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心優しき真の尊きお方。しかしソフィアにとって気になる点があった。
「オリビア様…貴族派である私たちとの接点はあまりなかったけどゆっくりでいいから気軽に話してね。オリビア様がこの国で一番尊きお方なのだから。そんな様子では上に立つ時になめられてしまうわ。」
ソフィアは冗談っぽく笑いながら伝えながらも昔のように話してほしいと思う反面、言葉の使い方を徐々に変えていきたかった。洗脳が解けた今でこそ気の弱い女性ではなくなったが記憶を塗り替えられていたとはいえ隠れるように生きてきた彼女が上に立つには根本的に行動や言葉を見直さなければならない。この心優しいお方がなめられないように、騙されないように。ソフィアはそんなオリビアを支えていきたいと思う。そしてすべて思い出せた時、問題が解決し平和になった時にはもう一人の心優しい弟の背中を押してあげようとそう思った。幸せになれる未来を信じて。
「オリビア…。辛いことも沢山あると思う。だが僕たちが付いている。だから正しいと思ったことを…自分を信じて突き進むんだ。」
「ソフィア様…リアム…。確かに私は男爵令嬢として生きてきて性格までも変えられていた。でも私はもうあの2人に復讐するって決意を固めました…頼りにしてますわ。」
飛び切りの笑顔でそう言い切る令嬢は皇宮へと帰っていった。
部屋に戻る道のりで侍女たちのこそこそ話が聞こえる。まるで聞かせに来ているような声の大きさで。
「前髪なんか切ってどうされたのでしょう。」
「あら!知らないの?離縁を言い渡されたのですって。」
「まぁっ!なのにあんな堂々と部屋に戻っていらっしゃるの?」
「夜会が終わっても見かけないからてっきり逃げ出したのかと…。帰ってきたってことはそれでも愛しているってことじゃないんですか?何をされても愛し続けるあの方を怖いとまで思いますわ。」
使用人や侍女たちにも回っている今日の出来事。さすがに情報が早いなとは思っていたがまさか略奪したティナ・フィータムが同じ皇宮にいるなどオリビアは気づきようがなかった。男爵令嬢というだけで使用人からも冷たい扱いを受け優しく教えてくれる人などいないから。
冷静に考えて時期皇太子を産むかもしれない令嬢を易々と家に帰すわけがない。離縁できる切り札だとも思っているため当たり前の判断だったのだろう。オリビアもあの皇太子が愛しいフィータム令嬢を家に帰すわけがないとは思っていたが客人用の別棟と思っていた。それがまさか同じ皇宮内だとはオリビアも想像できない。
離縁宣言されてもなお次の日になればオリビアは当たり前の顔をして業務に励む。頭の中は考え事でいっぱいだが離縁宣言について何も傷ついていない様子から心を病んでいるだの壊れているだのショックを受けていない様子に周りは恐怖を感じる。
実際にショックを受けていないから平気なのだが洗脳されててもオリビアは仕事をしただろう。今のオリビアは通常に戻ったと分からないように行動しているだけなのだから。昨日の私ならこうしていただろうと考え業務をしているだけ。
「ここの使用人たち声大きいのね。全部聞こえるわね…。いやわざと言ってるかも…。今までもこんな扱いされてたってことなのに…ははっ全く気になりませんでしたわ…。聞こえてても好きなのには変わりないと思っていた。本当に異常ですね…。」
呼ばない限り寄ってこない使用人たちとの距離は今になっては有難かった。オリビアの好きなように考え事に集中できるから。
当たり前のように仕事をしているが皇太子の仕事も混ざっている。随分前に少しでもお役に立てればと思い仕事を変わってからは当たり前のようにオリビアがこなすようになった。男爵令嬢だから周りに劣らないように馬鹿にされないようにと必死に勉強してきた結果が皇太子にとっての都合のいいただの駒。都合が良くても離縁宣言をしてしまうほどオリビアが皇后になるのが許せなかったのだろう。
「そうとう嫌われてるのね…。」
書き物をしている手を止め視界が曇るのがわかる。昨日まではどうしようもないほど好きだったのに今は嫌悪感しかない。でも傷つき涙を流してしまう。オリビアの心はまだ整理ついておらず今の自分とは昨日の自分がかけ離れすぎていて自分自身とは思えない。そんな複雑な感情がオリビアを苦しませる。
「いつも通りの自分を演じようとしても自分と思えない誰か他人の真似事の気分…。こんな整理のついていない状況で仕事してもどこかでミスするだけね…。殿下は違う業務をしている予定だしどうせ今まで通り私に興味はない。無関心で何も言うてきたことはなかったわ。部屋に来たと思ったら嫌味ばかりものね…。」
オリビアは早めに仕事を切り上げ自室に帰ろうと廊下を歩く。目線は足元を向いており日々虐げられ萎縮して歩く癖が抜けない。だが下を向いていても感じる気配と強い香水の匂い。顔をあげ目が合うのは必然だった。偶然か待ち伏せていたのかわからないがそこにはティナ・フィータムの姿。当然こんな所で出会うと思っていないオリビアは酷く動揺した。今は恨んでいるはずなのに保護する対象なのに昨日の出来事がショックとしてフラッシュバックする。
