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聖女の新たな日常
講義(2)
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三日後、クララは再び講義が行われる教室にいた。リリン、サーファ、ベルフェゴールも一緒だ。ガーランドも交えた話し合いの結果、三日おきに講義を行う事で固まった。
演習の手伝いは、頻度を落とすことになった。クララがいた方が安心出来るが、元々クララ無しで演習をしていたので、元の演習に戻るだけだ。そのため問題はない。
「さて、今回から本格的に魔法の講義を行っていきます。準備はよろしいですかな?」
「は、はい! よろしくお願いします!」
クララが元気よくそう言うと、ベルフェゴールは満足げに頷いた。
「前回、魔法を使うために必要な魔力についてお話しましたな」
「私達の身体を巡っているんですよね? その魔力を魔法に変換するって」
「その通り。では、どうやって魔力を魔法に変換するのか。これについては、聖女殿もご存知でしょう。詠唱を使います」
ここまでは、クララも知っている事なので、こくりと頷く。
「ですが、実は、詠唱無しでも魔法は使えます」
「え?」
これは初耳だったので、クララは思わず声を上げた。
「無詠唱魔法は、ご存知ないようですな。これは、魔法を使い慣れないと使う事は出来ません。天才的な才能があれば、その限りではありませんが、そんな才能に恵まれた者は、そうそういません」
「そういえば、エリノラさんも同じように無詠唱で魔法を使っていた気がします」
「魔王城勤務の医者は、最低条件として無詠唱魔法が使える者でないといけません。緊急事態に、詠唱している時間は無駄ですから」
ベルフェゴールの説明に、クララは納得する。確かに、一刻を争う事態の時に詠唱している時間は勿体ない。その間に、死んでしまう可能性もあるからだ。
「ラビオニアでは、皆さん、詠唱をしていました。そう考えると、無詠唱って難しい技術なのでは?」
「そうですな。高等技術ではあります。ですが、この中でも二人程使える人物がいますな」
その言葉を受けて、クララはリリンのことを見る。この中で、無詠唱魔法を使えるとなるとベルフェゴールの他には、リリンだけだと思ったからだ。その考えが合っているという風に、リリンは頷く。
「お二人とも優秀なんですね」
「そういう事ですな。では、話を魔法に戻しましょう。魔法は、詠唱を知っているだけでは使う事は出来ません。その魔法の効果を理解している事が重要です。回復魔法でしたら、それがどの規模の傷を癒やすのか。攻撃魔法でしたら、それがどの規模の威力を内包しているのか。これらを理解しなくては、魔法は使えません」
ベルフェゴールはそう説明をしながら、黒板に記述していく。クララは、話を聞きながらノートに書き写していった。その中で、ふと不思議に思った事があり、挙手した。
「どうぞ」
「えっと、それだと魔法の効果を理解していれば、詠唱は何でも良いって事になりませんか?」
「ええ、実際に、同じ魔法でも違う詠唱で発動する事は判明しています。魔法を使うものの中には、独自に作った詠唱を好んで使う者も多いです。ですが、基本的には、広く知られている詠唱を使いますな」
「なるほど」
クララは急いでメモを取っていく。
「さて、では、早速詠唱を教えていきますが、攻撃魔法はもう少し後になります」
「? じゃあ、何の魔法を教えて頂けるんですか?」
「汎用性のある魔法をいくつかですな。聖女殿の魔力が、魔法にどのような影響を及ぼすかが分かりませんので」
ベルフェゴールが危惧しているのは、聖女の魔力が魔法に悪影響を与える可能性があるという事だった。回復魔法は、聖女の特性とマッチしている部分があるので、特に影響が無くてもおかしくは無い。
「もしかしたら、攻撃魔法は使えない可能性があるという事でしょうか?」
「その可能性は、この事とは別にありますな。魔法の適正は、個人によって変わりますので。私が危惧したのは、攻撃魔法の強化あるいは無力化です」
「無力化?」
「ええ。聖女殿の力。その特徴は、私も聞き及んでおります。それが聖女の力だけではなく、攻撃魔法などにも影響すると考えれば、聖女殿の気持ち次第で威力のないものになる可能性があるのです」
ベルフェゴールの説明に、クララは眼をぱちくりとさせる。それは、自分では考えもしなかったことを、ごく当たり前のようにベルフェゴールが考えていたからだ。元々ただの変態ではないと思っていたのだが、この事で改めて優秀な人なのだと再認識された。
