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吸血少女の始まり
私の武器
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逆側に向かっていくと質素な店構えに『ラング武器屋』という看板が掛けられていた。中に入ると、沢山の武器が並んでいて、威圧感というか圧迫感のようなものを感じる。
「ん? おっ、もう来たのか。予算はどのくらいだ?」
「十万から十二万くらいでお願いします」
「短剣だったな。それなりのものを用意出来るだろう。要望はあるか?」
「リーチは、なるべく長い方が良いです」
【吸血】を利用して戦うつもりだけど、【吸血】をメインに戦う訳では無いので、ナイフのように短い短剣よりも片手剣の半分程度の長さがあった方が戦いやすそうだと思った。
「ふむ。ある程度小回りの利く戦いをするんだな。そうだな……これなんかどうだ?」
そう言ってラングさんが出したのは、赤い刀身をした短剣だった。私の注文通り、大振りなものだった。
────────────────────────
血染めの短剣:血の結晶を練り込んだ鉄で出来た短剣。【攻撃力上昇+】【HP吸収】
────────────────────────
おどおどしい名前だけど、魅力的な追加効果があった。
「この【HP吸収】っていうのは?」
「そのまんまの意味だな。攻撃で与えたダメージの一割分回復出来るというものだ。短剣自体の攻撃力は、そこまで高くないから、気休めくらいにしかならないかもしれないがな」
「へぇ~」
確かに、回復しても一ドットだけとかだと、買おうって想う人は少ないかも。でも、ステータスダウンしてしまう私には、ちょっとの回復でも有り難かったりする。まぁ、そもそもダメージを受けないようにすれば良いって話になりそうだけど。
「【攻撃力上昇+】の方は、どのくらいの強化になるんですか?」
「大体二割から三割だ。ステータスが隠れているから、恩恵が分かりにくいが、実際に戦えば分かるだろう。今の俺だと、攻撃力上昇は、ここまでしか上げられない」
武器の性能を上げる追加効果の【攻撃力上昇】は、段階があるみたい。【攻撃力上昇+】は、段階が一つ上に上がったものと考えられる。まだ、始まって一ヶ月くらいだし、これでも凄いのかもしれない。
「いくらですか?」
「本来なら、十五万というところだが、割り引いて十万にしてやる」
「えっ!? 良いんですか?」
「何度か薦めているんだが、売れなくてな。短剣自体が、あまり人気の無い武器だからかもしれんが。ただ、一つ頼みを聞いてくれると助かる」
「何ですか?」
「出来れば、今後も贔屓にして欲しい。代わりと言っちゃあなんだが、良い素材が手には入ったら、それで最高の武器を作ってやる。さっきも言ったが、これでも腕の良い鍛冶師だからな」
私のメリットが大きすぎる話に、少し違和感を抱いたけど、多分素材を優先して売って欲しいとか何だと思う。アカリも私が売った素材で、色々と作るつもりみたいだから。
「分かりました。どのみち、武器の修理とかで来る事になると思いますし」
「それじゃあ、決まりだな。レア鉱石なんかがあれば、良い武器になるぞ。そういや、防具の方は大丈夫か?」
「はい。友人が防具屋をしているので、そっちにお願いしています」
「そうか。それなら、大丈夫そうだな。東の森のボスなら、初期装備でもプレイヤースキルが高ければ倒せる。この短剣があれば、嬢ちゃんでも倒せるかもな」
「なるほど」
防具を買うまでは我慢した方が良いかと考えていたけど、一応今の装備でも倒せるかもしれなかったみたい。でも、安全マージンは取っておいた方が良いから、私の行動が間違っていたわけでは無い。
「そんじゃあ、買うって事で大丈夫か?」
「あ、はい」
私は、購入メニューを開いて、血染めの短剣を購入する。
「元の剣はどうする? ここで売っていくか?」
「一応、持っておきます。【剣】のスキルがあれば使えるので」
