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第3話
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今年の文化祭は特に盛り上がる予定らしい。なんでも学園創立50周年記念文化祭のようだ。
各クラスや部活動が趣向を凝らした出し物を準備し、学園全体が熱気に包まれている。勇人が手伝っている生徒会が担当するのは、体育館で行われる「ホラーハウス」と、特別教室での「アート展」だ。
*
ある日の放課後、体育館に集まった生徒会メンバーたちは、ホラーハウスの飾り付けや仕掛け作りに取り掛かっていた。和真を中心に、全員でアイディアを出し合いながら準備を進めていたが、細かいデザインや飾り付けの部分がなかなか決まらなかった。
「うーん、やっぱりホラーハウスの飾り付けって、デザインセンスが重要だよね」
杏奈が頭を抱えながら、教室の壁に目を向ける。他のメンバーも何となく賛同しながらも、誰も具体的な案を出せないでいた。
「もっと迫力があった方が良いんだがな。どうすればいいだろうか?」
そんな中、紗奈がふと思い出したように勇人を見つめた。
「相川君、昔、美術の先生に褒められてたよね。小学校の頃、君の絵、すごく上手だったよ。覚えてない?」
勇人は突然名前を呼ばれ、驚いて紗奈を見返した。彼女がそんなことを覚えていたとは思いもよらなかった。そもそも勇人は紗奈との接点すら思い出せないのでいるのだから当然である。
確かに勇人は昔よく絵を描いていて、小学校の美術の時間では先生に褒められることもあり、コンクールに絵が出されたこともあった。しかしそんなことは遠い過去の話だ。
「……そんなこと、もう昔の話だよ。今はもうほとんど描いてないし」
勇人は少し照れながら、言い訳をする幼い子供のように答えた。
「でも、その時の絵、私すごく好きだったよ。だから、相川君が描いたら、きっと素敵なデザインができると思うんだ」
紗奈の言葉には力があった。紗奈はどのくらい昔の勇人のことを覚えているのだろうか?勇人は改めて紗奈のことが気になった。
「絵か……」
勇人にとって絵を描くことは、かつての楽しみであり、逃げ場でもあった。しかし、転校を繰り返すうちに、徐々に描かなくなっていった。
「相川、1度描いてみてくれないか?どんなものか気になる」
和真が促すと、他のメンバーも期待の眼差しを向けた。杏奈や大輝も興味津々の表情で勇人を見つめている。
「うん! 相川君なら、絶対いいデザインができるよ!多分……」
杏奈が無邪気に声を上げ、勇人の背中を押す。その無垢な期待に、勇人は深くため息をつき、ついに決心した。
「……わかった。じゃあ、やってみるよ」
そう言うと、周囲のメンバーから安堵の笑みが広がった。こうして、勇人はホラーハウスのデザインをやってみることとなった。
各クラスや部活動が趣向を凝らした出し物を準備し、学園全体が熱気に包まれている。勇人が手伝っている生徒会が担当するのは、体育館で行われる「ホラーハウス」と、特別教室での「アート展」だ。
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ある日の放課後、体育館に集まった生徒会メンバーたちは、ホラーハウスの飾り付けや仕掛け作りに取り掛かっていた。和真を中心に、全員でアイディアを出し合いながら準備を進めていたが、細かいデザインや飾り付けの部分がなかなか決まらなかった。
「うーん、やっぱりホラーハウスの飾り付けって、デザインセンスが重要だよね」
杏奈が頭を抱えながら、教室の壁に目を向ける。他のメンバーも何となく賛同しながらも、誰も具体的な案を出せないでいた。
「もっと迫力があった方が良いんだがな。どうすればいいだろうか?」
そんな中、紗奈がふと思い出したように勇人を見つめた。
「相川君、昔、美術の先生に褒められてたよね。小学校の頃、君の絵、すごく上手だったよ。覚えてない?」
勇人は突然名前を呼ばれ、驚いて紗奈を見返した。彼女がそんなことを覚えていたとは思いもよらなかった。そもそも勇人は紗奈との接点すら思い出せないのでいるのだから当然である。
確かに勇人は昔よく絵を描いていて、小学校の美術の時間では先生に褒められることもあり、コンクールに絵が出されたこともあった。しかしそんなことは遠い過去の話だ。
「……そんなこと、もう昔の話だよ。今はもうほとんど描いてないし」
勇人は少し照れながら、言い訳をする幼い子供のように答えた。
「でも、その時の絵、私すごく好きだったよ。だから、相川君が描いたら、きっと素敵なデザインができると思うんだ」
紗奈の言葉には力があった。紗奈はどのくらい昔の勇人のことを覚えているのだろうか?勇人は改めて紗奈のことが気になった。
「絵か……」
勇人にとって絵を描くことは、かつての楽しみであり、逃げ場でもあった。しかし、転校を繰り返すうちに、徐々に描かなくなっていった。
「相川、1度描いてみてくれないか?どんなものか気になる」
和真が促すと、他のメンバーも期待の眼差しを向けた。杏奈や大輝も興味津々の表情で勇人を見つめている。
「うん! 相川君なら、絶対いいデザインができるよ!多分……」
杏奈が無邪気に声を上げ、勇人の背中を押す。その無垢な期待に、勇人は深くため息をつき、ついに決心した。
「……わかった。じゃあ、やってみるよ」
そう言うと、周囲のメンバーから安堵の笑みが広がった。こうして、勇人はホラーハウスのデザインをやってみることとなった。
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