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魔族の聖女

エピローグ

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 それから何年か後、クララはデズモニアで診療所を開く。そこには、医師兼薬師のクララ、看護師兼受付のリリン、看護師見習いのサーファ、薬師のアリエス、看護師兼医師代理のニャミーが働く。
 時折休暇を貰っては、マーガレットやユーリーがいる街やリリン達の故郷、マリンウッドなどの観光地を訪れたりと、魔族領を満喫していった。多少の事件はあったが、これまでの事件と比べれば可愛いものばかりだった。
 クララの生涯は、幸せなままで終わった。

 そんなクララの故郷である人族領では、教会、王族、貴族の悪行が明るみになった事で、革命が起きていた。その先導者は、勇者の力を失ったカルロスとその仲間達だった。
 勇者の力には、聖女の力とは違う効果がある。その中に、正義感の増進と性欲の増進がある。カルロスの行動が過激だったりしたのも、それが原因だ。だが、そもそも勇者として選ばれるには、行き過ぎた正義感が必要になる。元々そういった素質をカルロスは持っていたのだった。
 革命は成功し、悪政は滅びた。そして、革命の結果、議会が誕生する。その議長は、革命の立役者であるカルロスが務めた。

 そして、カルロス率いる議会が根回しをしていった事によって、長年にわたり刻まれていた魔族との溝が少しずつ埋まっていく事になる。そもそもその溝すらも、王族達によって作られたものだった。
 カルロスが生きている間に、和平交渉までこぎ着ける事は出来なかったが、その少し後に、人族と魔族の間で和平交渉が行われた。そうして、長年にわたり続いた争いは終戦を迎え、人族の国と魔族の国で国交が生まれた。これに大きく貢献したのは、当時の魔王であるガーランドだった。

 そして、勇者と聖女に関しては、その後九百年間にわたり現れる事はなかった。クララが完全に消し去ったかのうように見えているが、実際には消し切れていなかった。だが、その復活を九百年も遅らせる事には成功していたのだった。
 新しく生まれた勇者と聖女は、前のように魔族を殺し回るという事はなく、凶暴な魔物を退治したり、苦しむものを癒やしたりとしていた。

 二つの国で国交が結ばれた後、クララの故郷にリリンとサーファが訪れた。その頃には、既にクララは亡くなってしまっているので、クララの姿はない。二人が、クララの故郷を訪れた理由は、ただ感傷に浸るためではなく、亡くなったクララに故郷の土へ還ってもらうためだ。
 既に遺骨は魔族領のデズモニアに埋まっている。その遺骨の一部だけを、別で回収しておき、それを人族領の故郷であるこの場に埋めた。こうして、クララは二つの故郷へと還ってくる事が出来る。
 クララに頼まれた事ではないが、リリンとサーファなりに、クララの事を考えての事だった。

 世の中から、魔族が悪という考えは、完全に消え失せた。このきっかけになったのは、クララが勇者と聖女の力を消したおかげだった。この功績と魔族の聖女としての活躍を称えて、その死後、クララの族がデズモニアに建てられた。
 その像は、それから何百年経った後でも魔聖女様として、崇められ慕われたと言う。
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