「まぁ、そうだな。【剣】のスキルでは、技を覚える事は出来ないが、派生スキルになれば技が覚えられる。技には、連撃もあるが、システムで決められた動きだ。途中でキャンセルも出来るが、そこと技の終わりで硬直が発生する。硬直は、大きな隙になるから気を付けな」
「色々と教えてくれてありがとうございます。でも、どうしてそこまで親切にしてくれるんですか?」
本当に色々と教えてくれるので、どうしてなのか知りたくなった。
「単純に楽しんで欲しいだけだ。別に誰にでもやっているわけじゃないぞ? ソロの初心者に教えているって感じだな」
「どうして、ソロだけなんですか?」
「パーティーとソロじゃ、情報の収集具合が変わるからな。重要な事や教えておいた方が良い事は伝えておく事にしているんだ」
つまり、ラングさんは、このゲームを大事に思っているって事だと思う。初心者が長く続けてくれれば、それだけゲームの発展にも繋がるからかな。
「嬢ちゃんは、VRMMOは?」
「七年か八年ですね」
「意外とやってるな。最初は?」
「テイマーズ・オンラインでした」
「小学生からでも出来るやつだな。従魔を捕まえて戦うんだったな」
「はい。当時はハマりました。フェンリルを二十体くらい飼ってましたね」
「……やり込んでいるな」
テイマーズ・オンラインでは、フェンリルは最上位に位置する従魔だった。そのもふもふ具合に魅了された私は、全力でテイムして二十体のもふもふに埋もれて幸せを感じていた。一緒にやっていたアカリは、私の必死具合に、少し呆れていたけど。
「それじゃあ、行ってきます。短剣ありがとうございました」
「おう。気を付けろよ」
「は~い」
ラングさんは、ただの良い人だった。これからもお世話になりそうだ。
────────────────────────
血染めの短剣を試しに森へと行く前に、お昼ご飯を食べるためにログアウトした。リビングの食卓に着くと、お母さんがそうめんを配膳しているところだった。
「今回もハマっているみたいね」
「うん。いつもより凝ったつくりで面白い。光とも会えたし」
「そうなの。火蓮や水波もいるんでしょ? 二人ともちゃんとやっているか訊いておいて」
「会えるか分からないけど、分かった」
お母さんとそんな話をしながらお昼を済ませて、またログインした。森の中に入って、短剣を抜く。
「やっぱ、この刀身は良いなぁ」
血染めの短剣を購入したのは、【HP吸収】だけが理由じゃない。この刀身も相まって、【吸血】を使う私に合うんじゃ無いかなと思ったからだ。
「モンスターはいないかなぁ」
そう思って歩いていると、目の前にコボルトが二体現れた。【短剣】のスキルも既に取っている。
────────────────────────
【短剣】:短剣の扱いに補正が入る。レベルが上がると、技を習得出来る。
────────────────────────
ハク:【剣Lv12】【短剣Lv1】【吸血Lv20】【脚力強化Lv12】【夜霧Lv2】【執行者Lv4】
控え:なし
SP:7
────────────────────────
コボルト二体が、同時に飛びかかって来る。ボロボロのナイフを同時に振り下ろしてくるので、片方のコボルトに近づいて、こっちに攻撃が来る前に短剣を振う。すると、コボルトの脇から脇に掛けて、一気に斬り裂く事が出来た。ダメージエフェクトを撒き散らしながら、一体のコボルトが二つに分かれた。
「わぁ、凄い斬れ味」
想像していたよりも高い攻撃力に、ちょっと驚いた。いつもの剣だと身体の両断は、あまり成功率が高くないけど、血染めの短剣だと簡単にできるみたいだ。
仲間を倒されたからか、コボルトの鼻息が、いつもよりも荒かった。そのコボルトの首に短剣を刺して、お腹まで引き裂く。
そうして、二体のコボルトがポリゴンになって消えていった。いつもよりも疲れずに倒せた気がする。
「本当に強い短剣だ。割り引いてもらって、本当に良かったのかな」
本当に良い短剣を買わせてもらったみたい。
「【吸血】する状況にならないかも。ラングさんが言っていた事を信じて、ボスと一戦いこうかな」