「オリビア様…貴族派である私たちとの接点はあまりなかったけどゆっくりでいいから気軽に話してね。オリビア様がこの国で一番尊きお方なのだから。そんな様子では上に立つ時になめられてしまうわ。」
ソフィアは冗談っぽく笑いながら伝えながらも昔のように話してほしいと思う反面、言葉の使い方を徐々に変えていきたかった。洗脳が解けた今でこそ気の弱い女性ではなくなったが記憶を塗り替えられていたとはいえ隠れるように生きてきた彼女が上に立つには根本的に行動や言葉を見直さなければならない。この心優しいお方がなめられないように、騙されないように。ソフィアはそんなオリビアを支えていきたいと思う。そしてすべて思い出せた時、問題が解決し平和になった時にはもう一人の心優しい弟の背中を押してあげようとそう思った。幸せになれる未来を信じて。
「オリビア…。辛いことも沢山あると思う。だが僕たちが付いている。だから正しいと思ったことを…自分を信じて突き進むんだ。」
「ソフィア様…リアム…。確かに私は男爵令嬢として生きてきて性格までも変えられていた。でも私はもうあの2人に復讐するって決意を固めました…頼りにしてますわ。」
飛び切りの笑顔でそう言い切る令嬢は皇宮へと帰っていった。
部屋に戻る道のりで侍女たちのこそこそ話が聞こえる。まるで聞かせに来ているような声の大きさで。
「前髪なんか切ってどうされたのでしょう。」
「あら!知らないの?離縁を言い渡されたのですって。」
「まぁっ!なのにあんな堂々と部屋に戻っていらっしゃるの?」
「夜会が終わっても見かけないからてっきり逃げ出したのかと…。帰ってきたってことはそれでも愛しているってことじゃないんですか?何をされても愛し続けるあの方を怖いとまで思いますわ。」
使用人や侍女たちにも回っている今日の出来事。さすがに情報が早いなとは思っていたがまさか略奪したティナ・フィータムが同じ皇宮にいるなどオリビアは気づきようがなかった。男爵令嬢というだけで使用人からも冷たい扱いを受け優しく教えてくれる人などいないから。
冷静に考えて時期皇太子を産むかもしれない令嬢を易々と家に帰すわけがない。離縁できる切り札だとも思っているため当たり前の判断だったのだろう。オリビアもあの皇太子が愛しいフィータム令嬢を家に帰すわけがないとは思っていたが客人用の別棟と思っていた。それがまさか同じ皇宮内だとはオリビアも想像できない。
離縁宣言されてもなお次の日になればオリビアは当たり前の顔をして業務に励む。頭の中は考え事でいっぱいだが離縁宣言について何も傷ついていない様子から心を病んでいるだの壊れているだのショックを受けていない様子に周りは恐怖を感じる。
実際にショックを受けていないから平気なのだが洗脳されててもオリビアは仕事をしただろう。今のオリビアは通常に戻ったと分からないように行動しているだけなのだから。昨日の私ならこうしていただろうと考え業務をしているだけ。
「ここの使用人たち声大きいのね。全部聞こえるわね…。いやわざと言ってるかも…。今までもこんな扱いされてたってことなのに…ははっ全く気になりませんでしたわ…。聞こえてても好きなのには変わりないと思っていた。本当に異常ですね…。」
呼ばない限り寄ってこない使用人たちとの距離は今になっては有難かった。オリビアの好きなように考え事に集中できるから。
当たり前のように仕事をしているが皇太子の仕事も混ざっている。随分前に少しでもお役に立てればと思い仕事を変わってからは当たり前のようにオリビアがこなすようになった。男爵令嬢だから周りに劣らないように馬鹿にされないようにと必死に勉強してきた結果が皇太子にとっての都合のいいただの駒。都合が良くても離縁宣言をしてしまうほどオリビアが皇后になるのが許せなかったのだろう。
「そうとう嫌われてるのね…。」
書き物をしている手を止め視界が曇るのがわかる。昨日まではどうしようもないほど好きだったのに今は嫌悪感しかない。でも傷つき涙を流してしまう。オリビアの心はまだ整理ついておらず今の自分とは昨日の自分がかけ離れすぎていて自分自身とは思えない。そんな複雑な感情がオリビアを苦しませる。
「いつも通りの自分を演じようとしても自分と思えない誰か他人の真似事の気分…。こんな整理のついていない状況で仕事してもどこかでミスするだけね…。殿下は違う業務をしている予定だしどうせ今まで通り私に興味はない。無関心で何も言うてきたことはなかったわ。部屋に来たと思ったら嫌味ばかりものね…。」
オリビアは早めに仕事を切り上げ自室に帰ろうと廊下を歩く。目線は足元を向いており日々虐げられ萎縮して歩く癖が抜けない。だが下を向いていても感じる気配と強い香水の匂い。顔をあげ目が合うのは必然だった。偶然か待ち伏せていたのかわからないがそこにはティナ・フィータムの姿。当然こんな所で出会うと思っていないオリビアは酷く動揺した。今は恨んでいるはずなのに保護する対象なのに昨日の出来事がショックとしてフラッシュバックする。
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