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少年はニヤッと笑いながら話し出す。

「そんなに驚かないでよ。多分お姉さんにはこっちで話した方が気を引けるって判断したまでだよ。誰が何と言おうと僕はお姉さんに惚れちゃったんだから仕方がないじゃん。」

お金に困りながら生活していた少年がこんなに自信満々に話せるものなのか。と疑問が出てきても服を見てどう考えても貧民の恰好。レイは少年のいう通り気になってしまった。

「レイ。私の名前はレイだよ。君の言う通り気になってしまった。また会える時を楽しみにしているよ。」

今度こそ歩き出したレイ。

「お姉さん~!またここに来てくれる~??」少年は叫んだ。

もう今度は振り向かずに左手をヒラヒラ振りながらこう言った。

「それは分からないな。でもしばらくはこの大きな街に滞在するつもりだよ。私を探し出して私の心を奪って見せな。」

「望むところだよ。」少年は小さく呟いた。

少年は来る日も来る日も踊り子の前に現れる。踊りだしたらすぐに駆け付ける少年。どうして場所が分かるの…と思いながらいつしか今日は何秒で来るだろうとワクワクしながら待っていた。

踊りが終わって去ろうとしたら毎回少年が話しかけてくれて話すのが日課になっていた。

「お姉さんってまだ若いでしょ?どうしてそんな大人っぽい口調で話してるの?」

「君に言われたくないな。君こそ年齢に合わない口調してるじゃない。」

「失礼だな。僕身長が小さいだけで多分お姉さんが思っているより年齢上だよ。」

「どうだか…。私は可愛い子供みたいにお金を貰っているわけじゃないんだよね。私は触れたくても触れられない距離間で貢いで欲しいの。お金は生きていく上で必要だし、もらえるものは貰わないと…。大人な女性の方が貢がれやすいからこういう口調で話しているだけだよ。」

「でも僕と話し過ぎて気が抜けてるのか本当の口調が漏れちゃってるよ??お姉さん…今18歳くらい?」

「君は本当に鋭いな。正解。18歳だよ。君からお金は貰わないから口調はもういいの。そろそろ行かなきゃ…またね。」

そして別々の道で帰った2人。この会話を最後に少年は踊りを見に来なくなった。レイは少年が気になって仕方がなかった。でも明日ひょこっと来るだろうと思っても全く来なくなった。あの帰り道に何かあったのか、これなくなった事情があるのか連絡先を知らないレイは待つしかできなかった。

彼女が出来ることは少年が自分を見つけるように踊り続けるしかできなかった。

そして3年の月日がたった。
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