離縁宣言から始まるオリビアの下剋上

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今日、実りの雫の儀式が行われる。13時から始まる儀式は1時間ほど。その儀式を見届けた後、貴族たちはそれぞれ準備をするために家に帰り18時から夜会が開かれる。夜会は3日間あり最終日の夜会が一番盛り上がる。

夜会の最中は街中でもお祭りをしていて大勢の人が帝都に集まり水をそそぐ瞬間を眺める。その瞬間を見ることができれば自分に幸福が訪れると言われているため大勢の人が見物に来ているのだ。きっとその時に洗脳をかけるつもりだろう。

失敗してもいいように先に町を訪れオリビアが民たちに洗脳を行った。賭けのような集団洗脳が成功しなければ先に洗脳された人たちを使い人々を捕らえる。そんなひどい準備。

13時前というのにも関わらず広場には大勢の人が儀式を待っていた。ガヤガヤと楽しみに待っているのは帝都外の人たち。帝都の人たちは洗脳の際、実りの雫時は他人と動かず一人で民衆に紛れなさいという指示を受けているため1人でぼーっとしている人たちが一定数いる。

だがお祭り気分の人たちはそんな人と肩を組み「楽しもうやっ！」と酒を飲み誰も国の非常事態に気が付いていない。そんな中13時を知らせる鐘の音が響いた。

その鐘の音と同時に姿を見せる皇族。歓声にこたえるようにご機嫌で手を振っていたのは皇太子のフレデリックだけだった。ハロルドは不気味ににやけた顔で唐突に話し出す。

「集まってくれた諸君！今日という素晴らしい日に帝都まで足を運び感謝する！！雫の儀式の前に皆に聞いてもらいたい話があるのじゃ。皆オリビアの瞳に集中するように…」

「え、オリビア様…？何かあったのか…？」
「なんだか様子がおかしいような…」
「なぜ瞳…？」
「まぁ、それだけ集中しろって話なんだろ、詳しく説明してくれるさ。」

この儀式でハロルド以外は表立って話したことがない。ゆえに何事かと皆がオリビアに注目する。

「帝国民の皆様…今日は実りの雫の儀式にご参加いただきありがとうございます。さて、早速ではございますが今日この時をもってオルダー帝国の民たちは皆我らが父…皇帝陛下ハロルド様の意のままに行動してください。すべては陛下の指示の元この国を仕切っていただきます。」

「はぁ？どゆいう事だ？おい、なんかおかしいよな…？」
「…」
「…おいどうしたんだよ」

「指示に従わない者は反逆者となり罪人となります。怪しい方がいらっしゃいましたら"自主的"に近衛兵へとお知らせください。私からは以上になります。」

話し出した時こそざわざわとにぎわっていたが、話が終わりに近づけば近づくほど人々の声が聞こえなくなっていく。驚き意味が分からないことを言っているオリビアの方に目を向けてしまうのは仕方のないこと。より一層オリビアの瞳に集中した民は高速でたくさんの人の目を見ていたオリビアと目があってしまい洗脳にかかってしまう。

それでも洗脳にかからなかった人は存在する。だからこそ先に洗脳済みの人たちをバラバラに配置し見張らせたのだ。そして明らかに洗脳されていない人を皇帝陛下の為、自主的に捕らえるべく暴力に走った。洗脳されなかった人たちが次々と洗脳済みの人に捕まえられあらかじめ用意されていた檻の中に閉じ込められる。状況が掴めないまま捕まえられた人たちが叫ぶもその声は届かない。

「おいっ！どうしたんだっ！リリー？リリー！！」

近くで一緒に見ていたのだろう。捕らえられ地面に押さえつけられている男は近くにいた妻らしき人に必死に訴える。

「貴方…ごめんなさいね…陛下を信仰してない貴方が悪いの…すべては陛下の為…」

「陛下？！信仰ってこの国の皇帝なんだから敬って当然だろ？当然信仰しているようなものじゃないかっ！」

「違う…。貴方は陛下に死ねと言われてもできないでしょ？その違いよ。」

「リリ…離せっ！俺はっ！リリーとまだっくそっ！！」

「貴方…静かにしてください。陛下を守ってくださる騎士の皆様の手を煩わせる気？私の事が大切ならさっさと行って…。じゃないと陛下に顔向けできなくて私が死んでしまいそうだから…」

そういって騎士から借りた剣を自分の首元に当てる男性の妻リリー。その光景で異常なことに気が付く。下手なことはしない方がいいと思ったのか男性は静かに連行されていった。

皆が見ていない間に実りの雫の儀式をオリビアが終えた。そんな状態の帝都を放って貴族たちは準備をするために家に帰宅する。