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吸血少女の始まり
良き出会いとお試し
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翌日。朝ご飯を食べて、ワンオンにログインすると、大賑わいの声が聞こえてきた。声が聞こえる方を見ると、広場の近くにある掲示板に人が群がっていた。
「何かあったのかな?」
「エンカウントボスの夜霧の執行者が討伐されたらしいぞ」
「!?」
独り言で呟いたら、隣から男の人が答えてくれて驚いた。その人は、オーバーオールを着たマッチョなハゲ頭だった。見るからに強そうだ。
「そんな事が分かるんですか?」
倒したのは私だけど、白を切って質問する。私の呟きに答えてくれたから、多分普通に質問しても答えてくれるはず。
「ああ、夜霧の執行者の討伐数が、掲示板に貼り出されていたんだ。これまでのダンジョンボスでは、その表示がなかったから、こうして大騒ぎになっているんだ。夜霧の執行者は、これまでのボスとは違った何かがあるんじゃなかってな」
「へぇ~」
「初心者の嬢ちゃんには、分からない事だったか」
「いえ、友人からエンカウントボスの話は聞いてましたから。おじさんも夜霧の執行者を狙っていたんですか?」
私がそう訊くと、おじさんは頬を引きつらせていた。見た目的にお兄さんって感じじゃなかったから、おじさんって言っちゃったけど、本人的には不服なのかもしれない。
「おじっ……俺の名前は、ラングだ。適当に呼んで良いが、おじさんはやめてくれ」
「わかりました。ラングさん」
そう呼ぶとラングさんは、少し安堵したような表情になった。本当におじさんって年齢ではなかったのかも。ちょっと申し訳なく思っていると、ラングさんが、私がした質問に答え始めてくれる。
「俺は、鍛冶師だからな。特に執着はしていないが、あの両手剣は気になるな。モンスタードロップの武器の性能は知っておいて損はない」
「やっぱり、生産職の人はそういうところも気になるんですね」
「まぁな。嬢ちゃんは、初めてどのくらいなんだ?」
「昨日からですね」
「そうか。何か入り用になったら、俺の店に来ると良い。これでも、腕の良い鍛冶師と言われているからな」
「そうなんですか? じゃあ、短剣をお願いしたいんですが、どのくらいの値段になりますか?」
「そうだな。現状で言えば、五万から十万ってところだ。フレンド登録しておくか?」
「あっ、お願いします」
ラングさんとフレンド登録しておく。これで、武器屋に行く時にラングさんがいるか確認出来る。
「店の名前は、ラング武器店だ」
「そのままですね」
「何も思い付かなくてな……」
「シンプルなのは良い事だと思いますよ。分かりやすいですし」
「嬢ちゃんは優しい奴だな。トラブルに巻き込まれないように気を付けろよ」
「はい。では、また今度伺いますね」
「ああ」
ラングさんと別れて、私は街の外に向かった。今は、朝の八時。この世界では、日が沈んで、夜になっている。平日の朝という事もあり、初心者用の狩り場は、昨日のように一杯一杯ではないはずなので、急いで東の森に向かう。
「ラングさんか……良い武器を作ってくれる人だといいな」
自分で言うくらいだから、かなり自信があるのだと思う。だから、ちょっと任せてみようかなって思いお願いした。初対面の人だから、多少の不安はあるけど、ただ私が呟いた事に親切に答えてくれた人だから、ちょっとは信用しても良いのではと思った。
走って森の中に入った私は、すぐにコボルトに遭遇する。やっぱり、昨日よりも人が少ない。お金稼ぎが捗りそうだ。
「さてと、試そうか。【夜霧】」
私の言葉に合わせて、私の身体から夜霧の執行者が出していたものと似ている黒い霧が出て来る。その霧は、広がっていく事はなく、私の周りに纏わり付いた。
そこにコボルトが襲い掛かってくる。私は敢えて、その攻撃を受ける。すると、攻撃された箇所が黒い霧になって、ナイフがすり抜けていった。私の身体を霧に変える事で避ける事が出来るみたいだ。
