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別宮への移動を命じられ早3日。相変わらずの仕事の量。なんなら増えたようにも感じる。きっとフレデリックはティナとの時間を取るために一切の仕事をしていないのだろう。フレデリックに「逃げられたら…」と言われたが洗脳が解けていなかったらきっとオリビアは逃げるという選択は絶対しない。離縁され宮殿を追い出されてもフレデリックを思い続けてしまう呪い。
新しく用意された別宮は最近まで使われておらずホコリが目立つ部屋でとても皇太子の妃が住む部屋ではない。それだけ冷遇したいのだろう。大きい重たい扉の前には騎士が二名ほど配置され余計なことができないよう見張られている。出るなとは言われたがこの扱いはまるで罪人。軟禁されていると言ってもいい。
最低限の生活はできるし掃除道具も用意されている。だが、仕事が落ち着いても部屋を整えたり窓から少し見える庭園を眺めることしかすることがない部屋。もちろん以前同様世話をしてくれる人はいない。すべて自分でする必要があったが部屋から出れない以上必要なものは頼むしかなかった。
毎日3回だけ開かれる扉。食事は変わらず用意してくれるからありがたい。一人で食べることは変わらないし食事する机と仕事する机が同じになった程度の変化。
上位階級の推薦がなければ働けない場所なだけあって皆仕事に誇りを持ち侍女の中には行儀見習いとして男爵家や子爵家の令嬢が働いている。そんな誇りある仕事に男爵令嬢の世話など誰が喜んでしただろうか。嫌がらせは元々侍女にされていたが正式な妃となってから目に見える嫌がらせは減っていた。権限は持たずとも階級が上になった瞬間にピタッと止まったのだ。だが離縁宣言を聞いた彼女らはまた部屋に来るたびに嫌がらせをする様に…。その嫌がらせは以前のような無視や些細なことではなく物理的な嫌がらせだった。
離縁がほぼ確定の妃だからか全く怖くないのだろう。しかし悪びれた様子がなくどこが自信満々の表情の背景にはティナ・フィータムが絡んでいることに気が付くオリビア。
仕事をしている時でもノックせずに入ってきてはお茶を出したように見せかけてわざとお茶をこぼし書類をびしょ濡れにして仕事の邪魔をする。ティナはオリビアに仕事を押し付けたいと考えているはずだ。仕事のミスが連発し正真正銘の役立たずとなり捨てられてはティナの要望は通らない。きっと嫌がらせを命じただけであって具体的な指示ではなかったのだろう。
侍女たちもノリノリな様子で日ごろのストレスを発散するように嫌がらせが行われる。嫌がらせをしに来たと思えば勝手に部屋でくつろぎただのさぼり部屋となっていた時もあった。オリビアは外に出れないためこの状況を説明しようにも誰かに頼まなければならないが真実を告げてくれる人はここには居ない。報告すべき人物もいない。嫌がらせの事実を殿下が知ったとしても何もしないだろう。殿下自身がそれを望んでいるとしても何も不思議ではない。
「貴方たち…。お茶をこぼすのはミスだから仕方がないのかもしれないけどさすがにこぼす回数が多すぎるわ…。濡らす書類ぐらい見てから行動したらどうなの?まぁ見てもわからないのでしょうけど。」
淡々と無表情で告げつつも警告した。さすがに度が過ぎている。
「はぁ…?どうしたんですか?さすがのお人形様でもしびれを切らしちゃったんですかぁ?」
「しびれというより飽きれね。ティナ様からのご厚意で頼んでもいないお茶を持ってきてくれたのでしょうけど、あなた達が何回もこぼしてしまうから仕事が進まないわ。せっかくティナ様が書いてくれたあなた達の昇格推薦状があったのだけど誰かがお茶をこぼしてしまったから無意味な推薦状になってしまったわね。もう一度書いてほしいとお伝えしてもいいですがお茶をこぼす侍女を推薦したと恥をかくのはティナ様という事を理解してくださいね。」
「えっ…?なぜあなたの所に推薦状が届くのですか?権限は何も与えられておりませんよね?はったりで惑わそうとしても無駄ですよ…?そのような書類は皇帝陛下か皇太子殿下が処理なさるはずです…。」
「皇帝陛下は留守でその皇太子殿下はティナ様に付きっきりなのでしょう?内容も見ずにこちらに流れてくるんですよ。私の所に書類が回ってこれば権限が発生します。昇格の判も私は押せるのです。」
