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可愛がられる聖女
喉に潤いを
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クララの部屋に向かったリリンを見送った後、クララは、モイスの実を剥き始める。皮、果肉、種に分けていく。クララが刃物を扱っているので、サーファはハラハラしながら見守っていた。
刃物の扱いが特別苦手という訳でも無いので、怪我をする事もなく次々に剥いていく。モイスの実を三つに分け終えたクララは、皮をジッと見ていた。
(これだけ薬にはならないんだよね。何か使い道はないのかな?)
そう思って皮を嗅いでみると、爽やかな香りが鼻を通って行った。
(別に青臭い訳でもないし、普通に良い匂いがする。リリンさんなら、活用法を知ってるかも)
クララはそう思い、皮を端に寄せて、果肉と種に向き合う。そして、最初に手に取った果肉の入ったボウルだった。手を綺麗に洗ったクララは、モイスの実の果肉を潰していく。果肉は、かなり柔らかいので、手でも十分に潰すことが出来る。
潰した果肉を濾し布で水分を抜いていく。水分を出し切った果肉はぽろぽろと崩れるような状態になっていた。その果肉を別の布の上に載せて、薄く広げ、そのまま自然乾燥させる。
こっちはしばらく放置なので、作業は種の方に移る。
「えっと……油絞り機は……」
クララは、油絞り機を探して棚を開け閉めしていく。
「ないのか。どうしよう……」
「ふっふっふっ、お困りかね、お嬢さん」
芝居がかった口調でクララに近づいて来たのは、当然ながらサーファだった。
「この種から油を絞りたいんですけど、油絞り機がないので、どうしたものかと」
「そんな時こそ、私にお任せ! これを握りつぶせば良いの?」
「いえ、まずは天日干しした種を……天日干し?」
保湿薬を作る工程を口に出したところで、クララはある事に気が付く。
「天日干ししないとだから、今すぐ作れませんでした!」
「あちゃ~、それは残念。じゃあ、後で、リリンさんに相談して、天日干し出来る場所を教えてもらおうか」
「はい。そうします」
少し気が早かった事を反省しつつ、取りあえず種の表面に残っている小さな果肉を丁寧に取っていく。そして、種を水で洗って、綺麗な状態にする。
「そういえば、サーファさんは素手で種を潰せるんですか?」
さっきは、天日干しが必要だったという事を失念していた事にショックを受けていて気付かなかったが、サーファが言った事が正しければ、モイスの実の種を握りつぶせるという風に取れるのだ。
「え、うん。身体強化を使えば、大抵のものは握りつぶせると思うよ」
「へ、へぇ~……」
クララは、天日干しが済んだら、試しにサーファにやって貰らおうと心に決めた。実際にどんな感じか見てみたいからだ。
その後、綺麗に種の水分を拭ったクララは、自然乾燥させている果肉の方を見る。大分水分が抜けているのを確認したクララは、それをすり鉢に入れて、完全に粉になるまで擦っていく。そうして粉になったものを計量し、型に入れて固める。そうして、規定量の小さな錠剤になっていった。
「これで出来上がりなの?」
後ろから覗きこんでいたサーファがそう訊く。
「はい。飲むときは、この錠剤をこのまま口に入れて飲み込みます。すぐにパラパラと崩れて、喉のイガイガ感が緩和します。ちょっとだけ喉が冷たく感じるので、嫌いな人もいるらしいです」
「へぇ~、確かに私も嫌いだったかも」
「こればかりは我慢するしかないので、サーファさんも、喉に違和感を覚えたら、ちゃんと飲んでくださいね」
「あ、はい」
クララからそう言われてしまえば、飲まざるを得ないので、諦めて受け入れる。そして、心の中で風邪を引かないようにしようと決心した。
その後、喉薬の量産した後、アリエスと一緒に他の薬の量産をしていった。アリエスの手際も段々良くなっていったので、かなり早く作る事が出来ていたのだが、一つだけ問題が生じた。
「私一人で使う予定だったから、二人で使うと器具が足りないね」
「うん。明日来る前に買ってきた方が良いかな?」
「ああ……ううん。リリンさんに許可を取って今から行って来るよ。アリエス一人じゃ、全部持ってくるのは大変でしょ?」
「それはそうだけど……大丈夫なの?」
クララは、恐らくアリエスよりも筋力がない。そのため、アリエスもクララ一人で持つのは無理があるのではと思ったのだ。
「うん。サーファさんも一緒に行ってくれるから大丈夫だよ」
クララの中で、サーファは付いてくる事が確定している。同じくリリンも一緒に来るだろうとクララは考えている。それは、何も根拠がないわけじゃない。クララは、まだ一人での外出を許可されていない。クララの安全のためにもそういう措置になっているので、必ずリリンとサーファが付いてくるはずなのだ。
それを肯定するように、サーファは頷いていた。
「今日は初日だし、お仕事は終わりにしよう。アリエスも頑張ってくれたから、材料も少なくなっちゃったし」
「あ、ごめんね……」
「ううん。寧ろ有り難いくらいだよ。これなら提供する薬の量もちゃんと確保出来るから。後で、リリンさんとも相談して、材料を増やせるか確認するよ」
自分で材料の調達をしているわけではないので、こういった事はリリンに相談するしかなかった。
「うん。分かった」
ここは口を挟むところではないと判断したアリエスは、クララに任せる事にした。
「本当にアリエスが来てくれて良かった。仕事も丁寧だし、これなら色々な事を任せられるよ。本当にありがとうね」
「う、うん」
クララから改めて感謝を受けたアリエスは、少し嬉しそうにしていた。
その後の話も済んだので、クララはサーファの方を見る。
「じゃあ、サーファさん、後をお願いします」
重要な部分を抜いたお願いだったが、サーファは何を頼まれたのかをすぐに理解した。
「了解。それじゃあ、門まで送るよ」
「ありがとうございます」
帰りの支度をしたアリエスを、サーファが門まで送っていく。その間に、クララは、自分の部屋へと戻る。部屋では、ベッドメイクをしているリリンの姿があった。リリンは、すぐにクララが戻ってきた事に気が付く。
「もう作業は終わりですか? 今日は、少し早いですね」
「はい。材料が少なくなっちゃったので。後、他にも色々あって、時間大丈夫ですか?」
「ええ、こちらの作業も終わりましたので、大丈夫ですよ」
クララとリリンは、話をするために、テーブルに着く。そして、先程の作業中に出た問題をリリンに相談する。
「そうですね。天日干しに関しては、窓際に置いておくと良いでしょう。基本的に日中は日が差し込んでいますので。ついでに窓を開けておけば、風も入りますのでより効率的に乾燥出来るでしょう」
「分かりました」
「後は、材料の方ですね。こちらはすぐに対応する事は出来ませんので、三日程時間を頂きます。器具に関しては、今から買いに行っても良さそうですね」
「じゃあ、城下町に行くんですね」
外出も好きなクララは、少し興奮気味だった。だが、リリンはそんなクララの頭を撫でながら首を横に振る。
「いえ、違います。ですが、クララさんはお好きかもしれませんね」
「?」
リリンの言っている事が分からず、クララは首を傾げる。リリンは、そんなクララに微笑み掛けるだけで、それ以上の事は一切教えなかった。つまり、後は見た時のお楽しみという事だ。
刃物の扱いが特別苦手という訳でも無いので、怪我をする事もなく次々に剥いていく。モイスの実を三つに分け終えたクララは、皮をジッと見ていた。
(これだけ薬にはならないんだよね。何か使い道はないのかな?)
そう思って皮を嗅いでみると、爽やかな香りが鼻を通って行った。
(別に青臭い訳でもないし、普通に良い匂いがする。リリンさんなら、活用法を知ってるかも)
クララはそう思い、皮を端に寄せて、果肉と種に向き合う。そして、最初に手に取った果肉の入ったボウルだった。手を綺麗に洗ったクララは、モイスの実の果肉を潰していく。果肉は、かなり柔らかいので、手でも十分に潰すことが出来る。
潰した果肉を濾し布で水分を抜いていく。水分を出し切った果肉はぽろぽろと崩れるような状態になっていた。その果肉を別の布の上に載せて、薄く広げ、そのまま自然乾燥させる。
こっちはしばらく放置なので、作業は種の方に移る。
「えっと……油絞り機は……」
クララは、油絞り機を探して棚を開け閉めしていく。
「ないのか。どうしよう……」
「ふっふっふっ、お困りかね、お嬢さん」
芝居がかった口調でクララに近づいて来たのは、当然ながらサーファだった。
「この種から油を絞りたいんですけど、油絞り機がないので、どうしたものかと」
「そんな時こそ、私にお任せ! これを握りつぶせば良いの?」
「いえ、まずは天日干しした種を……天日干し?」
保湿薬を作る工程を口に出したところで、クララはある事に気が付く。
「天日干ししないとだから、今すぐ作れませんでした!」
「あちゃ~、それは残念。じゃあ、後で、リリンさんに相談して、天日干し出来る場所を教えてもらおうか」
「はい。そうします」
少し気が早かった事を反省しつつ、取りあえず種の表面に残っている小さな果肉を丁寧に取っていく。そして、種を水で洗って、綺麗な状態にする。
「そういえば、サーファさんは素手で種を潰せるんですか?」
さっきは、天日干しが必要だったという事を失念していた事にショックを受けていて気付かなかったが、サーファが言った事が正しければ、モイスの実の種を握りつぶせるという風に取れるのだ。
「え、うん。身体強化を使えば、大抵のものは握りつぶせると思うよ」