新しい武器を手に入れて、上機嫌になった私は、血染めの短剣を振り回しながら、森の奥へと向かって行った。
「ん? おっ、もう来たのか。予算はどのくらいだ?」
「十万から十二万くらいでお願いします」
「短剣だったな。それなりのものを用意出来るだろう。要望はあるか?」
「リーチは、なるべく長い方が良いです」
【吸血】を利用して戦うつもりだけど、【吸血】をメインに戦う訳では無いので、ナイフのように短い短剣よりも片手剣の半分程度の長さがあった方が戦いやすそうだと思った。
「ふむ。ある程度小回りの利く戦いをするんだな。そうだな……これなんかどうだ?」
そう言ってラングさんが出したのは、赤い刀身をした短剣だった。私の注文通り、大振りなものだった。
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血染めの短剣:血の結晶を練り込んだ鉄で出来た短剣。【攻撃力上昇+】【HP吸収】
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おどおどしい名前だけど、魅力的な追加効果があった。
「この【HP吸収】っていうのは?」
「そのまんまの意味だな。攻撃で与えたダメージの一割分回復出来るというものだ。短剣自体の攻撃力は、そこまで高くないから、気休めくらいにしかならないかもしれないがな」
「へぇ~」
確かに、回復しても一ドットだけとかだと、買おうって想う人は少ないかも。でも、ステータスダウンしてしまう私には、ちょっとの回復でも有り難かったりする。まぁ、そもそもダメージを受けないようにすれば良いって話になりそうだけど。
「【攻撃力上昇+】の方は、どのくらいの強化になるんですか?」
「大体二割から三割だ。ステータスが隠れているから、恩恵が分かりにくいが、実際に戦えば分かるだろう。今の俺だと、攻撃力上昇は、ここまでしか上げられない」
武器の性能を上げる追加効果の【攻撃力上昇】は、段階があるみたい。【攻撃力上昇+】は、段階が一つ上に上がったものと考えられる。まだ、始まって一ヶ月くらいだし、これでも凄いのかもしれない。
「いくらですか?」
「本来なら、十五万というところだが、割り引いて十万にしてやる」
「えっ!? 良いんですか?」
「何度か薦めているんだが、売れなくてな。短剣自体が、あまり人気の無い武器だからかもしれんが。ただ、一つ頼みを聞いてくれると助かる」
「何ですか?」
「出来れば、今後も贔屓にして欲しい。代わりと言っちゃあなんだが、良い素材が手には入ったら、それで最高の武器を作ってやる。さっきも言ったが、これでも腕の良い鍛冶師だからな」
私のメリットが大きすぎる話に、少し違和感を抱いたけど、多分素材を優先して売って欲しいとか何だと思う。アカリも私が売った素材で、色々と作るつもりみたいだから。
「分かりました。どのみち、武器の修理とかで来る事になると思いますし」
「それじゃあ、決まりだな。レア鉱石なんかがあれば、良い武器になるぞ。そういや、防具の方は大丈夫か?」
「はい。友人が防具屋をしているので、そっちにお願いしています」
「そうか。それなら、大丈夫そうだな。東の森のボスなら、初期装備でもプレイヤースキルが高ければ倒せる。この短剣があれば、嬢ちゃんでも倒せるかもな」
「なるほど」
防具を買うまでは我慢した方が良いかと考えていたけど、一応今の装備でも倒せるかもしれなかったみたい。でも、安全マージンは取っておいた方が良いから、私の行動が間違っていたわけでは無い。
「そんじゃあ、買うって事で大丈夫か?」
「あ、はい」
私は、購入メニューを開いて、血染めの短剣を購入する。
「元の剣はどうする? ここで売っていくか?」
「一応、持っておきます。【剣】のスキルがあれば使えるので」
「まぁ、そうだな。【剣】のスキルでは、技を覚える事は出来ないが、派生スキルになれば技が覚えられる。技には、連撃もあるが、システムで決められた動きだ。途中でキャンセルも出来るが、そこと技の終わりで硬直が発生する。硬直は、大きな隙になるから気を付けな」
