訳あり師弟が媚薬を100本作る方法【完結済】

ゆきのりん

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番外04.媚薬:予備残り1本(家庭用)

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☆師匠と弟子がそれぞれ別日に媚薬を飲みます。弟子編。
☆番外03話の続きです。



 昨日煮込んで瓶に詰めずにとっておいた、鹿もどきの肉と野菜で朝食を済ませた。
 食器を片づけてくれたシューは、生の香草で淹れた消化を助ける清々しいお茶を飲む私を残して席を外し、しばらくすると戻ってきた。

「師匠、昨日言いそびれてしまったんですが」
「うん、なあに」
「隣町からの荷馬車に話をつけてあるそうなので、街道で乗せてもらって媚薬を納めてきます」
「あ、そうなの。運ぶの手伝うね」
「師匠はどうか休んでいてください」

 シューは三箱を軽々と抱えている。
 先に立って外に出る扉を開けると、

「ありがとうございます、行ってきます」

 そう言って身を屈め、つむじ辺りに軽く口づけられた。

「無理はなさらないでくださいね」
「う…うん、気をつけて行ってらっしゃい」
「あ、念のため鑑定しましたが、効果も品質も問題ありませんでしたので。では」

 爽やかに去るシューの背を見送り、鑑定してもらえばよかったのか…と天を仰いだ。


 あいたた…と時折独り言をつぶやきながら念入りに調薬室の掃除をしていると、いつの間にか日が傾いていて、シューが帰ってきた。

「お帰りなさい、シュー。お疲れさま」
「ただいま戻りました…遅くなってすみません」
「うん、寂しかった…」
「し、師匠…っ」 
「お茶淹れるね」
「あ、はい、ありがとうございます」
 

 シューが街で買ってきてくれた燻製の腸詰とパンに、畑で採れた野菜を焼いて塩を振ったものを添えて夕食にした。去年の秋に作った果実の蜜漬けの瓶も開けて。
 この屋敷には煙突があるし、燻製肉が家で作れないかと時々考えるが、やはり専門家が作った方が美味しい。
 いつかはパンの酵母も起こしてみたいと思いつつ、早幾年…


「媚薬ですが、娼妓ではなく客が使うって知っていましたか?」
「あ、そうだったの」
「そうだったんですよ。街と工場地域との間くらいに一見普通の屋敷に見える娼館があるんですが」
「うんうん」
「異世界から伝わったいかがわしい遊戯を専門にしているそうですよ」
「いかがわしいゆうぎ」
「特殊な訓練を受けた娼妓が、客を縛り上げたり言葉や道具で責めたりするそうです」
「…???」
「媚薬を使うと……盛り上がるそうですよ」
「そ…うなんだ?」

 私にはよくわからない世界が、街にはあった。



☆・☆・☆・☆・☆



 数日後の夜。
 とこに並んで横になりおやすみを言う前に、シューに引き寄せられ抱きしめられた。

「…三日経ちましたが、体調はいかがですか?」
「ん? 三日?」
「三日は身体が辛いんですよね…?」
「あ…ああ~」

 いつかどこかで誰かに聞いてシューにも話した、『初夜の後三日はまっすぐ歩けない』という説。
 実際私はそこまでではなかったけれど、あの後求められることがなかったのはそんな理由があったのか。

 シューの手のひらが身体を這い、腰を押しつけられる。

「もしかして、我慢してた…?」
「していました」
「ふふ、心配してくれてありがとうね。もうどこも痛くないし、またシューに触れられたいな」
「…師匠」

 横向きで抱き合っているので、口づけもし辛い。
 そう考えていると、私だけ仰向けにされて、見下ろすシューに唇を吸われた。
 啄まれるような動きがくすぐったくて、思わず笑ってしまう。

「…ふふっ」

 唇が離れて瞼を開けると、シューが魔法で灯りを灯していた。
 安心するような、柔らかい光。

「……師匠、してみたいことはありますか…?」

 指先で頬を撫でるシューからそんなことを問われた。
 してみたいこと…

「……街で燻製肉の作り方を教わりたい…とか?」
「ふっ」

 シューは思わずといった感じで小さく笑って、可愛らしく眉を寄せた。
 あ、これは寝台で見つめ合っている今選ぶものではなかったか。
 視線を彷徨わせると、自分の手の甲が目に入る。無意識のうちにシューの胸元を撫でていた。あ、乳首…

「…じゃなくて、えっと――」
「はい」

 これといった答えを見つけられない。困った。 
 100と何10年分の記憶や知識や実績の中に、性的なものが少なすぎる。

 私のことを不埒な目で見たのはシューだけ。変わった子だ…

 ふと、夕食の席で話していたことを思い出した。
 意味ありげに言っていたあれは、シューがしてみたいことなのでは?
 
「私じゃなくて、シューがしたいこと、しよ…?」
「…えっ?」
「ふふ、私に任せて」

 とは言ったものの、何をしたら…
 え~~確か、縛り上げて言葉と道具で責めるんだった。
 え…っ……ひど…可哀相………シューが一体何をしたっていうの…
 …そうだ、媚薬! 媚薬を使うんだった!