「へ、へぇ~……」
クララは、天日干しが済んだら、試しにサーファにやって貰らおうと心に決めた。実際にどんな感じか見てみたいからだ。
その後、綺麗に種の水分を拭ったクララは、自然乾燥させている果肉の方を見る。大分水分が抜けているのを確認したクララは、それをすり鉢に入れて、完全に粉になるまで擦っていく。そうして粉になったものを計量し、型に入れて固める。そうして、規定量の小さな錠剤になっていった。
「これで出来上がりなの?」
後ろから覗きこんでいたサーファがそう訊く。
「はい。飲むときは、この錠剤をこのまま口に入れて飲み込みます。すぐにパラパラと崩れて、喉のイガイガ感が緩和します。ちょっとだけ喉が冷たく感じるので、嫌いな人もいるらしいです」
「へぇ~、確かに私も嫌いだったかも」
「こればかりは我慢するしかないので、サーファさんも、喉に違和感を覚えたら、ちゃんと飲んでくださいね」
「あ、はい」
クララからそう言われてしまえば、飲まざるを得ないので、諦めて受け入れる。そして、心の中で風邪を引かないようにしようと決心した。
その後、喉薬の量産した後、アリエスと一緒に他の薬の量産をしていった。アリエスの手際も段々良くなっていったので、かなり早く作る事が出来ていたのだが、一つだけ問題が生じた。
「私一人で使う予定だったから、二人で使うと器具が足りないね」
「うん。明日来る前に買ってきた方が良いかな?」
「ああ……ううん。リリンさんに許可を取って今から行って来るよ。アリエス一人じゃ、全部持ってくるのは大変でしょ?」
「それはそうだけど……大丈夫なの?」
クララは、恐らくアリエスよりも筋力がない。そのため、アリエスもクララ一人で持つのは無理があるのではと思ったのだ。
「うん。サーファさんも一緒に行ってくれるから大丈夫だよ」
クララの中で、サーファは付いてくる事が確定している。同じくリリンも一緒に来るだろうとクララは考えている。それは、何も根拠がないわけじゃない。クララは、まだ一人での外出を許可されていない。クララの安全のためにもそういう措置になっているので、必ずリリンとサーファが付いてくるはずなのだ。
それを肯定するように、サーファは頷いていた。
「今日は初日だし、お仕事は終わりにしよう。アリエスも頑張ってくれたから、材料も少なくなっちゃったし」
「あ、ごめんね……」
「ううん。寧ろ有り難いくらいだよ。これなら提供する薬の量もちゃんと確保出来るから。後で、リリンさんとも相談して、材料を増やせるか確認するよ」
自分で材料の調達をしているわけではないので、こういった事はリリンに相談するしかなかった。
「うん。分かった」
ここは口を挟むところではないと判断したアリエスは、クララに任せる事にした。
「本当にアリエスが来てくれて良かった。仕事も丁寧だし、これなら色々な事を任せられるよ。本当にありがとうね」
「う、うん」
クララから改めて感謝を受けたアリエスは、少し嬉しそうにしていた。
その後の話も済んだので、クララはサーファの方を見る。
「じゃあ、サーファさん、後をお願いします」
重要な部分を抜いたお願いだったが、サーファは何を頼まれたのかをすぐに理解した。
「了解。それじゃあ、門まで送るよ」
「ありがとうございます」
帰りの支度をしたアリエスを、サーファが門まで送っていく。その間に、クララは、自分の部屋へと戻る。部屋では、ベッドメイクをしているリリンの姿があった。リリンは、すぐにクララが戻ってきた事に気が付く。
「もう作業は終わりですか? 今日は、少し早いですね」
「はい。材料が少なくなっちゃったので。後、他にも色々あって、時間大丈夫ですか?」
「ええ、こちらの作業も終わりましたので、大丈夫ですよ」
クララとリリンは、話をするために、テーブルに着く。そして、先程の作業中に出た問題をリリンに相談する。
「そうですね。天日干しに関しては、窓際に置いておくと良いでしょう。基本的に日中は日が差し込んでいますので。ついでに窓を開けておけば、風も入りますのでより効率的に乾燥出来るでしょう」
「分かりました」
「後は、材料の方ですね。こちらはすぐに対応する事は出来ませんので、三日程時間を頂きます。器具に関しては、今から買いに行っても良さそうですね」
「じゃあ、城下町に行くんですね」
外出も好きなクララは、少し興奮気味だった。だが、リリンはそんなクララの頭を撫でながら首を横に振る。
「いえ、違います。ですが、クララさんはお好きかもしれませんね」
「?」
リリンの言っている事が分からず、クララは首を傾げる。リリンは、そんなクララに微笑み掛けるだけで、それ以上の事は一切教えなかった。つまり、後は見た時のお楽しみという事だ。
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