「色々と教えてくれてありがとうございます。でも、どうしてそこまで親切にしてくれるんですか?」
本当に色々と教えてくれるので、どうしてなのか知りたくなった。
「単純に楽しんで欲しいだけだ。別に誰にでもやっているわけじゃないぞ? ソロの初心者に教えているって感じだな」
「どうして、ソロだけなんですか?」
「パーティーとソロじゃ、情報の収集具合が変わるからな。重要な事や教えておいた方が良い事は伝えておく事にしているんだ」
つまり、ラングさんは、このゲームを大事に思っているって事だと思う。初心者が長く続けてくれれば、それだけゲームの発展にも繋がるからかな。
「嬢ちゃんは、VRMMOは?」
「七年か八年ですね」
「意外とやってるな。最初は?」
「テイマーズ・オンラインでした」
「小学生からでも出来るやつだな。従魔を捕まえて戦うんだったな」
「はい。当時はハマりました。フェンリルを二十体くらい飼ってましたね」
「……やり込んでいるな」
テイマーズ・オンラインでは、フェンリルは最上位に位置する従魔だった。そのもふもふ具合に魅了された私は、全力でテイムして二十体のもふもふに埋もれて幸せを感じていた。一緒にやっていたアカリは、私の必死具合に、少し呆れていたけど。
「それじゃあ、行ってきます。短剣ありがとうございました」
「おう。気を付けろよ」
「は~い」
ラングさんは、ただの良い人だった。これからもお世話になりそうだ。
────────────────────────
血染めの短剣を試しに森へと行く前に、お昼ご飯を食べるためにログアウトした。リビングの食卓に着くと、お母さんがそうめんを配膳しているところだった。
「今回もハマっているみたいね」
「うん。いつもより凝ったつくりで面白い。光とも会えたし」
「そうなの。火蓮や水波もいるんでしょ? 二人ともちゃんとやっているか訊いておいて」
「会えるか分からないけど、分かった」
お母さんとそんな話をしながらお昼を済ませて、またログインした。森の中に入って、短剣を抜く。
「やっぱ、この刀身は良いなぁ」
血染めの短剣を購入したのは、【HP吸収】だけが理由じゃない。この刀身も相まって、【吸血】を使う私に合うんじゃ無いかなと思ったからだ。
「モンスターはいないかなぁ」
そう思って歩いていると、目の前にコボルトが二体現れた。【短剣】のスキルも既に取っている。
────────────────────────
【短剣】:短剣の扱いに補正が入る。レベルが上がると、技を習得出来る。
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ハク:【剣Lv12】【短剣Lv1】【吸血Lv20】【脚力強化Lv12】【夜霧Lv2】【執行者Lv4】
控え:なし
SP:7
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コボルト二体が、同時に飛びかかって来る。ボロボロのナイフを同時に振り下ろしてくるので、片方のコボルトに近づいて、こっちに攻撃が来る前に短剣を振う。すると、コボルトの脇から脇に掛けて、一気に斬り裂く事が出来た。ダメージエフェクトを撒き散らしながら、一体のコボルトが二つに分かれた。
「わぁ、凄い斬れ味」
想像していたよりも高い攻撃力に、ちょっと驚いた。いつもの剣だと身体の両断は、あまり成功率が高くないけど、血染めの短剣だと簡単にできるみたいだ。
仲間を倒されたからか、コボルトの鼻息が、いつもよりも荒かった。そのコボルトの首に短剣を刺して、お腹まで引き裂く。
そうして、二体のコボルトがポリゴンになって消えていった。いつもよりも疲れずに倒せた気がする。
「本当に強い短剣だ。割り引いてもらって、本当に良かったのかな」
本当に良い短剣を買わせてもらったみたい。
「【吸血】する状況にならないかも。ラングさんが言っていた事を信じて、ボスと一戦いこうかな」
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