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今までの扱いが嘘であったかのようにフレデリックはオリビアを愛している。周りの侍女たちもついていけない様子だった。

「なぜ今更オリビア様を…?ティナ様に裏切られて気がおかしくなったのでは?」

オリビアが冷遇されていたのは社交界では当たり前。ハロルドが何故知らなかったのか不思議なほど冷遇されていた。

「殿下も今までの横暴な態度じゃなくなったし逆に優しくなったっていうかいいことなんだけど違和感しかないよね。」
「わかるけど殿下の耳に入ったら大変よ。嘘でだましていたとはいえ出産したてのティナ様への対応なんて最悪だったらしいし…私たちみたいな侍女は一瞬で首が飛んでしまうかもしれないわ。」

違和感のある優しさに何か裏があるのではとおびえる侍女たち。

「そうだ。聞いた?次期皇后の専属侍女になるって自慢気に話していたティナ様の専用侍女やめたらしいわよ。」
「えぇ?そうなの?!笑っちゃいけないけどあんなに言いふらしていたものね。恥ずかしくて私なら生きていけないわ。でも皇后の専属侍女という権力につられてオリビア様をいじめなくてよかったわぁ。」
「実際に信じた子たちは業務妨害で職失ってたし欲は出すものじゃないわね。」
「ティナ様も相当痛い目にあってるみたいよ。罪には問われなかったけど実質罪みたいなものよね。あんな発表されたら。聞いた?先日の夜会の事。」

ティナはフレデリックに追い出された日に侯爵家へと帰還した。帰還したその足で父親の執務室を訪ねる。

「ティナ…。あの発表はどういうことだ?無事皇太子殿下の心を掴んだと自信満々に言っていたじゃないか。しかも水晶瞳ではないだと?一体誰の子なんだ。」

「お父様…。本当に私はフレデリック様としか交わっていないのです。何が起きたのかティナにもさっぱりで…。しかも…ヒックッ…追い出されるときフレデリック様まるで別人みたいに怖くて…。」

理解できない状態と恐怖で涙を流しながら報告するティナ。

「それで尻尾を巻いて逃げてきたと?殿下の子だというのなら帰ってきてはダメだとなぜわからない?帰ってくることによってお前はその罪を認めたようなものなんだぞ?ったく…いいのは顔だけだな。今回の件でその唯一の武器もなくしたわけだが…この損害はどう償うんだ。」

「わか…りませ…ん。でもティナ…社交界には沢山仲いい友達が居るから…信じてもらうように話してみよって…」

「そんな事したところで何も変わらぬっ!馬鹿なお前は部屋から一歩も出るなっ!!」

自室に戻り侍女に愚痴る。3日経っても同じようなことを呟くティナ。

「ティナ本当に悪くないもん。なんでみんな怒るの…」

そんな状態に嫌気がさしたのか専属侍女として働いてきた侍女3人がティナに話しかける。

「お嬢様…。大変申し上げにくいのですが今日限りでやめさせていただくことになりました。」

「はぁ?!なんでよ!」

「家の都合と言いますか…」

「ハッキリ言いなさいよっ!フレデリック様に捨てられた私の傍は恥ずかしいって!!まぁ皇后の専属侍女って自信満々に言いふらしてたみたいだし仕方ないよねっ!さっさと出て行って。」

こうして長年一緒にいた侍女たちと決別した。現実を突きつけられ吹っ切れたのかティナは届いた手紙を漁る。

「あったわ…。今日主催の招待状っ!全然見てなかったけどやっぱりみんな沢山招待状送ってくれてるじゃないっ!そうよ!私は社交界の中心人物の一人だもん。私にだって出来ることはあるわっ。」

ティナはフィータム侯爵にバレないよう一人で夜会の準備を進めた。化粧は朝侍女たちがやってくれたがドレスの着用が上手にいかない。明らかに不慣れな人が着付けしたのはすぐわかる。でもティナはそんなことを考える余裕もなくそのまま夜に家を抜け出し会場であるフィルミア侯爵家へと向かった。

フィルミア侯爵家とフィータム侯爵家は同じ皇帝派だがあまり仲がよろしくない。なぜティナはそんな違う派閥の夜会に来たのか。理由は簡単である。今日開催していたから。

「ちょっと…見て…」

ティナが入場するや否や夜会に居た貴族たちの目線はティナに集中した。

「どんな気持ちでここに来たのかしら。恥をさらしに来るようなものなのに。しかもここはテイジ―様が主催する夜会…。」
「おそらく政治に関して何もご存じないのですわ。」
「もしや新しい殿方を探しに来たのではなくて?ほら有名でしたでしょ?男に媚びる性格だって。」
「しかもみて…右の袖の方ちゃんと着れてなくないですか?」
「あらほんと…本当にフィータム侯爵がお気の毒ですわね。せっかく娘が皇后になると思ったら違う殿方と子が出来ていたなんて…。」

噂話をされるだけでティナの元には誰もやってこない。今までは皆ティナに挨拶をしにいっていたのによそよそしい。そんな中主催者であるテイジ―・フィルミア侯爵令嬢が声をかけた。
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