「まずは、光球を生み出す魔法です。これは、先程聖女殿がお話なさったエリノラ殿も使っていたものですな。『闇を照らす光よ』これが、詠唱です」
クララは、詠唱を口にする前に、しっかりとノートに書き写しておく。
「えっと……効果は、光球を生み出す。『闇を照らす光よ』」
クララが詠唱すると、何も起こらなかった。
「?」
「もう少し具体的なイメージが必要ですな」
「具体的な?」
「例えば、明るさをどのくらいにするかやどの範囲を照らすかですな。ただぼんやりと思い浮かべるよりも、完全に決めておいた方が発動しやすくなります」
クララが思い浮かべていたのは、エリノラが使っていた光球だった。そのため、イメージが朧気になっていたのだ。ベルフェゴールは、それを見抜いていた。だからこそ、より具体的にイメージするように言ったのだ。
クララは、エリノラの使っていた光球のイメージから、より具体的にイメージを変えていく。光から連想されるのは、この部屋も照らしている灯りだ。
「よし! 『闇を照らす光よ』!」
ベルフェゴールのアドバイス通りに、具体的なイメージをした結果、ようやく光球を生み出す事が出来た。
「出来ました!」
ようやく使えたので、クララは満面の笑みになっていた。
「おめでとうございます」
ベルフェゴールは、そんなクララを見て、鼻血を流していた。ちゃんと使えて喜んでいるクララは、あまり見ていないので反応していないが、後ろで見守っていたリリンとサーファは、ドン引きである。
ベルフェゴールは、クララに気付かれる前に鼻血を拭き取り、黒板に次の魔法の詠唱を書いていく。
「お喜びのところ申し訳ないですが、今回覚えて頂く魔法は、まだまだあります。どんどんやっていきますが、よろしいですかな?」
「あ、はい!」
ここから、クララは何個もの魔法の詠唱を学んでいく。その結果、クララが使える魔法は、光魔法、水魔法、風魔法、無属性魔法、そして普段から使っている回復魔法だという事が分かった。
これが判明すると、クララ以外の三人が少し難しい顔をしていた。
「あの……どうかしましたか?」
気になったクララがそう質問すると、ベルフェゴールやリリンでは無く、サーファが答えてくれた。
「今回の講義は、クララちゃんの安全の確保を目的としているのは、分かっているよね?」
「はい。護身のためですよね」
「うん。それで、護身ためには攻撃系統の魔法を使えるようになってもらうんだけど、その魔法の中で炎魔法が一番攻撃力が高いし、使い方によっては、相手を一切近づけさせないみたいな立ち回りも出来るんだ。自分の周りを炎で囲ったりね。だから、出来れば、炎魔法が使えると良かったんだけどねって事」
炎魔法が威力などに優れているという事は、魔法を主として戦わないサーファでさえも知っているような魔法の常識だ。リリン達は、欲を言えば、クララに炎魔法を覚えて欲しかったのだ。
「そういう事ですか。どうにかして、炎魔法を使えるようにとかなれないんですか?」
「無理ですね。魔法の適正を変える事は出来ません。過去に研究されましたが、出された結果がそれです」
クララは、自分に必要なものであるのなら、どうにかして手に入れる事は出来ないかと思ったのだが、すぐにリリンが否定した。そこまで都合の良いことは出来ないようだ。
「先程サーファが言っていた通り、出来れば炎魔法が使えると良いという話なので、使えないなら使えないで構いません。使えるものを最大限に活用する事が重要なのですから」
「なるほど」
「後は、クララさんのペースで成長していけば良いのです。あまりお気になさらないように」
リリンはそう言いながら、クララの頭を撫でる。
「リリン殿とサーファ殿の言う通りです。さて、炎魔法が使えないという事で、本当であれば、もう少し先に教えるつもりだった身体強化を教えようと思います」
「身体強化……勇者パーティーで、皆が使っていました。確か体内の魔力を高速で循環させる事で、身体能力が上がるんですよね?」
「その通り。言葉にする分には簡単な事ですが、実際に使用するのは、かなり難しいものです。無詠唱ほどの難度ではありませんが、これも高等技術の一つでありますな。ですが、都合が良いことに、この身体強化のスペシャリストが、この場にいるのです」
クララは、魔力に関係することなので、再びリリンの方を見る。その視線を受けたリリンは首を横に振る。
「リリンさんじゃない? じゃあ、サーファさん?」
