を起こす。
「あっ、もう終わりましたか?」
日向が起きた事に気付いた恋人の和水舞歌が、ベッドの脇から声を掛けた。先程まで、ゲームに入っている日向の横で本を読んでいたようで、サイドテーブルに本を置いた。
「うん。優勝したよ。ブイ」
「おめでとうございます。日向さんでも苦戦はしましたか?」
「途中までは余裕だったかな。でも、途中で超強い人にあったよ。時間切れまで戦ったけど、決着が付かなかったんだ。本当に強かったなぁ。ジークさんみたいだった」
「そうなんですね。楽しそうで何よりです」
「それとね。さくちゃんみたいな子がいたんだ」
舞歌の表情が驚いたように固まった。
「あっ、でも、見た目だけね。中身は、まだ分からないかな。でも、負けず嫌いな部分は、さくちゃんらしかったかも。腕を斬り飛ばされても、突っ込んできたしね」
「懐かしいですね」
「しかもね! 幼馴染みの子が金髪のエルフだったんだ。ちょっとあの頃を思い出して、寂しく感じちゃった」
「それはそうですよ。あれから十年経っても、傷は残ったままですから」
舞歌は、日向の頭を優しく撫でる。日向は、嬉しそうに目を細めた。
「いつか、また会えると良いな……」
「そうですね……」
日向と舞歌は、互いに微笑み合った。その心に今はいない友人の姿を思い描いて。
23
お気に入りに追加
172
あなたにおすすめの小説
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
吸血少女 設定資料集(おまけ付き)
月輪林檎
SF
『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。
さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。
基本的に不定期更新です。
百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。
白藍まこと
恋愛
百合ゲー【Fleur de lis】
舞台は令嬢の集うヴェリテ女学院、そこは正しく男子禁制 乙女の花園。
まだ何者でもない主人公が、葛藤を抱く可憐なヒロイン達に寄り添っていく物語。
少女はかくあるべし、あたしの理想の世界がそこにはあった。
ただの一人を除いて。
――楪柚稀(ゆずりは ゆずき)
彼女は、主人公とヒロインの間を切り裂くために登場する“悪女”だった。
あまりに登場回数が頻回で、セリフは辛辣そのもの。
最終的にはどのルートでも学院を追放されてしまうのだが、どうしても彼女だけは好きになれなかった。
そんなあたしが目を覚ますと、楪柚稀に転生していたのである。
うん、学院追放だけはマジで無理。
これは破滅エンドを回避しつつ、百合を見守るあたしの奮闘の物語……のはず。
※他サイトでも掲載中です。
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる