6 / 456
吸血少女の始まり
アカリエ
しおりを挟む
日が出てきて、私は街に戻ってきた。入口に街の名前が書かれており、ここで、初めて私はこの街の名前を知る。
「『ファーストタウン』。名前の通り、最初の街だからか。それにしても、ステータスの三割ダウンって、こんなに来るんだ」
身体に怠さを感じながら、街の中に入っていく。戦えないくらい怠いわけではないので、この状態でも戦えるようにはなっておいた方が良いかもしれない。
取り敢えず、今は、さっき手に入れた素材を売って、どのくらいの稼ぎになるのかを確かめたい。早く初心者装備から脱却したいし。どこかに適当な換金所がないかと探して歩いていると、一つの店が目に付いた。
そこの看板には、『服飾屋アカリエ』と書かれていた。その店名に、私は心当たりがあった。迷わずに、そのまま店内に入っていく。扉を開けて閉めると、お客さんが来た事を知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
奥から金髪を背中まで伸ばした碧眼のエルフが出て来た。その姿を見て、私は自分の考えが正しかった事を確信する。
「あっ、やっぱり、アカリでしょ?」
「ん? ああ、ハクって事は、白ちゃんか」
営業スマイルだった金髪エルフは、すぐに柔らかな笑みになった。このエルフは、私の幼馴染みの西島光のアバターであるアカリだ。いつも金髪エルフのアバターにしているので、名前と姿である程度予測出来る。それでも人違いだった可能性はあるけど。
「今日から?」
「そう。かー姉が買ってくれたんだ」
「そうなんだ。良かったね。態々お店に入ってきたって事は、換金か何か?」
アカリは、すぐに私の目的を察する。
「正解。ここは、何を売れるの?」
「基本何でも受け付けてるよ。皮とか布とか以外でも、強化に使えたりするし、鉱石を使って作ったりもするからね。結構無駄はないよ」
「おっ、それじゃあ、これお願い」
私は、手に入れた全部の素材を、売却メニューに移していく。
「うん、うん、うん?」
急にアカリが首を傾げる。
「どうしたの?」
「スライムの核多すぎだなって。結構レアって言われてるんだけど」
「そう? スライムを飲んだら、簡単に手に入るけど?」
「……なんて?」
「スライムを飲んだら、簡単に手に入るけどって」
アカリは、呆れたような表情になる。
「あ~……やっぱり、あまり飲まない感じ?」
「飲んだことある人の方が少ないと思う。取り敢えず、今の相場だとこんな感じかな」
「えっと……三万Gか。高いのか安いのか分からないんだけど」
ワンオンの通貨単位はGとなっている。因みに、初期資金としては、一万Gが入っている。そこに三万プラスされて、今の私の資金は四万Gになったという事だ。
「東の森で狩りをしたにしては高いよ。スライムの核が特に高いからね」
「ふ~ん、使い道は?」
「追加効果で、【弾性上昇】が付くって感じ。軽い攻撃が弾けるくらいかな。後は、私は持ってないけど、【合成】だか【錬金】だかで、召喚獣を作るみたいな使い道かな」
「へぇ~、そんなスキルもあるのか。まだまだ全然知らないスキルが多いなぁ」
「始めたばかりで、全てのスキルを網羅されていても怖いけど。そういえば、ハクちゃんの初期スキルはなんだったの?」
「ああ、これ」
アカリに訊かれたので、私のスキルをアカリに見せる。
────────────────────────
ハク:【剣Lv4】【吸血Lv6】【脚力強化Lv1】
控え:なし
SP:1
────────────────────────
あれだけ【吸血】を使ったので、スキルレベルが上がって、SPが増えた。これで、ランク1のスキルは収得出来る。強化系を取っても良いかもしれない。
そう思っていると、アカリが何とも言えない表情をしていた。
「あの掲示板は、ハクちゃんか……」
「掲示板?」
「そう。ホワイトラビットに噛み付いて、スライムを食べている少女がいたって、騒がれてたの。一体、何してたの?」
「ホワイトラビットのスキルを取ろうと思ってね。スライムで、口直ししてた。味はないけど、アイテムも手に入れられて、一石二鳥って感じ」
アカリは、信じられないものを見るような目で、こっちを見てくる。スライムで口直しは、さすがにあり得ない行動だったみたいだ。
「まぁ、真の口直しは、この林檎だけどね」
「ああ、甘酸林檎ね。料理したら、アップルパイとかに出来るけど」
「料理か……スキルにある?」
「あるけど、特に美味しい物を作るくらいしか使い道はないから、取らないでも良いよ。近くの飲食店で、食べられるし」
「そうなんだ。後で案内して」
「良いよ」
アカリは、即答で返事をしてくれる。
「そうだ。ところでさ、この【脚力強化】って、どのランクにあるスキルなの? 後、この範囲ってどこまで?」
私が手に入れたスキルである【脚力強化】は、ランク1の強化系スキルの中には見当たらなかった。ちなみに、【脚力強化】は、こんな効果だった。
────────────────────────
【脚力強化】:脚を使った行動を強化する。
────────────────────────
短く簡潔に書かれていた。脚を使った行動というのが、どこまでの範囲なのか分からないので、私よりも大分先輩のアカリに話を訊く。
「それは、モンスターが持つスキルだから、スキル収得欄にはないよ。それと、それの範囲は、本当に脚を使った行動。走る、蹴る、ジャンプどれでもね。ただ歩きだけは強化されないみたい」
「ほ~ん。なるほどね。それも【吸血】のメリットって事か」
「まぁ、普通の人は吐くから、手に入れるのも難しいけどね。ハクちゃんは……水波さんか……」
「生ゴミ上等みたいな感じ。ただ、ゴブリンとかが出て来たら、吸血するか悩むんだよね」
「ああ、気持ちは分かる。こっちのゴブリンも他のゲームと同じで緑色の肌をしているんだけど、見た目が汚らしいんだけどね。やるんだったら、洗った後にした方が良いと思う」
アカリの話を聞いて、余計にゴブリンへの吸血を躊躇いそう。ただ、魔物限定スキルの魅力は強い。その時になったら、多分悩む事になるんだろうな。
「さてと、せっかくハクちゃんが来た事だし、さっき言ったお店に行こうか」
「お店は良いの?」
「大丈夫。店番頼むから」
どうやら、NPCに店番を任せる事が出来るみたい。まぁ、そうじゃないと店に張り付きになるから当たり前か。店番の設定をしてきたアカリと一緒に外に出る。
「それじゃあ行こうか」
アカリに連れられて、街を歩き出した。
「『ファーストタウン』。名前の通り、最初の街だからか。それにしても、ステータスの三割ダウンって、こんなに来るんだ」
身体に怠さを感じながら、街の中に入っていく。戦えないくらい怠いわけではないので、この状態でも戦えるようにはなっておいた方が良いかもしれない。
取り敢えず、今は、さっき手に入れた素材を売って、どのくらいの稼ぎになるのかを確かめたい。早く初心者装備から脱却したいし。どこかに適当な換金所がないかと探して歩いていると、一つの店が目に付いた。
そこの看板には、『服飾屋アカリエ』と書かれていた。その店名に、私は心当たりがあった。迷わずに、そのまま店内に入っていく。扉を開けて閉めると、お客さんが来た事を知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
奥から金髪を背中まで伸ばした碧眼のエルフが出て来た。その姿を見て、私は自分の考えが正しかった事を確信する。
「あっ、やっぱり、アカリでしょ?」
「ん? ああ、ハクって事は、白ちゃんか」
営業スマイルだった金髪エルフは、すぐに柔らかな笑みになった。このエルフは、私の幼馴染みの西島光のアバターであるアカリだ。いつも金髪エルフのアバターにしているので、名前と姿である程度予測出来る。それでも人違いだった可能性はあるけど。
「今日から?」
「そう。かー姉が買ってくれたんだ」
「そうなんだ。良かったね。態々お店に入ってきたって事は、換金か何か?」
アカリは、すぐに私の目的を察する。
「正解。ここは、何を売れるの?」
「基本何でも受け付けてるよ。皮とか布とか以外でも、強化に使えたりするし、鉱石を使って作ったりもするからね。結構無駄はないよ」
「おっ、それじゃあ、これお願い」
私は、手に入れた全部の素材を、売却メニューに移していく。
「うん、うん、うん?」
急にアカリが首を傾げる。
「どうしたの?」
「スライムの核多すぎだなって。結構レアって言われてるんだけど」
「そう? スライムを飲んだら、簡単に手に入るけど?」
「……なんて?」
「スライムを飲んだら、簡単に手に入るけどって」
アカリは、呆れたような表情になる。
「あ~……やっぱり、あまり飲まない感じ?」
「飲んだことある人の方が少ないと思う。取り敢えず、今の相場だとこんな感じかな」
「えっと……三万Gか。高いのか安いのか分からないんだけど」
ワンオンの通貨単位はGとなっている。因みに、初期資金としては、一万Gが入っている。そこに三万プラスされて、今の私の資金は四万Gになったという事だ。
「東の森で狩りをしたにしては高いよ。スライムの核が特に高いからね」
「ふ~ん、使い道は?」
「追加効果で、【弾性上昇】が付くって感じ。軽い攻撃が弾けるくらいかな。後は、私は持ってないけど、【合成】だか【錬金】だかで、召喚獣を作るみたいな使い道かな」
「へぇ~、そんなスキルもあるのか。まだまだ全然知らないスキルが多いなぁ」
「始めたばかりで、全てのスキルを網羅されていても怖いけど。そういえば、ハクちゃんの初期スキルはなんだったの?」
「ああ、これ」
アカリに訊かれたので、私のスキルをアカリに見せる。
────────────────────────
ハク:【剣Lv4】【吸血Lv6】【脚力強化Lv1】
控え:なし
SP:1
────────────────────────
あれだけ【吸血】を使ったので、スキルレベルが上がって、SPが増えた。これで、ランク1のスキルは収得出来る。強化系を取っても良いかもしれない。