そう言ってサーファの方を見ると、サーファは自慢げに胸を張っていた。
「身体強化は、体内で魔力を循環させるから、消耗する魔力が少なくて、私でも使えるんだ」
「もしかして、獣族の身体能力って、この身体強化で成り立っているんですか?」
「ううん。普段の身体能力は素の力だよ。そこに上乗せすることが出来るの。演習では危険だから使わないけどね」
「へぇ~」
クララからキラキラした視線を受けて、サーファは少し照れていた。
「身体強化をすれば、誰かに捕まっても逃げ出せる可能性が高くなります。攻撃魔法と並行して覚えるのは、いい事でしょう」
ベルフェゴールの提案には、リリンも賛成だった。
「では、早速やってみますかな。まずは、自身の魔力を意識してもらえますかな?」
「えっと……はい」
クララは、自分の身体に流れる魔力を意識する。イメージ的には、血の流れを意識する感じだ。
「その循環を早めていく事で身体強化が出来ます。やってみてくだされ」
「う~ん……」
言われた通りにやろうとしているのだが、クララはうまく出来なかった。
「あれ……?」
魔力を意識する事は出来ているのだが、それを加速させることが出来ていなかった。こればかりは、ベルフェゴールも何もする事は出来ない。本人の感覚の問題だからだ。
だが、唯一どうにか出来るかもしれない人物がいた。
「クララさん、少し手を握ってもよろしいですか?」
クララの横に移動したリリンが、床に膝を付けて、クララに向かって手を出している。クララは、一切疑いもせず、リリンの手を握る。
「今から、クララの精気を吸います。今まで以上に吸うので、多少疲れてしまうかと思いますが、その感覚を覚えて下さい。良いですね?」
「はい」
クララの返事を受けたリリンは、クララから精気を吸い取っていく。クララは、自分の身体から何かが抜けていく感覚に襲われる。
「んっ……」
慣れない感覚に思わず声が漏れるが、その中で、ある事に気が付いた。抜けていく場所が、自分が意識していた魔力の流れとほぼ同じだったのだ。
リリンは、クララの様子を見て、精気を吸い出すのを止める。
「どうでしょう? 身体の中で何かが動いていく感覚が分かりましたか?」
「何となくですけど……」
「後は、自分の魔力を、その感覚と同じように動かすだけです。少し難しいですが、ゆっくりやっていきましょう。それと、感覚に集中するために目を閉じても良いですね」
「分かりました。頑張ってみます!」
クララは、リリンのアドバイス通りに目を閉じる。この時もリリンの手は握ったままだった。手を放すタイミングを逃してしまったので、そのままだったのだ。
そんな二人の傍に、サーファも近寄る。
「クララちゃんは、血流を意識していると思うけど、自分の心臓から意識するとやりやすいよ。流れが始まるのは心臓からだから」
「心臓……」
クララは、サーファの言う通り、心臓から魔力の流れを意識する。そして、その流れをどんどんと早めていく。
「うん。その調子。そのまま回転数を上げていって」
サーファの言葉に従って、魔力の流れをさらに上げていく。すると、段々と身体に力が漲ってくる感覚がし出した。
「そのくらいで良いよ。目を開けて」
クララは、言われたとおり目を開ける。
「どう? 力が漲る感じはある?」
「はい。内側からぽかぽかする感じもあります」
「今度はうまくいったようで何よりです」
ベルフェゴールは、拍手しながらそう言った。
「あっ……でも、もうしなくなっちゃいました……」
「なるほど、持続時間は、まだ短いようですな。初めての身体強化なので、仕方ないでしょう。これから持続時間を上げていけば良いです」
「分かりました」
「取りあえず、クララちゃんの身体強化がどのくらい強化されるのか試してみませんか?」
クララの身体強化がどのくらいの効果を持っているかが分からないので、その確認のために試しておく必要があると、サーファは思ったのだ。
「そうですね。クララさん、サーファに向かって思いっきりパンチしてください。サーファなら、受け止める事が出来ますので、気にせずにいってください」
「いつでも良いよ」
今からパンチを受けるというのに、サーファはニコニコと笑っていた。
「えっと……本当に良いんですか?」
「うん! 大丈夫!」
「じゃあ……」
クララは、また目を瞑って、身体強化をする。まだ慣れていないので、この状態でないと身体強化出来ないのだ。
「よし! 行きます!」
「うん!」
クララは、サーファに向かって拳を振う。殴り合いの喧嘩などしたことはないので、クララの殴り方は、腰の入っていないものだった。ペチンという音がした。