見るからに動揺しながら言った「私たち、少し用事を思い出したので失礼いたしますわ…。」に思わず笑みが漏れたオリビアだった。
新しく用意された別宮は最近まで使われておらずホコリが目立つ部屋でとても皇太子の妃が住む部屋ではない。それだけ冷遇したいのだろう。大きい重たい扉の前には騎士が二名ほど配置され余計なことができないよう見張られている。出るなとは言われたがこの扱いはまるで罪人。軟禁されていると言ってもいい。
最低限の生活はできるし掃除道具も用意されている。だが、仕事が落ち着いても部屋を整えたり窓から少し見える庭園を眺めることしかすることがない部屋。もちろん以前同様世話をしてくれる人はいない。すべて自分でする必要があったが部屋から出れない以上必要なものは頼むしかなかった。
毎日3回だけ開かれる扉。食事は変わらず用意してくれるからありがたい。一人で食べることは変わらないし食事する机と仕事する机が同じになった程度の変化。
上位階級の推薦がなければ働けない場所なだけあって皆仕事に誇りを持ち侍女の中には行儀見習いとして男爵家や子爵家の令嬢が働いている。そんな誇りある仕事に男爵令嬢の世話など誰が喜んでしただろうか。嫌がらせは元々侍女にされていたが正式な妃となってから目に見える嫌がらせは減っていた。権限は持たずとも階級が上になった瞬間にピタッと止まったのだ。だが離縁宣言を聞いた彼女らはまた部屋に来るたびに嫌がらせをする様に…。その嫌がらせは以前のような無視や些細なことではなく物理的な嫌がらせだった。
離縁がほぼ確定の妃だからか全く怖くないのだろう。しかし悪びれた様子がなくどこが自信満々の表情の背景にはティナ・フィータムが絡んでいることに気が付くオリビア。
仕事をしている時でもノックせずに入ってきてはお茶を出したように見せかけてわざとお茶をこぼし書類をびしょ濡れにして仕事の邪魔をする。ティナはオリビアに仕事を押し付けたいと考えているはずだ。仕事のミスが連発し正真正銘の役立たずとなり捨てられてはティナの要望は通らない。きっと嫌がらせを命じただけであって具体的な指示ではなかったのだろう。
侍女たちもノリノリな様子で日ごろのストレスを発散するように嫌がらせが行われる。嫌がらせをしに来たと思えば勝手に部屋でくつろぎただのさぼり部屋となっていた時もあった。オリビアは外に出れないためこの状況を説明しようにも誰かに頼まなければならないが真実を告げてくれる人はここには居ない。報告すべき人物もいない。嫌がらせの事実を殿下が知ったとしても何もしないだろう。殿下自身がそれを望んでいるとしても何も不思議ではない。
「貴方たち…。お茶をこぼすのはミスだから仕方がないのかもしれないけどさすがにこぼす回数が多すぎるわ…。濡らす書類ぐらい見てから行動したらどうなの?まぁ見てもわからないのでしょうけど。」
淡々と無表情で告げつつも警告した。さすがに度が過ぎている。
「はぁ…?どうしたんですか?さすがのお人形様でもしびれを切らしちゃったんですかぁ?」
「しびれというより飽きれね。ティナ様からのご厚意で頼んでもいないお茶を持ってきてくれたのでしょうけど、あなた達が何回もこぼしてしまうから仕事が進まないわ。せっかくティナ様が書いてくれたあなた達の昇格推薦状があったのだけど誰かがお茶をこぼしてしまったから無意味な推薦状になってしまったわね。もう一度書いてほしいとお伝えしてもいいですがお茶をこぼす侍女を推薦したと恥をかくのはティナ様という事を理解してくださいね。」
「えっ…?なぜあなたの所に推薦状が届くのですか?権限は何も与えられておりませんよね?はったりで惑わそうとしても無駄ですよ…?そのような書類は皇帝陛下か皇太子殿下が処理なさるはずです…。」
「皇帝陛下は留守でその皇太子殿下はティナ様に付きっきりなのでしょう?内容も見ずにこちらに流れてくるんですよ。私の所に書類が回ってこれば権限が発生します。昇格の判も私は押せるのです。」
見るからに動揺しながら言った「私たち、少し用事を思い出したので失礼いたしますわ…。」に思わず笑みが漏れたオリビアだった。
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