上 下
7 / 10

7.破談の暗喩

しおりを挟む
 本日は、フラジィナ様との面談。
 到着は昨日だが、馬車の不調があり到着が深夜になってしまったため、夜勤の使用人が出迎えたのだ。


 珍しい淡い紫色の髪は複雑に編み込まれ、若葉のような色の瞳の家庭的な雰囲気の可愛らしいお嬢様。

 花の香りをつけた紅茶と色とりどりの茶菓子と共に、優雅な時間が流れる。

「私の故郷には、日没とともに眠り、日出と共に目覚めるまじないが伝わるのです」
「まあ、初めて聞きますわ」
「私、刺繍が趣味で」

フラジィナ様が指し示した襟には、繊細な刺繍が施されている。

「ほぅ…美しいですわ。よく見せていただいても?」
「ええ、隣にどうぞ。それで夜も寝ずに刺していたものですから、両親にそのまじないをかけられてしまいましたの」
「まあなんて細かい…それでそんなに肌艶がよろしいのですか?」

フラジィナ様の掛ける長椅子に移動し、すぐ近くで見る顔は血色がよく健康的だ。

「ふふっ、そうかもしれませんわね。ですから、私が眠っている間に済ませて欲しいのです」
「………えっ?」

 ………なんですって?

「あの、それはつまり…?」
「どう扱っていただいても構いませんので」
「い、いえ、そんなわけには…そ、そのまじないは解けませんの?」
「解けない者も稀にいるそうですわ」

 焦る私に、フラジィナ様は何でもない事のように清々しい笑顔で言う。

「起きている間は刺繍に集中したいのです。姉の婚礼衣装を仕立てたくて」
「まあ、それは素敵ですわね…!」
「三人の姉の婚約が同時に決まりまして、式は上の姉から順に」
「おめでとうございます…三着ですか?」
「ありがとうございます…三着ですわ」

 気の遠くなるような手仕事ではないだろうか。
 私は姉思いのフラジィナ様に敬服し、幸せな姉妹に思いを馳せた。


……………………

 
 ―――若様と私は、フラジィナ様が滞在する離れに赴きました。
 
 合鍵で扉を開け奥に進み、寝室へ向かいます。
 天蓋の向こうでは、フラジィナ様が清らかに寝息を立てていました。

 優美な刺繍をあしらったを夜着を纏うフラジィナ様は、昼間とは違う色香を漂わせています。

 腰紐を解くと夜着の前面が左右に開かれ、フラジィナ様の素肌が露わになりました。
 瑞々しい肉感的な肢体がランプの灯りに照らされ影を作ります。

 私は寝台横に備え置いてある椅子に腰掛け、見守ることにしました、

 若様はフラジィナ様の横に腰を下ろし、そっと愛撫を始めました。
 二つの山が柔らかそうに形を変えます。

「…ん…ふ…っ」

 ゆるく頭を振り小さく声を上げ、艶めかしく腰を揺らめかせるフラジィナ様。

 若様がフラジィナ様の下半身に手を伸ばしました。私は(若様、そっとですよ)念を送ります。

「…ぁ、あっ…んんっ、んっ、んんっ」

 フラジィナ様の反応が変わりました。息も少し荒いです。

「んんぅ…」

 フラジィナ様はむずがるように寝返りを打ちうつ伏せになると、柔らかい枕をたぐり寄せて顔をうずめました。

 ちらりと私を見やった若様に、私は力強く頷きます。

(ええ、私はここで見守っております。どうぞご自分でお考えください!)

 苦笑したような若様は、敷き小股で―――

……………………
…………
……
…想像してみたが、さすがに寝込みをというのは…



―――お茶会はお開きとなりました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

【R18】絶倫にイかされ逝きました

桜 ちひろ
恋愛
性欲と金銭的に満たされるからという理由で風俗店で働いていた。 いつもと変わらず仕事をこなすだけ。と思っていたが 巨根、絶倫、執着攻め気味なお客さんとのプレイに夢中になり、ぐずぐずにされてしまう。 隣の部屋にいるキャストにも聞こえるくらい喘ぎ、仕事を忘れてイきまくる。 1日貸切でプレイしたのにも関わらず、勤務外にも続きを求めてアフターまでセックスしまくるお話です。 巨根、絶倫、連続絶頂、潮吹き、カーセックス、中出しあり。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷 ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。 ◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡

【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。  だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。  二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?   ※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

憧れだった騎士団長に特別な特訓を受ける女騎士ちゃんのお話

下菊みこと
恋愛
珍しく一切病んでないむっつりヒーロー。 流されるアホの子ヒロイン。 書きたいところだけ書いたSS。 ムーンライトノベルズ 様でも投稿しています。

処理中です...