クララの拳を受けたサーファは、微動だにしていない。静寂が教室内を支配する。
「…………」
この静寂を破ったのは、リリンだった。
「そもそもの筋力不足と殴り方の問題ですね」
「うぅ……だって、人を殴った事なんてないですもん……」
クララは、頬を膨らませて、少し拗ねた。
「身体強化は、素の身体能力に上乗せするものですからな。今の聖女殿では、あまり効果を見込めないですな」
「うぐ……じゃあ、いつもの運動をしっかりしないといけないという事ですか?」
「そういう事ですね。少しはやる気が出て来ましたか?」
「う~ん……ほんの少しですけど」
クララがそう言うと、リリンは満足そうに頷いた。ほんの少しでもやる気が出てくれた事が嬉しいのだ。嫌々やらせるのは、ちょっとだけ心苦しかったというのもある。
「では、今日の講義は、これで終わりに致しましょう。今回教えた魔法の復習はわすれないように。そこまで危険なものではないので、部屋の中でも使う事が出来るでしょう」
「分かりました。今日もありがとうございました」
「いえいえ、では、また三日後に」
ベルフェゴールは一礼をしてから、教室を出て行った。
「私、魔法をうまく使う事が出来るでしょうか?」
ふとクララの心に不安が過ぎり、リリンの方を見る。
「そうですね。今日見た限りでは、大丈夫だと思います。ですが、ベルフェゴール殿の懸念通り、攻撃魔法が使えるかどうかが気になります」
「聖女の力って、そんなに影響力があるんでしょうか?」
「あると考える方が良いでしょう。それだけ、聖女というのは特別なものなのです」
「そうですか……」
クララは、少しだけ暗い顔をする。どこまで行っても聖女という肩書きが付いて回るからだ。クララにとって、聖女というのは、皆を助けるための力でもあり、疎ましいものでもあるのだ。
クララがそう考えている事を見抜いたリリンとサーファは、左右からクララを抱きしめる。それだけでクララの表情が緩む。二人のおかげで、安心感を得られたのだ。
この日も、講義の後に薬作りをして過ごした。
そして、クララは寝る前に、今日習った魔法を復習していた。一応、リリンとサーファが見守っていた。
「『闇を照らす光よ』」
クララの目の前に光球が生まれる。
「問題無く使えていますね。魔法を使っても、体調が悪くなるといった事はありませんか?」
「はい。どちらかと言うと、リリンさんに精気を吸われた方が疲れました」
「必要な事だったとはいえ、申し訳ないことをしました。美味しかったですよ」
リリンは、にこやかに笑いながらそう言った。心なしか艶やかさまである。
「本当に美味しいんですね」
「こればかりは、リリンさん達のようなサキュバスやインキュバスにしか分からない感覚ですよね」
「そうですね。人族や犬族には、そこまでのものがありませんからね」
「犬族にもないんですか?」
魔族についての知識が浅いクララは、サーファに確認を取る。
「う~ん……実を言うと、あるにはあるけど、個人差があるって感じかな。そんなに良いものってわけではないから、あまり言及しないでおくね。因みに、私はそこまで好きじゃない」
サーファがそう言うと、クララだけでなくリリンも驚いていた。
「それは、私も初耳ですね」
「これは、犬族の間だけでしか知られていないものですからね。それよりも人族には、本当に好きなものとかないの?」
サーファは、クララに抱きつきながら訊く。クララは、少し頭を悩ませる。
「……特にないと思います。そういう話を聞いた事はありませんし。強いて言えば……人?」
「? 食べるの?」
「食べませんよ!? いや、ある意味食べてるのかも……?」
クララがそう言うと、二人ともその意味を正しく理解して、何とも言えない顔になっていた。
「特に、教会の人達は、小さい子が好きみたいですよ」
「それはいらない情報かなぁ……」
「クララさんの周りを見てみると、本当の事にしか思えないのが悲しいところですね」
クララがどんな風に過ごしてきたかを知っているリリンは、若干呆れ気味にそう言った。
「クララちゃんって、本当に大変な人生を歩んでいるよね」
「そうですね。多分、他の人族よりも大変な思いをしてきたと思います。それにお母さん達も巻き込んでしまいましたし……でも、こっちに来て、幸せだって思うことが増えたんです。それはいい事ですよね?」
クララがそう言うと、二人は優しく微笑む。
「そうですね。人族が魔族領で幸せになるというのは、不思議な話ですが、とてもいい事だと思いますよ」
