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6.三名の令嬢

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 ☆すけべではありません。とても短いです。



 ティレッド様は、艶やかな赤色の巻き髪と深い藍色の瞳の、溌溂とした印象の可愛らしいご令嬢。

 馬車を出迎え、離れに案内し、日当たりのいい居間で甘い菓子と茶を勧めた。
 面談などは明日以降、まずは労いと世間話など。

「美味しい。貴女お茶を淹れるのが上手なのね」
「ふふ…お褒めいただき恐縮です」

 和やかに時間は流れる。


「実はわたくし、予習はしているのよ」
「まあ! 詳しくお伺いしても?」

 得意げな様子は微笑ましくとても可愛らしい。
 未知の情報があれば、是非ともご教示願いたい。


「恋愛小説よ、たくさん読んだわ」

 恋愛小説…
 私は全くと言っていい程詳しくない分野だ。正直に言うと、

「こちらは有名な作家の代表作、こちらはわたくしのお気に入り、こちらはお友達に好評だったわ、こちらは挿絵が素敵よ。こちらは―――」

 ティレッド様は大きな鞄から何冊もの本を取り出し、卓に並べていく。

「気になる本はあるかしら?」
「ありがとうございます。では…」

 気に入りだという1冊を選び、ティレッド様も小さな鞄から取り出した本を手に取り、静かに読書会が始まった。


 なるほど、男女の恋愛が情感豊かに描かれている。
 
「………」

 この作品には濡れ場は無いのか…と少々残念に思いながら読み終えた本を閉じると、

「早いのね? どうだったかしら?」

 手元の本に栞を挟みながら少し前のめりになったティレッド様に尋ねられた。


「主人公の公女は淑女を体現したようでいながら胸の内は情熱的で、対比が絶妙でしたわ。季節の移ろいの表現が素晴らしく、運命の騎士様と結ばれた場面では鮮やかな薔薇園の様子まで目に浮かぶようでした。彼女に想いを寄せる王太子も魅力的で、彼を応援する読者も多いように感じましたわ。それに―――」

 しばらく拙い感想を述べた後、

「ところで、よろしければこちらをお読みいただけますか?」
「まあ…変わった綴じ方ね?」
「異国の製本法ですわ。自作ですの」
「貴女が作った本なの? すごいわ」

 差し出した奥様向けの指南書をティレッド様は興味深そうに受け取ってくれた。

「…めしべとおしべ?」

 (序章ですね。神話などにも触れています)

「ねやごと…?………?…??……!?」

 ティレッド様は赤くなったり青くなったりと顔色を変えていく。
 途中からは薄目でページをめくり、音もなく指南書を閉じた。

「…わたくし、いったん出直すわ」
「お待ちしております」


 (ああ…ティレッド様には夢見る少女でいてほしかったような気持ちです…)



 先程迎えた洒落た馬車を今度は見送り…


―――お茶会はお開きとなりました。



==========


「あ…あの……私のことを……生娘、だと思って…抱いてくださいませんか…?」
「………は…?」
「どうか…お願いいたします…」
「わ、わかった」



 その夜は、なんともおかしな盛り上がり方をした気がする―――


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