そう思っていると、アカリが何とも言えない表情をしていた。
「あの掲示板は、ハクちゃんか……」
「掲示板?」
「そう。ホワイトラビットに噛み付いて、スライムを食べている少女がいたって、騒がれてたの。一体、何してたの?」
「ホワイトラビットのスキルを取ろうと思ってね。スライムで、口直ししてた。味はないけど、アイテムも手に入れられて、一石二鳥って感じ」
アカリは、信じられないものを見るような目で、こっちを見てくる。スライムで口直しは、さすがにあり得ない行動だったみたいだ。
「まぁ、真の口直しは、この林檎だけどね」
「ああ、甘酸林檎ね。料理したら、アップルパイとかに出来るけど」
「料理か……スキルにある?」
「あるけど、特に美味しい物を作るくらいしか使い道はないから、取らないでも良いよ。近くの飲食店で、食べられるし」
「そうなんだ。後で案内して」
「良いよ」
アカリは、即答で返事をしてくれる。
「そうだ。ところでさ、この【脚力強化】って、どのランクにあるスキルなの? 後、この範囲ってどこまで?」
私が手に入れたスキルである【脚力強化】は、ランク1の強化系スキルの中には見当たらなかった。ちなみに、【脚力強化】は、こんな効果だった。
────────────────────────
【脚力強化】:脚を使った行動を強化する。
────────────────────────
短く簡潔に書かれていた。脚を使った行動というのが、どこまでの範囲なのか分からないので、私よりも大分先輩のアカリに話を訊く。
「それは、モンスターが持つスキルだから、スキル収得欄にはないよ。それと、それの範囲は、本当に脚を使った行動。走る、蹴る、ジャンプどれでもね。ただ歩きだけは強化されないみたい」
「ほ~ん。なるほどね。それも【吸血】のメリットって事か」
「まぁ、普通の人は吐くから、手に入れるのも難しいけどね。ハクちゃんは……水波さんか……」
「生ゴミ上等みたいな感じ。ただ、ゴブリンとかが出て来たら、吸血するか悩むんだよね」
「ああ、気持ちは分かる。こっちのゴブリンも他のゲームと同じで緑色の肌をしているんだけど、見た目が汚らしいんだけどね。やるんだったら、洗った後にした方が良いと思う」
アカリの話を聞いて、余計にゴブリンへの吸血を躊躇いそう。ただ、魔物限定スキルの魅力は強い。その時になったら、多分悩む事になるんだろうな。
「さてと、せっかくハクちゃんが来た事だし、さっき言ったお店に行こうか」
「お店は良いの?」
「大丈夫。店番頼むから」
どうやら、NPCに店番を任せる事が出来るみたい。まぁ、そうじゃないと店に張り付きになるから当たり前か。店番の設定をしてきたアカリと一緒に外に出る。
「それじゃあ行こうか」
アカリに連れられて、街を歩き出した。
24
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
吸血少女 設定資料集(おまけ付き)
月輪林檎
SF
『吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ』のスキルやその技、武具の追加効果などを章ごとに分けて簡潔に説明します。その章で新しく出て来たものを書いていくので、過去の章に出て来ているものは、過去の章から確認してください。
さらに、ハク以外の視点で、ちょっとした話も書くかもしれません。所謂番外編です。
基本的に不定期更新です。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
最強のギルド職員は平和に暮らしたい
月輪林檎
ファンタジー
【第一章 完】 【第二章 完】
魔物が蔓延り、ダンジョンが乱立する世界。そこでは、冒険者という職業が出来ていた。そして、その冒険者をサポートし、魔物の情報やダンジョンの情報を統括する組織が出来上がった。
その名前は、冒険者ギルド。全ての冒険者はギルドに登録しないといけない。ギルドに所属することで、様々なサポートを受けられ、冒険を円滑なものにする事が出来る。
私、アイリス・ミリアーゼは、十六歳を迎え、長年通った学校を卒業した。そして、目標であったギルド職員に最年少で採用される事になった。騎士団からのスカウトもあったけど、全力で断った。
何故かと言うと…………ギルド職員の給料が、騎士団よりも良いから!
それに、騎士団は自由に出来る時間が少なすぎる。それに比べて、ギルド職員は、ちゃんと休みがあるから、自分の時間を作る事が出来る。これが、選んだ決め手だ。
学校の先生からは、
「戦闘系スキルを、それだけ持っているのにも関わらず、冒険者にならず、騎士団にも入らないのか? 勿体ない」
と言われた。確かに、私は、戦闘系のスキルを多く持っている。でも、だからって、戦うのが好きなわけじゃない。私はもっと平和に暮らしたい!!
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる