失われた王国の王女と絶対忠誠騎士、運命に導かれる2人

第19話 久しぶり

　リアナとエリオットは黒い霧の中に飛び込み、冷たい闇の中を進んでいった。霧は彼らの視界を奪い、まるで足元から絡みついてくるかのようにまとわりついていた。だが、リアナの決意とエリオットの信念が、彼らの足を止めることはなかった。

「エリオット、何かが……この先にいる」

　リアナの声が緊張で震える中、彼女の瞳にうっすらと何かが映り込んだ。それは、黒い霧の中に浮かぶ淡い光――そして、その光の中に立つ女性の姿だった。長いローブをまとい、冷ややかな目をしているが、その瞳にはどこか懐かしさが宿っている。

「ソレーネ……？」

　リアナは驚きの声を漏らし、エリオットもまたその名を聞いて目を見開いた。ソレーネは一度リアナたちの前に現れ、彼女に警告を与えた謎の女性だった。その後、彼女の姿はどこにも見当たらなかったが、今再び、こうして彼らの前に現れたのだ。

「久しぶりね、リアナ。そして、エリオット……」

　ソレーネの声はどこか哀愁を帯び、彼女の姿と共に霧がゆっくりと晴れていく。彼女はリアナとエリオットに一歩近づき、微笑むような表情を見せたが、その背後に漂う冷たさが消えることはなかった。

「なぜ、ここに……？　あなたは一体何者なの？」

　リアナの問いに、ソレーネは一瞬目を伏せた。彼女の姿は霧のように儚く、まるでこの世界に属していないかのようだ。

「私は、エルドラシアの失われた記憶を受け継ぐ者。そして、あなたの力が目覚めるのを待っていた……」

　ソレーネの言葉に、リアナは混乱しつつも真剣な表情で聞き入る。彼女が抱える謎が少しずつ解き明かされるような気がした。

「私がここで待っていた理由、それは……あなたがその力を正しく使えるようになるため。そして、エルドラシアを再び闇に飲まれないようにするためよ」

　ソレーネの瞳がリアナをまっすぐに見据え、彼女の言葉にはかつての仲間を想うような優しさが宿っていた。しかし、その瞬間、ソレーネの背後から再び黒い影が立ち上がり、彼女の姿を飲み込もうとする。

「リアナ、急いで！　この場所はまだ……闇の力に支配されている！」

　ソレーネの声が響き、リアナとエリオットは互いに頷き合う。彼らは再び構えを取り、ソレーネを助けるため、そしてエルドラシアの真実を手に入れるため、闇と対峙するのだった。