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第17話 力

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 リアナはエリオットの決意に応えるように、石碑に触れた手をそっと下ろし、再び前を見据えた。広間の奥にはさらに続く階段があり、そこから冷たい風が吹き抜けてくる。二人はその風に背中を押されるようにして、ゆっくりと階段を下り始めた。

「エルドラシアの失われた真実……それが私たちを待っているのね」

 リアナの呟きは、静かな空間に吸い込まれるように消えた。エリオットは隣で慎重に歩を進めつつも、彼女の横顔をちらりと見た。

「俺たちが知るべきこと、そして君が受け継ぐべきものが、ここにあるのかもしれないな」

 階段を下りきると、薄暗い空間が広がっていた。天井には無数の星を模した装飾が施されており、壁には古代文字が彫り込まれている。どれも風化しているが、リアナにはその意味が少しずつ理解できる気がした。

「ここには……エルドラシアの王族に伝わる儀式について書かれているみたい」

 リアナが壁に刻まれた文字を指でなぞりながら言うと、エリオットもその横に立ち、目を細めて読み取ろうとする。

「儀式か……それは君の力と関係があるのか?」

 リアナは真剣な表情で文字を追い続け、やがて顔を上げた。

「たぶん、この力はエルドラシアの守護者としての役割を果たすためのものだったのかもしれない。でも、それがなぜ今の私に……」

 リアナの言葉が途切れた瞬間、突然空間が震え始めた。地面が微かに揺れ、天井の装飾がかすかに輝きを放つ。エリオットは剣を構え、周囲を警戒する。

「何か来る……リアナ、後ろに下がって!」

 その瞬間、天井から金色の光が降り注ぎ、リアナの周囲を包み込んだ。彼女は驚きつつも、目を閉じてその光を受け止めるように両手を広げる。心の中に再び響く声――それは、遥か昔のエルドラシアの王族たちの想いと祈りだった。

「リアナ……」

 エリオットは手を伸ばそうとしたが、金色の光が彼の手を拒むように弾き返した。リアナの瞳には、過去と未来が交差する光景が映し出される。

「エリオット、これは……エルドラシアの守護者としての記憶……」

 リアナは震える声で言った。彼女の視界には、かつて栄華を極めたエルドラシアの街並みが広がっていた。しかし、その輝きはやがて闇に覆われ、城が崩れ落ちる様子が目の前に浮かび上がる。そして、全てを破壊したのは、かつて王に仕えていた裏切り者――彼の顔がぼんやりと浮かび、リアナの胸に怒りと悲しみが交錯した。

「私の力は……王国を滅ぼした力と同じ……?」
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