「吸血も相まって、吸血鬼っぽくなってきたなぁ……」
そんな事を言っている間にも、コボルトが攻撃をしてくるので、もう一度受ける。すると、身体に纏っていた夜霧が消え去った。本当に二回しか、効果がないみたいだ。もう一度攻撃してくるコボルトを上半身と下半身で両断する。
「【執行者】の方は、恩恵がわかりにくい。ボス戦とかになれば、少し分かるかな。ちゃんとしたボスとも戦いたいなぁ。正直、夜霧の執行者は、運で勝てたようなものだし」
この森の先にボスがいるのは、分かっているけど、まだ挑みはしない。私のスキルレベルでは、ソロ討伐は厳しいかもしれないから。夜霧の執行者は、【吸血】がメタだっただけだから。
しばらくコボルトとワイルドボアの狩りを続ける。計三十体程倒した。何度かワイルドボアに【吸血】を使ったけど、スキルは獲得出来なかった。それと、コボルトにも【吸血】を試してみた。ワイルドボア以上に大暴れするので、思いっきり組み伏せてから吸血した。
ワイルドボア以上に獣臭く、汗のような匂いも混じって、本当に嫌だったけど、何とか血は飲めた。こっちもスキルの獲得は出来なかったけど、現状夜であれば、小さいモンスターを組み伏せて無理矢理血を飲む事も可能だと分かったのは、大きいかも。
三十回も戦闘して、少し疲れたので、一つ気になる事を試そうと思う。それは、スライムの【吸血】だ。柔らかすぎて、すぐに食べてしまったけど、牙を突き立てた状態を維持すれば、【吸血】が発動するかもしれないと昨日の夜に思ったのだ。
早速平原の端っこに向かう。街に近い場所だと目立つことが分かったからだ。近くにいるスライムを優しく持ち上げて、魔力の牙を伸ばし、ゆっくりと入れる。ここで噛み付くと食べてしまうので、このまま待つと、口の中にスライムの中身がどんどんと入ってくる。最終的に核だけが残った。
「……自分から食べてないから、【吸血】が発動したんだよね? 【吸血】で食べると、自動的に流れ込んでくるんだ……昨日と同じように吸血していこっと」
ホワイトラビットとスライムを交互に吸血していく。ホワイトラビットは、段々と慣れてきたので、平然と飲めるようになった。スライムの方は、いつも通りの無味無臭の炭酸みたいな感じなので、口直しに丁度いい。
「何か吸い尽くせるまでの時間が縮まった?」
【吸血】のスキルレベルが上がったおかげか、血を全て飲み干すまでの時間が短くなっていた。前よりも多くのホワイトラビットとスライムを【吸血】で倒していった。
「この前の【脚力強化】は、運が良かったんだなぁ」
結局、今回の戦闘ではスキル獲得はならなかった。
「アカリは、ログインしているかな。おっ、してる。売りに行こうっと」
アカリエに行くと、アカリがカウンターにいた。てっきり後ろにいると思っていたから、ちょっと驚いた。
「アカリ、売りに来たよ」
「ん~」
売却メニューに今日の収穫を入れていった。
「おぉ……沢山手に入れたね。また飲んだの?」
「うん。でも、【吸血】で飲んでみたんだ。スキルは手に入らなかったけど」
「やっぱり確率は低いみたいだね。取り敢えず、今日はこのくらい」
今日の成果は、十万Gになった。これで十四万の所持金だ。
「よし! 短剣買ってくる!」
「ん~。防具は、三日から四日で出来ると思う。良いアイデアも浮かんだから」
「オッケー。武器が強化出来れば、狩りの効率も上がるだろうし」
「ところで、良い武器屋は見つかったの?」
「良い武器屋かはまだ分からないけど、ラングさんって人の武器屋に行くつもり」
私がそう言うと、アイテム整理をしていたアカリが顔を上げた。
「おぉ、良い武器屋選んだね」
「選んだと言うよりも、ログイン直後に知り合ったって感じ」
「運が良いね。本当に良い鍛冶師だよ」
「そうなんだ。良かった。それじゃあ、行ってくる」
「うん。ここの三軒隣にあるから」
「ありがとう」
アカリエから出て、三軒隣の店を見る。そこには、ものすごく派手なビビットピンクの外観をした店があった。看板には、『バニーサイド』と書かれていた。
「……反対だな」
どっち側の隣なのかくらいは教えて欲しかった。正直、あの厳つい顔でビビットピンクの店構えをしていたら、驚いて固まってしまうところだった。実際、少し固まった。
「何かあったのかな?」
「エンカウントボスの夜霧の執行者が討伐されたらしいぞ」
「!?」
独り言で呟いたら、隣から男の人が答えてくれて驚いた。その人は、オーバーオールを着たマッチョなハゲ頭だった。見るからに強そうだ。
「そんな事が分かるんですか?」
倒したのは私だけど、白を切って質問する。私の呟きに答えてくれたから、多分普通に質問しても答えてくれるはず。
「ああ、夜霧の執行者の討伐数が、掲示板に貼り出されていたんだ。これまでのダンジョンボスでは、その表示がなかったから、こうして大騒ぎになっているんだ。夜霧の執行者は、これまでのボスとは違った何かがあるんじゃなかってな」
「へぇ~」
「初心者の嬢ちゃんには、分からない事だったか」
「いえ、友人からエンカウントボスの話は聞いてましたから。おじさんも夜霧の執行者を狙っていたんですか?」
私がそう訊くと、おじさんは頬を引きつらせていた。見た目的にお兄さんって感じじゃなかったから、おじさんって言っちゃったけど、本人的には不服なのかもしれない。
「おじっ……俺の名前は、ラングだ。適当に呼んで良いが、おじさんはやめてくれ」
「わかりました。ラングさん」
そう呼ぶとラングさんは、少し安堵したような表情になった。本当におじさんって年齢ではなかったのかも。ちょっと申し訳なく思っていると、ラングさんが、私がした質問に答え始めてくれる。
「俺は、鍛冶師だからな。特に執着はしていないが、あの両手剣は気になるな。モンスタードロップの武器の性能は知っておいて損はない」
「やっぱり、生産職の人はそういうところも気になるんですね」
「まぁな。嬢ちゃんは、初めてどのくらいなんだ?」
「昨日からですね」
「そうか。何か入り用になったら、俺の店に来ると良い。これでも、腕の良い鍛冶師と言われているからな」
「そうなんですか? じゃあ、短剣をお願いしたいんですが、どのくらいの値段になりますか?」
「そうだな。現状で言えば、五万から十万ってところだ。フレンド登録しておくか?」
「あっ、お願いします」
ラングさんとフレンド登録しておく。これで、武器屋に行く時にラングさんがいるか確認出来る。
「店の名前は、ラング武器店だ」
「そのままですね」
「何も思い付かなくてな……」
「シンプルなのは良い事だと思いますよ。分かりやすいですし」
「嬢ちゃんは優しい奴だな。トラブルに巻き込まれないように気を付けろよ」
「はい。では、また今度伺いますね」
「ああ」
ラングさんと別れて、私は街の外に向かった。今は、朝の八時。この世界では、日が沈んで、夜になっている。平日の朝という事もあり、初心者用の狩り場は、昨日のように一杯一杯ではないはずなので、急いで東の森に向かう。
「ラングさんか……良い武器を作ってくれる人だといいな」
自分で言うくらいだから、かなり自信があるのだと思う。だから、ちょっと任せてみようかなって思いお願いした。初対面の人だから、多少の不安はあるけど、ただ私が呟いた事に親切に答えてくれた人だから、ちょっとは信用しても良いのではと思った。
走って森の中に入った私は、すぐにコボルトに遭遇する。やっぱり、昨日よりも人が少ない。お金稼ぎが捗りそうだ。
「さてと、試そうか。【夜霧】」
私の言葉に合わせて、私の身体から夜霧の執行者が出していたものと似ている黒い霧が出て来る。その霧は、広がっていく事はなく、私の周りに纏わり付いた。
そこにコボルトが襲い掛かってくる。私は敢えて、その攻撃を受ける。すると、攻撃された箇所が黒い霧になって、ナイフがすり抜けていった。私の身体を霧に変える事で避ける事が出来るみたいだ。
「吸血も相まって、吸血鬼っぽくなってきたなぁ……」
そんな事を言っている間にも、コボルトが攻撃をしてくるので、もう一度受ける。すると、身体に纏っていた夜霧が消え去った。本当に二回しか、効果がないみたいだ。もう一度攻撃してくるコボルトを上半身と下半身で両断する。
「【執行者】の方は、恩恵がわかりにくい。ボス戦とかになれば、少し分かるかな。ちゃんとしたボスとも戦いたいなぁ。正直、夜霧の執行者は、運で勝てたようなものだし」
この森の先にボスがいるのは、分かっているけど、まだ挑みはしない。私のスキルレベルでは、ソロ討伐は厳しいかもしれないから。夜霧の執行者は、【吸血】がメタだっただけだから。
しばらくコボルトとワイルドボアの狩りを続ける。計三十体程倒した。何度かワイルドボアに【吸血】を使ったけど、スキルは獲得出来なかった。それと、コボルトにも【吸血】を試してみた。ワイルドボア以上に大暴れするので、思いっきり組み伏せてから吸血した。
ワイルドボア以上に獣臭く、汗のような匂いも混じって、本当に嫌だったけど、何とか血は飲めた。こっちもスキルの獲得は出来なかったけど、現状夜であれば、小さいモンスターを組み伏せて無理矢理血を飲む事も可能だと分かったのは、大きいかも。
三十回も戦闘して、少し疲れたので、一つ気になる事を試そうと思う。それは、スライムの【吸血】だ。柔らかすぎて、すぐに食べてしまったけど、牙を突き立てた状態を維持すれば、【吸血】が発動するかもしれないと昨日の夜に思ったのだ。
早速平原の端っこに向かう。街に近い場所だと目立つことが分かったからだ。近くにいるスライムを優しく持ち上げて、魔力の牙を伸ばし、ゆっくりと入れる。ここで噛み付くと食べてしまうので、このまま待つと、口の中にスライムの中身がどんどんと入ってくる。最終的に核だけが残った。
「……自分から食べてないから、【吸血】が発動したんだよね? 【吸血】で食べると、自動的に流れ込んでくるんだ……昨日と同じように吸血していこっと」
ホワイトラビットとスライムを交互に吸血していく。ホワイトラビットは、段々と慣れてきたので、平然と飲めるようになった。スライムの方は、いつも通りの無味無臭の炭酸みたいな感じなので、口直しに丁度いい。
「何か吸い尽くせるまでの時間が縮まった?」
【吸血】のスキルレベルが上がったおかげか、血を全て飲み干すまでの時間が短くなっていた。前よりも多くのホワイトラビットとスライムを【吸血】で倒していった。
「この前の【脚力強化】は、運が良かったんだなぁ」
結局、今回の戦闘ではスキル獲得はならなかった。
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アカリエに行くと、アカリがカウンターにいた。てっきり後ろにいると思っていたから、ちょっと驚いた。
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「やっぱり確率は低いみたいだね。取り敢えず、今日はこのくらい」
今日の成果は、十万Gになった。これで十四万の所持金だ。
「よし! 短剣買ってくる!」
「ん~。防具は、三日から四日で出来ると思う。良いアイデアも浮かんだから」
「オッケー。武器が強化出来れば、狩りの効率も上がるだろうし」
「ところで、良い武器屋は見つかったの?」
「良い武器屋かはまだ分からないけど、ラングさんって人の武器屋に行くつもり」
私がそう言うと、アイテム整理をしていたアカリが顔を上げた。
「おぉ、良い武器屋選んだね」
「選んだと言うよりも、ログイン直後に知り合ったって感じ」
「運が良いね。本当に良い鍛冶師だよ」
「そうなんだ。良かった。それじゃあ、行ってくる」
「うん。ここの三軒隣にあるから」
「ありがとう」
アカリエから出て、三軒隣の店を見る。そこには、ものすごく派手なビビットピンクの外観をした店があった。看板には、『バニーサイド』と書かれていた。
「……反対だな」
どっち側の隣なのかくらいは教えて欲しかった。正直、あの厳つい顔でビビットピンクの店構えをしていたら、驚いて固まってしまうところだった。実際、少し固まった。
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