上 下
4 / 10

4.甘言に蜜語

しおりを挟む
 腰紐を繕っていて、ふと思った。
 紐を使った体位があったが、若様は試してみたいだろうか。
 流鏑馬は、私が乗り気になれないが…
 首引き恋慕は、忍び居茶臼に変化を持たせたいときにいいかもしれない。
 私だけを拘束する理非知らずなら、危険は伴わないだろう。若様は好まない気がするが、もしもそういった性癖が眠っていたとして、目覚めさせないままでいた方がいいのか、起こしたうえで対処した方がいいのか…悩ましい。



 それはさておき、今夜は―――



「閨では相手を褒めてください」

 普段から相手を褒めることは欠かせないと思うが、今はまた別の話として。

「ああ、……わかった、努力しよう」
「相手が私で甚だ恐縮ですが…練習ですからどうか気負わずに」

 指南書に書いておいたのを思い出したのだろう。
 若様があからさまな世辞が不得手なのは承知しているので、相手の良いところを見つけて率直に褒めて欲しいと思っている。
 
 お互い夜着のまま、寝台の上で膝がつく距離で向かい合って腰を下ろしている。
 ランプの柔らかい灯りに照らされる若様は、神妙な顔つきだ。

「…可愛い」
「はい、『可愛い』はいいですね、間違いないです」
「可愛い、綺麗だ」
「あら……光栄です…ふふ」

 定番の言葉だというのに、真剣な眼差しに勘違いしてしまいそうだ。勝手に口元が綻んでしまうのがわかる。

「白銀の髪も、宝石のような瞳も美しい」

 猫のような配色だと揶揄われることもあったが、悪くないように思えてくる。

「ふふ、色を褒めるのもいいですね…嬉しいです」

 若様は私の髪をすくって口づける。女性ならときめくこと間違いなしの仕草だ。
 うんうんと目線で頷く私から目を反らし、若様の動きが止まった。

「………」
「…どうかなさいました?」
「いや…続けても構わないか?」
「はい、どうぞ心のままに」

「やわらかい…」

 夜着を脱いで寝台に横たわる私を見下ろしながら、若様の大きな熱い掌が身体の上を滑ると、身体の奥底で火が点る。

「ずっと触れていたい…」
「ふふ…っ、あ、ん…っ」
「本当に…どこも綺麗だ」

(可愛いと綺麗は何度言われても良いものですね…指南書に書き足しておきましょう)

「………」

 再び、若様の動きが止まった。

「……何か言わないといけないと思うと、集中できない…すまない」

 若様の頬はわずかに染まっている。

「いえ、こちらこそ…気の利いた言葉ではなく、見て思ったことや触って感じたことでいいのですよ」


 両脚の間に顔を埋めた若様に、そこにある最も敏感な個所を先程から的確に舌で刺激され続け、私はひっきりなしに声を上げる。

「あ、あ、んッ、んんっ♡」
「…すごいな、溢れてきた」
「ゃ、あっ、そんな、ぁ…っ」

 嫌でも駄目でもなく、私は性的に興奮しているのに、制止するような言葉を吐いてしまいそうになる。意識しないで出てしまう場合もあるとは指南書にも書いたが…不思議だ。

「は、あ、そこっもっと強く…んんっ、それ、気持ちいい…です…っ♡」

 豆粒ほどの大きさもない器官をぬめった舌で刺激されて、こんなに…体験してみて初めてわかったことがまた増えた。
 体が熱い。目を閉じて、駆け上がっていくような快感に集中した。

「あ、あっ、あ、あ、あっあっ、~~~っ♡」

 初めての絶頂の余韻に脱力していると、若様は体を起こし親指で口元を拭いながら私を見下ろしていた。

「綺麗だ…愛しい…」

 半分閉じた瞼やこめかみを撫でられ、ぼんやりとしていた意識が浮上した。



 四つ這いになった私の後ろから、若様のものが入ってくる。ゆっくりと押し広げるように、壁をなぞるように。足の指にきゅうっと力が入る。

「あ、おっきい、おおきいですっ♡」
「絡みついて…締め付けてくる…」
「あ、もっと、感じてください…っ♡」

 腕はすぐに疲れてしまい、私は肘をついている。腰を高く上げ、抜けてしまわないよう、一層奥に当たるよう、若様の動きに合わせる。
 水音が上がっていることに気づき、全部見られているのだと思うと、頭が痺れるような心地になった。

「っ…すごく締めつけてくる…」
「あ、これ、すき…好きです、そのまま、もっと…っ♡」

 規則的な責めに耐えられず、身体がびくびくと震えてしまう。

「あ、あ、わたし、おかしくなってしまいそうです…♡」
「…いいのか?」
「は、いっ、わかさまの…きもちよすぎ…て…っ♡ ん、んん~~~っ♡」



「…上手に達せて偉いな、いい子だ」
「ふ、あ、わたし、じょうずにできていました…か…?」

(褒められて嬉しいです…この調子で…お願いします……)

「ああ…俺は………君を」

(…だめです、もう、意識を保っていられません……)



 目が覚めると、まだ夜明け前だった。先程の自分を思い返し…
 そう、あれは花菱責めとつぶし駒掛け。
 顔を見られないので大胆になってしまった自覚はある。

(我に返るといたたまれなくなりますね…)



 目の前にあった若様の耳元で「無防備な寝顔が愛らしいです」と少し掠れてしまった声で囁き、自室に戻…指が絡められていた。
 名残惜しいが解き、自室に戻った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

夜這いを仕掛けてみたら

よしゆき
恋愛
付き合って二年以上経つのにキスしかしてくれない紳士な彼氏に夜這いを仕掛けてみたら物凄く性欲をぶつけられた話。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...