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柱に隠れ顔を覆いながら静かに泣いているオリビア。今までどんなことにも涙を流さなかったのに涙が止まらない。涙を止めようと息を殺している時に「やっと見つけた…」という言葉が聞こえる。

誰かは分からないが離縁宣言されても今は皇太子の妃、涙なんて見せるわけにはいかなかった。

「放っておいてください。」

「そんなことはできない。泣いている令嬢を一人になんてできないよ。ほら涙を拭いて」

差し出されたハンカチすら受け取らないオリビアの顔を男性は両手で優しく包み顔をあげさせた。

「令嬢にこんなことをするのは失礼だと分かっているがどうかそんなに悲しそうに泣かないでくれ。目が腫れちゃうよ。」

そういって持っていたハンカチでオリビアの目の周りを拭いた。濡れた長い前髪を嫌な顔せずに避けて拭いてくれる男性と目が合う。青と黒を混ぜたような神秘的な髪と瞳。

皇后になるために貴族全員の顔と名前を記憶している。男性の名はリアム・レオナード。3大貴族と呼ばれるレオナード公爵家の次男であり貴族派代表の家。一度挨拶はしたものの貴族派だから関係を持つなと陛下に言われてから一切関わりがなかったのに優しくしてくれる。

少し強引だが彼の優しさがオリビアの心を癒す。

「ウォールデン嬢…君の瞳…」

明らかに動揺しながら話す彼の表情を見て今まで笑われ続けた事実を思い出す。

「見ないでくださいっ!地味な目…ですよね…。」

「いや、そうじゃない。君が瞳の色を気にしているのは知っている。僕が驚いたのは知っている瞳の色じゃなかったからだ。失礼でなければ教えてくれ。君の瞳は茶色だったはずだ。間違いはないかい?」

「えっ…?はい…。私の瞳は暗い茶色です。」

「ちょうど鏡を持っていてよかった。自分で確認してほしい。今の瞳の色を…。」

なんの話をしているのか理解できないまま差し出された鏡を受け取り恐る恐る鏡を覗いた。

そこには見慣れた地味な茶色い目が映るはずだった。なのに今は左目だけがグラデーションのように赤から茶色という瞳をしている。外側に向かって真っ赤に輝いている。驚きで言葉が出ない。だってこの透き通る赤い目は…

「水晶瞳…。に見えるのは僕の気のせいだと思うか…?」

「私は物心ついた時から暗い茶色で…私にも何が起きているのかさっぱり…」

驚いている2人のもとへ誰かが駆け付ける。

「リアムっ!やっといた…。急に走っていくんだもん。で、オリビア様はいた…?」

走ってきたのはリアム・レオナードの髪色に白を混ぜたような髪に水色の瞳。リアム・レオナードの姉、ソフィア・レオナードだった。

「ねぇさん…。歴史が動くかもしれない…。」

「ちょっと何言って…。」

ペタッと座り込んだオリビアをみて瞬時に理解する。

「いつ夜会が終わるかわかりません。とりあえず私たちの馬車までお越しください。」

言われるがままオリビアは馬車に移動した。

「オリビア様…心当たりはありますか?」

「申し訳ありません。まったくなくて…」

「さっきより赤みが増しています。オリビア様のご実家へ伺いたいと思いますがよろしいですか?」

「私も家に帰りたいとは思っていたのですが陛下に禁じられていて…でもこのままここに滞在するのも怖くて…。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。」

夜会用のドレスのままオリビアの実家へと向かった。

帰るなと命令されていた娘が公爵家のご子息たちとただならぬ雰囲気で帰ってきたのだ。何事かと慌てるもオリビアと目を合わしたウォールデン男爵は理解したように家へ上げた。

「急なご訪問にも対応していただき感謝します。先ほどウォールデン嬢の瞳を見ても驚きませんでしたね。何か知っているとお見受けしてよろしいでしょうか。」

「はい。もうこうなってしまった以上隠すことは難しいでしょう。ほかの方に瞳は見られていませんか?」

「大丈夫です。前髪が長かったこともあり私たちの従者さえ確認できてないはず。」

「ご配慮感謝いたします。貴族派のお二方はきっとこの国を変えれると信じお話しましょう。その…瞳でお察ししているとは思いますが…オリビアは…私たちの本当の…子供ではありません。」

とても言いにくそうに話し続けるウォールデン男爵。本当の子供ではないと急に告げられオリビアは驚きと不安で理解したくないように口に手を当て目線を落とした。

「陛下と皇太子殿下が一部の貴族間でなんと呼ばれているかご存じですか?」

「もちろんです。兄弟殺しの独裁者と傲慢わがまま皇太子ですね。」

「はい。陛下の兄弟殺しの情報はなくとも皆陛下のご兄弟が無くなった原因は陛下だと察しております。その中で起きた事件をお話ししましょう。今では私たちしか知らない真実を…」
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