離縁宣言から始まるオリビアの下剋上

17

そして訪問すると約束した日の21時にオリビアは公爵家へと到着した。

食後に行動することで部屋に訪問してくる人が少ないとふんだためこの時間を指定した。到着したオリビアに誰かが声をかける。

「ようこそお越しくださいました。」

そうして出迎えたのはソフィア。普通はどんな身分の方でも使用人がまず出迎え部屋に案内されるがどうやら使用人全員に休みを出したらしく今日は事情を知るもの以外は屋敷に居ない。情報が洩れることを恐れたためだろう。全員信用している従者たちだが念には念を入れるのが公爵家のやり方。

案内された部屋は地下にあり秘密の部屋という事はすぐに分かった。その部屋にはもうオリビアの両親もいる。部屋に入った瞬間公爵家は皆頭を下げた。

「ご足労いただきありがとうございます。我々は皇女様と共に戦うと誓いましょう。」

オリビアはそんな事を望んでいないが公爵家として誓いたかったのだろう。何も言わずにその誓い受け入れた。

「皇女だなんて…水晶瞳を見せていませんが信じていただけるのですか？」

リアムたちに聞いたとしてもやはり直接見なければ信じれない出来事。それでも信じていただけるという。音を一番遮断する部屋を使用しているが何が起こるかわからない。水晶瞳だということは我々と話していても隠し通してほしいという。

そして公爵は話し出した。公爵家が代々受け継ぎ守ってきた使命を…。

公爵家となるためには皇族の血を引くものと結婚しその子供が爵位を継いだ時に公爵となる。レオナード公爵家が公爵になったのは10世代前の事。国の危機を救った公爵家は当時の皇帝陛下の妹と結婚し公爵家となった。

オルダー帝国には上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の5つの爵位があり公爵家が3家、侯爵家が５家、そして伯爵家が10の家と決まっている。子爵と男爵に関しては何か手柄をあげたり伯爵家以上の子息が男爵家などの爵位を賜れ数は決まっていない。

貴族階級を持つ家が罪を犯したりして地位を剝奪されれば繰り上がり式に地位が上がるというもの。公爵家と侯爵家に関しては5世代前にティナの実家フィータム侯爵家が侯爵になって以降地位は変わっていない。

フィータム家が皇太子妃や皇后にこだわるのは一番後に侯爵入りしたという劣等感があるからかもしれない。同じ侯爵家であっても家が古ければ古いほど影響力が増す。それほどまでに皆地位をあげる為に必死なのだ。

ただの侯爵家であったレオナード家が公爵の地位を賜ることになった事件を三大貴族事件と呼ぶ。当時は公爵の地位についているものなら水晶瞳の能力を共有し皇帝が独裁者にならないように止める役割を担っていた。しかし皇帝と3つの公爵家が手を組み隣国の領地を狙い支配を広げようとしたのが事件のきっかけである。

皇帝陛下は能力を惜しむことなく使い人々を洗脳し女性までも兵士として戦場に送り出していた。人々は皇帝陛下の為だ命を捨てるのは正義だと様々の洗脳が行われ独裁者の国になりつつあった。史上最悪の独裁者の名前はチェイサー・オルダーマイン。

レオナード家も洗脳が行われ何も疑わず協力する日々。だがそんな状態を何とかしようと立ち上がったのがリニック・オルダーマイン。チェイサー・オルダーマインの弟だった。

チェイサー・オルダーマインは国を自分のものにするために父を手にかけその座を奪った。洗脳の力は皇太子にしか与えられず皇位継承が下のリニック皇子は能力を使えなかったが兄の暴走を止める為に父が最後の力を振り絞りリニックに力を与える。「お前が皇帝になるんだ。この国を救ってくれ」それが父の最後の言葉だった。

力が使えるようになる条件は洗脳を受けること。力に触れることでその力が使えるようになる。オリビアが水晶瞳の能力を使えるのはフレデリックが好きだという洗脳を受けていたからだろう。リニック皇子はその力を使い昔からの側近の洗脳を解き協力して国を取り返した。その側近の中にレオナード家も含まれており一番尽力したという。

三大貴族は激しい争いに巻き込まれたり暗殺されたりで力を失っていった。何より密かに力を授けられたリニックに気が付かなかったのが敗北の主な原因だろう。そしてついに主犯のチェイサー・オルダーマインはリニック皇子に打ち取られたという。リニック皇子は帝国を救い皇帝となったが手が届かないほど洗脳の力は強く国を元に戻そうと努力するが亡くなった人は帰らない。洗脳を一度に解いてしまえば現実を受け入れない人が続出するだろう。民の心が持たないと判断し異常な忠誠心だけを取り除いた。

皇帝になったリニックは危険な力である水晶瞳を簡単に使うべきではないと能力に制限を作った。自分に制限をかけそれを子孫に継いでいくという制限を。