 私は寝台から降りてシューの半身を起こさせ、掛布の上に重ねていた薄い織物で腕を封じるように身体をぐるぐると巻いた。

「え、な、え、なんですか?」
「ちょっと待っててね」

 私はよくシューに「ちょっと待ってて」と言うような気がする。
 調薬の部屋の棚から媚薬を掴み戻ると、シューはそのままの体勢で目を丸くしていた。

「はい、飲んで」
「え、これ…いいんですか?」
「飲むなら今だよ、さあどうぞ」

 小瓶を口元に運び、少しずつ媚薬を飲んでもらった。
 蓋を閉め、寝台の横の椅子の上に置く。

「……」
「……」

 しばらく見つめ合う。
 不意にシューが目を伏せた。

「…ど…どう…?」
「…そうですね…鼓動が少し早いです…」
「ふんふん…えーと、『いかがわしい遊戯』でいいんだよね?」
「…え?」
「私にはわからないから教えてね、シューを虐めるのは気が進まないけど…」
「…………………い…いえ、それ以外で」

 シューは『いかがわしい遊戯』とやらで責められたいわけではないようだった。

「…街で習おうなんて思わないでくださいね?」
「あ、うん、シューが興味が無いなら」
「興味は…師匠なら…そうですね、無いです、はい」
「早とちりしてごめんね……あらあら」

 ふと股間に目をやると、既に夜衣を押し上げている。

「もうこんなに…?」
「…っ」

 シューの上体を後ろに倒させて仰向けに寝る体勢にし、下着を剝いだ。
 夜衣をめくると、腹につく程に勃起している陰茎が現れる。
 太腿の上に乗り指を伸ばすと、ぴくりと震えた。

「…師匠が、い……ふ、触れてくれるかもしれないと、期待して…」
「ふふ、それだけでこんなになっちゃうの…?」
「う、はい、そうです…っ」
 
 根元から先端に向かって擦りあげたり、両手で握って扱いたり、太い筋やくびれを弄っていると、鈴口から雫が零れた。
 シューの表情を伺うのも忘れない。
 上気している顔と表情が可愛いのに艶っぽくて、もっと乱したくなってしまう。
 声を出すのを我慢しているように見える。とてもいい。

 気分が高揚するのを感じる。私は媚薬を飲んでいないのに。
 シューが可愛いからね、仕方ない。
 
「舐めてみてもいい?」
「…えっ!?」

 睾丸は急所なのでごく弱い力で弄ぶだけにしながら、一応聞いてみた。
 シューが以前陰核を舐めてくれた時、気持ちよかったから。
 確か陰核は陰茎と同じ…だったはず。

「う、い、いや、今じゃなくて、また…」
「そう、じゃあまた今度させてね」

 してみたいことを見つけたけれど、シューは今そういう気分ではなかったらしい。

 私は身体を起こし、夜衣を脱いだ。
 下着はつけないので、シューに跨ったまますぐに全裸になる。

 シューに覆いかぶさり、目が見えるように前髪をよけ、頬を両の手のひらで捕まえた。
 欲情しているのを隠さないシューを近くで眺めて、荒い息を吐く唇を舐めた。
 
「ふふっ…手荒なことはしたくないけど……こういうの?は好きみたい」
「お、俺も嫌ではないんですが…」
「うん?」
「師匠が…煽情的すぎます」
「せんじょうてき…」

 そんな風に感じるのかと衝撃を受けていると、シューは上半身をもぞもぞと動かした。
 
「あの、これ、外してもいいですか?」

 責め苦を与えるのはやめたのだし、すぐに開放するべきだったのに。

「あっうんごめんね、えっ」

 シューが腹筋を使って上体を起こしたので、折り込んだ端を抜くために後ろに回ろうとしたら、シューは私が巻いた薄布を難なくほどいていた。
 勢いよく、夜衣も脱ぎ捨てる。

「え、今、どうやって?」
「縄抜けの要領で…」
「もう一度やって見せ、わあ」
「もうずっと限界です、いれたいです」

 押し倒されて、欲情を隠さないシューに言われて、背筋がざわめいた。

「んっ…ん、」
 
 乳首を吸われて舐められて、甘噛みされて――下半身の疼きにもしかして、と膣口に指を当ててみると、溢れるほどに濡れていた。 

「ねえ…きて、シュー…」
 
 シューの陰茎に指を添えて誘うと、上半身を起こして、迷いなく挿入された。

「…っ、い、痛くはないですか、動いてもいいですか」
「ふふ、大丈夫、シューの好きにして…」
「…いいんで…いいんですね?」

 腕を封じて媚薬を飲ませておいて、おあずけをしていたようなものだ。
 …虐めと言っていいような仕打ちなのでは。

「あっでも、私にできることがあったら言ってね」
「…俺のことだけ考えてください、あっあと…好きって言って欲しいです」
「うん、わかった…あっ」
「それに、気持ちよかったら教えて欲しいです、あの、」
「うん…ん、」
「許されてこうして身体を繋げられるだけで幸運なのに言葉までいただきたいなんて我儘ですみませんでも欲しいんです」
「んん? …うん、あ、あ…っ」


 閨事中は基本的にはシューのことしか考えられないし、好きは勝手に口をついてしまう。
 どこを触られてもたいてい気持ちいいから、最中ずっと言うことになるのだろうか。

「基本的には、って何ですか…」
「竈の火、とか…」
「俺が確認してます、ご心配なく」
「朝食は何にしようかな、とか…」
「甘瓜だけでも構いません」
「そういうわけにも…あっ」
「……ここですか?」
「あ、うん、そう…そこっ、なに? 変なの、だけど気持ちいい…っ」
「…っ、俺も気持ちいい、です」
「…イく? 一緒にイこ、シュー♡」
「は、い…っ」
「好き、大好き、シュー♡」
「お…俺も好きです大好きです、愛しています…っ!」



 魔神に与えられた異世界の秘方、全能薬。
 …と抱き合わせだったらしい?異国の媚薬。『感度も気分も上がり、ひたすら多幸感が増し、とにかく盛り上がる』というもの。
 その後、媚薬を使わずに何度も性交に及んだけれど、使っても使わなくても気分は上がるし、回数を重ねるうちに気持ちよさも増すし、よくわからないままに盛り上がるし、いつでも幸せだと思った。

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