「うん! うん! 絶対いい事だよ!」
二人がそう言ってくれた。それだけでも、クララの中で幸せという気持ちが溢れてくる。クララは、改めて攫われて良かったなと感じた。
演習の手伝いは、頻度を落とすことになった。クララがいた方が安心出来るが、元々クララ無しで演習をしていたので、元の演習に戻るだけだ。そのため問題はない。
「さて、今回から本格的に魔法の講義を行っていきます。準備はよろしいですかな?」
「は、はい! よろしくお願いします!」
クララが元気よくそう言うと、ベルフェゴールは満足げに頷いた。
「前回、魔法を使うために必要な魔力についてお話しましたな」
「私達の身体を巡っているんですよね? その魔力を魔法に変換するって」
「その通り。では、どうやって魔力を魔法に変換するのか。これについては、聖女殿もご存知でしょう。詠唱を使います」
ここまでは、クララも知っている事なので、こくりと頷く。
「ですが、実は、詠唱無しでも魔法は使えます」
「え?」
これは初耳だったので、クララは思わず声を上げた。
「無詠唱魔法は、ご存知ないようですな。これは、魔法を使い慣れないと使う事は出来ません。天才的な才能があれば、その限りではありませんが、そんな才能に恵まれた者は、そうそういません」
「そういえば、エリノラさんも同じように無詠唱で魔法を使っていた気がします」
「魔王城勤務の医者は、最低条件として無詠唱魔法が使える者でないといけません。緊急事態に、詠唱している時間は無駄ですから」
ベルフェゴールの説明に、クララは納得する。確かに、一刻を争う事態の時に詠唱している時間は勿体ない。その間に、死んでしまう可能性もあるからだ。
「ラビオニアでは、皆さん、詠唱をしていました。そう考えると、無詠唱って難しい技術なのでは?」
「そうですな。高等技術ではあります。ですが、この中でも二人程使える人物がいますな」
その言葉を受けて、クララはリリンのことを見る。この中で、無詠唱魔法を使えるとなるとベルフェゴールの他には、リリンだけだと思ったからだ。その考えが合っているという風に、リリンは頷く。
「お二人とも優秀なんですね」
「そういう事ですな。では、話を魔法に戻しましょう。魔法は、詠唱を知っているだけでは使う事は出来ません。その魔法の効果を理解している事が重要です。回復魔法でしたら、それがどの規模の傷を癒やすのか。攻撃魔法でしたら、それがどの規模の威力を内包しているのか。これらを理解しなくては、魔法は使えません」
ベルフェゴールはそう説明をしながら、黒板に記述していく。クララは、話を聞きながらノートに書き写していった。その中で、ふと不思議に思った事があり、挙手した。
「どうぞ」
「えっと、それだと魔法の効果を理解していれば、詠唱は何でも良いって事になりませんか?」
「ええ、実際に、同じ魔法でも違う詠唱で発動する事は判明しています。魔法を使うものの中には、独自に作った詠唱を好んで使う者も多いです。ですが、基本的には、広く知られている詠唱を使いますな」
「なるほど」
クララは急いでメモを取っていく。
「さて、では、早速詠唱を教えていきますが、攻撃魔法はもう少し後になります」
「? じゃあ、何の魔法を教えて頂けるんですか?」
「汎用性のある魔法をいくつかですな。聖女殿の魔力が、魔法にどのような影響を及ぼすかが分かりませんので」
ベルフェゴールが危惧しているのは、聖女の魔力が魔法に悪影響を与える可能性があるという事だった。回復魔法は、聖女の特性とマッチしている部分があるので、特に影響が無くてもおかしくは無い。
「もしかしたら、攻撃魔法は使えない可能性があるという事でしょうか?」
「その可能性は、この事とは別にありますな。魔法の適正は、個人によって変わりますので。私が危惧したのは、攻撃魔法の強化あるいは無力化です」
「無力化?」
「ええ。聖女殿の力。その特徴は、私も聞き及んでおります。それが聖女の力だけではなく、攻撃魔法などにも影響すると考えれば、聖女殿の気持ち次第で威力のないものになる可能性があるのです」
ベルフェゴールの説明に、クララは眼をぱちくりとさせる。それは、自分では考えもしなかったことを、ごく当たり前のようにベルフェゴールが考えていたからだ。元々ただの変態ではないと思っていたのだが、この事で改めて優秀な人なのだと再認識された。
「まずは、光球を生み出す魔法です。これは、先程聖女殿がお話なさったエリノラ殿も使っていたものですな。『闇を照らす光よ』これが、詠唱です」
クララは、詠唱を口にする前に、しっかりとノートに書き写しておく。
「えっと……効果は、光球を生み出す。『闇を照らす光よ』」
クララが詠唱すると、何も起こらなかった。
「?」
「もう少し具体的なイメージが必要ですな」
「具体的な?」
「例えば、明るさをどのくらいにするかやどの範囲を照らすかですな。ただぼんやりと思い浮かべるよりも、完全に決めておいた方が発動しやすくなります」
クララが思い浮かべていたのは、エリノラが使っていた光球だった。そのため、イメージが朧気になっていたのだ。ベルフェゴールは、それを見抜いていた。だからこそ、より具体的にイメージするように言ったのだ。
クララは、エリノラの使っていた光球のイメージから、より具体的にイメージを変えていく。光から連想されるのは、この部屋も照らしている灯りだ。
「よし! 『闇を照らす光よ』!」
ベルフェゴールのアドバイス通りに、具体的なイメージをした結果、ようやく光球を生み出す事が出来た。
「出来ました!」
ようやく使えたので、クララは満面の笑みになっていた。
「おめでとうございます」
ベルフェゴールは、そんなクララを見て、鼻血を流していた。ちゃんと使えて喜んでいるクララは、あまり見ていないので反応していないが、後ろで見守っていたリリンとサーファは、ドン引きである。
ベルフェゴールは、クララに気付かれる前に鼻血を拭き取り、黒板に次の魔法の詠唱を書いていく。
「お喜びのところ申し訳ないですが、今回覚えて頂く魔法は、まだまだあります。どんどんやっていきますが、よろしいですかな?」
「あ、はい!」
ここから、クララは何個もの魔法の詠唱を学んでいく。その結果、クララが使える魔法は、光魔法、水魔法、風魔法、無属性魔法、そして普段から使っている回復魔法だという事が分かった。
これが判明すると、クララ以外の三人が少し難しい顔をしていた。
「あの……どうかしましたか?」
気になったクララがそう質問すると、ベルフェゴールやリリンでは無く、サーファが答えてくれた。
「今回の講義は、クララちゃんの安全の確保を目的としているのは、分かっているよね?」
「はい。護身のためですよね」
「うん。それで、護身ためには攻撃系統の魔法を使えるようになってもらうんだけど、その魔法の中で炎魔法が一番攻撃力が高いし、使い方によっては、相手を一切近づけさせないみたいな立ち回りも出来るんだ。自分の周りを炎で囲ったりね。だから、出来れば、炎魔法が使えると良かったんだけどねって事」
炎魔法が威力などに優れているという事は、魔法を主として戦わないサーファでさえも知っているような魔法の常識だ。リリン達は、欲を言えば、クララに炎魔法を覚えて欲しかったのだ。
「そういう事ですか。どうにかして、炎魔法を使えるようにとかなれないんですか?」
「無理ですね。魔法の適正を変える事は出来ません。過去に研究されましたが、出された結果がそれです」
クララは、自分に必要なものであるのなら、どうにかして手に入れる事は出来ないかと思ったのだが、すぐにリリンが否定した。そこまで都合の良いことは出来ないようだ。
「先程サーファが言っていた通り、出来れば炎魔法が使えると良いという話なので、使えないなら使えないで構いません。使えるものを最大限に活用する事が重要なのですから」
「なるほど」
「後は、クララさんのペースで成長していけば良いのです。あまりお気になさらないように」
リリンはそう言いながら、クララの頭を撫でる。
「リリン殿とサーファ殿の言う通りです。さて、炎魔法が使えないという事で、本当であれば、もう少し先に教えるつもりだった身体強化を教えようと思います」
「身体強化……勇者パーティーで、皆が使っていました。確か体内の魔力を高速で循環させる事で、身体能力が上がるんですよね?」
「その通り。言葉にする分には簡単な事ですが、実際に使用するのは、かなり難しいものです。無詠唱ほどの難度ではありませんが、これも高等技術の一つでありますな。ですが、都合が良いことに、この身体強化のスペシャリストが、この場にいるのです」
クララは、魔力に関係することなので、再びリリンの方を見る。その視線を受けたリリンは首を横に振る。
「リリンさんじゃない? じゃあ、サーファさん?」
そう言ってサーファの方を見ると、サーファは自慢げに胸を張っていた。
「身体強化は、体内で魔力を循環させるから、消耗する魔力が少なくて、私でも使えるんだ」
「もしかして、獣族の身体能力って、この身体強化で成り立っているんですか?」
「ううん。普段の身体能力は素の力だよ。そこに上乗せすることが出来るの。演習では危険だから使わないけどね」
「へぇ~」
クララからキラキラした視線を受けて、サーファは少し照れていた。
「身体強化をすれば、誰かに捕まっても逃げ出せる可能性が高くなります。攻撃魔法と並行して覚えるのは、いい事でしょう」
ベルフェゴールの提案には、リリンも賛成だった。
「では、早速やってみますかな。まずは、自身の魔力を意識してもらえますかな?」
「えっと……はい」
クララは、自分の身体に流れる魔力を意識する。イメージ的には、血の流れを意識する感じだ。
「その循環を早めていく事で身体強化が出来ます。やってみてくだされ」
「う~ん……」
言われた通りにやろうとしているのだが、クララはうまく出来なかった。
「あれ……?」
魔力を意識する事は出来ているのだが、それを加速させることが出来ていなかった。こればかりは、ベルフェゴールも何もする事は出来ない。本人の感覚の問題だからだ。
だが、唯一どうにか出来るかもしれない人物がいた。
「クララさん、少し手を握ってもよろしいですか?」
クララの横に移動したリリンが、床に膝を付けて、クララに向かって手を出している。クララは、一切疑いもせず、リリンの手を握る。
「今から、クララの精気を吸います。今まで以上に吸うので、多少疲れてしまうかと思いますが、その感覚を覚えて下さい。良いですね?」
「はい」
クララの返事を受けたリリンは、クララから精気を吸い取っていく。クララは、自分の身体から何かが抜けていく感覚に襲われる。
「んっ……」
慣れない感覚に思わず声が漏れるが、その中で、ある事に気が付いた。抜けていく場所が、自分が意識していた魔力の流れとほぼ同じだったのだ。
リリンは、クララの様子を見て、精気を吸い出すのを止める。
「どうでしょう? 身体の中で何かが動いていく感覚が分かりましたか?」
「何となくですけど……」
「後は、自分の魔力を、その感覚と同じように動かすだけです。少し難しいですが、ゆっくりやっていきましょう。それと、感覚に集中するために目を閉じても良いですね」
「分かりました。頑張ってみます!」
クララは、リリンのアドバイス通りに目を閉じる。この時もリリンの手は握ったままだった。手を放すタイミングを逃してしまったので、そのままだったのだ。
そんな二人の傍に、サーファも近寄る。
「クララちゃんは、血流を意識していると思うけど、自分の心臓から意識するとやりやすいよ。流れが始まるのは心臓からだから」
「心臓……」
クララは、サーファの言う通り、心臓から魔力の流れを意識する。そして、その流れをどんどんと早めていく。
「うん。その調子。そのまま回転数を上げていって」
サーファの言葉に従って、魔力の流れをさらに上げていく。すると、段々と身体に力が漲ってくる感覚がし出した。
「そのくらいで良いよ。目を開けて」
クララは、言われたとおり目を開ける。
「どう? 力が漲る感じはある?」
「はい。内側からぽかぽかする感じもあります」
「今度はうまくいったようで何よりです」
ベルフェゴールは、拍手しながらそう言った。
「あっ……でも、もうしなくなっちゃいました……」
「なるほど、持続時間は、まだ短いようですな。初めての身体強化なので、仕方ないでしょう。これから持続時間を上げていけば良いです」
「分かりました」
「取りあえず、クララちゃんの身体強化がどのくらい強化されるのか試してみませんか?」
クララの身体強化がどのくらいの効果を持っているかが分からないので、その確認のために試しておく必要があると、サーファは思ったのだ。
「そうですね。クララさん、サーファに向かって思いっきりパンチしてください。サーファなら、受け止める事が出来ますので、気にせずにいってください」
「いつでも良いよ」
今からパンチを受けるというのに、サーファはニコニコと笑っていた。
「えっと……本当に良いんですか?」
「うん! 大丈夫!」
「じゃあ……」
クララは、また目を瞑って、身体強化をする。まだ慣れていないので、この状態でないと身体強化出来ないのだ。
「よし! 行きます!」
「うん!」
クララは、サーファに向かって拳を振う。殴り合いの喧嘩などしたことはないので、クララの殴り方は、腰の入っていないものだった。ペチンという音がした。
クララの拳を受けたサーファは、微動だにしていない。静寂が教室内を支配する。
「…………」
この静寂を破ったのは、リリンだった。
「そもそもの筋力不足と殴り方の問題ですね」
「うぅ……だって、人を殴った事なんてないですもん……」
クララは、頬を膨らませて、少し拗ねた。
「身体強化は、素の身体能力に上乗せするものですからな。今の聖女殿では、あまり効果を見込めないですな」
「うぐ……じゃあ、いつもの運動をしっかりしないといけないという事ですか?」
「そういう事ですね。少しはやる気が出て来ましたか?」
「う~ん……ほんの少しですけど」
クララがそう言うと、リリンは満足そうに頷いた。ほんの少しでもやる気が出てくれた事が嬉しいのだ。嫌々やらせるのは、ちょっとだけ心苦しかったというのもある。
「では、今日の講義は、これで終わりに致しましょう。今回教えた魔法の復習はわすれないように。そこまで危険なものではないので、部屋の中でも使う事が出来るでしょう」
「分かりました。今日もありがとうございました」
「いえいえ、では、また三日後に」
ベルフェゴールは一礼をしてから、教室を出て行った。
「私、魔法をうまく使う事が出来るでしょうか?」
ふとクララの心に不安が過ぎり、リリンの方を見る。
「そうですね。今日見た限りでは、大丈夫だと思います。ですが、ベルフェゴール殿の懸念通り、攻撃魔法が使えるかどうかが気になります」
「聖女の力って、そんなに影響力があるんでしょうか?」
「あると考える方が良いでしょう。それだけ、聖女というのは特別なものなのです」
「そうですか……」
クララは、少しだけ暗い顔をする。どこまで行っても聖女という肩書きが付いて回るからだ。クララにとって、聖女というのは、皆を助けるための力でもあり、疎ましいものでもあるのだ。
クララがそう考えている事を見抜いたリリンとサーファは、左右からクララを抱きしめる。それだけでクララの表情が緩む。二人のおかげで、安心感を得られたのだ。
この日も、講義の後に薬作りをして過ごした。
そして、クララは寝る前に、今日習った魔法を復習していた。一応、リリンとサーファが見守っていた。
「『闇を照らす光よ』」
クララの目の前に光球が生まれる。
「問題無く使えていますね。魔法を使っても、体調が悪くなるといった事はありませんか?」
「はい。どちらかと言うと、リリンさんに精気を吸われた方が疲れました」
「必要な事だったとはいえ、申し訳ないことをしました。美味しかったですよ」
リリンは、にこやかに笑いながらそう言った。心なしか艶やかさまである。
「本当に美味しいんですね」
「こればかりは、リリンさん達のようなサキュバスやインキュバスにしか分からない感覚ですよね」
「そうですね。人族や犬族には、そこまでのものがありませんからね」
「犬族にもないんですか?」
魔族についての知識が浅いクララは、サーファに確認を取る。
「う~ん……実を言うと、あるにはあるけど、個人差があるって感じかな。そんなに良いものってわけではないから、あまり言及しないでおくね。因みに、私はそこまで好きじゃない」
サーファがそう言うと、クララだけでなくリリンも驚いていた。
「それは、私も初耳ですね」
「これは、犬族の間だけでしか知られていないものですからね。それよりも人族には、本当に好きなものとかないの?」
サーファは、クララに抱きつきながら訊く。クララは、少し頭を悩ませる。
「……特にないと思います。そういう話を聞いた事はありませんし。強いて言えば……人?」
「? 食べるの?」
「食べませんよ!? いや、ある意味食べてるのかも……?」
クララがそう言うと、二人ともその意味を正しく理解して、何とも言えない顔になっていた。
「特に、教会の人達は、小さい子が好きみたいですよ」
「それはいらない情報かなぁ……」
「クララさんの周りを見てみると、本当の事にしか思えないのが悲しいところですね」
クララがどんな風に過ごしてきたかを知っているリリンは、若干呆れ気味にそう言った。
「クララちゃんって、本当に大変な人生を歩んでいるよね」
「そうですね。多分、他の人族よりも大変な思いをしてきたと思います。それにお母さん達も巻き込んでしまいましたし……でも、こっちに来て、幸せだって思うことが増えたんです。それはいい事ですよね?」
クララがそう言うと、二人は優しく微笑む。
「そうですね。人族が魔族領で幸せになるというのは、不思議な話ですが、とてもいい事だと思いますよ」
「うん! うん! 絶対いい事だよ!」
二人がそう言ってくれた。それだけでも、クララの中で幸せという気持ちが溢れてくる。クララは、改めて攫われて良かったなと感じた。
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